現在、いじめ、暴力、少年犯罪といった子どもの問題は、重大な社会問題の一つとして議論されており、これへの対策として教育改革に注目が集まっている。とくに、1980年代を転機に、教育改革論の課題として子どもの心の問題に焦点があてられるようになった。家族はその原因であり同時に解決の糸口とみなされ、親たちがなすべき理想的なふるまいについて、直接的に呼びかけが行われるようになっている。
こういった家庭教育政策の展開は、1920年代以降にもみることができる。この時代がいわば近代家族の担い手たちが登場し、広く普及されようとする時代であるとすると、現在は近代家族の矛盾があらわになった時代といえる。矛盾のなかで家庭教育に注目が集まっているが、露呈した近代家族の矛盾と近代的子ども観の限界を、再び近代家族イデオロギーで埋めあわせることは、もはや不可能である。
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