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山本 直樹, 阿形 清和, 中島 欽一, 今村 拓也
セッションID: OR2-12
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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一般に,神経内分泌細胞を含むニューロンは,増殖すると,回路に余分な電気信号がうまれてノイズとして働いてしまうため,増殖することはない。細胞の増殖には,ゲノムDNA複製ステップ(S期)と,DNA等分配ステップ(M期)があるが,これまで,ニューロンではS期の制御が大事であることはよくわかっていた。今回,我々は,ニューロンのモデル細胞であるラットPC12細胞を用いることで,M期の制御も同様に大事であることを明らかにした。ニューロン分化したPC12細胞の場合,cAMPを添加することで完全に増殖を停止し,未分化細胞の培養条件に戻しても細胞周期は復活しないが,神経栄養因子のみで分化誘導した場合,細胞周期は復活できる。まず,Directional RNA-seqとChIP-seq解析により,cAMPの標的領域が両方向性プロモーターであることを全ゲノムレベルで明らかにした。特に,一方がpromoter-associated non-coding RNA(pancRNA)で一方がタンパク質コード遺伝子というペアであることが大多数であることを発見した。また,pancRNAの量を操作することで,cAMPがなくとも細胞増殖停止効果を再現することに成功した。cAMPによる発現変化が顕著なM期制御遺伝子であるNucleolar And Spindle Associated Protein 1(Nusap1)遺伝子のpancRNA機能解析から,cAMPシグナルはCremのドミナントネガティブアイソフォームであるIcerタンパクにより感知され,それがNusap1遺伝子の両方向性プロモーターに結合し,pancRNA発現変化を起こすことで,ヒストンアセチル化をローカルに変化させることが分かった。即ち,S期だけではなく,M期にも制御メカニズムを働かせることで,ニューロンには二重の厳重なセキュリティがかけられていると考えられ,このときpancRNAが細胞増殖を制御するエピゲノム形成に関与することが明らかになった。
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道家 未央, 松脇 貴志, 山内 啓太郎, 西原 真杉
セッションID: OR2-13
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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【目的】エストロゲンは周生期脳の雄性化作用や成熟脳での神経保護作用を持つことが知られている。当研究室ではエストロゲンによる脳の雄性化を仲介する因子として,成長因子プログラニュリン(PGRN)を同定した。さらに近年,我々はPGRNが神経炎症の抑制や神経新生の促進により神経保護的に働くことを見出した。これらの知見は,エストロゲンの神経保護作用についてもPGRNが関与している可能性を示唆している。そこで,本研究においてはPGRNがエストロゲンの中枢作用を仲介する機序を追究するため,当研究室で作出したPGRNノックアウトマウス(KO)の脳におけるエストロゲン受容体α(ERα)の発現パターンを野生型マウス(WT)のものと比較した。【方法と結果】8〜11週齢の発情期,発情休止期の雌のWTおよびKOの脳を採取し,神経細胞マーカーであるNeuN,ミクログリアマーカーであるIba1およびアストロサイトマーカーであるGFAP陽性細胞におけるERαの発現を免疫組織化学的手法により解析した。その結果,WTとKOで神経細胞におけるERαの発現パターンには差は認められず,また両者ともにミクログリアではERα陰性であった。アストロサイトにおいては,WTでは多数のERα陽性細胞が認められたが,KOでは全く認められなかった。以上より,PGRNはアストロサイト特異的にERαの発現に関与することが示唆された。次に,雌雄差,性成熟あるいはエストロゲンの影響を検討するため,9週齢の雄,5週齢の雌および8〜10週齢の卵巣摘出雌を用いてアストロサイトにおけるERαの発現を検討した。その結果,これらの動物群においてもWTでのみアストロサイトにおけるERαの発現が観察された。これらのことから,KOのアストロサイトにおけるERαの欠如は,性,週齢,エストロゲンに非依存的であることが示唆された。【考察】PGRNはアストロサイト特異的なERαの発現調節に関与することで,エストロゲンの脳の雄性化作用や神経保護作用を仲介している可能性が考えられた。
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堀畑 慶, 家田 菜穂子, 井上 直子, 上野山 賀久, 末富 祐太, 松田 二子, 前多 敬一郎, 束村 博子
セッションID: OR2-14
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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【目的】雌ラットにおいて,キスペプチンニューロンは前腹側室周囲核(AVPV)および弓状核(ARC)に局在し,キスペプチン遺伝子(Kiss1)発現は,AVPVではエストロジェン(E2)により促進され,一方ARCでは抑制される。このようなE2のKiss1発現への促進(AVPV)および抑制(ARC)効果は,それぞれE2の性腺刺激ホルモンに対する正および負のフィードバックを仲介すると考えられる。本研究では,E2によるKiss1発現制御に関わる転写因子やヒストン修飾因子などの細胞内分子メカニズムの解明を目指し,in vitro解析に有用な同ニューロンの不死化細胞株の樹立を試みた。【方法】成熟雌ラットのAVPVあるいはARC組織片から得た細胞を単離培養し,不死化処理後,得られた不死化細胞株の遺伝子発現パターンを定量RT-PCR法により解析した。Kiss1発現陽性を指標として選抜した株を用い,エストロジェン受容体α遺伝子(Esr1),神経細胞マーカーであるエノレース2遺伝子(Eno2),およびグリア細胞マーカーであるグリア線維性酸性蛋白遺伝子(Gfap)発現を検討した。ARC由来株では,ARCキスペプチンニューロンに共発現することが知られるニューロキニンB遺伝子(Tac3),ニューロキニン3受容体遺伝子(Tacr3),およびダイノルフィン遺伝子(Pdyn)発現も検討した。【結果】AVPV由来の不死化細胞株として85株が得られ,うち12株にKiss1,Esr1,Eno2陽性およびGfap陰性が認められた。ARC由来不死化細胞株として得た89株のうち,4株にKiss1,Esr1,Eno2,Pdyn,Tac3,Tacr3陽性およびGfap陰性が認められた。今後は,これらのAVPVおよびARCキスペプチンニューロン候補株を用い,Kiss1発現におよぼすE2の影響を検討し,さらにE2によるKiss1発現制御を仲介する転写因子の同定やヒストン修飾などの分子メカニズムを検討する。
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堀口 幸太郎, 中倉 敬, 吉田 彩舟, 長谷川 瑠美, 瀧上 周, 大迫 俊二, 加藤 たか子, 加藤 幸雄
セッションID: OR2-15
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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【目的】下垂体前葉のホルモン産生は視床下部因子による放出・抑制調節に加え,前葉細胞同士の局所的なパラクライン・オートクライン・ジャクスタクラインなどの細胞間コミュニケーションによっても調節されることが明らかとなっている。細胞表面抗原の一つであるCD90は分子量が最も小さいIgスーパーファミリー分子であり,糖鎖に富むGPI結合型分子として細胞膜に存在する。CD90の細胞外ドメインと,隣接する細胞が発現するインテグリンの細胞外ドメインとが結合すると双方向に情報を伝えることが報告されている。本研究では,CD90とインテグリンとのジャクスタクラインによる局所的な前葉ホルモン産生制御機構の存在を仮定し,まずCD90の下垂体前葉における発現解析を行った。【方法】CD90の発現細胞をin situ hybridization,免疫組織化学によって同定した。そして,細胞表面抗原に対する抗体とビーズを結合させて目的の抗原を発現する細胞を分離できるキット(pluriBead Cell Separation kit)を用い,CD90発現細胞を単離することを試みた。【結果】CD90の発現は,ラット下垂体前葉のほとんど全てのTSH産生細胞において観察された。そして,下垂体前葉細胞の5%ほどを占めるTSH産生細胞が,抗CD90モノクローナル抗体(BD Pharmingen)とpluriBead Cell Separation kitを利用することで,純度65%以上の細胞群として分離・培養することに成功した。【考察】本実験系を利用することで,TSH産生細胞を主とするCD90陽性細胞の初代培養を可能にし,種々の細胞間コミュニケーションによるTSH産生制御機構の解析に応用できると考えている。現在,下垂体前葉におけるインテグリン発現細胞の同定を試みている。
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西原 大翔, 吉田 彩舟, 藤原 研, 加藤 たか子, 屋代 隆, 加藤 幸雄
セッションID: OR2-16
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【背景】下垂体特異的転写因子PROP1は,下垂体の形成および前葉ホルモン産生細胞の分化に重要な役割を果たしており,また畜産分野では動物個体の繁殖性および出生率に関与する遺伝子マーカーとしての利用が期待されている。下垂体発生過程において,ラットではE13.5下垂体原基ラトケ嚢でほぼすべての細胞がPROP1陽性となり,分化の進行に伴いPROP1の発現は減少していく。Prop1の転写制御因子として,転写因子SOX2やRBP-Jが候補とされるが未だ明確な転写制御メカニズムは明らかとされていない。一方,体軸形成や眼,神経系の発生に関与するレチノイン酸受容体(RAR),およびレチノイン酸合成酵素(RALDH)が下垂体原基において,Prop1とほぼ同時期に発現していることが報告されている。本研究では,Prop1の転写制御にレチノイン酸シグナルという新たな制御機構が関与している可能性を考え,解析を行った。【方法】(1)ラット下垂体の各発生段階におけるレチノイン酸受容体サブタイプの遺伝子発現の定量的PCRによる解析,(2)ラット胎仔期E13.5下垂体におけるレチノイン酸受容体および合成酵素の発現のin situ hybridizationによる解析,(3)マウスProp1上流約–3 kbまでの段階的欠失体レポーターベクターを用いたRARαによるProp1への転写活性作用の解析を行った。【結果】(1)各発生段階の下垂体においてRarおよびRxrのサブタイプの発現を確認されした。(2)ラット胎仔期E13.5において,Prop1を発現する領域にRarα,Raldh2,Raldh3の発現を同定した。(3)RARαはレチノイドec23添加時において,Prop1上流–2994 b~–1840 bおよび–1270 b~–441 bの2領域で転写活性作用を示した。以上の結果は,下垂体発生初期におけるProp1の転写に,レチノイン酸シグナルを介した制御機構が存在する可能性を示唆している。
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吉田 彩舟, 西村 直人, 菅野 尚子, 西原 大翔, 上春 浩貴, 加藤 たか子, 加藤 幸雄
セッションID: OR2-17
