土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 17 号
特集号(海岸工学)
選択された号の論文の170件中51~100を表示しています
特集号(海岸工学)論文
  • 有田 守, 楳田 真也, 二宮 順一, 森 信人, 由比 政年
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17096
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     能登半島西部に位罹する石川県志賀町,輪島市沿岸の現地詞査を実施し,令和6年能登半島地雲に伴う津波の特性や地盤隆起が津波遡上,港湾,海浜に与えた影響について検討した.志賀町で計測された津波痕跡点の最大値は,赤崎地区の4.2mであった,浸水範囲や津波被害は局所的であり,主に港湾区域内や護岸直背後に限定された.地盤隆起の影響は志賀町西海風戸地区以北で顕著であり,輪島市鹿磯漁港や黒島漁港において,地盤が3.5~4.0m程度上昇して港内水深が著しく減少し,一部は海底面が千出した.また,鹿磯漁港南側の砂浜海岸において,汀線が150~250m程度前進し,水面下の岩礁帯が露出するなど,浜幅が大幅に増加した.地盤隆起により約25万m2に渡って砂浜が拡大したことが空撮映像から推定された.

  • 小山 天城, 藤井 直樹, 木村 達人, 木原 直人, 甲斐田 秀樹, 小林 大祐, 原口 強, 鈴木 雄介
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17099
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     令和6年能登半島地震により発生した津波の被害実態を明らかにするため,石川県能登島沿岸域を対象に被害状況や津波来襲に伴う痕跡高を調査した.調査の結果,津波により浸水した北側地域のうち,八ヶ崎海水浴場では浸水高約2mの津波痕跡を確認できた.一方,鰀目漁港では近隣住民へのヒアリングにより0.2m程度の浸水があったという目撃証言を得た.2つの地点はどちらも能登島北東部で約1kmしか離れていないにもかかわらず浸水状況に違いが見られた.そこで,津波の再現解析を実施し,その浸水過程の違いを明らかにした.八ヶ崎海水浴場は津波の入射方向に対して開けた形状であるのに対し,鰀目漁港は防波堤に囲まれ港口が狭い形状であるという違いがあり,2地点の津波被害の差は防波堤による津波の抑制効果による影響が大きかったと考える.

  • 三宅 真太郎, 佐藤 翔輔, 吉本 充宏, 石峯 康浩, 秦 康範, 安本 真也, 関谷 直也
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17101
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     2022年1月15日に南太平洋のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山が噴火した.噴火に伴い,日本国内で潮位変化が起こり,気象庁が16日未明に太平洋沿岸に突如,津波警報や津波注意報を発表して啓発する異例の対応を行った.地震の揺れなどの直接の現象がない中で潮位変化が起こり,深夜に津波情報が発表されるといった異例の事象における住民の避難行動などの実態を明らかにするため,沿岸地域で津波警報や津波注意報が発表された自治体の住民に質問紙調査を行った.調査の結果,周囲他者による声かけが,深夜に就寝状態の住民に情報を伝えることや避難を促すことにおいて,一定の役割を果たしたことが分かった.さらに,地震などによる揺れがない中で深夜の避難を迫られた住民は,公的な情報を基に避難判断をしていたことが明らかになった.

  • 板垣 侑理恵, 片山 裕之, 大西 左海, 鵜飼 亮行, 萱嶋 孝一, 竹内 和則, 山下 聡
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     表層型メタンハイドレート(MH)の採掘計画では,掘削時の不要泥水を掘削跡窪地へ海中排出することを計画している.本研究では,海中排出時の泥水拡散状況把握のため,窪地を再現した形状の水槽を用いて,模擬深海底泥(中国カオリン)による泥水の連続長時間投入を模擬した実験,および日本海側のMH賦存サイト海底から採取した深海底泥による泥水投入実験を実施した.また密度流モデルによる数値解析を実施し投入泥水の挙動把握を行った.その結果,連続長時間投入では密度流的な拡散が支配的となる傾向が確認された.また,同濃度条件においてMH賦存サイトの深海底泥による泥水の方が投入時流速が大きく,投入後の濁りの長期化の傾向が確認された.これらの特性は,含有される粘土鉱物や強熱減量にみられる有機分の含有に影響されることが示唆された.

