家族社会学研究
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巻頭エッセイ
投稿論文
  • 木村 裕貴
    2023 年 35 巻 2 号 p. 111-123
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
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    本稿の目的は,妻の就業が夫婦の離婚リスクに及ぼす影響とその変化を明らかにすることである.消費生活に関するパネル調査(1993–2020年)のデータを用いた分析により以下の結果を得た.第一に,妻の就業は離婚リスクを高める効果をもち,この総効果は結婚コーホート間でおおむね安定的である.第二に,妻の雇用形態を統制したうえでの妻の絶対稼得の効果には結婚コーホート間で変化がみられ,1999年までに結婚したコーホートでは有意な効果はみられない一方,2000年以降に結婚したコーホートでは離婚リスクに対して負の効果がみられる.第三に,以上の変化の結果,2000年以降の結婚コーホートでは,妻が非正規雇用で低稼得である場合に最も離婚しやすく,無業である場合と正規雇用で高稼得の場合に離婚しにくいという「逆U字型」の関係が現出した.以上の結果は,結婚のジェンダー化された性質に持続と変化の両側面が共存していることを含意する.

特集 森岡家族社会学の総括と現代への示唆
  • 池岡 義孝
    2023 年 35 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル 認証あり

    本学会の初代会長で,戦後日本の家族社会学を主導してきた森岡清美先生が2022年1月に98歳で亡くなられた.本特集は,その追悼を目的として,森岡家族社会学を総括し,現代の家族研究への示唆を検討するものである.2022年9月の学会大会のテーマセッションが本特集のもとになっており,現代家族の研究と伝統的な家研究を中心にして,さらに理論の体系化と家族変動論のテーマを加えた4つの論考で構成されている.執筆者はいずれも森岡が確立した戦後日本の集団論パラダイムのもとで教育を受けた世代で,この特集は森岡に近い者による総括となっている.森岡の時代と比べて現在では,家族それ自体も家族研究の理論と方法も多様化してきている.現代の若い世代の研究者や,研究の立場が異なる研究者からみると別の見方があるかもしれない.本特集が,さまざまな立場からの広範な検討の出発点となることを期待している.

  • 藤崎 宏子
    2023 年 35 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,森岡清美の研究の軌跡を,戦後日本の家族社会学研究の動向および家族変動の実相との関連で位置づけ,今日的な視点から評価することを目的とする.森岡は自身の研究の軌跡を4つのステージに分け,各期の研究成果の確認と反省を踏まえ,次なるステージの研究課題を定めていた.第1期の準備期を経て,第2期には核家族論を確立し,家族周期論の成果を世に問うた.しかしながらこの時森岡は,家族周期論の限界を認識しており,第3期にはライフコース論にこれを打破する可能性を期待した.同時に,家族変動論への取り組みに強い意欲を示すものの,最終的に自身が納得できる成果をまとめることはできなかった.「個人化」などの家族の集団性のゆらぎや,家族研究それ自体の多様化傾向のなかで,彼は新たなパラダイム転換への挑戦を後続世代に託したのである.

  • 石原 邦雄
    2023 年 35 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル 認証あり

    昨年逝去した森岡清美の多大な業績のうち,特に家族社会学の理論体系の構築の面に焦点を当てて,「集団論パラダイム」と呼ばれた彼の家族理論の構造を再検討し,体系構築の成果を高く評価した上で,家族動態の理論化としての不十分さなどを指摘するとともに,今後の家族社会学研究への継承すべきいくつかの課題を提示した.

  • 稲葉 昭英
    2023 年 35 巻 2 号 p. 146-157
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル 認証あり

    森岡清美が日本の家族研究に果たした役割の大きさは言うまでもない.その森岡の家族研究の基盤に存在するのが家族の分類・類型論である.本稿では森岡が自らの研究生活の多くを割いた直系家族制と夫婦家族制の類型概念に視点をあて,その問題点を検討する.森岡の直系家族制・夫婦家族制の概念には子夫婦との同居の原則の有無と家族の直系的再生産の有無という二つの要素が混在しており,このために直系制をめぐるその後の議論に混乱が生じたように思われる.こうした概念の多義性が生じた理由は,この概念の成立過程を辿ることで明らかになる.森岡の家族類型概念の淵源は鈴木栄太郎によってつくられた類型概念にあり,この類型は家族の直系的再生産という日本的な典型性を概念化する目的で作られていた.この概念を核家族論によって再構成したのが森岡の類型論であったが,この結果として概念から日本的な典型性を排除しえなかったと考えられる.

  • 米村 千代
    2023 年 35 巻 2 号 p. 158-170
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル 認証あり

    森岡清美の「家」研究について,主に真宗教団と華族社会に関する研究を対象として,その現代的意味を探ることを課題とする.まず森岡の家に関する諸概念の関係性を整理し,次に戸田貞三を手掛かりとして,森岡の制度論への問題関心を確認する.続いて,真宗教団および華族社会の研究においてそれらの視点がどのように社会分析に用いられているのかを概観する.これらの考察を通して,森岡による日本社会の長期的な家族変動を捉える視点を再考すると同時に,森岡の制度への関心が,決して静態的,非歴史的な視点ではなく,歴史的,社会的,政治的変動のなかで人々がどのようにおのおのの生涯を生きたかという動態的なライフコースの視点にも通じることを確認する.

NFRJ(全国家族調査)コーナー
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