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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下垂体前葉は,性腺刺激ホルモン産生細胞を含めた5種類のホルモン産生細胞が存在し,個体の恒常性維持に寄与する内分泌器官である。近年,成体下垂体前葉においても,組織幹・前駆細胞が同定され,それらが細胞供給に寄与することが示されて注目を集めている。我々は下垂体前葉の幹・前駆細胞が,Marginal cell layerと前葉の実質層に,密着結合を介した2種類の微小環境(ニッチ)を形成することを報告しているが,その制御機構に関しては多くの点が不明である。そこで本研究では,下垂体の幹細胞ニッチを単離し,遺伝子発現解析ならびにin vitroでの幹・前駆細胞の制御機構の解明を試みた。ニッチの単離には,他の組織においてニッチが周囲の細胞とは異なる細胞外マトリックスにより維持されている点に着目し,タンパク質分解酵素に対する反応性の違いを利用し組織分散を行った。その結果,下垂体前葉の中に,コラゲナーゼとトリプシンの段階的処理でも分散されない細胞塊を見出した。この細胞塊の性質を解析した結果,細胞塊を形成する全ての細胞は,ホルモン陰性,かつ,幹・前駆細胞マーカーSOX2陽性であった。さらに,実質層ニッチで特徴的な因子の発現から,本細胞塊は2種類のニッチのうち,実質層ニッチであると結論付けた。次に,単離した幹細胞塊をマトリゲル上で培養し,各種成長因子や低分子化合物を添加することで,低頻度ながら前葉ホルモン産生細胞への分化誘導が可能なことを確認した。以上の結果は,タンパク質分解酵素を用いることで,簡便に実質層ニッチが単離可能であり,本細胞塊を用いることで下垂体ニッチにおける幹細胞の制御機構,ならびに多分化能の解析が可能であることを示唆していると考えられる。
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矢島 昂, 向井 悠太, 片岡 辰一朗, 杉村 智史
セッションID: OR2-18
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】近年,乳用牛の繁殖性低下が深刻化している。内分泌攪乱を伴う乳用牛の繁殖性低下において,急性ストレスだけでなく慢性ストレスも要因となりうることが報告されている。これまでに,跛行の乳用牛は健康な牛に比べ,乳中コルチゾール(COR)濃度は変化しないものの,発情前の乳中プロジェステロン(P4)濃度が十分に増加せず,繁殖成績が低下することが明らかになっている。一方,乳用牛の健康にとって横臥行動は重要であり,横臥行動を妨げることで視床下部-下垂体-副腎皮質軸の活動変化等,生理的ストレス応答を示す。本研究では,横臥行動と乳中P4濃度の関係を明らかにすることを目的とする。【方法】ゴムマットを設置したタイストール式牛舎で飼養されている分娩後30日以降のホルスタイン種泌乳牛4頭を供試した。試験は馴致期7日間,本試験期14日間の計21日間を1期とし,2期反転法で行った。対照区には敷料を投入せず,試験区には敷料として厚さ1 cm程度のオガクズを毎日投入した。本試験期初日にGnRH(100 μg),7日目にPGF2α(PG: 500 μg)を投与して発情の同期化を行った。本試験期間中の行動をビデオカメラにより観察するとともに午後搾乳時に生乳を採取した。横臥時間を算出し,乳中P4およびCOR濃度を測定した。本研究では採血によるストレス応答を排除するため生乳を検査サンプルとした。【結果および考察】4頭中1頭において,対照区に比べ試験区で有意に横臥時間が増加した(P<0.01)。この横臥時間に有意差が認められた個体では,試験区と比較し対照区でPG投与前の乳中P4濃度が有意に低下した(P<0.01)。一方,横臥時間に有意差が認められなかった個体では,対照区と試験区間で乳中P4濃度に違いは認められなかった。いずれの個体も対照区と試験区間で乳量および乳中COR濃度に違いは認められなかった。以上,横臥行動を阻害されると乳中COR濃度は変化しないものの,発情前の乳中P4濃度が十分に増加しない可能性が示された。
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太田 祥弘, 川手 憲俊, 稲葉 俊夫, 森井 浩子, 高橋 勝美, 玉田 尋通
セッションID: OR2-19
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】Lepidium meyenii(マカ)は南米原産のアブラナ科の植物であり,ヒトや家畜の生殖機能を向上させるという伝承がある。しかし,マカの繁殖機能に及ぼす作用には不明な点が多い。当研究室はマカエキス末(MACAXS®,TOWA CORPORATION)を6週間給与した雄ラットでは対照群と比べて血中テストステロン濃度が増加し,精巣ライディッヒ細胞のテストステロン産生能が増強されることを報告した(Ohta et al., Andrologia, 2016)。しかし,マカがライディッヒ細胞のテストステロン産生関連因子の発現に及ぼす影響は不明である。本研究ではラット精巣におけるステロイド産生関連因子のmRNA発現量に及ぼすマカエキス末給与の影響を調べた。【方法】8週齢のWistar系雄ラットにマカエキス末2%を含む飼料を6週間給与した。対照群にはマカエキス末を含まない飼料を給与した。精巣からRNAを抽出し,real time PCR法でステロイド産生関連因子であるLH receptor(LHCGR)とSteroidogenic acute regulatory protein(StAR)ならびにステロイド合成酵素のP450 cholesterol side chain cleavage enzyme(P450scc), 3β-hydroxysteroid dehydrogenase(3β-HSD),17α-hydroxylase/C17-20 lyase(P450c17)及び17β-hydroxysteroid dehydrogenase(17β-HSD)のmRNA発現量を測定した。【結果】マカエキス末給与群の精巣における3β-HSDのmRNA発現量は対照群と比べて有意に増加した。その他のmRNA発現量については群間で差はなかった。【考察】マカによる精巣テストステロン産生能増強に3β-HSDの発現量増加が関与するものと考えられる。
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中田 瑞浦, 髙榮 健太郎, 藤井 博, 富岡 郁夫
セッションID: OR2-20
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】コレステロール代謝に関与するFXRは肝臓において胆汁酸をリガンドとし,ターゲット遺伝子であるSHP(Small Heterodimer Partner)の発現を誘導し胆汁酸合成を制御している。また,腸管において胆汁酸トランスポーターの発現を制御するなど,これまでFXRは腸肝組織での機能が注目されてきた。しかしながら最近,卵巣や精巣などの生殖器官においてもFXRが存在する可能性が報告された。生殖器官ではコレステロールを原料として性ホルモンが合成されており,肝臓での機能と同じくFXRがコレステロール代謝に関与していると推察できるが,その機能は全く不明である。よって,本研究は卵巣におけるFXRの機能について解析した。【方法】ICR系未成熟メスマウスからPMSG投与後48時間で卵巣を採取し,顆粒層細胞については卵胞穿刺により,前胞状卵胞および胞状卵胞については機械的に採取した。実験I:顆粒膜細胞におけるFXR及びSHPの遺伝子発現をRT-PCRにより確認した。実験II:前胞状卵胞と胞状卵胞におけるFXR及びSHPの発現量を調べた。実験III:採取した顆粒膜細胞を①無添加培地,②胆汁酸添加培地,③FXRアゴニスト添加培地,④FXRアンタゴニスト添加培地で24時間培養し,FXR及びSHPの発現量を解析した。実験IV: FXRをノックダウンした顆粒層細胞のSHPの発現量を解析した。【結果】顆粒膜細胞でFXRおよびSHPの遺伝子発現が認められ,さらに前胞状卵胞から胞状卵胞へ発育するにつれFXR及びSHPの発現量が増加した。一方,リガンド類の添加実験では,無添加区と比較して胆汁酸およびアゴニスト添加区でSHPの発現量が増加し,アンタゴニスト添加区ではその発現が減少していた。さらに,FXRをノックダウンした場合,SHPの発現量が減少したことから,顆粒膜細胞においてFXR/SHPカスケードが存在し機能している可能性が示された。今後,FXR/SHPカスケードのターゲットを探索し卵巣における機能を解明する。
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Asrafun NAHAR, Hiroya KADOKAWA
セッションID: OR2-21
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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Obese heifers with hyperinsulinemia produce fewer transferable embryos than normal heifers, and lean heifers produce more unfertilized ova (Kadokawa et al. 2008). Oviducts synthesize granulocyte macrophage colony stimulating factor (GMCSF) and macrophage migration inhibitory factor (MIF) to promote fertilization and embryogenesis. This study evaluated the hypothesis that moderate, but not low and high, level of insulin stimulates GMCSF or MIF expression level in bovine oviduct epithelial cells (BOECs). In first, we confirmed the expression of insulin receptor (InsR) in both ampullae and isthmuses utilizing real-time PCR and fluorescent immunohistochemistry (FIHC). The primary site of InsR expression in ampullae and isthmuses is tunica mucosa. In next, both ampullar and isthmic BOECs from Japanese Black heifers were prepared, cultured, and passaged. Then, the cultured BOECs were treated with insulin (final concentrations were 0, 1, 20, and 5,000 ng/mL) for 24 hours. GMCSF or MIF mRNA and protein in BOECs were measured by real-time PCR and western blot, respectively. The cultured BOECs expressed InsR, GMCSF, and MIF. Both GMCSF and MIF expression were higher in ampullar or isthmic BOECs treated with 20 ng/mL insulin than those treated with 0, 1, or 5,000 ng/mL (P < 0.05). The 1 and 5,000 ng/mL insulin had no significant effect on the expression compared to 0 ng/ml insulin. In conclusion, moderate level of insulin stimulated both GMCSF and MIF expression in oviducts, whereas low and high level of insulin had weak stimulation, suggesting insulin may regulate GMCSF and MIF expression level in bovine oviducts also in vivo.