  • 松村 啓太, 中山 恵介, 松本 海太, 新谷 哲也, 松本 大輝
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17107
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     気候変動の緩和策として,SAV(沈水性植物)などの光合成活動によって大気中の二酸化炭素を沿岸海域に取り込み貯蔵するブルーカーボンが注目されている.しかしながら,SAVは流れによってたわむことで複雑な流況を作り出し,炭素吸収量や物質輸送の正確な評価を困難にしている.これに対して,SAVと流れの相互作用を検討した研究事例が存在するが,SAVと流れの連成が不十分であることや,SAVの分岐(枝分かれ)を考慮していないなどの課題が残されている.そこで,本研究では,分岐を考慮したSAVと流れの連成計算を可能とするより汎用性の高いモデルを構築した.さらに,実験水路に水草模型をパッチ状に設置し,一様流を与える実験を行った結果,有効水草高さおよびSAVパッチ周辺の流速について良好な再現性を有することが示された.

  • 吉田 壮汰, 増永 英治, 北村 立実, 大内 孝雄
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17108
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     本研究では,海岸地形の吹送流への影響を評価するために潮汐や地衡流の影響を受けない閉鎖的な湖沼である茨城県霞ヶ浦において長期間流況のモニタリングを実施した.さらに数値実験を用いた地形に影響される吹送流の再現性について検証を行った.流況モニタリングの結果から,岸付近では吹送流が発達しやすく運動エネルギーの顕著な増加が確認できた.一方中央部では岸付近の吹送流の反流が風向き方向の流れと干渉することで運動エネルギーが抑制されていた.数値実験を用いた解析から,岸付近で強化される吹送流は良好に再現されたが,中央部における流れの再現性は低かった.この中央部における再現性の低さは,モデル内で解像ができないサブグリットスケールの乱れ成分に起因すると考えられる.

  • 佐近 淳平, 増永 英治, 内山 雄介
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     本研究は,領域海洋モデルROMSで再現された東日本南岸海域の全域から放流したラグランジュ粒子を追跡し黒潮や沿岸地形が影響する物質輸送過程の評価を行った.本手法は一般的な特定の領域から放流した粒子追跡手法とは異なり,領域全域に粒子を初期配置することで再現海域全体の物質輸送過程が評価可能となる.放流した粒子は,黒潮や渦のフロントを境界に強く引き伸ばされるように拡散し,強い方向依存性を伴った拡散過程を示した.この方向依存性は沿岸域から黒潮流軸までの海域で見られ,東西方向の水平拡散係数は南北方向に比べ5~10倍程度大きい値を示した.一方黒潮流軸以南の海域では,等方的な拡散が発生しており季節的な依存性が強く,冬季の水平拡散係数は夏季に比べ1オーダー倍程度強いことがわかった.

  • 渡辺 萌斗, 内山 雄介, 張 旭
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17111
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     内湾環境を強く支配する水温場に対する外洋影響を定量的に評価するために,3次元海洋流動モデルを用いて黒潮流路変動に伴う大阪湾・伊勢湾・駿河湾・相模湾・東京湾への黒潮系水塊の波及効果を解析した.潮汐や河川の影響を排除し,各湾口断面を通過する熱フラックスを求めることで海流などによる各湾への外洋影響を抽出した.各湾口での熱交換には,季節変動成分を主体する平均熱フラックス(MHF)が渦成分よりも支配的であり,相模湾以東では黒潮本流から分岐した暖水が大島西水道を通って直接波及し,黒潮接岸期にMHFが強化されることで流路変動と強く相関していた.一方,大阪湾〜駿河湾では地形に拘束された水平循環流によって波及効果が弱化し,また,各湾の閉鎖度によって内湾への熱流入・流出傾向に差が生じるなど重要な知見を得た.

