魚類学雑誌
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35 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 町田 吉彦, 塩垣 優
    1988 年 35 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    青森県沖の太平洋の水深724-726mから, 1個体のオニイワシ属 (新称) 魚類がトロールで採集された.本種は側線鱗数が64枚 (既知種では55枚以下), 脊椎骨数が35+23=58個 (27-30+18-21=47-50個) と多いことで既知種と区別されたので, 新種Leptochilichthys microlepisオニイワシとして記載し, 本属の種の検索表を提示した.既知種では背鰭基底に対する臀鰭始部の相対位置が異なり, 重要な分類形質とされている.本模式標本の臀鰭始部は背鰭基底の後端下にあり, 既知種とわずかに異なっているが, 測定値の差が僅少であり, この形質で本種を既知種と区別するのは困難である.太平洋ではL.agassiziiがアメリカの赤道域から北緯38°にかけて, また, L.pinguisが西部熱帯域から知られている.本種は西部太平洋域において後者より北方に産し, 後者の生息水深 (800-1,400m) とほぼ同様の深度に生息しているのかもしれない.
  • G. David Johnson
    1988 年 35 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    東シナ海産の7個体 (脊索長4.2mm-標準体長7.2mm) にもとづき, アラ仔魚の形態を記載した.これらの個体は1980-1984年の10-11月に採集された.仔魚の形態的諸特徴の中でも, 伸長した第3背鰭棘と発達中の前部背鰭担鰭骨要素の配置はアラ属がハタ亜科に所属することを確証するものである.ハタ亜科内ではアラ仔魚はマハタ族仔魚と最も類似するが, 背・腹鰭棘および前鯉蓋棘上に鋸歯が発達しないなどの点で異なっている.外接群比較によって形質の極性を決めて, 形質分析をおこなったところ, アラ属はマハタ族の姉妹群とするよりも, むしろハタ亜科の他の全族の姉妹群と仮定するのが, 最も節減の原則にかなうことが示唆された.
  • 木村 清志, 津本 欣吾, 森 浩一郎
    1988 年 35 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水槽内で自然産卵させたアナハゼ卵を飼育し, 卵内発生および孵化仔魚から若魚までの外部形態の形成過程を観察した.本種は体内受精を行い, 卵は産出直前に受精する.卵は球形の沈性凝集卵で, 卵径1.66-1.82mm, 卵黄は淡黄緑色から淡青緑色を呈し, 多数の油球が存在する.水温約16℃で受精13-16日後に孵化する, 孵化仔魚は全長6.5-7.3mm, 黄色素胞が存在する.全長約7.5mmで卵黄が完全に吸収される.脊索末端の屈曲は全長約10mmで開始し, 約14mmで終了する.全長16mm以上になると, 各鰭条数が定歎に達し, 稚魚になる.側線は全長44mm以上で完成する.アサヒアナハゼの仔稚魚とは黄色素胞や黒色素胞の分布状態によってかなり明瞭に区別できる.また, これら2種やアヤアナハゼおよびオビアナハゼの稚魚はそれぞれ主として黒色素胞の分布様式によって明瞭に識別できる.
  • 木下 泉, 藤田 真二
    1988 年 35 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    土佐湾の砕波帯において1981年5月から1984年6月の間に行われた小型曳網を用いた採集で, ニベ仔稚魚, 合計211尾 (4.0-19.0mm SL) が得られた, 本種仔稚魚はニベ科のものの一般的な形態的特徴を持ちつつも, 黒色素胞の分布様式と主上顎骨先端の棘により識別できる.本種仔稚魚は, 土佐湾に面する3海岸の内, 手結の砕波帯にのみ, 5月中旬から8月中旬にかけて出現した.出現時の水温・塩分の範囲は, 各々21.7-29.5℃・24.5-31.3‰であった.本種仔稚魚は, 砕波帯に微小ゴミが大量に浮遊する時に豊漁であった.過去, 土佐湾の沿岸域や浅海域では, 本種仔稚魚は全く報告されておらず, 砕波帯およびその付近で微小ゴミに混入しながら生息しているようである.
  • Hin-Kiu Mok, Stephen Chang-Ming Tsoi, Sin-Che Lee
    1988 年 35 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    真骨類12種の乳酸脱水素酵素 (LDH) を電気泳動法により分析した.これらの魚種におけるLDH-C遺伝子座の発現組織, サブユニットAおよびBの結合性について論議した.サバヒーでは, LDH-C遺伝子座は肝臓で特異的に発現し, コイ目との近縁性が示唆された.サバヒーのA-Bポリマーが等間隔の4本バンドとして発現することは等間隔の5本バンドを形成するコイ目と異なる特徴である.また, イットウダイ科魚類のC4バンドは組織特異性が弱いという事実は, これらがキンメダイ目のなかで原始的位置関係にあることを示唆している.しかし, C4バンドの出現状態はギンメダイ科とキンメダイ目のその他のグループの系統的位置関係を解明するための強力な証拠を与えなかった.