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前川 亮, 佐藤 俊, 城崎 幸介, 白蓋 雄一郎, 三原 由実子, 品川 征大, 岡田 真紀, 浅田 裕美, 竹谷 俊明, 田村 博史, ...
セッションID: OR2-22
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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背景:ヒトEstrogen receptor α(ESR1)は組織特異的に発現している。また複数の転写開始点を有するが,それらの転写制御メカニズムは不明である。今回,ESR1が組織特異的メチル化可変領域(T-DMR)を有し,T-DMRのDNAメチル化がESR1の発現を制御しているかについて検討した。方法と結果: ESR1を高発現(子宮内膜/乳腺),低発現(胎盤/皮膚)する組織において,転写開始点A(+1 bp),B(–321 bp),C(–1977 bp)近傍とその上流領域についてDNAメチル化状態をbisulfite sequence法で調べた。転写開始点A,BとCの近傍はいずれの組織も非メチル化状態であったが,AB上流の–1188から–790 bpの領域(T-DMR1)とC上流の–2953から–2302 bp(T-DMR2)は,高発現組織では低メチル化,低発現組織では高メチル化であった。転写開始点近傍を低メチル化に保ったまま,T-DMR1のみをメチル化させたコンストラクを用いてメチル化リポーター解析を行ったところ,T-DMR1のメチルによりレポーター活性は47.5%減少した。即ちT-DMRのDNAメチル化が実際に転写に関与することが示された。次に,モチーフ解析によりT-DMR1とT-DMR2に結合する可能性がある転写因子を検索し,EGR1を検出した。EGR1をノックダウンするとESR1の発現が有意に減弱した。子宮内膜間質細胞(T-DMR低メチル化・ESR1高発現)では,EGR1のT-DMRへの結合は,乳癌細胞株(T-DMR高メチル化・ESR1非発現)と比較して有意に高かった。結論:ESR1は転写開始点毎にT-DMRを有し,T-DMRのDNAメチル化がESR1の組織特異的な発現制御に関与していた。その機序の一つとして,DNAメチル化が転写因子EGR1のT-DMRへの結合を阻害していると推察された。
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城崎 幸介, 田村 功, 白蓋 雄一郎, 品川 征大, 岡田 真紀, 李 理華, 前川 亮, 竹谷 俊明, 浅田 裕美, 田村 博史, 杉野 ...
セッションID: OR2-23
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【背景と目的】子宮内膜間質細胞(ESC)の脱落膜化では,インスリンシグナル関連遺伝子(INSR,IRS,MAPK10,AKT3)のmRNA発現の上昇と伴にグルコースの取り込み能が増加することを報告してきた。今回は,脱落膜化におけるグルコースの役割を検討した。【方法】IRBの承認と患者の同意を得て分離したESCを用いた。脱落膜化におけるグルコースの役割を検討するために,通常培養液(グルコース:24 mM)と低グルコース培養液(グルコース:0 mM)による培養下で,4日間cAMP(0.5 mM)により脱落膜化を誘導し,1)脱落膜化マーカーであるIGFBP-1とPRLのmRNA発現と,IGFBP-1とPRLの発現に関与する転写因子FOXO1のmRNA発現を定量RT-PCRにて調べた。2)FOXO1をsiRNAによりノックダウンしたESCについてcAMPにより脱落膜化を誘導し,IGFBP-1とPRLのmRNA発現を測定した。3)FOXO1プロモーター領域について,転写活性化に働くヒストン修飾であるH3K27acをChIP-qPCRにより調べた。【結果】1)脱落膜化によりIGFBP-1,PRLとFOXO1のmRNA発現は,有意に増加したが,この増加は低グルコース培養により抑制された。2)FOXO1をノックダウンしたESCでは,脱落膜化によるIGFBP-1とPRLの発現の上昇が抑制された。3)FOXO1プロモーター領域のH3K27acは脱落膜化により増加するが,この増加は低グルコース培養により抑制された。【結論】脱落膜化により細胞内への取り込みが増加するグルコースは,転写因子FOXO1プロモーター領域のH3K27ac増加を介してFOXO1の遺伝子発現を増加させることによって,脱落膜化に促進的に作用することが明らかとなった。
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美辺 詩織, 家田 菜穂子, 渡辺 雄貴, 井上 直子, 上野山 賀久, 前多 敬一郎, 束村 博子
セッションID: OR2-24
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】発達期の脳は可塑性が高く,内分泌攪乱物質などの環境因子によって成熟後の生殖機能が撹乱されることが知られている。本研究では,視床下部弓状核に局在し性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/黄体形成ホルモン(LH)分泌制御を担うkisspeptin/neurokinin B/dynorphin A(KNDy)ニューロンに着目し,新生仔期の外因性エストロジェンによるパルス状LH分泌不全を引き起こす中枢メカニズム解明を目的とした。【方法】雌ラットの新生仔に,生後0日から10日まで毎日estradiol benzoate(EB群)または溶媒である落花生油(対照群)を投与した。成熟後に性腺除去を行い,その2週間後に6分間隔3時間の採血を行い,LH分泌動態を解析した。また同処置を施したラット脳切片を用いin situ hybridization法により,Kiss1(kisspeptin遺伝子),Tac3(neurokinin B遺伝子),Pdyn(dynorphin A遺伝子)のmRNA発現を解析した。またエストロゲン受容体(ER)αKO,ERβKO,および野生型(WT)雌マウスを用いて出生1,3,5,7,および9日目にEBを投与し,弓状核におけるKiss1のmRNA発現を解析した。【結果・考察】対照群ラットでは明瞭なLHパルスと,弓状核に多数のKiss1発現細胞が観察されたが,EB群ではLHパルスは殆ど認められず,弓状核Kiss1発現が有意に抑制された。一方,Tac3,Pdyn発現は2群ともに観察され,差は認められなかった。EB投与により,WTおよびERβKOマウスにおけるKiss1発現細胞数は有意に減少したが,EB投与ERαKOマウスでは多数のKiss1発現細胞が認められた。以上の結果から,新生仔期の外因性エストロジェンはERαを介してKNDyニューロンに作用しKiss1遺伝子発現を特異的に抑制し,生涯にわたってKiss1発現を抑制することでパルス状LH分泌不全を引き起こすことが示唆された。
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石山 大, 前多 敬一郎
セッションID: OR2-25
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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近年,乳用種経産牛における受胎率の低下が問題となっている。経産牛における低受胎の要因には子宮内膜炎,子宮頸管炎,尿腟など,腟検査により推測可能な疾病も多い。よって,受胎率の向上のためには,発情時の腟検査により腟内粘液の異常を的確に診断し授精の可否を判断することが重要である。腟検査には腟鏡が多く用いられているが,腟内の粘液採取し目視化で直接評価するVaginal Mucus Character(VMC)の有用性も指摘されている。そこで,乳用種経産牛の発情時における腟内粘液異常の実態を腟鏡および粘液採取により診断し,その受胎性を検討した。【材料および方法】2015年9月から2016年6月の間に千葉県北東部および茨城県南西部で人工授精依頼と受精卵移植希望のあった34農場の乳用種経産牛336頭(延べ556回)の発情の診断に腟鏡検査,腟内粘液採取によるVMCの評価,直腸検査を行った。尿腟は貯留の程度(軽度,中度,重度),VMCは粘液無しおよび透明粘液をスコア0,やや白みがかった粘液をスコア1´,10%までの膿を粘液に認めたものをスコア1,50%までの膿を粘液に認めたものをスコア2,50%以上の膿または出血を粘液に認めたものをスコア3として評価した。【結果】尿腟の診断率は腟鏡と腟内粘液採取を併用した場合は12.8%(軽度8.5%,中度2.5%,重度1.8%),腟鏡のみにより診断した場合は6.1%であった。VMCは腟鏡と腟内粘液採取を併用した場合は28.6%(スコア1: 12.2%,スコア2: 5.6%,スコア3: 10.7%)がスコア1以上であったのに対し,腟鏡のみにより診断した白色粘液は20.9%であった。【考察】腟鏡と腟内粘液採取を組み合わせて腟検査を行うことで,尿腟またはVMCスコア1以上を36.2%発見し,経産牛の発情時における粘液異常は多いことが分かった。また,粘液異常を有していた牛は受胎性が悪かったことからも,粘液採取を併用した腟検査の実施し授精の可否をより慎重に検討する必要性が示唆された。
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緒方 和子, 竹内 絢香, 佐藤 あかね, BORJIGIN Sarentonglaga, 山口 美緒, 原 明日香, KHURCHABIL ...