  • 横田 拓也, 宇多 高明, 野志 保仁
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     先行研究において,岩盤が礫浜に埋積された条件下で岩盤の位置と岩盤上の礫層厚を種々変えた2次元移動床模型実験を行い,前浜の堆積・侵食の判定に係る礫層厚の閾値,および礫層厚を種々変えた場合の前浜への堆砂状況の相違を明らかにした.本研究は,この実験結果を再現対象として,BGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)に岩盤上の砂層厚に応じて平衡勾配が緩まる機構を組み込むことにより,岩盤上に載る礫浜の縦断形変化予測モデルを構築した.実験結果に対する再現計算では,礫層厚が小さい条件では礫層内への浸透が弱く,岩盤上の戻り流れが強まることから,礫が沖向きに運ばれやすくなるという実験結果がうまく再現された.

  • 宇多 高明, 近藤 俊彦, 小野 能康, 横田 拓也, 野志 保仁, 五十嵐 竜行
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     相模湾に面した七里ヶ浜を対象に,BGモデルにより2007年以降の地形変化の再現計算を行った上で,侵食対策としての養浜の効果を検討した.七里ヶ浜では,砂浜下に岩盤が分布し,前浜での戻り流れが強まり侵食が助長される現象が考えられる.そこで砂層厚が薄くなると戻り流れの効果が強まり,平衡勾配が小さくなる機構をBGモデルに組み込んだ.また,当海岸では入射波向の変動があるため,その影響についても検討した.この結果,七里ヶ浜西端にある小動岬隣接部での近年の顕著な汀線前進傾向の再現は課題として残されたが,東端を区切る稲村ケ崎西側隣接部での近年の汀線後退傾向がほぼ再現された.また,近年侵食が著しい稲村ケ崎西側海浜の復元計算では,稲村ケ崎西側において年間5,000m3の養浜を行うことが望ましいとの結果を得た.

  • 宇多 高明, 長谷川 準三, 渡邊 一政, 小野 能康, 横田 拓也, 五十嵐 竜行
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17116
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     神奈川県茅ヶ崎海岸では,汀線に沿って盛り土養浜を行うことにより砂浜の回復を進めてきた.この方法では,汀線に沿って比高の大きい浜崖が形成されるため,背後の自転車道から汀線へ降りられず,海岸利用者に強い圧迫感をもたらすなど,海浜利用上の障害が起きてきた.これを防ぐ方法として,ある限られた範囲で集中的に養浜を行い,そこから沿岸漂砂により下手海岸へと砂を供給する新しい手法(指定区域での連続養浜手法)を提案するとともに,茅ヶ崎菱沼地区を対象として,BGモデルによる計算を基に従来型養浜との比較を行い,これらより新手法の有効性を明らかにした.

  • 宇多 高明, 住田 哲章, 内山 翔太, 五十嵐 竜行, 村田 昌樹
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17117
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     沿岸方向に緩く湾曲した海岸線を有し,離岸距離の短い離岸堤や5基のヘッドランド(HL)が設置されている静岡・清水海岸を対象に,実座標を用いてBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形予測モデル)による地形変化予測計算を行い,sand bodyの移動に伴う静岡・清水海岸全体での土砂の堆積状況を再現した.計算では汀線変化や海浜縦断形の変化も定量的意味から再現された.その上で養浜の有無の条件下での,今後30年間の長期的地形変化を予測し,清水海岸にあっては砂浜の復活・維持には8万m3/yrの養浜が必要なことを明らかにした.

  • 田﨑 拓海, 原田 英治, 後藤 仁志
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     沿岸域の漂砂フラックスの正確なモデリングのため,砕波による底質輸送機構の詳細な理解が求められる.近年,水面追跡に長けた粒子法の砕波への高い適用性が示され,個々の底質要素の運動解析との連成により素過程から漂砂機構が検討されてきた.しかし,粒子法型固液混相流モデルの適用は幅の狭い領域に限定され,砕波に伴う縦渦列と漂砂過程の関係は十分には明らかにされていない.