  • Maria R. Menezes, 谷口 順彦
    1988 年 35 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    日本産ニベ科魚類, ニベ, コイチ, シログチ, オオニベ, クログチおよびフーセイの6種について, 14種類のアイソザイムの電気泳動像を検出し, それらの間の遺伝的分化と系統関係を調べた.21遺伝子座の対立遺伝子頻度を推定し, 各魚種間の遺伝的距離 (D) を求めた.D値は比較する2種間の分類学的位置関係が遠くなるほど大きくなった.遺伝標識にもとづいて推定された類縁関係は内部および外部形態にもとづく結果とよく一致した.ニベ科魚類はD値が1.41のところで, 大きく2群に分けられた.
  • 佐藤 光雄, 片桐 展子
    1988 年 35 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ナマズの小孔器は, 感覚細胞と支持要素から構成されている.後者には微細構造の特徴と小孔器内における位置によって, 顆粒支持細胞, 非顆粒支持細胞, 外套細胞, 管壁細胞の4種が識別された.顆粒と非顆粒の2種の支持細胞がみられたことは, 注目されるべきである.顆粒支持細胞は頂部細胞質に多量の粘液滴を含み, 瓶内の微毛状物の分泌に関与するらしい.一方, 非顆粒支持細胞は, 頂部細胞質に少量の粘液滴と多数のトノフィラメントをもち, 常に感覚細胞を直接とり囲み, 感覚細胞への栄養補給と他細胞との絶縁に寄与しているものと考えられる.
  • Jagdish Ojha, George M. Hughes
    1988 年 35 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    淡水産ナマズの一種Rita ritaの鰓弁および二次鰓弁の形態と表面構造の変異を, 走査電子顕微鏡を用いて調べた.鰓弁の部位による形態の変異は, 二次鰓弁を通過する水の量の変異を示すものと考えられ, 計算によればこの流水量は鰓弁の中央部分で最大である.鰓弁の上皮細胞の表面には微小堤がよく発達しており, 二次鰓弁の上皮細胞は一般に微絨毛におおわれている.鰓弁と二次鰓弁の表面構造の違いと, それぞれの機能との関連性を考察した.
  • 桑村 哲生
    1988 年 35 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Haplotaxodon microlepisの子の保護における雌雄の役割分担を潜水調査し, 仔稚魚の発育を水槽飼育により明らかにした.卵は雌が口内保育していた.全長9mm以下の仔魚は採集されなかったが, これらも雌親が口内保育していると推察された.これより大きな仔魚は摂餌を開始し, 以後, 全長25-30mm (産卵の約2ヶ月後) まで両親により見張りまたは口内保育されていた.口から放出された仔稚魚の群れは主に雌によって保護され, 一方雄は口内保育をより頻繁に行った.両親による見張りと口内保育を行う他のカワスズメ科魚類と比較して, 雌雄の役割分担について考察した.
  • 北島 力, 林田 豪介, 安元 進
    1988 年 35 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    Fertilized eggs of Pleuronichthys cornutus were obtained by both artificial fertilization and natural spawning of laboratory-reared fish. The present paper describes in detail the early development of the fish and the rearing methods employed to provide basic information for mass production of this species. Eggs and sperm for artificial fertilization were obtained from adult fish caught in the Ariake Sound, Kyushu in November and December of 1984. Their maturation was successfully induced by intermuscular injection of pituitary homogenate of the silver carp, Hypophthalmichthys molitrix. Fertilized eggs were also obtained in 1985 by natural spawning of a broodstock kept in a tank for a year. Hatched larvae were fed successively with rotifers, Artemia nauplii and the harpacticoid copepod, Tigriopus japonicus and reared for 80 days. Ten thousand young fish of about 33mm TL were obtained in 1984 and 1985 with the survival rate of about 17%. Ten developmental stages were defined on the basis of the morphological characteristics: A) newly hatched to 4 day old larvae, 2.7 to 4.1mm TL (2.6 to 3.9mm NL), yolk sac present; B) 4 to 16 day old larvae, 3.8 to 5.9mm (3.6 to 5.6mm), yolk resorbed, actively feeding on rotifers; C) 15 to 30 day old larvae, 6.3 to 8.3mm (6.0 to 7.9mm), notochord straight, hypural fin ray visible; D) 24 to 40 day old larvae, 6.7 to 9.2mm (6.4 to 8.8mm), caudal notochord upturned (45°); E) 28 to 45 day old larvae, 7.9 to 10.8mm (7.5 to 10.3mm), caudal notochord upturned (45°-90°); F) 32 to 50 day old larvae, 10.8 to 15.7mm (8.8 to 12.8mm BL), eyes symmetrical; G) 35 to 66 day old larvae, 13.4 to 20.0mm (10.9 to 16.3mm), eyes asymmetrical, but left eye not visible from the right side; H) 40 to 75 day old larvae, 13.8 to 26.2mm (11.3 to 21.4mm), the upper edge of left eye visible over top of the head from the right side; I) 46 to 89 day old larvae, 20.1 to 27.4mm (16.4 to 22.4mm), left eye on the edge of the head and pupil visible from the right side; and J) juveniles of 51 day old or over, 23.6mm or more (19.3mm or more), metamorphosis completed. One to three inflections were found for relative growth of total length, eye diameter, upper jaw length, preanal length, and distance between the base of the pectoral fin and the anus against the notochord length or body length. Two inflections were found for body length (or notochord length)-body weight relationship.Most inflections appeared at the stages of D, F and J, corresponding to the body length of 8, 9-12 and 18-22mm respectively.