セッションID: OR2-26
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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【目的】盲導犬をはじめとする高い遺伝資質の求められるイヌの繁殖および育種改良に対し,凍結保存精液を用いた人工授精が有効と期待される。しかしながら,現在のイヌ凍結精子は融解後の質の低下が著しく,受胎性が低い。本研究では,イヌ凍結融解精子の質の向上を目指し,凍結希釈液に添加する耐凍剤の細胞毒性および凍結時に生じる氷晶によるイヌ凍結精子への傷害の軽減を目的に検討を行った。【方法】ラブラドール・レトリーバー種9頭より精液を採取し,卵黄,トリス,クエン酸,糖類および抗酸化剤を含む一次希釈液,ならびに耐凍剤としてグリセロール(GL)を含む二次希釈液により希釈処理を行った。凍結は,密閉箱内で液体窒素(LN2)蒸気にストローを曝し平衡した後,LN2へ浸漬することで行った。GL濃度を0,1.5,3,6または9%に設定し,至適濃度を検討した。凍結平衡時間を15または30分,LN2液面からストローまでの距離を1,4,7または10 cmとし,凍結速度を–12.0,–6.7,–4.3または–2.8℃/minに設定することで,至適凍結条件を検討した。凍結融解後の評価として,運動活性および生存指数の経時評価を行った。また,フローサイトメトリーにより,凍結融解0および24時間後における生存性(Live/Dead染色)およびミトコンドリア活性(JC-1染色)を評価した。【結果】運動活性については,融解直後では,全ての凍結速度区において,GL濃度6%区で無添加区と比較して高い値となった(P<0.05)。融解24時間後では,凍結速度1㎝区で他の凍結速度区と比較して高い傾向が得られた。ミトコンドリア活性については,融解24時間後では,GL濃度3%区で高い値が得られた。凍結平衡時間については,GL濃度による精子生存指数の有意な変化はみられなかった。以上より,凍結速度–12℃/minおよびGL濃度3%の凍結条件は,イヌ精子凍結時の氷晶形成による傷害の軽減ならびに融解後のミトコンドリア機能の保護に有効である可能性が示された。
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中村 翔, 木村 康二, 美辺 詩織, 大石 真也, 大蔵 聡, 松山 秀一
セッションID: OR2-27
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】現在行われている過剰排卵処置では,回収胚の数と品質にばらつきが出るといった問題が度々生じている。また,現在の過剰排卵処置では,黄体形成ホルモン(LH)分泌の抑制が起こることが知られており,このLH分泌抑制が卵子の成熟過程に影響を及ぼし,前述した問題を引き起こすと考えられるが,その改善は未だなされていない。視床下部弓状核に局在するニューロキニンB,ダイノルフィンおよびキスペプチンが共存するKNDyニューロンとよばれるニューロン群は生殖機能の制御に重要な役割を果たすと考えられており,近年,ウシにおいてニューロキニンB受容体作動薬であるsenktideの末梢投与がLH分泌を亢進することが報告されている。そこで本研究では,ウシの過剰排卵処置時においてsenktideの末梢投与が,性腺刺激ホルモン分泌および回収胚の品質に及ぼす影響について検討を行った。【方法および結果】黒毛和種繁殖雌牛(n=12)を用い,ブタ卵胞刺激ホルモン製剤を3日間漸減投与することにより過剰排卵処置を行った。過剰排卵処置開始72時間後からニューロキニンB受容体作動薬であるsenktide(30または300 nmol/min)を静脈内に2時間投与し,投与前後におけるLHの分泌動態を調べた。また,発情後7日目に採胚を行い,回収胚の品質をIETSグレードで評価するとともに,CodeⅠまたはCodeⅡの胚盤胞期胚からRNAを抽出し,DNAマイクロアレイおよびQPCR解析を行った。過剰排卵処置牛へのsenktideの末梢投与は,LH分泌を亢進した。また,senktideの投与により回収胚に対する高品質胚の割合が増加した。さらに,胚における遺伝子発現パターンが変化し,シトクロム酸化酵素1などの代謝亢進に関与する遺伝子発現が上昇した。以上の結果から,過剰排卵処置牛へのsenktideの投与はLH分泌を亢進させるとともに,胚における代謝亢進に関与する遺伝子発現を上昇させ,胚の品質を向上させる可能性が示された。
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古沢 みのり, 遠藤 なつ美, 田中 知己
セッションID: OR2-28
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】牛の子宮内感染や分娩後の子宮修復状況を評価する手段の一つとして子宮内の臨床細菌学的検査が実施される。本研究では,牛において子宮灌流法により採材された回収液の遠心濃縮後のサンプルについて細菌培養を行い,子宮内細菌学的検査法としての有用性について検討した。【方法】分娩後3週(分娩牛,n=9)および分娩後1年以上経過した非泌乳(対照牛,n=4)ホルスタイン種牛を用いた。分娩牛および対照牛についてそれぞれ妊角側および任意の子宮角にバルーンカテーテルを挿入し,生理食塩液50 mlを1回注入して,灌流液を回収した。回収液のうち1 mlを15,000 rpmで10分間遠心し,得られた沈渣を100 μlの生理食塩液に浮遊させ濃縮液とした。濃縮液,原液,および10倍希釈した検体を100 μlずつ,羊血液寒天培地に接種し,好気条件下で34℃,48時間培養した。検体を接種した複数枚の培地のうち,少なくとも1枚で特定の細菌のみの増殖が10コロニー以上認められたものを細菌感染が疑われるものと評価し,それらの細菌について性状検査を行った。【結果】分娩牛における濃縮液,原液,10倍希釈液の平均(範囲)コロニー数はそれぞれ,45.7(3~208),6.1(0~19.5),および3.5(0~22.5)であった。一方,対照牛の濃縮液および原液の平均コロニー数はそれぞれ,27.9(0.25~235),および1.3(0~7)であり,濃縮液および原液ともに分娩牛のコロニー数は対照牛に比べ高い傾向にあった(p<0.1)。全19例において細菌感染が疑われた例は濃縮液および原液でそれぞれ7例および2例であり,濃縮液のほうが有意に多かった。分娩牛および対照牛における平均コロニー形成単位(CFU/ml)はそれぞれ1,038(12.25~5,100)および8.1(6~10.25)であり,グラム陰性桿菌やグラム陽性球菌が検出された。【結論】子宮灌流液を遠心濃縮することにより,感染が疑われる特定の細菌の検出感度が向上することが示唆された。
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池田 泰彦, 北原 豪, 邊見 広一郎, 小林 郁雄, 大澤 健司
セッションID: OR2-29
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】種雄牛の供用開始には6年以上かかり,その選抜および育成には多くの労力と経費を要する。種雄牛候補牛の精巣における将来の不可逆的異常が早期に予測できれば,それ以降の選抜から除外することで,経費軽減が可能となる。ニードルバイオプシーは侵襲性が低い生検法として知られているものの,春機発動前のウシ精巣におけるニードルバイオプシーがその後の発育に及ぼす影響を検証した報告は見当たらない。そこで本実験では,その影響を超音波検査,サーモグラフィー検査,および組織学的検査により検証した。【方法】宮崎大学住吉フィールドにて飼養の黒毛和種雄子牛3頭を供試,採材は生後6日以内を0週齢とし4週齢,8週齢でニードルバイオプシーを行い,その後の発育に及ぼす影響を4週間後(8週齢)に検査した。鎮静後直ちに精巣の超音波検査を行いエコー輝度の変化を観察,陰嚢周囲長を測定,陰嚢を剃毛,消毒後に14Gバイオプシーニードルを用い右側精巣から組織を採取した。採取後,サーモグラフィーを用いて左右陰嚢の表面温度を比較した。採取した組織を10%ホルマリンで固定し,パラフィン包埋後4 μmで切片を作成,HE染色にて精細管15本あたりの直径の平均を計測した。【結果】8週齢においてエコー輝度の変化,陰嚢表面温度の左右非対称は認められず,陰嚢周囲長(10.66±0.23 cm : 平均±SD)および精細管直径(60.95±3.11 μm)ともに同週齢の無処置精巣と比較して差は認められなかった。以上より,ウシにおける生後4週齢でのニードルバイオプシーは,その後4週間の精巣組織の発育に影響を及ぼさないことが示唆された。
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渡辺 連, 木村 直子
セッションID: OR2-30
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】哺乳類の原始卵胞は,胎仔期に形成され,出生前後に大量消失し,残存卵胞数がその個体の生殖寿命を左右するものと考えられている。近年,この形成と消失に細胞内タンパク質リサイクル機構であるオートファジー(ATG)の関与が指摘されている。我々は,抗酸化物質グルタチオンの維持に働くシスチン・グルタミン酸トランスポーター遺伝子を欠損したマウスでは,若齢(2ヶ月齢)および老齢(13~15ヶ月齢)の野生型に比べて残存原始卵胞数が高く保たれていることを明らかにしている。また,その卵ではATGの抑制に働く哺乳類ラパマイシン標的タンパク質のmRNA発現が低いことも明らかにしている。これらの結果から,ATGの誘導は原始卵胞数の増加をもたらすという仮説を立て,ATGの主要な誘導系である栄養飢餓(授乳制限)を用いて新生仔マウス卵巣へのATGの誘導と原始卵胞数の上方制御を検証した。【方法】出生後12~36時間の授乳制限後のC57BL/Jマウスの卵巣を回収した。これらの卵巣で連続切片を作成し,継時的に卵巣内原始卵胞数を計測した。また,同様の卵巣を組織蛍光免疫染色とウエスタンブロッティングに供し,ATG関連タンパク質(LC3B,Lamp1,p62,Caspase 3, 9)の発現解析を行った。【結果および考察】原始卵胞数は出生後60時間で上昇のピークに達し,60時間以降から一次卵胞が確認された。また,授乳制限区では,対照区に比べ原始卵胞数が高い傾向がみられた。LC3BとLamp1タンパク質は原始卵胞で検出された。特に,膜結合型LC3B(LC3-II)の発現量は,授乳制限区では,対照区に比べ高い傾向がみられた。Lamp1の発現量は時間経過に伴い高まる傾向がみられたが,授乳制限区と対照区の間に大きな差はみられなかった。p62の発現量は,授乳制限区において出生後の時間経過に伴い減少する傾向がみられた。両区いずれもCaspase 3および9の発現はほぼ検出されなかった。以上の結果から,新生仔マウスでは授乳制限によりATG誘導を介し,原始卵胞数が上方制御されている可能性が示された。
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谷本 連, 諸白 家奈子, 河野 友宏, 平尾 雄二, 尾畑 やよい
セッションID: OR2-31