     本研究では,DEM-MPS法を用いて移動床を伴う振動水槽内の砕波下漂砂過程の3次元解析を行い,同条件の水理実験と比較し再現性を検証する.空間フィルターにより流速場から任意のスケールの渦構造を抽出し,砕波ジェット着水後に水平渦の1/4程度のスケールの縦渦が列構造を形成することを確認する.また,縦渦の圧力変動を介した局所的な漂砂への寄与を示す.

  • 小硲 大地, 中川 康之, 佐藤 由浩, 山形 創一
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17121
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     河口港の効率的な維持浚渫のため,河川から流入する土砂の港内での堆積メカニズムを把握することが重要である.本研究では,レーザー回折法および画像解析法に基づく水中粒子計測により,信濃川から新潟港西港地区に流入・沈降する浮遊懸濁物の粒子特性を調査した.懸濁物を構成する粒子は,有機物に富み,粘土・シルト画分主体であった.水中粒子計測の結果は,河川水中の懸濁物が凝集状態で港内へと流入し,海水中ではさらに粗粒化した状態で沈降することを示した.有機物の存在と海水との接触が引き起こす,このような凝集を伴う沈降プロセスは,河口港内の土砂堆積量を予測する上で適切に考慮されるべき重要な物理過程である.加えて,水中粒子計測によるフロックの粒径情報の信頼性について言及する.

  • 大河原 知也, 鈴木 崇之, 林 知希, 伴野 雅之, 比嘉 紘士
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     波打ち帯は潮汐変動や波の遡上と流下により波浪場が時々刻々変化し,併せて土壌水分量も変化する.そこで,これら波浪場と共に変化する土壌水分量と地形変化の相互作用を解明することを目的とし,現地波打ち帯において調査を行った.調査では土壌水分量を計測すると共に,同地点の地盤高変化をレーザ距離計により測定し,両者の関係性の検討を行った.結果,土壌水分量は潮位,および遡上波の影響を受け周期的に変動していた.ここで,土壌水分量の変化毎に時間帯を区分し,それぞれの区間毎に地形変化との関係を検討した.土壌水分量が急上昇する区間(上げ潮時)ではその時間が短いほど堆積量が増加し,また,高止まりする区間(満潮時辺り)ではこの時間が長いほど堆積量が増加する傾向が見られた.

  • 加藤 佑典, 鈴木 崇之, Md Shofiqul ISLAM , 比嘉 紘士
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     茨城県波崎海岸にて沿岸砂州の地形変化と砂層内間隙水圧変動の関係性の解明を目的とした,波浪,地形変動,および砂層内間隙水圧を計測した.地形がほぼ一定であった期間,および侵食,堆積時に着目し解析を行った.その結果,砂層内圧力変動に関しては,地形侵食,堆積時は変動がほぼ一定であった期間に比べ,下層に行くほど間隙水圧の減衰が大きくなった.加えて,該当期間内における砂層内の鉛直圧力勾配と作用した波浪の波形勾配の比較を行ったところ,地形侵食,堆積時は,H/L=0.02~0.04 を有する波浪が作用した際,圧力勾配値が大きく変動する傾向が確認された.また,地形侵食,堆積時における鉛直圧力勾配変動は,共に上向きの圧力伝搬が卓越しており,静穏時に比べて砂層が緩くなっている可能性が示唆された.

  • 島田 良, 石川 仁憲, 宇多 高明
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     砂浜での波の遡上高のモニタリングデータは海岸保全検討に役立つが,長期間の観測に適した遡上高のモニタリング手法はない.海浜では,高波浪の作用により急深な縦断形となれば波の遡上高が高まることから,海岸保全上,水面下の地形変化にも十分注意を払う必要がある.本研究では,茅ヶ崎海岸を対象に,画像解析手法により波の遡上高から水面下の縦断形変化を推定する方法について検討した.検討の結果によれば,同程度の波浪条件で比べた場合,トラフの埋め戻しのあった期間では,遡上高が1.2m低下した一方,トラフが形成されていた期間では,遡上高が1.0m高まった.画像解析で求めた遡上高は海浜縦断形から推定される波の遡上高の特徴と一致しており,本手法が遡上高から水面下の縦断形変化を推定する手法として有効なことが分かった.

