日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
1 巻, 1 号
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目次
巻頭言
焦点1
焦点2:在宅ケアにおけるケアマネジメント・ケアプラン一公的介護保険制度の実施に向けて―
原著論文
  • 藤谷 久美子, 島内 節, 佐藤 美穂子
    原稿種別: 原著
    1998 年1 巻1 号 p. 36-45
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    24時間ケア必要者のニーズの種類・量・構造を明らかにする目的で,平成8年8月に全国調査を実施した.1,398か所の訪問看護ステーションに質問紙を郵送,734か所から返送された.全利用者30,700名のうちステーション管理者により2,167名(7.1%)が24時間ケアが必要と判断され,1,658名(有効回答76.5%)の情報を分析した.

    1)夜間・早朝・休日の訪問ニーズの種類は,設定した50項目すべてに出現しており,出現率が高かったニーズは医療的処置,おむつ交換,バイタルサインのチェック,全身状態の観察などであった.ニーズに対する訪問実施率は全体で53.9%であった.

    2)夜間・早朝・休日の訪問ニーズの分類は,クラスター分析により,A:病状観察ニーズ,B:医療的ケアニーズ,C:家事援助・身辺自立ニーズ,D:身辺ケアニーズの4つのニーズタイプに分類された.

    AとBのニーズタイプ領域がCとDよりも夜間・早朝・休日の訪問実施割合が高く,優先されてケアが実施されていた.

    3)ニーズの種類によって計画的訪問・臨時訪問・電話の対応方法の相違がみられた.また,訪問が必要な時間帯は平日準夜帯と休日で全体の約70%を占めていたので,まずこの時間帯でのケア体制が急がれる.夜間・早朝・休日の訪問を実施すべき職種としては,看護職と介護職の関与する割合が93.7%を占めていた.

  • 岡本 玲子, 髙﨑 絹子
    原稿種別: 原著
    1998 年1 巻1 号 p. 46-55
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,保健婦活動におけるケアマネジメント過程の質を構成する要素を明らかにすることである.熟練保健婦を対象に,項目収集と分類のための面接調査と,因子探索のための郵送による質問紙調査を実施した.その結果,過程の質を構成する要素は,6つの基本的過程と4つの局面に分類された.因子分析では,その分類によく合致する因子が抽出され,構成概念妥当性が支持された.因子名は,(1)総合的モニタリングと質的改善,(2)チームによる協議,(3)ケアマネージャーの判断,(4)適正な連結,(5)利用者支援とニーズ把握,である.また,過程を構成する要素の中で,保健婦が優先度の高い活動と認知している部分は,順に(5),(1),(3)の部分であることが確認された.

  • 小西 かおる, 村嶋 幸代, 金川 克子
    原稿種別: 原著
    1998 年1 巻1 号 p. 56-66
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,リハビリテーション過程にある脳血管疾患患者が,障害をかかえ生活に対処していく中で,実際に認知した問題点を具体的に明らかにするとともに,援助のあり方を検討することを目的とした.首都圏の1リハビリテーション施設入所中の脳血管疾患による機能障害を持つ者25名に対して,半構造化質問紙を用いて面接調査を行い,Lazarusのストレス−コーピング理論を概念枠組として質的に分析した.その結果,「日常生活行動の困難」,「行動の制限」,「援助の必要量」,「状況変化の容認」,「強いられた依存」,「他者からの評価」,「不明確な情報」,「リスクとなる疾患」,「情緒の不安定」の9つの問題点が明らかになった.このうち,「強いられた依存」とは,遠慮なく依存できる関係を築くことは大切であるが,「強いられる」という概念のあることが自立を促す鍵として働いていることを示した概念であり,従来は指摘されていなかった.今後,この点を考慮した援助の重要性が示唆された.

研究報告
  • 高木 照幸
    原稿種別: 研究報告
    1998 年1 巻1 号 p. 67-71
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    自験例で在宅での看取りを援助できた例を検討し,在宅ターミナルケアが成立する条件を検討した.当院在宅医療患者のうち,1994年4月~1996年8月に死亡した36人を対象とし,自宅死例(10例)と病院死例(26例)の間で背景因子を検討した.自宅死例では,自宅死の意思表明率が高く,介護者が複数ある点が病院死と異なっていた.ホームヘルパーはターミナルケアのマンパワーになり得ていなかった.ただし,自宅死でも半数は本人の意思表明を得る機会がないまま,家族の希望によるものであった.癌患者だけの検討では,自宅死が選択できなかったのは,介護者が単独以下である点が大きかった.在宅ターミナルケアにあたっては,早い時期からの本人の意思を確認すること,介護の量的確保が重要であると考えられた.24時間巡回型ヘルパー等の福祉サービスの充実に期待するところが大きい.