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】体外で卵子形成の全過程を行う技術の開発は,生殖細胞の研究や,産業・医療分野でも応用が期待される。しかし始原生殖細胞を含む受精後12.5日目(E12.5)のマウス胎仔生殖巣の器官培養では機能的な卵子を得るには至っていない。一因として,卵胞形成不全が挙げられる。発表者らはこれまでに網羅的遺伝子発現解析により,in vitroで分化した卵巣ではステロイドホルモン応答に関わる遺伝子で差次的発現がみられ,またAmhの発現がin vivoに比して高発現することを報告した。本研究では,卵胞形成を遂行させるためのin vitro系の構築を目的とし,ステロイドホルモン受容体の阻害剤を用いて卵巣の器官培養を行った。【方法】マウスE12.5胚の卵巣をTranswell-COL上で10%FBS添加alphaMEM培地にて17日間培養した。培養5–11日目にはエストロゲン,アンドロゲンあるいはプロゲステロン受容体の阻害剤を添加した。培養17日目に二次卵胞をタングステン針で単離して卵胞形成を評価した。また培養7日目にRNAおよびタンパク質を抽出し,qRT-PCR法およびウエスタンブロット法によりAmhの発現を定量した。【結果】エストロゲン受容体にはESR1およびESR2のサブタイプが存在する。その両方を阻害するICI182780(ICI)を添加した場合に,卵胞形成が最も顕著に改善され,1卵巣あたり36.8個の二次卵胞が回収された。無添加条件(2.7個)に比べ劇的に改善した(p<0.001)。さらにESR1およびESR2それぞれに特異的な阻害剤であるMPPあるいはPHTPPを添加したところ,MPPを添加した場合には卵胞形成が改善された(27.6個,p<0.001)。一方,アンドロゲンあるいはプロゲステロン受容体の阻害剤,KW-365あるいはMifepristoneをそれぞれ添加した場合には,卵胞形成は改善されなかった。またICI添加条件で培養した卵巣では,無添加条件で培養した場合に比べてAmhの発現が1/4以下に減少し,in vivoと同程度となった(p=0.78)。MPP添加条件ではAmhの発現量は1/2以下に低下した。このことから培養卵巣においてAmhはEsr1の制御下で発現し,卵胞形成に阻害的に働くと考えられた。
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Doungrut TUNGMAHASUK, Riot TERASHIMA, Shirt KURUSU, Mitsumori KAWAMINA ...
セッションID: OR2-32
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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Kisspeptin, NKB and dynorphin are co-expressed in KNDy neurons in the hypothalamus. We recently reported that granulosa cells are also KNDy cells and the expression of those peptides is stimulated by preovulatory LH surge, but relationship between these peptides is unknown. In the present study, mutual effect of these peptides on respective mRNA expression was investigated. Granulosa cells were prepared from eCG treated immature female rats. Cells were treated with hCG 0.01 IU/ml and/or kiss-10 (10–11M), NKB (10–6M) or dynorphin (10–6M) after 24 hours of preincubation. 1) The expression of GnRH, kisspeptin, dynorphin and NKB were all augmented by hCG. 2) Dynorphin and hCG additively augmented both NKB and kisspeptin expression. Kiss-10 with hCG also stimulated both dynorphin and NKB expression, while NKB inhibited hCG stimulated kisspeptin and dynorphin expression. 3) Kiss-10 showed no effect on GnRH expression, while GnRH stimulated annexin A5 expression. Surprisingly GnRH agonist enhanced kisspeptin expression. 4) In vivo gene expression showed acute increase of kisspeptin and dynorphin after hCG injection, while NKB expression was delayed and sustained. 5) hCG treatment was demonstrated to proceed luteinization by p21, p27, LH receptor and FOXO1 expression and progesterone production. These data demonstrate that kisspeptin and dynorphin are stimulated their expression by hCG and augment each other in granulosa cells. NKB seems to cease the enhancement of kisspeptin and dynorphin by LH. The novel sequence of events found in this study induced by hCG/LH is hypothesized to be beneficial for luteinization of granulosa cells.
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羽柴 一久, 小林 純子, 佐野 栄宏, 前田 恵, 木村 吉伸, 奥田 潔, 木村 康二
セッションID: OR2-33
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】Epidermal growth factor receptor(EGFR)に結合するN型糖鎖上のcore fucoseは,epidermal growth factor(EGF)のEGFRへの結合に重要である。EGFは黄体細胞の生存を維持し,EGFRへの結合親和性は機能黄体において高いことから,黄体においてもEGFRの黄体維持作用にcore fucosylationの関与が考えられる。本研究では,1) 発情周期を通じたウシ黄体のcore fucosylationレベルとfucose含有糖タンパク質の局在,2) 黄体細胞のEGFR糖鎖のcore fucosylationの有無,3) EGFの黄体機能維持作用に及ぼすcore fucosylationの影響を検討した。【方法】1) 発情周期を通じた黄体(初期:Days 2–3,形成期:Days 5–6,中期Days 8–12,後期:Days 15–17,退行期:Days 19–21)の膜画分のcore fucosylationレベルをfucoseを認識するAALレクチンを用いて検討し,fucose含有糖タンパク質の局在を解析した。2) 中期黄体細胞から免疫沈降法によりEGFRタンパク質を回収後,core fucosylationの有無を調べた。3) 中期黄体細胞にα-fucosidase(0.01,0.1 units/ml)を添加してcore fucoseを切断し,16時間後のcore fucosylationレベル,上清中のprogesterone(P4)濃度と生存率を検討した。黄体細胞にα-fucosidase(0.1 units/ml)とEGF(5,10 ng/ml)を単独又は組み合わせて添加し,24時間後のP4濃度と生存率を調べた。【結果】1) 黄体の糖タンパク質のcore fucosylationレベルは後期,退行期と比較して,初期,形成期と中期に高く,fucose含有糖タンパク質は黄体細胞に局在した。2) 黄体細胞のEGFR糖鎖はcore fucosylationを受けていた。3) 黄体細胞の糖タンパク質のcore fucosylationレベルと生存率は,α-fucosidase添加区において減少し,P4産生に変化はなかった。EGFによる生存率の増加は,α-fucosidaseの共添加により減少し,P4産生に変化はなかった。以上より,EGFの黄体機能維持作用にEGFRのcore fucosylationが重要であり,core fucosylationの低下が黄体の構造的退行に関与する可能性が示された。
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入江 結唯, 羽柴 一久, 木村 康二, 奥田 潔
セッションID: OR2-34
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】雌ウシならびにヤギにおいて黄体退行時に血中testosterone(T)濃度が一時的に上昇する。また,ヤギへのT合成阻害剤投与によってTの血中の濃度上昇を抑制すると,黄体の寿命が延長することから,Tは黄体退行に関与すると考えられている。このようにTが黄体退行に関与することが示唆されているが,そのメカニズムは明らかではない。本研究では,ウシ黄体退行機構を解明することを目的とし,発情周期を通じた黄体組織におけるTの受容体であるandrogen receptor (AR) mRNA発現の変化ならびに中期および後期黄体細胞の機能に及ぼすTの影響について検討した。【方法】食肉センターより採取した卵巣を肉眼的所見により排卵日を0日として,初期(Days 2–3),形成期(Days 5–6),中期(Days 8–12),後期(Days 15–17)および退行期(Days 19–21)に分類した。その後,各周期の黄体組織におけるAR mRNA発現量を定量的RT-PCR法により検討した。また,中期および後期黄体から単離した黄体細胞を一晩培養後,T(10,100および1000 pg/ml)を添加し,24および48時間後の上清中progesterone(P4)濃度をenzyme immunoassay(EIA)により,細胞生存率をMTT assayにより測定した。【結果および考察】発情周期を通じた黄体組織におけるAR mRNA発現量は,初期および形成期と比較して後期において有意に高かった(P<0.05)。中期および後期黄体細胞における24および48時間培養上清中P4濃度においてTの影響は認められなかった。また,中期黄体細胞における細胞生存率は,いずれの培養時間においてもTの影響は認められなかった。一方,後期黄体細胞における細胞生存率は,24時間培養した実験区ではTによる影響は認められなかったが,48時間において無添加区と比較して,T添加区(100および1000 pg/ml)において有意に減少した(P<0.05)。本研究より,黄体退行時に上昇する血中Tは後期黄体に作用し黄体細胞の生存性を減少させることが明らかとなり,Tが構造的黄体退行に関与する可能性が示された。
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小林 純子, 岩永 敏彦, DUNCAN Colin W.
