土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 17 号
特集号(海岸工学)
選択された号の論文の170件中151~170を表示しています
特集号(海岸工学)論文
  • 鯰江 岳, 内山 雄介, 張 旭, 増永 英治
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17253
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     遠州灘沖における黒潮流路変動に伴う栄養塩輸送と表層一次生産の変動特性およびそのメカニズムを評価するために,領域海洋循環モデルと低次生態系モデルをカップリングした3次元モデルを用いて,一次生産を支える硝酸塩フラックス輸送過程に関する数値解析を行なった.黒潮の蛇行の有無によって硝酸塩輸送の差異が明確に発現し,非蛇行時における表層一次生産が蛇行時の約1.5倍となることを見出した.また,硝酸塩フラックス収支解析から,蛇行時に比べて非蛇行時は亜表層から混合層内に鉛直輸送される硝酸塩量が増幅されること,その主要因が黒潮流軸北側や伊豆小笠原海嶺での硝酸塩の活発な湧昇にあり,表層に供給された硝酸塩が黒潮と沿岸地形によって遠州灘沖に形成される反時計回りの中規模渦によって水平輸送されることなどを明らかにした.

  • 中田 聡史, 増田 憲和, 荒尾 雅哉, 神尾 光一郎, 三品 裕史, 岩中 裕一, 小林 志保, 仙北屋 圭, 奥野 充一
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17254
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     河川出水により沿岸海域に形成される河川プリュームは溶存有機物や栄養塩を大量に含んでいるため海洋環境に多大な影響を与えるが,その動態は時空間変動が大きく,観測分解能の向上が必須である.本研究では,国内主要なカキ養殖海域である石川県七尾湾の西湾と陸域負荷源の熊木川集水域において,難分解性物質の有色溶存有機物(CDOM)を陸起源物質の指標とした物質動態を捉えるため,CDOMロガーとロボット船を用いた陸海域統合観測を試みた.その結果,森林が大部分の熊木川上流域ではCDOM濃度が低く,水田の多い中流域では濃度は増加し,下流の感潮域では海水希釈により塩分増加と共に濃度は低下した.河口域から沖合域へ輸送された低CDOM濃度かつ低塩分の水塊(河川プリューム)の移流拡散過程を観測できた.

  • 内藤 了二, 萩野 裕基, 管原 庄吾, 井上 徹教, 高伏 剛, 秋山 吉寛, 岡田 知也
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17259
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     温室効果ガス削減対策として浚渫土砂を造成干潟の基盤材として封じ込めることが検討されている.一方,浚渫土砂からメタンが生成されることが懸念される.本研究では,浚渫土砂を基盤材とした造成干潟で,炭素貯留効果とメタン生成に着目した.潮下帯と潮間帯で2m程度の鉛直試料を採取し,TOC,IL,メタン等を分析した.潮間帯では炭素残存率が86.5±2.5%,メタンが0.068-0.602µL/g-dry,潮下帯ではそれぞれ86.7±2.5%,0.037-0.087µL/g-dryであった.浚渫土砂層の炭素貯留量は9.02×103g-C/m3,メタン存在量は0.202g-C/m3と推定された.造成干潟基盤材として封じ込められた浚渫土砂からのメタン存在量は炭素貯留に対し軽微であった.

  • 長山 昭夫, 大山 連, 山下 直道, 井﨑 丈
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17260
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     2021年の東京都小笠原諸島の海底火山噴火起因の軽石群が琉球諸島沿岸域の港湾内や砂浜に大量に堆積した.これを受け各研究機関は海洋域での軽石群の漂流予測計算を公開し成果を挙げている.しかしながら,水深10m以下の浅水域における軽石群の漂流過程の検討は複雑な外力場が作用するために現地踏査が主流である.そこで本研究は,緩斜面を有する大型実験水槽による実験と機械学習による物体追跡解析を行うことで波の遡上域における軽石の堆積過程について定量的に検討した.その結果,遡上域における軽石は,遡上波の作用により分級が行わることで遡上距離や堆積過程が異なること,波の遡上域における堆積可能量を超えると再漂流することを明らかにした.

  • 八木 亮多, 加藤 史訓
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17264
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     日本沿岸における長期間の波浪特性の変化に関する既往研究の多くがNOWPHASのデータを用いたもので,変化の要因を詳細に追求している例は少なく,一貫した結論に達したとも断言できない状況にある.本研究では,国土交通省 水管理・国土保全局により収集された42年間の波高データと気象庁Best Track Dataを用い,平均・最大有義波高の変化を年別,季節別に調査し,その変化と台風との関係を分析した.その結果,有義波高の全国的な増加・減少傾向は確認されなかったものの,特に東海地方での秋における増加傾向が明らかとなった.また,一部の観測所で台風の季節と年の最大有義波高の変化が類似していることや本州南岸を通過する台風が増加していることが確認され,台風の経路変化と最大有義波高の経年変化の関連が推察される.

