日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
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目次
巻頭言
特集 2025年から2040年を見据えた在宅ケアへ
総説
  • 榎本 雪絵, 河野 光伸, 河田 萌生, 久篠 奈苗, 池田 晋平, 石井 博之, 石川 和枝, 江藤 祥恵, 大友 晋, 大野 洋一, 岡 ...
    原稿種別: 総説
    2025 年29 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    [目的]在宅認知症高齢者を対象とした通所施設における認知リハビリテーションが,これを受けない統制群と比較して臨床指標を改善するかについて明らかにする.

    [方法]PRISMA statementによるシステマティックレビューとメタアナリシスを行った.適格基準は,①ランダム化比較試験,②対象者が65歳以上の自宅療養中の認知症高齢者,③通所施設における認知症リハビリテーションの介入,④アウトカムが認知機能やADL,QOL,BPSDのいずれか1つ以上を含んでいることとした.

    [結果]採択文献は11研究であった.MMSEをアウトカムとしたメタアナリシスの結果,介入群で有意な改善を認めた.その他,ADLやQOL,BPSDへの改善効果は明確ではなかった.

    [結論]在宅認知症高齢者を対象とした通所施設における認知リハビリテーション介入は認知機能の改善に有効であるが,エビデンスは限定的である.

原著
  • 手塚 早苗, 杉田 由加里
    原稿種別: 原著
    2025 年29 巻1 号 p. 59-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    [目的]地域包括支援センターの専門職が援助要請しない地域在住高齢者への支援を協働して,迅速に緊急性の判断を行い,適切なサービス利用となる支援を行うための役割行動指標を作成することである.

    [方法]地域包括支援センター専門職8名と学識経験者2名が参加し修正デルファイ法により指標案を洗練した.調査はオンラインによる専門家会議を2回,事前調査2回と3回目調査を郵送またはメールで実施し,項目の内容的妥当性を5段階で評価してもらい,自由記述で修正意見を求めた.

    [結果]参加者10名全員が3回の調査すべてに回答し,3回目の調査で全項目の同意率が80%を超えた.3専門職共通および各専門職・管理者の役割行動指標を作成した.

    [考察]指標は3専門職の協働を促すことに資する構造を有し,迅速に緊急性の判断を行い,高齢者が適切にサービス利用できるように意思決定支援を行う目安となると考える.

  • 伊藤 将子, 安田 孝, 橋爪 祐美
    原稿種別: 原著
    2025 年29 巻1 号 p. 69-79
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,特定行為業務従事者の介護職における喀痰吸引等の職務継続意向の現状把握と職務継続意向を高めるフォローアップ体制について検討することを目的とした.全国の登録喀痰吸引等事業者及び登録研修機関から計2,800事業所を系統抽出し,特定行為業務従事者の介護職と指導看護職を対象に行った無記名式質問紙調査を量的・質的に分析した.介護職の喀痰吸引等の職務継続意向は,定期的に手技指導を受けた場合に高く,吸引実施時の心理的負担の増加によって低下した.また介護職は夜間及び急変時の吸引,呼吸状態が不安定な利用者の看取りへの不安も感じており,ヒヤリハット等事例や緊急時対応への研修ニーズが高かった.介護職の喀痰吸引等の職務継続意向を高めるためには,定期的な手技指導や吸引実施時の心理的負担の軽減に資するフォローアップ研修とその研修への加算,介護職の喀痰吸引等実施に対する介護報酬新設の必要性が示唆された.

研究報告
  • 仁科 祐子, 谷垣 靜子, 長江 弘子, 岡田 麻里
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 80-88
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は訪問看護へ移行し2年以上経験した看護師における自律的判断の様相を明らかにすることである.訪問看護師8名に半構造的面接を行い質的記述的に分析した.結果,訪問看護師の自律的判断は【身体と生活について利用者と共に悩み考えながら折り合いをつける】【体調変化時は身体状態を推論し今できる最善の対応を決定する】という利用者の身体と生活の両方を護り,折り合いをつける判断をしつつ,他の看護師や多職種と主体的に情報共有し,最善の判断を導くことであった.これらの判断には,【利用者の生活状況を詳細に知る】【利用者の思い・生活・人生を重視する】ことが必要であり,【批判的に省察し判断材料となる経験知を増やす】ことは自律的判断力向上のために重要であった.訪問看護師の自律的判断は,身体と生活の折り合いについて利用者と共に悩み考えながら,他の看護師や多職種と主体的に情報共有し,最善の判断を導くことであった.

  • 橋本 直子, 松井 妙子
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 89-96
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    高齢者が最期まで自分らしく暮らし続けるために,終末期の意思決定支援は重要である.本研究は,過疎地域で生活する単独世帯の非がん高齢者が,終末期の意向を表出するために,介護支援専門員(以下CM)が支援を行う過程で感じる困難を明らかにし,支援の質向上に向けた方策の考察を目的とした.CM8名に半構造化面接を行い分析した.CMの感じる困難は,【意思表明の準備が整っていない利用者への意向確認】【利用者や家族との信頼関係の悪化への懸念】【終末期支援における不確かなCMの役割】【生活状況から実現困難と予測できる利用者の意向】【死を遠ざける地域文化】などの9カテゴリを抽出した.CMの支援の質向上には,利用者等が最期の迎え方をイメージできる情報提供方法の習得,在宅ケア専門職との終末期ケアの経験の共有と各職種が担う役割の理解を深めること,死について語りやすい地域環境の整備が必要と考える.