セッションID: OR2-35
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】黄体は妊娠の成立と維持に必須なプロゲステロンを産生するが,妊娠が成立しない場合,黄体は速やかに退行する。ウシやマウスでは,子宮より産生されるプロスタグランジンF(PGF)が黄体の退行開始に重要な役割を果たすが,子宮からのPGFはヒト黄体の退行に関与しない。ヒト黄体では,黄体細胞自身が産生する因子(TGFßスーパーファミリー蛋白)が黄体退行作用をもつが,黄体内におけるプロスタグランジンの作用は不明である。本研究では,ヒト黄体で産生されるプロスタグランジンの働きを検討した。【方法】英国エジンバラ大学にて患者の同意のもと採取した黄体周期を通じたヒト黄体組織および体外受精治療のためにエジンバラ大学もしくは北海道大学病院に来院した患者より提供された卵胞液を実験に用いた。黄体組織および分離培養した黄体化顆粒層細胞(LGCs)を用いて,リアルタイムPCR法と免疫組織化学により,遺伝子および蛋白質の発現を解析した。【結果】プロスタグランジンE(PGE)産生酵素(PTGES)は中期黄体で強く発現するが,PGF産生酵素(AKR1B1,AKR1C1−3)は後期および退行期黄体で発現が増強した。PGEは,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と同様に,黄体細胞におけるステロイドおよびPGE産生を刺激し,黄体退行因子の発現を抑制した。一方,PGFは顕著な作用を示さなかった。PTGESは顆粒層黄体細胞の細胞質に発現し,黄体組織におけるPTGESの発現はプロゲステロン合成酵素(HSD3B1)の発現と正の相関関係にあった。一方,PGF産生酵素であるAKR1C3は,PTGESおよびHSD3B1の発現と負の相関関係にあった。LGCsにおけるPTGESの発現は培養日数とともに減少するが,AKR1C3の発現は増加した。【考察】ヒトでは,黄体の退行に伴いPGE/PGF産生のバランスが変化することが明らかとなった。ヒト黄体の退行には,PGFの作用よりもPGE産生の低下がより重要であると考えられる。
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正木 魁人, 八木 瑞貴, 角田 茂, 坂西 俊太, 久和 茂, 高島 誠司
セッションID: P-4
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】乏精子症及び無精子症の原因は未だ解明されておらず治療法開発の見通しすらない。最近,乏精子症及び無精子症患者精巣におけるインターロイキン1受容体アンタゴニスト(Il1rn)の発現低下が報告された。インターロイキン1(Il1)は炎症や感染防御に重要な役割を持つ炎症性サイトカインの一つであるが,Il1rnはIL1を拮抗阻害し炎症を抑制する。また,無菌性の慢性炎症は造血幹細胞システムの変質を招くことが知られている。こうした背景から我々は『Il1rn発現低下が,IL1シグナル過剰入力による無菌性の慢性炎症を惹起し,精子幹細胞システムを破綻に導く』という仮説を得た。本研究では,上記仮説の真偽の検証を目的とした。【方法】Il1rn欠損マウス(⊿Ra),Il1r2欠損マウス(IL1のおとり受容体遺伝子欠損マウス:⊿R2),Il1rn, Il1r2両遺伝子欠損マウス(⊿Ra⊿R2)より精巣を回収し,病理切片作製,定量的RT-PCRに供した。【結果】⊿Ra,⊿R2は成獣において妊孕能,精子形成に異常は見られなかったが,より強力なIL1シグナルが入力される⊿Ra⊿R2で以下のフェノタイプを見出した。①妊孕能の喪失,②精巣重量の減少,③精巣上体における伸長精子の喪失と円形精子細胞様細胞の異所性,④精細管における伸長精子の減少,⑤ライディッヒ細胞の退縮。これら⊿Ra⊿R2の精巣病態はLHKO/LHrKOマウスのそれと類似していた。よって⊿Ra⊿R2の病態はライディッヒ細胞の退縮によるテストステロン濃度の低下が原因だと考えられ,今後,ライディッヒ細胞退縮の原因を追究する予定である。さらに,IL1シグナル過剰入力が不妊病態の発症・形成にどのように関与するのかを明らかにすると同時に,精子幹細胞活性への影響についても検証したい。
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足立 晴彦, 八木 瑞貴, 高島 誠司
セッションID: P-5
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】脊髄損傷患者では精巣機能が低下し不妊を呈することが知られており,末梢神経による精巣機能制御が予想される。本研究では,精巣機能制御における末梢神経の役割を明らかにすることを目的とする。【方法】11dppのC57BL/6N マウスに除交感神経剤6-hydroxydopamine(6-OHDA : 200 µg/testis)を精巣内投与し,5~7 wk後に精巣を回収,解析を行った。まず,病理切片を作製し,精子形成の評価をジョンソンスコアにて数値化した。また,Sulfo-NHS-biotinを精巣内注入し,精細管内への流入の有無を確認することによって血液精巣関門の機能評価を行った。【結果】6-OHDA処置精巣において,伸長精子細胞の減少が見られるとともに,ジョンソンスコアの低下が確認された。さらに,Sulfo-NHS-biotinの精細管内への漏洩も確認された。これらの結果は,円形精子細胞から伸長精子細胞への成熟過程・血液精巣関門を構成するセルトリ細胞の機能において,交感神経が重要な役割を担っていることを示している。【考察】ライディッヒ細胞が産生する精巣内のテストステロンは円形精子細胞から伸長精子細胞への移行,および血液精巣関門の機能に重要であることが知られている。精巣内交感神経除去が引き起こす現象は,テストステロンの欠乏による精巣機能異常と類似している。このことから,6-OHDA処置精巣では,テストステロン産生あるいはその作用メカニズムに異常をきたし,精子形成不全が引き起こされている可能性が考えられる。今後,ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生メカニズム,あるいはセルトリ細胞におけるテストステロン作用メカニズムが正常に機能しているのかを検討する予定である。
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伊藤 達矢, 佐々木 えりか, 今村 公紀
セッションID: P-6
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
会議録・要旨集
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【背景・目的】我々はこれまでに霊長類であるコモンマーモセットの精子形成において,マウスと異なる遺伝子発現やDNAのメチル化状態を経ることを報告してきた。その中で,幼年期のコモンマーモセット精細管内腔にゴノサイト由来の細胞を発見した。この細胞は興味深いことに減数分裂を介してアポトーシスを起こす。この現象は霊長類において出生から性成熟に至るまでに長期の性的に未成熟な時期が介在している事に関連していると考えられ,そのメカニズムおよび生物学的意義に興味が持たれる。近年マウスにおいてはアポトーシスのメカニズムとして,H4のシトルリン化が関連していることが確認されており,アポトーシスおけるエピジェネティック修飾動態の重要性が増している。本研究では,幼年期コモンマーモセットの精子形成過程における精細管内腔細胞のアポトーシスに関して,エピジェネティック修飾動態に着目し,シトルリン化をはじめとしたヒストン修飾やその制御因子の発現パターンの解析を行った。【方法】実験にはコモンマーモセットの精巣切片を用いて,蛍光免疫染色を行った。パラフィン包理した組織切片を脱パラフィン処理した後,抗原賦活化を行った。次にブロッキングを行い,一次抗体,二次抗体,核染色をした後,封入を行った。一次抗体としては,H3のシトルリン化,メチル化,アセチル化,リン酸化に関連したものを使用した。【結果】幼年期のコモンマーモセット精細管内腔のゴノサイト由来の細胞において,H3のシトルリン化を確認した。また,この細胞と基底膜のゴノサイトにおけるH3のシトルリン化とを比較すると精細管内腔細胞で明らかに強い修飾を示した。この細胞間において,アポトーシスマーカーの発現後でH3K4me2, H3K27me3, H3K36me3の修飾動態の変化を確認したことに加えて,DNA脱メチル化酵素の発現を確認した。これらの事から,コモンマーモセット精細管内腔細胞において特異的なエピジェネティック修飾動態とアポトーシスとの関連が新たに示唆された。
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久田 尚人, 久尾 俊輔, 島田 昌之, 山下 泰尚
セッションID: P-7
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】Transferrin(TF)はFe3+と複合体を形成し,血中を介して末梢組織にFe3+を供給する担体タンパク質である。我々は卵胞発育期に卵胞内に蓄積するTF-Fe3+が顆粒層細胞の増殖,卵胞膜におけるCYP11A1やCYP17A1や顆粒層細胞のCYP19A1活性化を介してアンドロゲン(T4)とエストロゲン産生に関与しうることを報告した。精巣においても卵巣と同様にCYP11A1やCYP17A1によりアンドロゲン(T4)が産生され,それが精子幹細胞増殖や精子形成に重要であることから,精巣においてもTF-Fe3+が重要であると示唆された。本研究では,低鉄モデルマウスを作成し造精機能および精子機能に及ぼす影響を検討した。【方法】3週で離乳させたC57BL/6オスマウスを低鉄飼料(鉄含有量0.001%未満)で飼育した鉄欠乏モデルマウス(LF)を作出した。対照区には通常飼料で同期間飼育したマウスを使用した。Tf mRNAが発現することが知られる肝臓をポジティブコントロールとして対照区の精巣におけるTf発現を比較した。また対照区の精巣におけるTfr1発現,TFR1局在を検出した。さらに対照区とLFを用いてFe3+濃度,Cyp17a1発現量,精巣T4濃度,精巣内景,精巣上体精子奇形率および精子濃度,体内受精能を比較した。【結果】対照区の精巣におけるTf発現はポジティブコントロールの肝臓と比較し低値を示した一方,Tfr1は高発現しており,TFR1はライディッヒ細胞に局在していた。LFのFe3+濃度,Cyp17a1発現およびT4濃度は対照区と比べ有意に低下した。LFの精巣形態は対照区と同等で正常であり,精粗細胞,精母細胞,精子細胞,精子数は変化しなかった。回収直後のLFの精巣上体由来精子の奇形率は対照区に比べて有意に増加した一方,精子濃度とATP量,体内受精能は有意に低下した。以上の結果から,TF-Fe3+は精巣におけるT4濃度および精子運動を担保し,その欠乏は雄性不妊の一因になると考えられた。
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貴志 かさね, 内田 あや, 長澤 佳也, 井後 雅博, 羽入田 知美, 三浦 健人, 鈴木 仁美, 高瀬 比菜子, 金井 正美, 九郎丸 ...