  • 町田 吉彦, 岡村 収, 太田 秀
    1988 年 35 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    トカゲギス科のHalosouropsis macrochirは大西洋, 南アフリカ, インド洋, オーストラリア湾, ニュージーランドおよび日本から知られている.日本ではOhta (1983) により駿河湾と相模湾から初めて記録されたが, 標本の分類学的記載はなかった.我々は近年得られた標本を検討し, この種が日本の中部から南部にかけての太平洋に分布することを確認し, その色彩的特徴に由来する新和名を提唱した.本種のいくつかの計数形質には若干の地理的変異がみられる.トロールでの捕獲例数から判断して, 本種は日本近海の1, 500から2, 700mの海洋底においてさほど稀な種ではない.深海カメラによる駿河湾での本種の主な生息水深での推定密度は, 西部北大西洋でのアルビン号を使っての目視と写真撮影による推定密度とよく似ており, 主な生息水深は両地域においてより高密度に分布する本科のトカゲギスのそれより深い.本種の背鰭と臀鰭の形態, 生態写真および食性からみて, この種は海洋底に強く依存した生活をしていると考えられる
  • Toshio Okazaki, Yonemitsu Tanaka, Hiroshi Naganuma
    1988 年 35 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    東京湾に注ぐ多摩川の支流, 北浅川で1986年6月10日, 釣人によってベニザケが獲られた.体長496mmの成熟した雄で, 二次性徴と婚姻色が明瞭であった.鱗の縁辺部が著しく侵食されていることから, 当河川をそ上したものとみられた.鱗相から淡水域で1回, 海洋で3回越冬した5歳魚と判断された.ベニザケが天然そ上するアジア側の南限は南千島のエトロフ島で, 本州の河川にそ上した記録はこれが初めてとみられる.鱗に認められる淡水帯が極めて狭いことから天然魚である可能性が高い
  • 波戸岡 清峰
    1988 年 35 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    奄美諸島, 徳之島よりウツボ属の一種ノコギリウツボ (新称) Gymnothorax pindaeが1個体採集された。本種はこれまで南アフリカ, 中部, 西部太平洋域で知られていたが, 本邦では初記録である.本種は体が一様な茶褐色であること, 顎歯の縁辺に鋸歯状部を持つことにより本邦産ウツボ科魚類の他種と容易に区別できる.
  • Kuei-Chiu Chen, Hin-Kiu Mok
    1988 年 35 巻 1 号 p. 90-97
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    クマノミとハマクマノミの水槽内での発音を記録し, 両種の違いを比較した.pop-chirp発音は優越個体のみにみられ, 咽頭歯をすりあわせることにより発生する.クマノミ類の発音する種類は, 発音しない種類に比べ, ceratobranchial plateと2nd to 4th pharyngobran-chialsに長い犬歯をもっている.クマノミの従属個体は, 体を間断なく動かしながら, 優越個体に対し, 別種の音 (shaking sound) を出す.この音は流体力学的なものであろう.
  • 鈴木 淳志, 多紀 保彦, 武田 光雄, 赤津 澄人
    1988 年 35 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ヒメツバメウオ科Monodactylus属の2種の染色体を調査したところ, インド・西太平洋産のM.argenteusでは雌雄とも染色体数は2n=48ですべてacrocentric染色体からなる同一の核型を示したのに対し, 西アフリカ産のM.sebaeでは, 雌は48個のacrocentric染色体をもつが, 雄の染色体数は2n=47で, その核型は1個の大型のmetacentric染色体と46個のacrocentric染色体から構成されていた.また, この種の雄の成熟分裂中期には22個の二価染色体と1個の三価染色体が観察された.以上から, M.sebaeは雌X1X1X2X2, 雄X1X2Yの複合性染色体をもつものと判定される.XXYタイプの性決定機構は魚類ではこれまでに8種で知られているが, スズキ目魚類では本報が2種めである.
  • 鈴木 淳志, 武田 光雄, 田中 秀幸, 劉 明淑
    1988 年 35 巻 1 号 p. 102-104
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    scatophagus argusselenotoca multifasciataの染色体を通常のギムザ染色と銀染色 (Ag-NOR染色) 法により調査を行ったところ, 2種ともに2n=48で, 核型は, 48本のアクロセントリック染色体で構成され, 1ないし2本の染色体には附随体がみられ, 時には2腕染色体のように観察された.これまでにscatophag usargusでは, 雄に異形対, 1本のメタセントリック (Y染色体) と47本のアクロセントリック染色体が報告されているが, 銀染色法により染色体の短腕は, 仁形成部位を含む附随体部であることが判明した.
  • 1988 年 35 巻 1 号 p. 113
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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