  • 有川 太郎, 関口 大樹, 榎本 容太, 片野 明良, 伸澤 宏祐, 柿澤 爽馬, 大原 緋奈乃
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     砂浜海岸では風によって発生する飛砂が問題となっているが,今までに海岸における波による飛砂への影響を検討している例は少ない.本研究では新潟西海岸の砂浜を模した実験を実施し,砂浜海岸における数値計算による飛砂量算定の精度向上と計算手法の確立を目的とする.気相のみの検討では,実験と数値解析の両方で先行研究と同様の結果が得られた.他方,現地データとの比較では飛砂量が過小評価となった.そこで,気液相を考慮するために,送風に加えて造波を行う実験および数値解析も実施した.実験では,気相のみを考慮する場合に比べて飛砂量が増加することが確認され,波の考慮によって飛砂量算定の精度が向上することが示唆された.今後,汀線付近のメカニズムをより詳細に評価し,数値解析の精度を向上させることが課題である.

  • 坪川 晃太朗, 谷 和夫, 岡安 章夫, 池谷 毅
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17128
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     モノパイル基礎周辺の洗掘を効率的に防止するために考案された環状袋型根固め材の波浪に対する洗掘防止性能および安定性を,1/60縮尺の不規則波水理模型実験により明らかにした.実験は,従来の丸型袋型根固め材と比較して行い,無対策,丸型,環状3D(3Dは袋材直径がパイル径Dの3倍),環状2D+アスファルトマット,環状2D+外周丸型の5通りの洗掘防止工に対し,波浪条件を変化させて行った.洗掘防止性能については,画像計測による海底面計測の結果,丸型袋材において吸出し洗掘がみられた波浪条件においても,環状袋材の場合は吸出し洗掘は小さく,環状袋型根固め材の洗掘防止性能が明らかとなった.また,袋材の安定性については,丸型袋材の移動が確認された波浪条件に対しても環状袋材は移動せず,環状袋材の優位性を確認した.

  • 宇多 高明, 近藤 俊彦, 小野 能康, 横田 拓也, 五十嵐 竜行, 野志 保仁
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     近年,神奈川県七里ヶ浜では侵食が著しい.その原因には,七里ヶ浜の東端を区切る稲村ケ崎を漂砂が回り込んで流出したことが考えられている.しかしその実証的議論は十分行われていない.そこで,まず稲村ケ崎沖での潜水調査により海底面状況を観察し,底質採取を行った.次に,岬周辺での漂砂は主に高波浪時に起こると考えられることから,衛星画像より稲村ケ崎沖での波峰線形状を読み取り,高波浪時における波の入射方向を推定し,漂砂の方向について調べた.さらに高波浪が斜め入射する条件下での海浜流を計算し,沿岸流の分布より七里ヶ浜から稲村ケ崎を超える東向きの漂砂が起こり得ることを示した.この結果,西寄りの方向から高波浪が作用した場合,稲村ケ崎沖を通過して七里ヶ浜の底質の一部が東側へと流出する可能性が高いことが分かった.

  • 宇多 高明, 相川 広将, 五十嵐 竜行, 野志 保仁, 伊達 文美
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     宮古島の南西側に位置する来間島の長間浜と,同じく宮古島の与那覇湾口に伸びる砂嘴では,2012年以降著しい地形変化が生じ,長間浜にあってはサンゴ礁起源の砂浜の大部分が消失し,湾口砂嘴ではその西側側面が侵食されると同時に砂嘴が右回りに回転しつつ大きく伸びた.このような地形変化状況を衛星画像の解析と現地調査を基に調べた上で,宮古島地方気象台の観測データをもとに2012年以降宮古島に大きな影響を及ぼしたと考えられる台風のコースと強風時の風向を調べた.この結果,宮古島の東側を台風が北上した場合,宮古島南西沿岸ではWSWないしSW方向からの強風が吹き,その方向からの風波によりこのような地形変化が起きたことが明らかになった.