  • 飯野 愛稀, 柏瀬 淳, 牛久保 美津子
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 97-104
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    [目的]コロナ禍3年間を振り返り,訪問看護管理者が体験した困難や対処を明らかにすることを目的とした.

    [研究方法]訪問看護管理者6名を対象に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    [結果]訪問看護管理者の困難と対処は【看護師自身の体調管理の心がけ】【感染に関する知識習得・伝達の努力】【感染拡大防止のための多職種・他事業所連携の苦労】【訪問看護継続のための努力】【コロナ感染対策を融合した訪問看護方法の考案の苦労】【コロナ感染に対し不安や恐怖をもつ利用者への対応の苦労】【コロナ禍での負担を考慮した職員・業務管理に関する努力】【職員への精神的フォローの苦慮】の8カテゴリが明らかとなった.

    [結論]訪問看護管理者は未知の感染症へ不安を抱きながらも知識習得や感染対策に努め,職員の精神的サポートを実施しながら困難な訪問看護継続を維持していた.ステーション同士での助け合いや地域関係者間での検討の必要性が示唆された.

  • 内橋 恵
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 105-112
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    [目的]NST専門療法士の資格を保持する訪問看護師(以下NST訪問看護師)の経口摂取している在宅療養高齢者の低栄養を改善する食支援を明らかにする.

    [方法]NST訪問看護師5名に半構造化インタビューを実施し質的記述的に分析した.

    [結果]NST訪問看護師の食支援として【低栄養を念頭においてスクリーニングする】【栄養不足を摂食嚥下機能から探る】【懐事情を踏まえてアミノ酸スコアが良い食材を提案する】【低栄養改善に向けたONSを積極的に取り入れる】【低栄養改善を身体と生活の両面から判断する】【他の職種に低栄養改善に必要なケアを働きかける】という実践を行っていた.

    [考察]NST訪問看護師は,在宅療養高齢者の食支援として高齢者・家族や他の職種にも働きかけ,問題の焦点化および在宅生活の維持・継続を図っていた.その際,NSTとしての専門性を発揮して,食べることだけでなく,他の職種を巻き込んで食支援の時間を確保するなど食支援全般に取り組んでいることが示唆された.

  • 晏 祺君, 田村 直子, 牛久保 美津子
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 113-122
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    中国語の対応可能なデイサービス(中国語デイ)を利用しながら在宅生活を送る中国帰国者の現在と今後の在宅生活の思いを明らかにすることを目的に,中国帰国者11名を対象にして半構造化面接調査を実施した.対象者の年齢は78歳〜96歳,男性4名,女性7名,平均在日年数は約27年であった.現在の生活を送る思いは,【中国語デイに満足している】,【医療給付などには満足する一方で,経済的な苦労がある】【中国に感謝しながら過ごしている】【言葉の障害により家庭や社会生活から孤立している】など7カテゴリが抽出された.今後の生活の思いは,【中国語が対応可能な老人ホームに入りたい】,【このまま在宅で暮らし続けたい】,【死ぬ前に一度でも中国に帰りたい】,【世界平和を願いたい】の4カテゴリが抽出された.安心感を高める介護支援の充実や満たされない思いへの対応など,多側面の生活支援が必要である.

  • 中村 美穂子, 岡田 麻里, 岩﨑 玲奈, 山下 清香, 小野 順子, 尾形 由起子
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 123-131
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    終末期がん患者の退院支援における退院調整看護師と病棟看護師との連携促進因子を明らかにすることを目的とし,退院調整看護師に自記式質問紙調査を実施した.

    探索的因子分析の結果【がん患者の支援時の状況と患者・家族の思いを共有する】【がん患者の退院後の新たな生活を整えるために必要な情報を共有する】【がん患者の病の軌跡とその経過による周囲への影響を共有する】【がん患者・家族の入院前の暮らしを共有する】【がん患者の退院支援に必要なケアの組み立てや多職種との調整について役割を分担する】の5因子を得た.Cronbachのα係数は0.95であった.基準関連妥当性は退院支援看護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度とPearsonの積率相関係数を算出し,因子全体r=0.52,各因子r=0.31~0.51であった(p<.001).本因子は連携促進因子として一定の信頼性,妥当性を有すと考えられた.

  • 原口 道子, 松田 千春, 板垣 ゆみ, 小倉 朗子, 中山 優季
    原稿種別: 研究報告
    2025 年29 巻1 号 p. 132-142
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/25
    ジャーナル フリー

    [目的]病院看護師と訪問看護師の看護連携による在宅療養支援指標を開発する.

    [方法]病院看護師と訪問看護師の面接調査から連携支援項目案を作成し,質問紙調査で信頼性・妥当性を検討した.

    [結果]324件(病院看護師206件,訪問看護師118件)の探索的因子分析より,【在宅療養支援計画の検討】【在宅療養生活を想定した病状・病識の情報共有】【在宅療養を見通した療養方針の共有】【在宅支援体制の検討】【在宅医療管理の引継ぎ】の5因子25項目(累積寄与率64.3%)を抽出した.Cronbachのα係数0.912,適合度GFI=0.869,AGFI=0.839,TLI=0.925,CFI=0.934,RMSEA=0.067であった.

    [結論]適合度の一部に課題はあるが妥当性は許容範囲であり,高い信頼性を確認した.病院看護師と訪問看護師の看護連携による支援指標として活用可能性が示唆された.

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