魚類学雑誌
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41 巻, 4 号
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  • Kelvin K.P. Lim, Maurice Kottelat
    1995 年 41 巻 4 号 p. 359-365
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Carinotetraodon属はこれまでC. loretiのみで構成されていたが, サラワクから採集された標本にもとついて新種Carinotatraodon salivatorを記載した.C. salivatorC. loretiから体高が低い (本種では体長の36-41%で, C salivatorでは45-53%), 臀鰭条数が10本 (11本), 胸鰭条数が16-17本 (14-15本), 脊椎骨数17-18 (モードは18) 個 (15-17 [モードは16] 個), 眼が頭部背縁近くに位置する, 下唇の下方に明瞭な淡色斑がある, 尾鰭後縁が白く縁取られない, 腹部に雌では縦線が走り, 雄では横帯があることなどの形質で識別される.また, Tetraodon borneensis Regan, 1902の後模式標本を指定した.
  • 谷津 明彦
    1995 年 41 巻 4 号 p. 367-377
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1985-1987年に南太平洋 (20-54°S, 74-150°W) から表層流し網により得られた2257尾のアロツナス (尾叉長463-896mm) の生殖腺の状態と胃内容物を調査した.10-11月の亜熱帯域と31°S以北のペルー海流域は産卵場, 11-2月の亜南極域と38°S以南のペルー海流域は索餌場と考えられた.索餌場でアロツナスは主にオキアミ類, イカ類, カイアシ類, ハダカイワシ科の小型魚および端脚類を摂餌していた.餌料中の優占種はオキアミ類のEuphausia vallentini, E. lucens, Thysanoessa gregaria およびカイアシ類のNeocalanus tonsus であった.アカスルメイカは南東太平洋で優占したが, ニュウドウイカ属の数種は南太平洋中部で普通に見られた.端脚類ではPrimno macropaThemisto gaudichaudiiが普通に見られたが, これらの重要性は重量比では相当低かった.アロツナスの成魚はアオザメ, ヨシキリザメ, メカジキおよびクロカジキにより亜熱帯域で捕食されていた.アロツナスは高度回遊魚であり, 亜南極外洋表層域の季節的に変動するプランクトンのバイオマスに適応した種と考えられた.
  • Gareth Nelson, Linda McCarthy
    1995 年 41 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Persian/Arabian Gulfより得られたニシン科コノシロ亜科ドロクイ属の2新種Nematalosa resticulariaN. persoraを記載した.この2新種及びこれらに近縁なN. nasusは, 体節的形質, 特にprepectoral (abdominal) scutesの数により互いに区別できる.
  • 永澤 亨, 小林 時正
    1995 年 41 巻 4 号 p. 385-396
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    各種ネット採集で得られた標本に基づいてウスメバル仔稚魚の形態発育史を記載するとともに, 分布, 食性などについての知見を取りまとめた.本種仔魚は脊索長4.5mm前後で産出され, 4.6-7.9mmにかけて脊索後端が屈曲する.背鰭および臀鰭の最終棘条の棘化を指標とする変態は体長16-20mmで起こり, 体長22mm以上ではすべての個体が浮遊期稚魚となっていた.頭部の各棘要素は仔稚魚期を通して比較的小さい.前屈曲期から変態期 (体長4.5-18mm) の仔魚は主に表層で浮遊生活をおくる.体長20-40mmの浮遊期稚魚は流れ藻に随伴する.流れ藻への移動・蝟集は主に体長16-20mmの変態期に行なわれるものと判断されるが, このプロセスには潮目等が仔魚の集積場所として機能している可能性が示唆された.前屈曲期から屈曲期にかけてのウスメバル仔魚は主にかいあし類のノープリウスを, 後屈曲期以降の仔稚魚はParacalanus sp.を主に摂餌し, 流れ藻に随伴する浮遊期稚魚についてもこの傾向は変わらなかった.日本海におけるウスメバル仔稚魚の出現域は対馬海峡から津軽海峡にかけての本州沿岸域に広く認められるが, 沖合の冷水域には出現しない.
