ラオス域内のメコン河とその支流から得られたコイ科の1新種
Scaphognathops mekongensisを記載した.
Scaphognathops属は, やや鋭利な角質縁を形成し中央部に下唇を欠く下顎, 棘状で鋸歯を有する背鰭の主不分枝軟条, 棘状で平滑な臀鰭の主不分枝軟条などにより特徴づけられ, 従来同属には, 同じくメコン水系から報告されている
S.stejnegeri1種のみが知られていた.
本新種は, 下顎とその角質縁が幅広く, 下唇の発達がきわめて悪く, 背鰭分枝軟条数9, 臀鰭分枝軟条数5.鯉耙数3~5+12~13=16~18を有する点で, 下顎と角質縁の幅が狭く, 下唇が比較的大きく, 背臀分枝軟条数13~15.臀鰭分枝軟条数6.鰓杷数3~4+8~9=11~12を示す
S.stejnegeriと明らかに区別される.他方両種は, 吻・口部の基本的構成, 背・臀鰭の不分枝軟条の性状, 各列の鱗数, 咽頭粛の形状と配列, 脊椎骨数, 体各部の主要計測形質におい'てほとんど完全に一致している.この類似性は, 両種が密接な類縁関係にあることを明白に示しており, また, 本新種が
Scaphognathops属に帰属すると判定するに十分であると考えられる.
Scaphognathops属のコイ科内における系統・分類学的位置についてはいまだ不明な点が多いが, 吻・口部および背鰭不分枝軟条の性状における類似性からみて, 東南アジア産のScaphiodonichthys属と類縁性をもつものと考えられる
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