セッションID: P-8
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】哺乳類の精巣では,曲精細管で産生された精子は管腔内を運ばれ,直精細管・精巣網・精巣輸出管を通り,精巣上体で貯蔵される。精細管の基部である直精細管領域には,細胞質を精巣網側へと突出させ弁様の構造をした特殊なセルトリ細胞が存在する。我々はこれをセルトリバルブと呼び,この構造に着目して研究を進めている。セルトリバルブには未分化精原細胞が集積し,精原幹細胞ニッチ因子であるGDNFが高発現しており,哺乳類における固定的精原幹細胞ニッチとしての可能性を示唆している(第106回本大会,Aiyama et al., 2015)。その後,セルトリバルブの特性を解析する中で,セルトリバルブの形成には精巣内における,精巣網/セルトリバルブ/曲精細管という位置関係が,更には精巣網からセルトリバルブへのシグナルが,重要であることが示唆された(第107回,108回本大会)。今回の発表では,セルトリバルブ構造の破壊によるセルトリバルブの機能解明及び,セルトリバルブ領域と精巣網・曲精細管の遺伝子発現の比較解析による分子基盤の解明に関して検討したい。【方法と結果】当研究室で作出したAMH-TRECKマウス(毒素投与によりセルトリ細胞を特異的に除去可能,Shinomura et al., 2014)を用い,セルトリバルブ領域局所的に毒素を投与し,セルトリバルブ構造を破壊した。一ヶ月後の観察において,セルトリバルブが破壊された精細管では,円形精子細胞,伸長型精子細胞の管腔内への脱落を含む精子発生異常が観察された。また遺伝子発現解析には,生殖細胞の影響を除外するため,生殖細胞を欠損するW/Wvマウスの精巣を用い,精巣網,セルトリバルブ,曲精細管の領域でそれぞれRNAを抽出し,マイクロアレイを行った。網羅的な遺伝子発現解析により,セルトリバルブ特異的に発現の高い因子を同定した。
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Haolin ZHANG, Kento USUDA, Kazuki FUJII, Kazuyoshi TAYA, Gen WATANABE, ...
セッションID: P-9
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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L-amino acid oxidase (LAO) is an enzyme which converts particular L-amino acids into keto acids, ammonia, and H2O2. We found that LAO was presented in acrosomes of sperm, and LAO knockout male, not female, mice revealed decrease of their litter size, which indicated that LAO plays an important role in displaying sperm function of reproductive male mice. Sperm collected from LAO KO mice showed high malformation rate and low viability in in vitro culture. In addition, medium cultured with LAO KO sperm contained low concentration of H2O2 than that of WT sperm. Though there was no difference in the fertilization ratio of oocytes via in vitro fertilization, Western blot and immunofluorescence analysis showed that the level of phosphorylated tyrosine proteins, which is associated with sperm capacitation, was lower in LAO KO sperm than WT sperm. When the LAO KO sperms were cultured with H2O2 supplement, the level of tyrosine protein phosphorylation was increased with a dose dependent manner and the sperm viability was also increased after H2O2 treatment. Those results suggested that sperm LAO provides H2O2 to increase the sperm viability and to induce the capacitation by stimulating the tyrosine phosphorylation levels. Thus, sperm expressing LAO have more chance to reach oocyte at oviduct, which influence the litter size in mice. Moreover, the positive correlation between LAO expression and sperm tyrosine phosphorylation were also found in pig sperm and high expression of LAO were also found in the cow sperm with high fertilization. In summary, LAO may serve as one novel marker for sperm function in different species.
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松川 悠久, YOUSEF Mohamed S, 福井 歩, 羽田 真悟, 佐々木 基樹, 松井 基純, 清水 隆, 宮本 明夫
セッションID: P-10
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】これまでに本研究室において,屠場由来の発情周期中のウシ卵管還流液中で数千の好中球の存在が確認され,卵管上皮細胞培養上清(BOEC (+))が好中球のNETs放出を抑制し,その結果,精子貪食を抑制することを示した(Marey et al., 2014)。今回,1)ウシ卵管腔内の免疫細胞像を詳細に観察し,2)精子活力の有無による好中球の貪食活性の差異と,3)BOEC(+)で培養された好中球による精子とビーズに対する貪食率の差異を検討した。【方法】1)屠場由来のウシ卵管を採取直後に凍結し,凍結切片を作成後May-Grunwald-Giemsa染色とPAS染色し,顕微鏡観察した。2)本学畜産フィールド科学センター飼育の発情周期を回帰する雌ウシより採血し,好中球を濃度勾配法により単離した。好中球を,BOEC単層培養上清BOEC (+)と新鮮培養液BOEC (–)でそれぞれ2時間培養した。一方,凍結精液を融解し,swim-up法により活力の良い精子と,56℃30分で非働化処理された不活化精子を得た。その後,好中球と1時間共培養し貪食させ,顕微鏡下で観察・撮影し貪食率を求めた。3)ビーズ貪食試験でも同様の方法で実験を行い,蛍光顕微鏡とFCMにより細胞数を計測し貪食率を求めた。ビーズはカルボキシル化ポリエスチレンでコーティングされ,黄緑色蛍光の直径2.0 µmのものを用いた。【結果】1)ウシ卵管内腔に少数の免疫細胞,特に多形核球とリンパ球の存在を確認した。2)活力のある精子と不活化精子に対する好中球の貪食率に差はなく,さらにBOEC(+)により両区の貪食率は共に4割程度低下した。3)対照区とBOEC(+)で培養された好中球によるビーズ貪食率の間に差はなかった。以上の結果から,BOEC(+)は,活発な精子と不活化された精子に対して好中球の貪食を同様に抑えるが,ビーズに対しては貪食を抑えなかった。これは,好中球がNETsを用いずにビーズを貪食するためBOEC(+)によるNETs抑制作用が影響しないためと考えられた。
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白水 貴大, 鈴木 惇文, 岩野 弘暉, 小木曽 貴季, 金 星佑, 唄 花子, 川原 学, 木村 康二, 高橋 昌志
セッションID: P-14
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】着床前のウシ子宮では,胚より分泌されるインターフェロンタウ(IFN-τ)が,IFNAR1(R1)とIFNAR2(R2)の二量体で構成されるI型IFN受容体を介したJAK/STAT経路によってIFN誘導性遺伝子(ISGs)の発現を誘導する。しかし,ウシ子宮におけるIFN-τシグナルの受容体サブユニット依存的なISGs発現調節機構は不明である。本研究では,ウシ子宮内膜上皮細胞におけるI型IFN受容体サブユニットの発現抑制がIFN-τ刺激による遺伝子発現へ及ぼす影響を検証した。【材料と方法】食肉処理場より採材したウシ子宮内膜組織由来の初代培養細胞を実験に供試した。細胞にR1またはR2のsiRNAを導入しRNA干渉した。導入24時間後のR1,R2の発現抑制効果を定量PCRで検証した。さらに,siRNA導入24時間後に組換えウシIFN-τを添加し,12および24時間後の1)抗ウイルス能(MX1,2,ISG15),2)IFNシグナル伝達制御(STAT1,2,IRF1,2,3,9),3)I型IFN受容体発現の維持(COPS5)および4)着床時の細胞増殖(TGF-β1,2)に関連する遺伝子群の発現量を定量PCRで解析した。【結果と考察】R1またはR2のsiRNA導入によるRNA干渉はR1,R2の発現をそれぞれ特異的に抑制した。R1またはR2の発現抑制はIFN-τによるMX1,2,ISG15,STAT1,2,IRF1,2,3,9,COPS5発現の誘導を有意に抑制した。特に,R2と比べてR1抑制時に高い発現抑制効果を示した。TGF-β1,2の発現については,R1,R2の発現抑制による影響は見られず,JAK/STATシグナルから直接制御されない可能性が示唆された。【結論】IFN-τのIFNARを介したJAK/STAT経路にはR1依存的なシグナル伝達機構が存在することが明らかとなった。
