魚類学雑誌
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40 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 土井 敦, 多紀 保彦
    1994 年 40 巻 4 号 p. 405-412
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    タイ北西部サルウィン河水系パーイ川から採集された3個体の標本にもとづいて, コイ科の新種Hampala salweenensisを記載した.本種はHampala属の他種から全側線鱗数26-27枚, 体側の2つの黒斑の存在, 尾鰭上下葉端の黒色バンドの存在の組合せにより識別される.
  • Josefa D. Tan-Fermin, Luis Maria B. Garcia, Antonio R. Castillo
    1994 年 40 巻 4 号 p. 413-420
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    Epinephelus suillusの2歳の幼魚 (平均体重12kg) を各8-9尾の4群に分け, 0.5-5.0mg/kg体重の17α-メチルテストステロン (MT) を15日毎に筋肉内に注射した.15日毎に生殖腺生検と腹部搾出試験を行ない, 6および12回の注射の後に魚を屠殺した.実験開始時の対照魚は, 一次卵母細胞より成る末熟な卵巣を有していた.MTの6回注射後には, 調べたすべての魚の生殖腺に体細胞と生殖原細胞の増殖が観察され, 最小体重1.2kgの魚の生殖腺には, 一次卵母細胞退行と造精細胞の存在が認められた.0.5および1.0mgのMTを投与された大型魚 (体重1.5kg) は, MTの積算投与量がそれぞれ5および12mgに達した後に放精をみせた.しかし, 同じ処理郡の小型魚の生殖腺は, 6回注射後 (0.7-1.0kg) および12回注射後 (0.6-1.3kg) にも一次卵母細胞と生殖原細胞を有するにすぎなかった.対照的に, 5mgのMTで処理されたすべての魚は, 6回注射後 (体重1.2-1.6kg) および12回注射後 (体重0.8kg) には活発な精子形成を営む精巣を有していた.E. suillus幼魚における雌から雄への性転換の誘導は, おそらく年齢および体重と相乗的になされるらしい.
  • 木村 清志, 伍 漢森
    1994 年 40 巻 4 号 p. 421-425
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    中国南部広東省および広西牡族自治区の河川下流部や河口域で採集された16個体 (体長22.0-49.0mm) に基づき, 新属新種のハゼ科魚類Polyspondylogobius sinensis (新中国名: 多椎蝦虎魚属中華多椎蝦虎魚) を記載した.本属は細長い体をもつこと, 円く突出した吻をもつこと, 前鼻孔が管状に伸長することなど, ヒモハゼ属と類似しているが, 第1背鰭と第2背鰭が隣接していること, 第2背鰭軟条数が31-34本であること, 背鰭担鰭骨式が14-21あるいは15-21であること, 轡鰭軟条数が18-20本であること, 脊椎骨数が52-55個であること, および体に鱗がないことなどによって他のハゼ科魚類と明瞭に区別できる.なお, 本属の背鰭担鰭骨式は特異的であり, また脊椎骨数はハゼ科の中で最も多い.
  • Maurice Kottelat
    1994 年 40 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ミミズ型の体形で知られるVaillantella (Balitoridae: フクドジョウ亜科) の未記載種を東部ボルネオ・マハカム川水系より6個体採集し, V.cinnamomeaとして記載した.新種は同族のV.euepipteraV.maassiと臀鰭軟条数91/2, 脊椎骨数34-36+16-17=51-52, 薄い茶色の体色, 吻端から鰓蓋に及ぶ1本の黒色帯, 体前部の不明瞭な2本の縦帯を合わせ持っことにより区別できる.
  • 宮 正樹
    1994 年 40 巻 4 号 p. 433-440
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1968年から1988年にかけて相模湾で行われた134回の中・深層傾斜曳き採集により, 計441個体の主として仔魚からなる5種のソコイワシ科魚類 (Bathylagus ochotensis, B. pacificus, B. mil-leri, B. bericoidesおよびLeuroglossus schmidii) が採集された.これらのうち, B. ochotensisが最も卓越し (n=372), B. pacificus (n=35), B. milleri (n=18), L. schmidti (n=14), B. bericoides (n=2) がそれに続いた.いずれの種においても仔魚の出現の季節性は明瞭で, B. ochotensisでは11月から4月にかけて比較的個体数が多く, 他の4種でもB. pacificusでは2-5月に, B. mil-leriでは11-3月に, L. schmidtiでは12-1月に, またB. bericoidesでは3月に出現が限られていた.このような仔魚の季節的出現パターンは, それぞれの種の生殖周期を反映したものと考えられた.2種の深層種 (B. pacificusB. milleri) では, 仔魚とともに成魚も採集されたが, その成熟個体の出現時期 (7-12月) は仔魚の出現時期 (Uづ月) とほとんど重複せず, またこれら2種の稚魚 (27-48mmSL) と成魚 (134-207mmSL) のあいだの未成魚はまつたく採集されなかった.この成熟個体の出現の顕著な季節性ならびに幼魚と成魚のあいだの大きなサイズのギャップは, これら2種が成熟するまでの過程で, ネットの届かない深海 (>1,200-1,300m) か, あるいは湾外への移動のような, なんらかの個体発生的回遊を行っているために生じることが示唆された.
