1968年から1988年にかけて相模湾で行われた134回の中・深層傾斜曳き採集により, 計441個体の主として仔魚からなる5種のソコイワシ科魚類
(Bathylagus ochotensis, B. pacificus, B. mil-leri, B. bericoidesおよび
Leuroglossus schmidii) が採集された.これらのうち,
B. ochotensisが最も卓越し (n=372),
B. pacificus (n=35),
B. milleri (n=18),
L. schmidti (n=14),
B. bericoides (n=2) がそれに続いた.いずれの種においても仔魚の出現の季節性は明瞭で,
B. ochotensisでは11月から4月にかけて比較的個体数が多く, 他の4種でも
B. pacificusでは2-5月に,
B. mil-leriでは11-3月に,
L. schmidtiでは12-1月に, また
B. bericoidesでは3月に出現が限られていた.このような仔魚の季節的出現パターンは, それぞれの種の生殖周期を反映したものと考えられた.2種の深層種 (
B. pacificusと
B. milleri) では, 仔魚とともに成魚も採集されたが, その成熟個体の出現時期 (7-12月) は仔魚の出現時期 (Uづ月) とほとんど重複せず, またこれら2種の稚魚 (27-48mmSL) と成魚 (134-207mmSL) のあいだの未成魚はまつたく採集されなかった.この成熟個体の出現の顕著な季節性ならびに幼魚と成魚のあいだの大きなサイズのギャップは, これら2種が成熟するまでの過程で, ネットの届かない深海 (>1,200-1,300m) か, あるいは湾外への移動のような, なんらかの個体発生的回遊を行っているために生じることが示唆された.
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