  • 高橋 翼, 鵜﨑 賢一, 阿部 優大, 宇田川 明人, 池畑 義人
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     河川出水による供給土砂を多く含む淡水塊は,海水との混合が弱い場合には濁水プリュームとして沿岸域に移流拡散され,その形態は,気象・海象条件とともに,河口での塩分濃度に依存する.本研究では,河口境界での塩分濃度による濁水プリュームの挙動の相違について数値計算を行い,浮遊泥の輸送形態について検討した.著者らによるWDM-POMを用いた計算から,浮遊泥濃度分布は塩分濃度分布に比べてプリューム中央付近で高い値を示し,流れ場は,河口塩分濃度が低い程,とくに塩淡フロント近傍において密度一様計算との流速差が大きくなる.計算領域全体では,平均流速値として最大8cm/sの差異が生じた.従って,河口境界での塩分濃度を精確に与えるか,非感潮域まで境界を広げた計算を行なうことが必要であることがわかった.

  • 宇多 高明, 梅原 裕, 杉本 直弥, 竹内 由衣
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17134
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     北向きの沿岸漂砂が卓越する清水海岸のL型突堤~4号消波堤間(消波堤区間)では,景観に配慮しつつ侵食対策が進められてきており,とくに既設1号突堤と新設予定の2号新堤周辺の地形変化に注目した検討が行われている.一方,消波堤区間の北端に位置する4号消波堤の下手側では,養浜が行われてはいるものの,沿岸漂砂量の減少により徐々に侵食が進んできており,消波堤区間では養浜により浜幅が大きく広がったのと対照的に,汀線後退が受容できない水準に近づいている.本研究では,消波堤区間と4号消波堤北側での地形変化の相違に着目しつつ,4号消波堤付近での侵食の実態について調べ,その上で今後の侵食対策では養浜の継続が必要なことを明らかにした.

  • 宇多 高明, 森 智弘, 宮川 晃希, 市川 真吾, 大中 晋
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17135
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     Java島北岸に位置するIndramayu西部において,東端・西端をCimanuk川とCipunagara川の鳥趾状河口デルタに挟まれた幅29kmのEletan Bay沿岸を対象として,衛星画像による汀線変化比較,現地調査とUAVによる斜め画像の撮影を組み合わせた侵食状況調査を行った.これによれば,湾の両端に流入する河川からの流入土砂は河口デルタの発達に寄与するのみで,湾内沿岸にはほとんど供給されない条件にあった.この条件下で東寄りの入射波に起因した漂砂が起きていたが,海浜が粒径の小さな(平衡勾配の小さな)材料により構成されているために,侵食により発生した土砂が汀線付近に留まることができず,汀線後退域に見合った汀線前進域が形成されず,砂が沖合へと流出していることが分かった.

  • 宇多 高明, 三波 俊郎
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17136
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     熱帯の島嶼国では,サンゴ礁が発達してリーフが形成され,そこではサンゴ礁起源の砂が集積して洲島が形成される.これらのサンゴ礁からなる島嶼国では,国土の平均標高が低いために海面上昇の影響を強く受ける.一方で,経済発展のための人為改変の影響が洲島に顕著に現れ,侵食が進んでいる事例も多い.本研究では,MaldivesのLaamu環礁南部に位置するKaddhoo島とMaandhoo島の間にあったinletの閉鎖が地形変化にもたらした影響について検討した.inlet閉鎖後,lagoon側に運ばれた砂が堆積して前浜が形成されたが,2018~2021年での砂州形成速度より1.8万m3/yrの岸向き漂砂が起きていたことが分かった.また,外洋側からlagoon側への砂供給を維持するには,inletの形状を漏斗状に保つことが必要なことも分かった.