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小林 芳彦, 伊藤 さやか, 木村 康二, 奥田 潔
セッションID: P-15
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】哺乳動物の卵管上皮組織は,排卵周期の進行に伴い変化することで卵管内において起こる様々な生理現象に最適な環境を生み出す。上皮層には既知の卵管上皮細胞(分泌細胞および繊毛細胞)に加え,少数のstem-like cells(CD44陽性細胞)の存在することが近年明らかとなったが,その役割は不明である。本研究はCD44陽性細胞の特性を明らかにすることを目的とした。【方法】24–72カ月齢のウシ卵管において,1) CD44陽性細胞の局在およびCD44と種々のマーカータンパク質の共局在を免疫組織化学的に調べることで同細胞の性質を推定した。2) 卵管間質層から磁気ビーズ分離法により単離したCD44陽性細胞の基底膜通過能を,基底膜マトリックスMatrigelをコートしたTranswellを用いて調べた。3) Air-liquid interface(ALI)培養した間質層由来CD44陽性細胞に種々の物質を添加し,上皮/間葉マーカー発現の比率(Cytokeratin-7(CK7):Vimentin(VIM)およびE-cadherin(CDH1):VIM)を算出するとともに免疫細胞染色により間葉上皮転換能を評価した。【結果】1) CD44陽性細胞は上皮層に加えて間質層にも存在した。上皮層のCD44陽性細胞にはCK7陽性かつVIM陰性のもの,CK7陰性かつVIM陽性のものならびにCK7陽性かつVIM陽性のものが混在する一方,間質層のCD44陽性細胞は全てCK7陰性かつVIM陽性であった。卵管上皮層におけるVIM陽性のCD44陽性細胞は排卵前と比べ排卵後に減少する一方,CK7陽性のCD44陽性細胞は増加した。2) 間質層由来CD44陽性細胞はMatrigel層を通過し,この通過は基底膜成分分解酵素matrix metalloproteinase-2の中和抗体により抑制された。3) Wnt4およびcAMP活性化剤Forskolinの共添加がVIM発現に対するCK7およびCDH1発現の比率を上昇させ,上皮様の形態を持つ細胞への分化を誘導した。以上より,新たに存在の示された間質層由来CD44陽性細胞は基底膜を通過でき,上皮細胞へ分化可能であること,さらに基底膜下のより未分化な細胞が,周期的にリモデリングされる卵管上皮組織を構築する細胞の供給源である可能性が示された。
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竹内 美紀, 関 美沙都, 福井 えみ子, 松本 浩道
セッションID: P-16
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】マウス栄養芽細胞のアウトグロースアッセイにおいて,アルギニン(Arg)とロイシン(Leu)はそれぞれ異なるmTORを介した経路に作用し,細胞の遊走性を刺激することが報告されている。本研究では,ArgとLeuをマウス体外培養用培地に添加し,培養された胚を子宮内移植することで,ArgとLeuが胚盤胞の着床に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】培養90時間後に得られた体外受精由来胚盤胞をArg添加区,Leu添加区,Arg+Leu添加区に分けそれぞれ24時間培養した。無添加区と添加区で培養した胚を受胚用マウス左右子宮角にそれぞれ6個ずつ移植した。移植から2日後に1%シカゴブルーの尾静脈注射により着床部位を可視化し着床率を評価した。また添加培養後,得られた胚盤胞の細胞数を測定した。【結果】Arg添加区の着床率は53.1%であり,無添加区の着床率77.3%と比較し有意に低い値を示した。Leu添加区の着床率は73.8%であり,無添加区の着床率73.8%との間に有意な差は見られなかった。また,Arg+Leu添加区の着床率は83.3%であり無添加区の着床率59.7%よりも有意に高かった。Arg添加による着床率の低下は過剰な一酸化窒素(NO)が合成され,細胞内ミトコンドリア呼吸が阻害されたため生じた可能性が考えられた。また,LeuはNOを利用し細胞の遊走性を向上することが報告されている。Arg+Leu添加区においては,LeuがArgから合成されたNOを利用し,胚の着床能力を向上させた可能性が考えられた。
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與座 明祥, 石黒(大沼) 俊名, 髙橋 透, 細江 実佐, 橋爪 一善, 木崎 景一郎
セッションID: P-17
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】妊娠の成立には妊娠段階に応じた胚の正常な発生が必要であり,着床期において栄養膜は増殖と分化を繰り返すことで胎盤形成を主導している。細胞の分化・機能制御にはnon-coding RNAであるマイクロRNA(miRNA)が関与しているが,ウシの栄養膜におけるmiRNAの役割については知られていない。本研究では,ウシ栄養膜・胎膜に発現するmiRNAをマイクロアレイにより網羅的に解析し,その標的遺伝子を探索することを目的とした。【材料と方法】妊娠18,19,21日齢の栄養膜と妊娠35齢(D35)の胎膜(n=3)から総RNAを抽出し,miRBase Version 19に登録されている全てのウシmiRNA(bta - miRNA,755個)を搭載したカスタムmiRNAマイクロアレイ(Agilent社)に供した。リアルタイムPCRにより遺伝子発現を検証するとともに,発現差の認められたmiRNAの標的遺伝子をmiRNA標的遺伝子探索データベースで検索した。【結果】マイクロアレイにより栄養膜とD35胎膜に発現するmiRNAを比較したところ,55遺伝子が有意な発現変動を示し(P<0.05),すべてのmiRNAがD35胎膜に対して栄養膜で高発現だった。リアルタイムPCRで検証したところ,マイクロアレイの結果とほぼ同様な発現動態を示した。これらのmiRNAのなかには,上皮間葉転換や細胞運動性に関与するmiRNA‐200ファミリー,低酸素とアポトーシスに関与するmiRNA‐26ファミリーなどが含まれていた。変動miRNAの標的遺伝子の探索を行ったところ,JUNB/D,E2F1,RHOB,LIF,IGF1/2R,インターフェロンτ(IFNT)などを標的にする可能性が高いmiRNAの存在が明らかになった。【考察】本研究では着床期のウシ栄養膜に発現するmiRNAを初めて同定した。さらに,これらのmiRNAが上記遺伝子を標的にすると予測されたことから,miRNAがウシ栄養膜の分化・機能制御に関与する可能性が示唆された。
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兒玉 望, 吉村 幸則, 磯部 直樹
セッションID: P-18
発行日: 2016年
公開日: 2016/09/16
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【目的】乳房炎原因菌の一つである大腸菌に感染すると,白血球や上皮細胞の膜上にあるTLR-4が大腸菌の細胞壁の構成成分であるリポ多糖(LPS)を認識し,TNF-α等の炎症性サイトカインを産生する。分娩前に乳房炎に感染すると,TNF-αが子宮でのPGF2αの産生を促し,子宮の収縮や黄体退行作用により分娩を早期に誘起させる可能性がある。本実験では,分娩前のヤギが乳房炎を起こした時の血中ホルモン濃度の変化及びその結果,分娩が誘起されるかどうかを調べた。【方法】〈実験1〉乳房炎を誘起する最適なLPS投与量を検討するため,泌乳期非妊娠ヤギを15頭用いた。2.5 μg(低LPS区)または10 μg LPS(高LPS区)/5 ml生理食塩水をそれぞれ1回,あるいは2.5 μgLPS /5 ml生理食塩水を3日に1度3回,ヤギの片方の乳房内へ投与し,最初のLPS投与から14日間毎朝搾乳および採血を行った。乳汁は乳量及び体細胞数(SCC)の測定,血漿はTNF-α,PGFM(PGF2α代謝物)及びcortisol濃度の測定に用いた。〈実験2〉7頭のヤギを自然交配させ,135,137,139日後に10 μg LPS /5 ml生理食塩水を乳房内へ投与した。最初のLPS投与後から分娩まで定期的に採血を行い,血中cortisol,PGFM及びprogesterone(P4)濃度を測定した。【結果】〈実験1〉いずれの区においてもLPS投与後乳量は有意に減少し,乳中SCC及び血中cortisol濃度は有意に増加した。血中TNF-αおよびPGFM濃度についてはLPS投与後有意な増加は認められなかった。またLPSを3回投与した結果,投与後毎回有意な乳量の減少とSCCの増加が見られた。〈実験2〉血中cortisol濃度はLPS投与前に比べて投与後において有意に上昇し,血中P4濃度はLPS投与前に比べて投与後において有意に減少した。妊娠期間は平均148.8日であり,LPSを投与しなかったヤギの平均(147.3日,n=4)とほぼ同じであった。以上の結果から,分娩前に乳房炎になると黄体機能が低下したが,それによって分娩が早期に誘起されることはないと考えられた。
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