  • 赤川 泉, 塚本 洋一, 沖山 宗雄
    1995 年 41 巻 4 号 p. 397-407
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    カワハギ科の小型魚アオサハギの性的二型・繁殖行動・初期発生を親魚の採集・潜水観察・飼育観察によって明らかにした.神奈川県三浦半島で1991年と1993年に採集したアオサハギの雄は, 雌より有意に大きく (体重で約2倍), 繁殖期の雄間競争では顕著な体色変化が見られた.雄が腹部の膨満した雌を藻場で追尾しているのがしばしば観察されたが, ペアは固定しておらず, より著しい婚姻色を示す, より大型の雄のみが産卵まで雌の追尾を続けた.雌がセッカイカイメンの大孔に腹部を押しつけ産卵の姿勢をとると, 雄も並んで同じく腹部を押しつけた.雌は20-30秒かけて産卵したが, 雄は2-3秒で離れた.卵は直径0.82mmの沈性付着卵で, カワハギ科では最大であった.親による卵保護は行われなかった.卵は6-8日で孵化し (19-22゜C), 1孵化仔魚の全長は1.93-2.35mmであった.本種の雄の示す婚姻色は, 求愛のみならず, 雄間競争において, signa1としての機能持つことが示唆された.雄が雌より大きいという性的二型は, 乱婚でありながら, カイメンヘのペア産卵をおこなうために, 雄間競争が激しいことと関連していると考察された.
  • 渡辺 勝敏, 前田 洋志
    1995 年 41 巻 4 号 p. 409-420
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    遺伝学的に別種であることが示されている日本産ギギ科魚類2種, Pseudobagrus aurantiacus (Temminck and Schlegel) (アリアケギバチ) とそのシノニムとして扱われてきたP. tokiensis Döderlein (ギバチ) について, 模式標本を含む多数の標本を基に両種を再記載し, 形態比較を行った.その結果, P. aurantiacusは, より高い背鰭, 胸鰭棘前縁を広く覆う顕著な鋸歯列, 外向きの1-3歯を伴うより高密度な同後縁鋸歯列, より幅広い上後頭骨突起, 上後頭骨突起と同程度の長さの大きな上神経骨, 幅広い擬鎖骨後方突起 (後端>20°), 外翼状骨から大きく離れた舌顎骨前縁より明瞭な若魚の体斑パターン, 等によってP. tokiensisから区別された.
  • 茂木 正人, 藤田 清, Peter Last
    1995 年 41 巻 4 号 p. 421-427
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    シマガッオ科の1新種Brama pauciradiataをインド洋東部よりトロールによって得られた標本と, 太平洋中央部, サンゴ海, およびインド洋東部で漁獲されたミズウオの胃内容物から得られた標本に基づき記載した.本種は, 生殖腺の発達程度から, シマガツオ属のなかでは比較的小型の種であり, 標準体長100mm以下で成熟に達することが示唆された.本種は, 臀鰭鰭条数が23-25であること, 側線上方鱗数が7-10であること, 背鰭前方鱗数が23-28であることなどから同属の他種とは容易に区別される.
  • 坂井 陽一, 幸田 正典
    1995 年 41 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    キンチャクダイ科のアカハラヤッコの摂餌生態について, 沖縄県瀬底島のサンゴ礁で調査した.アカハラヤッコは底質をつついて摂餌し, その胃内容の75%以上は有機堆積物と藻類が占めていた.繁殖期には, 雌雄ともに日中の約6割の時間を摂餌に費やしていたが, 雌は雄よりも頻繁に摂餌していた.本種は, 体長の近い様々な他魚種に対し随伴を頻繁に行った.随伴中は単独時に比べ, 高頻度で摂餌し, より小型の個体ほど頻繁に随伴を行った.いくつかの点から, 小型魚である本種は高い捕食圧を受けていると考えられた.アカハラヤッコは他魚種に随伴することにより捕食圧を下げ, 同時にそのことにより効果的に摂餌ができると推察された.