  • 深谷 安子, 岡部 明子, 塚本 恵
    原稿種別: 研究報告
    1998 年1 巻1 号 p. 72-78
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    滞在型訪問看護において訪問対象者に供給される看護量が,どのような要因によって影響されているかを明らかにするために,訪問対象者や介護者の看護ニーズ,看護者の特性,訪問看護機関の条件の点から検討した.研究対象はステーション3施設,病院3施設,自治体4施設の合計210名の訪問看護対象者に携った看護職とした.その結果,訪問頻度は対象者の病状や装着器具の管理の面から,滞在時問は医療処置の内容,介護者の介護意欲,看護職1人あたりの1日訪問件数,経営者からの1日訪問件数の増加要請などによって影響を受けていた.またこのような要請がある場合の滞在時間は,看護職が独自の判断をしている場合より30分も短くなっていた.

資料
  • 仲谷 美江, 平島 保彦, 大坪 道夫
    原稿種別: 資料
    1998 年1 巻1 号 p. 79-88
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    近い将来,介護サービスの利用方法が多様化し,利用者が直接サービスを選ぶ時代が来ると予測される.そこで,専門知識のない人でも概略的なサービスプランがたてられるようなサービス計画支援システムを開発した.

    本システムは,利用者が要介護者/介護者/住居の状況に関する約30の質問に回答すると,問題領域と援助方針を判定し,適切な援助内容をアドバイスする.利用者が援助内容を選択して週間スケジュール上に配置すると,システムはその援助内容を満足するサービス提供機関の組合せを提示する.この判定メカニズムは人工知能技術を応用したもので,専門家の事例に基づいて推論している.サービス会社の組合せには遺伝アルゴリズムを用い,予算などの条件のもとで最適な組合せを計算する.

    本システムはネットワーク上で稼働し,時間や場所にかかわりなく手軽に試せるので,情報だけ欲しいという人,プライバシーが気になる人,多忙な人に有効である.

実践報告
  • 福澤 陽一郎, 中谷 久恵, 栗谷 とし子
    原稿種別: 実践報告
    1998 年1 巻1 号 p. 89-94
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅ケアを看護学生がいきいきと学ぶためには,「知識伝授型教育」でなく「学生の主体的な教育への参加」「学生の主体的な問題発見・問題解決」を目指したカリキュラムが求められる.

    看護学科2年生の公衆衛生学・保健医療制度の科目に導入した学生主体のスチューデント・レクチャーで,学生は「在宅ケアが可能になるKeyは」(30分間の学生による講義),「在宅ケアを支える鍵は−患者と家族の求める地域づくり」(パネルディスカッション)に取り組み,その成果と課題についてまとめた.

    学生は在宅ケアを単なる知識としてでなく自らの問題として,主体的に地域に出かけ,①患者・家族のニーズ,②多職種間の連携,③制度・施設の現状と課題,④ボランティア活動も含めた地域づくりの必要性を学び,在宅ケアにおける看護の基本的能力形成のきっかけとなった.

    今後の課題としては,①担当の学生の正規の時間外の負担が大きい,②学生相互間の討議が不十分であること,③在宅ケアに関連する科目間の総合的な教育評価があげられる.

  • 冨田 昌吾, 生島 祥江, 近森 栄子
    原稿種別: 実践報告
    1998 年1 巻1 号 p. 95-100
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    近年の施設から在宅への流れは,確実に進行してきている.しかし,現状の在宅ケアの大部分を支えているのは,専門家ではなく,家族や友人,ボランティアである.また,ボランティア活動への意識の高まりと同時に,在宅ケアの中でボランティアの重要性がいわれている.では,実際にはボランティアの役割は何で,何を必要とされているのだろうか.

    この研究では,実際の地域でボランティアがサービスを担っている現状を,約20年間在宅ケアを中心に活動を行ってきた寝屋川市民たすけあいの会の活動事例から検討をする.この事例検討から,実際にボランティアが一見すると補充的・代替的なサービスの提供を行いながら,その実,他のサービスでは担えないサービスを提供していることがわかる.また,在宅ケアにボランティアがかかわっていく場合,ケースカンファレンスなどボランティアへのサポートやケアマネジメントのシステムの確立が不可欠であることが示される.

  • 近藤 福次, 浦井 悦子, 稲田 美根子, 三室 明美, 中島 晴美, 伊藤 恭子, 羽田 芳子, 内田 克紀, 赤座 英之, 小磯 謙吉
    原稿種別: 実践報告
    1998 年1 巻1 号 p. 101-108
    発行日: 1998年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    目的:QOLダイヤグラムを用いて,患者本人の痛みや身体状況のほかに,家族の疲労度や満足度等を評価・検討した.

    対象と方法:当院で1988年4月よりケアした症例は現在までに165例,そのうち癌患者は50例である.その中で当科で担当した癌患者は17例で,いずれもターミナルケアである.これらのうち7症例にQOLダイヤグラムを用いて,患者本人の痛みや身体状況のほかに,家族の疲労度や満足度等を5段階で評価・検討した.

    結果:痛みは5例にコントロール可能であったが,食事や全身倦怠感は7例とも増悪傾向がみられた.一方家族サイドでは,疲労度について3例の家族に悪化がみられたが,受容度や満足度については7家族ともおおむね得られていた.

    結論:“在宅”でもがん治療・ケアは対応可能なことが示唆された.今後は保健婦・ホームヘルパー等も参加した保健・福祉・行政部門との連携(ケアシステム,ケアマネジメント)による患者・家族のサポートの中で,在宅ケアを進めていきたい.

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