家族社会学研究
Online ISSN : 1883-9290
Print ISSN : 0916-328X
ISSN-L : 0916-328X
27 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
巻頭エッセイ
投稿論文
  • —韓国の高学歴専業主婦における子どもの教育—
    柳 采延
    原稿種別: 投稿論文
    2015 年 27 巻 1 号 p. 7-19
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    韓国の子どもの教育に対する母親の関与は,既存研究において犠牲的な役割として描かれてきた.しかし,それらの説明は女性をめぐる社会的変化を十分に踏まえていない.そこで,本稿では,高学歴専業主婦の教育への関与の質的特性を韓国の女性雑誌『主婦生活』から明らかにすると同時に,そうした特性が生じる社会的文脈を考察した.
    母親の関与は,情緒的サポートが中心であったが,90年代後半から教育マネジャー化した.具体的な特徴には,1)高学歴の活用,2) 仕事化(業績主義的評価が可能なタスク化),3)賢母良妻規範に還元されない高い自律性が見られた.それは「やむを得ずやっている犠牲」というより自分らしさの探求を通じた「自己実現としての母」の姿をしている.
    教育する母は,女性の高学歴化,自己実現意識の増大,専門職既婚女性の増加,そして家族の中の女性の地位の変化という社会変動の中で生まれた高学歴女性の選択肢なのである.
特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
  • —シンポジウムの趣旨と概要—
    藤崎 宏子, 久保田 裕之
    原稿種別: 特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
    2015 年 27 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    家族主義的と評される日本型福祉レジームは,とりわけ1990年代以降,人びとに安定的な生活基盤を提供する装置として機能しなくなった.予測をはるかに上回る「少子化」と「高齢化」は,個人と家族のライフコースや企業経営の変化などと絡み合いつつ進行し,現行の社会保障・社会福祉体制もさらなる再編を迫られている.このような背景のもと,日本の社会保障・社会福祉政策を個人と家族のライフコースのあり方との関連から問うことは,研究・実践両面における重要な課題である.本シンポジウムでは,家族研究の周辺・関連領域の研究者との対話を通して,家族研究の今日的課題を見出すことをねらいとした.
    本シンポジウムは,宮本太郎氏(福祉政治論),大沢真理氏(社会政策学),服部良子氏(ワークライフ・バランス論,社会政策学),下夷美幸氏(家族社会学,福祉社会学)の4報告,落合恵美子氏(家族社会学)によるコメント,そして全体討論という流れで構成した.コーディネーターおよび司会は,藤崎宏子・久保田裕之が務めた.
  • 大沢 真理
    原稿種別: 特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
    2015 年 27 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    働いて稼ぐこと,子どもを生み育てることにかかわる社会政策の影響を,比較ジェンダー分析する.1985年以来の相対的貧困率や非正規労働者比率の推移,近年の賃金動向を手がかりとして,日本において就業条件が劣化してきたことを概観する(Ⅲ).また,2000年代末のOECD諸国の貧困率および貧困削減率を検討する.日本では,税・社会保障制度による貧困削減率が,成人が全員就業する世帯や子ども(がいる世帯)にとって,マイナスである(Ⅳ–1).所得再分配がかえって貧困を深めるという事態はOECD諸国で異例であり,労働力人口の急減が憂慮される社会として,極めて不合理である.税・社会保障の負担面を見ると,日本の制度は累進度が最も低い部類であり,ひとり親世帯の負担が不釣り合いに重い.ただし民主党政権下の子ども手当は,所得が低い層ほど負担を大きく軽減していた(Ⅳ–2).Ⅴではアベノミクスの「成果」を検証したうえで,若干の展望を述べる.
  • 服部 良子
    原稿種別: 特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
    2015 年 27 巻 1 号 p. 36-48
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    本論ではケア労働に関する家族的責任支援政策の今後を考察する.1980年代までに日本の制度は男女別雇用構造を形成した.それは男性労働者は稼ぎ手で,女性は被扶養でケア労働担当という男女分業の家族制度との組み合わせの構造をもつ.これは専業主婦を男性の扶養者とする税制と社会保障制度とリンクしている.85年の基礎年金改革も専業主婦を被扶養者第3号被保険者として保険料負担を課していない.均等法対策として日本企業はコース別雇用管理を採用して85年以前からの男女別雇用管理が維持された.そしてバブル崩壊以降,正規雇用の長時間労働が継続した.またパートや派遣の非正規雇用はさらに拡大した.そのため90年代以降,少子化対策の均等法・育児介護休業法等は雇用制度のなかで十分運用されていない.また社会的ケア労働支援は保育ケア不足が継続している.介護が公的保険制度化されたのと対照的である.少子化対応や女性活躍推進政策のケア労働のため家族的責任支援政策は法令遵守の徹底が必要である.
  • 下夷 美幸
    原稿種別: 特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
    2015 年 27 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
    家族主義と評される日本型福祉レジームのもと,育児や介護は家族の責任とみなされてきた.その日本でも,1990年代以降,「ケアの社会化」をすすめる政策が展開されており,実際,育児と介護のいずれについても社会化が進展している.しかし,ケアにおける家族責任は,法律上あるいは事実上,強固に維持されており,現在も多大なケアが家族に委ねられたままである.
    今後,「ケアの社会化」を推進するには,ケアサービスの「良質な準市場」を形成する必要がある.そのためには,かなりの財源投入と規制の強化が欠かせない.また,「ケアの社会化」後については,保育と介護のそれぞれの政策において,家族ケアを再定位することが課題となる.人間社会におけるケアの価値を見失うことなく,「ケアの社会化」を達成するために,「家族ケアから脱する論理」と「家族ケアを守る論理」の両方が求められている.
  • 落合 恵美子
    原稿種別: 特集 少子高齢化と日本型福祉レジーム
    2015 年 27 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2017/02/04
    ジャーナル フリー
政策資料解説
書評
文献紹介
feedback
Top