日本地すべり学会誌
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45 巻, 1 号
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論文
  • 岩橋 純子, 山岸 宏光, 神谷 泉, 佐藤 浩
    2008 年 45 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    2004年 (平成16年) 7月の新潟豪雨および10月の新潟県中越地震によって, 傾斜5度以上の丘陵地・山地に相当する中新世~更新世堆積岩類の斜面で起きた崩壊について, 25mグリッドのレベルで, 傾斜, 雨量, 最大加速度, 地質, 曲率, 地質構造, 斜面方位のGISデータを用いて判別分析を行った。判別分析によって, 各パラメータの崩壊に対する寄与を評価した。その結果, 傾斜は重要なファクターであるが, 豪雨による斜面崩壊では, 傾斜以上に日雨量の寄与が大きいこと, 西山階泥岩優勢タービダイト層と魚沼層では豪雨と地震に於ける崩れやすさが異なっていたこと, 曲率の寄与は豪雨で大きいこと, 地質と地質構造の寄与は地震で起きた大崩壊の場合大きいこと, 斜面方位の寄与には地域差があることなどが分かった。
  • 沖村 孝, 西原 玲二, 村上 晴茂, 荒木 繁幸, 山浦 昌之, 木村 裕之
    2008 年 45 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    地震時の山腹斜面の表層崩壊に対して, ロックボルト・ロープネット併用工法 (対策工) を有効な耐震治山工法として位置づけ, 六甲山系のマサ土および兵庫県西部山崎断層周辺の粘性土を用いた振動台実験により, 地震時の斜面の破壊形態および変形挙動と, 対策工を用いることで変形を抑えながら表層崩壊を防ぎ地震時の斜面の安定性を高める効果 (耐震効果) を確認した。工種の組み合わせや配置間隔などを変えた実験を基に, ロックボルト, ロープネットおよび支圧板の組み合わせが最適であること, ロックボルト配置間隔を縦横20cm (標準間隔: 現場では2m) にすると耐震効果が高いことがわかった。本対策工の耐震効果の発現機構は, 地盤変形を抑える効果, 揺れの分散効果, 応力集中の緩和効果から成り立っており, 地震時の表層崩壊を防ぐことに有効と考えられる
  • 宜保 清一, 佐々木 慶三, 中村 真也, 儀間 朝範
    2008 年 45 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    島尻層群泥岩分布地域における地すべりの危険度評価手法の課題とその解決法について検討した。現行の「基礎調査マニュアル (案) 」による地すべり危険度区分では, 初生泥岩地すべりが抽出されない可能性がある。誘因および人為的地形改変の地すべり発生に与える影響は地すべりタイプ毎に異なっているため, 危険度評価プロセス図を作成した。地域の地すべり特性が十分反映された危険度評価手法の確立の重要性を指摘した。
  • 吉松 弘行, 丹羽 諭, 樫山 和男
    2008 年 45 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    地すべりの中には, 長距離流下して河川に地すべりダムを形成する事例が多発しており, この地すべりダムの決壊による土石流などによる二次災害が危惧され, その危険範囲の予測手法の確立が望まれている。そこで移流項の離散化に起因する数値不安定性を抑制した安定化有限要素法による土石氾濫解析手法を検討した。当解析は連続条件の基礎方程式を水深表示にし, 河床変化量を二次精度まで高めたことによる衝撃捕捉項を導入した。提案された手法は数値振動が少なく, 移動境界部で高精度の解析が可能であることの有用性をモデル解析と比較して確認し, 複雑な解析スキーム無しに土石氾濫解析が実施できる。
  • 山田 正雄, 鵜飼 恵三, 鎌田 智, 福田 毅, 小澤 岳弘
    2008 年 45 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    地すべり地内では, 地層中を流動する地層水とすべり面・節理等のいわゆる亀裂を介して流動する裂か水が地すべり変動に大きな影響を与える。本論文では, 最初にすべり面・節理等の亀裂を含む水文地質構造を反映した3次元解析のモデル化について検討し, 次に3次元FEM浸透流解析を実施し, 融雪時における地下水排除工の施工前後の間隙水圧分布の変化を求めた。ここで, 地盤および地下水排除工については, すべり面・節理等の亀裂を含む3次元水文地質構造や集水井・集水ボーリング・排水管の対策施設をできるだけ忠実にモデル化した。この浸透流解析より得られた結果をもとに3次元安定解析を実施し, 地すべり斜面の安定度を評価することにより, 地下水排除工の効果判定を行った。融雪時に地すべりが再活動する大平地区を解析対象に上記解析手法を適用して, 観測水位や地すべり変動と適合する解析結果を得ることができ, 地下水排除工の効果を予測することが可能となった。
研究ノート
  • 山岸 宏光, 斉藤 正弥, 岩橋 純子
    2008 年 45 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    2004年7月13日に新潟県中越地域では強い前線の活動による集中豪雨が発生した。その雨量は24時間で400mmに達し, 堤防の破堤による河川氾濫をもたらし, アジア航測による空中写真判読では3, 359箇所以上の崩壊も発生させた。写真判読と現地調査により二つのタイプの崩壊が確認された。つまり, ひとつは表層崩壊であり, 2つは深層崩壊で, 後者は特に泥流をともなうものであった。本研究ノートでは, 出雲崎地域に焦点をあてて議論する。なぜなら, この地域は2004年7月豪雨による代表的な崩壊発生地域のひとつであることと, 1961年8月と1976年, 1978年にも豪雨崩壊が発生したためである。そこで, 筆者らは, 出雲崎地域の空中写真の1962年撮影 (1961年豪雨の1年後) , 1982年撮影 (1976-1978年豪雨崩壊を含む) , および2004年撮影 (7月豪雨直後) のそれぞれを判読し, GISを使用して, それぞれの年代の崩壊の分布を比較し, その分布と地形や地質との関連を検討した。
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 土田 孝, 李 黎明, 加納 誠二, 山下 典彦
    2008 年 45 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2008/05/25
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震では, 広範かつ多数の斜面崩壊が発生した。新潟県中越地震のような強震動に対する斜面の安定性評価手法としてNewmark法や有限要素法などの数値解析手法がある。本稿では, 斜面の動的遠心模型実験を実施し, 従来型Newmark法, 斜面の地震応答特性を簡便に考慮した改良型Newmark法, 動的有限要素法`FLIP'の適用性の検討を行った。さらにパラメトリックスタディを実施し, 斜面高さおよび入力地震動が斜面安定評価結果に及ぼす影響について検討を行った。その結果, 斜面高さが高くなるほど採用する解析手法と入力地震動による滑動変位量算定結果の差異も大きくなる傾向にあることが示された。そして大規模な斜面における地震時安定性を検討する際には, 解析手法や入力地震動の選定に十分に留意する必要性が示唆された。
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