  • 渡邊 国広, 加藤 史訓, 田中 陽二, 片野 明良
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17265
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     気候変動の影響を考慮して海浜変形計算を実施する際には,波浪の将来変化の設定が重要となるが,平均的な波浪の将来予測結果として利用可能な高解像度波候予測の結果に含まれるバイアスは十分に評価されていない.本研究では御前崎沖の波候予測に含まれるバイアスを明らかにしたうえで,海浜変形計算に適したバイアス補正手法を提案することを目的とした.波候予測の過去実験と波浪推算による再解析結果の比較により,波候予測は波高が小さい傾向が明らかとなった.このバイアスを周波数スペクトルに着目して補正する手法を考案し,波候予測の過去実験と将来実験に適用した結果,補正を実施した場合には,補正をしない場合に比べて将来の波高の減少量が小さくなり,海浜変形の過小評価を避けるためには,バイアス補正の実施が必要であることが示された.

  • LIANG Jiamian , 武若 聡
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17266
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     オープン衛星データを収集し,遠州灘(東端:弁財天川,西端:今切口,延長:約35km,対象域中央に天竜川)の2013年から2022年までの10年間の汀線位置を読み取った.測量結果により汀線読み取りの確からしさを調べた.その結果,汀線変動の傾向(前進,後退)を衛星観測の分解能程度のバラツキで捉えられることを確認した.次に,各位置の汀線変化率を求め,既存の報告と矛盾しないこと,構造物が設置されている区間で小さくなることなどを確認した.汀線位置が天竜川の出水と高波浪に対して応答するかを調べた.その結果,天竜川河口の直近の汀線には出水後に前進する傾向が不明瞭ながら見えた.波の岸沖エネルギーフラックスと汀線変動の関係を調べたところ,高波浪後に構造物のない区間では汀線後退が見られ,構造物がある区間では汀線は安定していた.

  • 平澤 充成, 平野 誠治, 山崎 直人, 京野 勇一, 檜 脩平, 本間 薫, 早川 哲也
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17271
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     苫小牧港では港内擾乱時にタグボートでフェリーを岸壁に押し付け,荷役機能を確保している.タグボート年間利用回数とPDO指数に有意な正の相関が認められたため,PDOとともにNPGO,AOの各指数と波浪の相関性等を調べた.対象期間は1980~2019年とした.その結果,①年最大波パワー値との有意な正の相関が1999年以前でAO指数,2000年以降でPDO指数について得られた.その要因として1980年当初のPDO指数とAO指数の強い負の相関関係が徐々に弱まってきていることが考えられる.②北海道周辺への台風の北上割合が増加し,100kW/m以上の年最大波パワー値出現率が2000年以降,それ以前の約2倍になった.③港内擾乱の年間発生率とタグボート年間利用回数は正の相関を示した.

  • 大川 陸, 下園 武範, 田島 芳満, 松葉 義直
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17272
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     国境離島は政治・経済上の重要性にも関わらず,十分なモニタリング・維持管理体制が確立されていないのが現状である.本研究では,国境離島の地理的・物理的特徴に関するデータベースを作成し,保全優先度を示す指標について検討した.データベースの作成では,地理情報を基に「国境離島の消失に伴う領海損失量」をはじめとする定量的データを整備した.特に,ここで挙げた領海損失量は,国境離島の重要度を示す中核的指標となるため,近接離島との関係において複数の消失シナリオを仮定した.保全優先度の評価では,領海損失量と離島群の面積から保全優先度が高いと考えられる国境離島について,標高や体積のような脆弱性指標を加え,より詳細な分析と順位付けを行った.求まった定量的指標からは,沖ノ鳥島のような保全が急務とされる島が特定された.

  • 相馬 明郎, 林 正能, 市川 哲也, 賀上 裕二
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17274
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     流域圏におけるCOD,TN,TP発生量と河川,海域への流入量を評価する新システムを開発した.本システムは,市町村毎に生活,産業,畜産,その他系に区分された点源,面源由来の発生量を算出し,流達率を考慮することで流入量を算出する.また,人口,産業,土地利用,降雨変化に伴う発生量と流入量の変化を予測する.本システムは,大阪湾・播磨灘流域圏に適用された.システム検証のため,COD,TN,TP時系列について大和川での観測値と計算値を比較した結果,計算値は観測値を概ね再現した.また,大阪府における人口,産業,土地利用,降雨変化について発生量と流入量を予測した結果,2004年度から2045年度に亘る人口減少と産業構造変化は発生量を大きく減少させた.さらに降雨状況は流入量の極大極小期と値を大きく変化させた.