  • 片野 修
    1994 年 40 巻 4 号 p. 441-449
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    京都市の二河川でカワムツとオイカワが同所的に生息し, 同種内と同様に二種間でも攻撃行動を行った.両種において大型個体は小型個体より頻繁に表層部を利用し, 種内及び種間の干渉において優位であった.カワムツとオイカワの両種とも雑食性であったが, オイカワの方がカワムツよりも付着藻類を摂食する頻度が高かった.両種の摂餌場所には大きな違いはなく, その周辺で多くの種間攻撃が起こった.両種とも攻撃的干渉と付着藻類摂餌行動の頻度との間に有意な相関関係がみとめられた.両種の個体の行動圏は多くの場合互いに重複していたが, 同種及び他種に対して縄ばりが形成されることも観察された.
  • 町田 吉彦
    1994 年 40 巻 4 号 p. 451-464
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フサイタチウオ科のリュウキュウイタチウオ属 (Dinematich-thys) は, 尾鰭が背鰭と臀鰭に連続せず, 前鼻孔の位置が著しく高いことを特徴とする.本報告で, 本属の3新種D. indicus, D. randall, D. megasomaを記載し, リュウキュウイタチウオD. riukiuensis Aoyagi, 1952を再記載した.これらの種および既知種のD. iluocoeteoides, D. dasyrhynchus, D. minyommaのそれぞれは, 主上顎骨の後端が露出するかどうか, 後鼻孔の形態眼径, 縦列鱗数, 頭部の被鱗状態と触毛の有無, 腹椎骨数, 第10番目の前鱈蓋下顎管孔の有無により識別可能である.
  • 枝 浩樹, 藤原 隆典, 田北 徹
    1994 年 40 巻 4 号 p. 465-473
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    トビヌメリを水槽内で産卵させ, 卵, 卵内発生と仔稚魚の観察を行った.卵は直径0.64-0.72mmで, その形態はこれまでに知られている同属の卵によく似ている.水温23.3-23.6℃で受精後約19時間でふ化した.ふ化直後の仔魚は平均全長1.18±0.026mmで, 楕円形の大きな卵黄をもつ.ふ化後1日目の仔魚は背・腹側膜鰭上に泡状組織と棘状突起を持つことが特徴的である.卵黄はふ化6日後に完全に吸収された.脊索の屈曲は全長4.42mmで開始し, 5.7mmで完了した.底生生活への移行は5.7mmの稚魚で観察され, 12.8mmで完了した.相対成長は2mm, 4.5-6.5mmと11-13mmに大きく変化する.すなわち, 各々の変化は仔魚後期, 稚魚期に達する時期および成魚の体型へ移行する時期にあたる.本種仔稚魚の形態として報告された既往の記載は海から採集した卵の飼育によるもので, 本研究の結果とかなり食い違っており, 卵を誤同定している可能性が考えられた.
  • 岩槻 幸雄, 木村 清志
    1994 年 40 巻 4 号 p. 475-477
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    先島諸島の西表島から2個体のワキグロアカフエダイ(新称)(Lutjanus timorensis)が採集された.本種の出現は, 日本沿岸水域からは, 初めての記録であり, 本種の最も北限の記録になる.本種は, 胸鰭の脇および基部が黒色を呈し, 背鰭, 轡鰭及び尾鰭軟条部縁辺が非常に尖ることと縁辺の黒い幅が明瞭に広いことにより, 同属の類似する赤いフエダイ類と容易に区別される
  • Douglas J. Long
    1994 年 40 巻 4 号 p. 478-481
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    マゼラン海峡 (南緯53°以南) において, 1966年春に, 5個体のカスミザメ属 (Centroscyllium) 魚類が採集された.これらの標本はいずれも未成熟 (全長132-320mmTL) であったが, 背鰭の位置, 色彩などで, C. nigrumの標徴に一致する.東部太平洋海域における同種の分布範囲は南緯33°のチリ中部より北方とされており, さらに南方に2300余km広い範囲に同種が棲息するものと考えられる.これらの個体から得られC. nigrumの生物学的な知見についてもあわせて報告した.
  • Russell Y. Ito, Donald R. Hawn, Bruce B. Collette
    1994 年 40 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    尾叉長且755mm, 体重61kgのガストロGasterochisma melampusがハワイ諸島北方で延縄によって採集された.この個体は第1背鰭棘が15本 (通常17-18本) と少なく, 第1背鰭基底長も通常の個体より短い.この状態は第1背鰭に損傷を受けたために生じたと考えられる.その他の特徴は, 本種の通常の分布範囲である南半球で採集された個体と差異を示さなかった.本種の腹鰭の相対長は成長によって大きく変化する.幼魚では腹鰭は尾叉長の30%の長さで, 尾叉長100-600mmの個体では腹鰭は成長に比例して大きくなり, 尾叉長700mmになると腹鰭の発達が止まる.採集された個体の腹鰭は, これまでに採集された尾叉長800-1200mmの個体とほぼ同じ長さであった.