  • 横川 浩治, 関 伸吾
    1995 年 41 巻 4 号 p. 437-445
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    最近, 養殖用種苗としてさかんに日本に移入されている中国産 “スズキ” について, 日本産のものとの形態的および遺伝的差異について調べた.外部形態については, いくつかの形質において両者に大きな差異が認められ, 計数形質の相違が顕著であった.特に, 側線有孔鱗数と鰓耙数は明瞭に相違し, これら2形質の組み合わせによって両者を完全に識別することが可能であった.遺伝形質としてアイソザイムを用い, 20遺伝子座を推定したが, このうちPROT-1*遺伝子座では遺伝子の完全置換, GPI-1*LDH*遺伝子座では遺伝子頻度の著しい相違が認められた.アイソザイム遺伝子による両集団間の遺伝的距離 (D値) は0.174となり, 種間の水準に達していた.これらの形態的および遺伝的相違により, 中国産のものはスズキLateolabrax japonicusとは別種である可能性が示唆された.
  • Konstantina Iliadou, Lev Fishelson
    1995 年 41 巻 4 号 p. 447-454
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    産卵期におけるナマズParasilurus arisotelisの精巣について, 形態学的ならびに組織学的研究を行った.本種は, 他のナマズと異なり, 貯精嚢を欠く.精巣の前部と後部は同じ構造で, 分泌機能よりも精子形成能を持っている.精管は二部に分かれ, 上方部の管壁には生殖上皮により, 下方部の短い管は立方上皮により裏打ちされている.生殖力の季節的変動は明確でない.産卵期は, 連続的で非同時性の精子形成により長い.精巣の組織構造は, 他の魚種とあまり変わらない.雄の体長と切片における単位面積当りの細精管の量, 細精管径と細精管量, 精巣重量と細精管径, 全細精管数と精子含有細精管数との間には, 有意な相関 (p<0.01;p<0.001) がみられた.
  • 岩槻 幸雄, 吉野 哲夫, 神田 猛, Daniel Golani
    1995 年 41 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    台湾から報告されたイサキ科魚類スジミゾイサキPomadasys quadrilineatus Shen and Lin は, 南アフリカから紅海におよぶ西部インド洋から報告されているP. striatum (Gilchrist and Thompson) や, P stridens (Forsskål) の同種異名とされてきた.しかし, 前者と後者2種は, 体側の縦線の数と色, 縦線の走り方及び地理分布が異なっており, P.quadrilineatusは有効である.スジミゾイサキでは, 生時には金色がかった黄色の5本の縦線 (1番目の縦線は, 頭部の項部から第1背鰭棘基部に向かって走る) がほぼ平行に走るのに対し, 後者2種では不明瞭な1本の茶色の縦線 (体側背部外縁に沿って走る) と明瞭な3本の濃い合計4本の縦線がある.なお, 後者2種では, 3番目の縦線は側線に沿って走り, 4番目の縦線と尾柄部付近でっながるようにみえることで, スジミゾイサキとは明らかに異なる.従って, スジミゾイサキは, 後者2種とは異なる東アジアの大陸棚にのみ生息する固有種と判断される.本種は, これまでに台湾からの19個体及び日本からの6個体の25個体のみが知られている.本報告はスジミゾイサキの日本からの2番目の記録である.宮崎県からの記録は本種の最北限の記録になる.学名の安定のためにP.stridens (Forsskål) の新模式標本の指定を行った.
  • Chavalit Vidthayanon, Maurice Kottelat
    1995 年 41 巻 4 号 p. 463-465
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    カマツカ亜科魚類の自然分布は, ベトナムのメコン川以北のアジア大陸東部とされていたが, 新たたメコン川流域からツチフキを3個体採集したので, 形態的特徴を記載するとともに, 生物地理学的観点から考察した.
  • Juan M. Díaz de Astarloa, Daniel E. Figueroa
    1995 年 41 巻 4 号 p. 466-468
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Acanthostracion quadriornisはこれまで北米のMassachussettsから南米のブラジル (Santa Catarina) まで分布することが知られていた.アルゼンチンのMar del Plataで本種が水深7メートルから採集された.これは本種の南限の記録となる.また, アルゼンチン周辺海域に熱帯性魚類が出現する要因について論議した.
  • 塚本 洋一, 上野 康弘, 南 卓志, 沖山 宗雄
    1995 年 41 巻 4 号 p. 469-473
    発行日: 1995/02/21
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    2種のカレイ科魚類, アブラガレイAtheresthes evermanni とカラスガレイReinhardtius hippoglossoides の変態期仔魚について形態的特徴を記載した.変態が完了する体長はアブラガレイが約35mm, カラスガレイが約50mmと推定され, いずれの種もカレイ科では最大クラスに属する.
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