  • 宇野 宏司, 西村 宗真, 永瀬 丈嗣, 柏井 茂雄, 柿木 哲哉
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17275
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     古くからの金属加工法である鋳造の型に使われる「鋳物砂」に適した砂が採取できる地点は限定的で,淡路島・吹上浜は古くからその一つとして知られる.持続可能な砂資源の利用と当該砂浜の保全のためには,同質の砂が採取できる場所を探査する必要があるが,その手法は確立されていない.本研究では,吹上浜を含む阪神地区から東播海岸,淡路島沿岸の砂浜22地点で採取した砂を対象に,画像解析,元素分析,強熱減量試験を行い,粒度特性値や鉱物組成,付着有機物量を調べた.これらの値をもとにクラスター分析を行い,代替採取の候補地を選出した.選出された候補地は,空間情報解析による1976年以降の土地利用変遷から安定した砂浜面積が維持されていることが確認され,代替採取地としての適性を有することが明らかとなった.

  • 津田 宗男, 黒田 智広, 三邉 ふみ, 西倉 威弘, 阿瀬 明彦, 古賀 祐輝
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17276
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     NOWPHAS等の海象観測用GPSブイは,一般的に直径7mの円筒型が採用されている.ブイや係留装置の経済性,メンテナンス性の向上等を目的として,新しくカタマラン型GNSS(GPS+QZSS準天頂衛星みちびき)海象計ブイが開発された.ここでは,プロトタイプ(L12m×B7m,W63.9t)を和歌山県白浜沖水深238mの海域に設置して実証試験を行った.実証試験では,波浪観測精度,ブイの動揺特性,ブイの製作・設置の経済性,GNSS化による観測精度の改良効果,標準的な設計方法等の検討を行った.周辺海域のGPS波浪計の観測値や,設置地点を対象とした波浪推算値との比較検討を行った結果,波浪観測精度は従来の波浪観測ブイと同等であった.また,流体力が低減されるため,係留チェーンの経済設計が可能であることが分かった.

  • 石本 彩乃, 石川 仁憲, 島田 良, 小峯 力
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     海浜における溺水事故の46%が離岸流に起因する.事故を未然に防ぐためには,遊泳者自身が離岸流を認識し,危険回避できることが求められるが,時間的,空間的に変化する離岸流を認識することは難しいとされている.本研究では,Virtual Realityと視線解析を用いて,離岸流の発生場所や撮影地点が異なる6ケースの状況に対する被験者の空間的な離岸流の認識の違いを調べた.視線解析では,離岸流発生域をAOI(Area of Interest)に設定し,視線の停留回数,停留時間,AOIに視線が入るまでの時間を求めた.その結果,海岸全域を見渡せる丘の上や離岸流を正面にみる地点からは比較的に離岸流を認識しやすく,突発的に発生する離岸流は認識し難いと考えられた.また,離岸流の知識を有することは,離岸流を正しく認識できることに繋がり,離岸流による水難事故防止に有効であると考えられた.

  • 白井 知輝, 石渡 雄大, 小川 風輝, 有川 太郎
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17280
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     安全かつ効率的な船舶運航のために,気象・波浪予測を活用したWeather Routingは有効である.本検討では,将来的な海運需要増加や自動観測による観測効率化によって海上気象観測点が増加した場合を仮定し,仮想的な海上気象観測ネットワークから得られた観測値を同化することによる台風・波浪予測精度の変化とその航路選定への影響について事例検証を行った.結果,今回の条件では海上気圧観測を同化することの効果が大きく,台風経路・強度・波浪予測が改善した.これらの外力予測改善が最適船舶航路にも影響を及ぼすことが分かり,将来的な船舶観測ネットワークの発展が船舶運航効率化に有効活用される可能性が示唆された.今後多様な気象条件・観測条件での事例を増やし,観測コストの考慮やより現実的な条件下での検証が必要となる.

  • 木岡 信治, 石田 麻衣子, 竹内 貴弘
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17281
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     気候変動に対応した,より精度の高い海氷厚の将来予測や,過去に遡った海氷厚の推移,それらの統計的な評価等を目的として,ニューラルネットワーク(RNN, LSTM)を用いて,日射量,気温など5項目の気象データから海氷厚や寒さの指標となる氷上の熱収支量の経時変化の予測法を提案しその精度についても調べた.1日オーダーの周期的変動のある熱収支量の場合には,単純なRNNによっても良好に予測できること,海氷厚については,時間のシーケンスとして長期記憶の学習能力が高いLSTMが比較的良好に予測できることが分かった.また,日平均気温データの積算値(積算寒度)を入力データとして加えること,入力データを正規化すること,さらに複数の重みの初期値を用いたアンサンブル平均で評価するとさらに精度が向上すること等を示した.