  • 篠原 現人, 尼岡 邦夫
    1994 年 40 巻 4 号 p. 487-490
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    北海道室蘭沖から得られ, 完模式標本以外に採集例のないヤセアイナメStellistius katsukii Jordan et Tanaka, 1927と同海域で普通に採集されるホッケPleurogrammus azonus Jordan et Metz, 1913との関係について主に外部形態に基づき調査した.両種の完模式標本と日本各地から得た23個体のホッケの標本を比較したところ, 両者に差異は認められなかった.従って, ヤセアイナメはホッケのシノニムであり, ヤセアイナメ1種のみを含むヤセアイナメ属Stellistiusもホッケ属Pleurogmmmusのシノニムである.また, 背鰭第1鰭条が長く, 後続のものとほとんど同じであるというヤセアイナメ属の特徴は模式標本の再調査では認あられず, Jordan and Tanaka (1927) の観察が誤りであったと判断された.
  • Benjamin J. Gonzales, 岡村 収, 中村 克彦, 宮原 一
    1994 年 40 巻 4 号 p. 491-494
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    ササウシノシタ科魚類, ワモンウシノシタSynaptura annularisが1993年3月に, 高知人学調査船「豊旗丸」のビームトロールによって土佐湾の水深150mの砂泥底から採集された.本種は左右の胸鰭があり, 尾鰭が背鰭及び臀鰭と鰭膜で連なること, 有眼側に横帯がないことで明らかにSynapturaミナミシマウシノシタ属に属する.また, 体が細長く, 有眼側に大きな6個の輪状斑があること, 胸鰭が小さく, その上部が鰓条膜とつながること, 胸鰭条が分枝しないこと及び鱗基部の放射状溝条が4-7本であることによって特徴づけられる.なお, 本種はオーストラリアからフィリピン諸島を経て台湾までの分布が知られており, 日本からの報告はこれが初めてである
  • 桑原 雅之, 井口 恵一朗
    1994 年 40 巻 4 号 p. 495-497
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 邦夫
    1994 年 40 巻 4 号 p. 498-499
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Trewavas (1977) はBloch (1793) によりインドから記載されたニベ科魚類Johnius aneusのレクトタイフ.(ZMB8798) を指定し, 本種をコニベ属 (アブラ、グチ亜属) のJojniuss (Johnieops) osseus (Day, 1876) のシニア・シノニムと考えた.レクトタイプを検討した結果, この標本はニベ属のNibea maculata (Bloch etSchneider, 1801) であることが判明した.さらに, J. aneusの原記載とレクトタイプを比較をしたところ, 多くの形質で不一致が認められた.原記載は現在Pennohia macropalmus (Bleeker, 1850) として知られている種とよく一致した.したがって, J.aneusP. macrophthalmusのシニア・シノニムであり, P. anea (Bloch) が有効名となる.また本種の「レクトタイプ」はシンタイプに基づかないので, 命名規約上無効である.
  • 小早川 みどり, 奥山 茂美
    1994 年 40 巻 4 号 p. 500-503
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    三重県上野市大山田村畑でナマズ属魚類の頭骨の一部, 擬鎖骨, 前主上顎骨の歯板, 胸鰭の棘などの化石が採集された.それらは採集層準と採集地域が極めて限られており, 体の同一部位においては同じ特徴を示し, 現生する琵琶湖水系特産のビワコオオナマズの特徴と一致することから同一種のものとみなされ, ビワコオオナマズの化石と同定された.産出層準が古琵琶湖の堆積物の最下層部であることから, ビワコオオナマズは, 現存する琵琶湖特産のコイ科魚類の多くと異なり, 琵琶湖の歴史の初期に形態的に分化を遂げており, 現在まで生き残った遺存種であることが示唆された.
  • 竹下 直彦, 木村 清朗
    1994 年 40 巻 4 号 p. 504-508
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ギバチPseudobagrus aurantiacusは関東以北の本州と九州に分かれて分布する.これら両地域で採集されたものの間には, 染色体数, アイソザイムパターン, 懸垂骨などに違いが認められ, 遺伝的差異は大きいと考えられている.関東以北産ギバチの卵および仔稚魚の記載はあるが, 九州産についてはなされていない.そこで, 筑後川のギバチを用いて人工授精を行い, 卵内発生と仔稚魚の形態を記載した.受精卵は直径2.4-2.7mmで, 表面がゼリー状の物質で覆われ強い粘着力をもつ.水温18-23℃において75-100時間で孵化した.孵化直後の仔魚の全長は5.3-5.5mmで, 筋節数は15-17+29-30=45-47, 1対の上顎鬚と下顎鬚を備えていた.孵化後5日で全長8.6-9.0mmになり, 脊索の屈曲が始まった.孵化後7日で全長10.2-10.7mmになり, 卵黄をほぼ吸収し終えた.鰭条総数は全長13.5-14.4mmで定数に達した.全長16.0-17.4mmで黄色帯が形成され始め, 縄張りをもつ個体が出現し始めた.全長21.7-23.1mmで脂鰭と尾鰭が分離した.
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