  • 岡田 朋也, 松葉 義直, 田島 芳満
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17282
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     近年リモートセンシング分野で活用が進む3D LiDARは,高詳細な海岸過程の把握にも有効であると期待される.本研究では,この有効性を検証すべく,静岡県天竜川河口砂州先端部において3D LiDARによる面的海岸過程の観測を行った.その結果,遡上帯近傍において水面形及び地形の時々刻々の変動を高精度に捉えることに成功し,観測データの分析から観測期間中には飛砂及び遡上波による地形変化が生じていたことが分かった.飛砂においては微地形の変化や遮蔽域における堆積等,数cmオーダーの空間解像度の地形変化を確認できた.また遡上帯では,潮位変化に伴う平均汀線位置や打ち上げ高の変化に追従したバーム・ステップを含む断面地形の変化が捉えられた.さらにそうした砂州先端部の地形変化は,波の入射角の変化に応じて沿岸方向に進展していたことが分かった.

  • 水野 辰哉, 松長 悠太, 松葉 義直, 西 広人, 琴浦 毅, 西畑 剛, 田島 芳満
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17283
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     越波による浸水発生時において,沿岸住民の避難等に活用するために堤防・護岸における波浪うちあげ高の把握が必要である.本研究では近赤外光を用いた測距技術であるLiDARによる波浪のうちあげ高計測手法の構築を目的とし,二次元造波水槽を用いた計測実験を行った.実験では縮尺1/25の直立型および緩傾斜型の護岸模型に対し規則波を作用させ,波高計で計測された水位との比較からLiDAR点群のノイズ特性・精度について検討を行った.実験の結果,砕波が発生する条件において砕波帯から護岸模型前面までの気泡を含んだ水面および越波飛沫において点群が取得され,点群から波浪先端位置を抽出することにより波浪うちあげ高の計測が可能となった.また,数値波動水槽による断面解析結果との比較から点群の取得条件の検討を行った.

  • 佐藤 大作
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17284
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     海岸域に堆積する砂や礫の空間分布を継続的に把握することを目的に,海岸域を撮影した空中写真に対して5つの畳み込みニューラルネットワークモデル(ResNet50V2,SqueezeNet,VGG16,VGG19,著者による既往研究で開発したモデル)を用いて砂域,礫域の分類モデルを構築し,学習・分類特性の検討を行った.検討ではImageNetの学習済みパラメータによる転移学習の効果も検討した.VGG16・VGG19を用いると高い学習精度が得られた.単純に中間層の多いモデルが高い学習精度を示す結果とはならなかった.また,転移学習の結果は総じて学習精度の低下を示し,モデルの汎用性は学習精度の向上に寄与しなかった.空撮画像の分類では礫域に対してVGG16が最も期待通りの分類結果となった.

  • 李 広, 藤後 廉, 前田 圭介, 酒向 章哲, 山内 功, 早川 哲也, 中前 茂之, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17286
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     沿岸藻場のCO2吸収量の測定は,カーボンニュートラル実現に向けた重要課題の一つであるが,UAV画像からの藻場領域の特定には多大な労力と経験を必要とする.本研究では,UAV画像を用いた藻場領域の自動認識手法を提案する.本手法では,画素レベルの意味的領域分割を可能とするモデルを利用し,最新モデルの一つであるViT-Adapterを採用する.本技術の利点は,学習済み大規模モデルの知識を有効活用して藻場領域認識を行う点であり,モデルのパラメータ調整により画素レベルでの海藻の識別を実現する.本研究では,航空写真から目視により藻場領域を特定したマスク画像を用いた学習を行い,さらに,UAV画像へ適応するためにデータ拡張等の処理を検討した.北海道えりも沿岸のUAV画像を用いた実証を行い,有効性を確認した.

  • 吉田 光寿, 渡辺 謙太, 源平 慶, 伴野 雅之, 棚谷 灯子, 茂木 博匡, 桑江 朝比呂
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17288
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     海藻藻場によるCO2吸収量の算定には海藻の現存量が重要な尺度であり,現存量を高精度,広範囲かつ十分なデータ密度で計測できる手法の開発が必要である.従来の潜水調査は高精度だが調査範囲が狭く,航空写真は,詞査範囲は広いが藻場の詳細情報が得られない.そこで,本研究では高精度,高密度かつ広範囲な調査手法の確立を目指し,グリーンレーザースキャナを搭載したUAVによるガラモ場調査を実施した.点群データにノイズ処理やラベル付けを行い,実測した植生高さ,湿重量と比較した結果,植生高さ(実測値0.0-3.7m, 解析値0.0-4.0m, R2=0.97) を高精度かつ広範囲に推定できた.また,点群から推定した植生空間体積と湿重量は正の相関があり(P < 0.01), バイオマス算出が行える可能性が示唆された.

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