  • 市川 真吾, 宇多 高明, 徳永 正吾, 大中 晋, 森 智弘
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17137
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     MaldivesのLaamu環礁北部にあるMaabaidhoo(M)島では,2013年以降,リーフからの砂供給が観測された.Laame環礁南部に位置するFonadhoo島にあっても,M島と同じ時期に砂の堆積が進み前浜が広がった.この状況を衛星画像により解析するとともに,2023年7月11日には汀線への砂の堆積や侵食状況を現地調査により調べた.この結果,Fonadhoo島では,2018~2022年にリーフからの岸向き漂砂により大量の砂が運ばれ前浜が広がったことが分かった.この岸向き漂砂の存在は,リーフ上に残された多数の筋目模様が時間経過とともに汀線へと接近した後,陸地と一体化しバームの形成が進んだことから確認された.一連の砂の堆積過程での砂の堆積量は約13,000m3に及んだ.

  • 中道 誠, 佐藤 愼司, 松本 知晃
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17138
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     高知海岸を対象に,志村・森(2019)の波浪予測データを用い,現在気候と将来気候のエネルギー平均来襲波の特性を分析し,平均波向の将来変化を算出した.波浪観測データとともに沿岸漂砂量を推定し,波浪特性の変化が海浜変形に及ぼす影響を考察した.これより,方向スペクトルの平均波向は時計回りに変化すると示されているが,エネルギー平均波向は反時計回りへ変化することが確認された.また,近年の波向は既に反時計回りへ変化し始めていること,高知海岸では漂砂系毎に海岸線の角度が微妙に異なり,波向の僅かな違いにより漂砂の移動方向が沿岸方向で変化し,波向の変化が漂砂移動に大きな影響を及ぼすことがわかった.さらに,将来の波向変化によって,西向きの漂砂量の割合が増加し,東側端部の海岸侵食を深刻化させることを明らかにした.

  • 中道 誠, 佐藤 愼司, 松本 知晃
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17139
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     気候変動が海浜変形へ及ぼす影響を明らかにするため,高知海岸と鳥取砂丘海岸のエネルギー平均来襲波の特性を分析した.d4PDFを活用し台風時の波浪解析を行い,志村・森(2019)の波浪予測データとともに来襲エネルギー量と平均波向を評価することで,海浜変形への気候変動の影響を,台風期と非台風期に分けて分析する手法を提案した.高知は非台風期よりも台風の影響が支配的で昇温時には更に増大すること,鳥取は現在気候では非台風期の影響が大きいが昇温時には台風の影響が非台風期と同程度まで増大することがわかった.沿岸漂砂量の将来変化は,来襲エネルギー量に応じて増減する一方,漂砂の移動方向や割合が変化するため,波向の影響をより強く受けることを明らかにし,台風が海浜変形に及ぼす影響度を確率的に評価する手法を提案した.

  • 片野 明良, 森 伊佐男, 大崎 佑也, 菊地 野生, 伊藤 和弘, 小林 卓生, 工藤 恵介
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     日本海に注ぐ関川の河口は,冬季高波浪の卓越波向であるNNW方向に開口している.このため,冬季の高波浪が河道を遡上し,関川左岸の河口~約1.6kで土砂が堆積し易い状況になっている.既往研究では,長周期波により堆砂が促進されたことを報告している.本研究では,先ず,河川流により形成される地形特性把握のため,空中写真,地形測量,河川流量等のデータを分析し,0.7k付近より上流に寄洲が形成されることを明らかにした.次に,河口~0.7kの土砂堆積要因を明らかにするため,冬季の高波浪発生期間に河道内で波浪・流況観測ならびに地形測量を実施した.河口~0.4k付近は,主に,風波により河道内の土砂が移動・堆積しており,0.4kより上流では長周期波が段波状に遡上する際に,土砂を輸送する可能性があることが分かった.

  • 片山 崇, 黒岩 正光, 梶川 勇樹, 横井 寛直, 石井 和希, 田島 大地
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17141
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,3次元海浜変形モデルをベースとした砂州フラッシュと再生過程の数値解析モデルを構築した.フラッシュ過程における砂州上流側での水位の上昇を水位外挿で表現し,再生時には波による砂州上の越流をバーム高算定式と波による遡上を外挿して求める方法を導入することにより砂州のフラッシュと再生を計算可能としたものである.モデルの適用性の検討として,鳥取県中部の天神川河口部を対象とし,2017年10月の台風21号と,2021年7月に前線に伴う出水で発生した砂州のフラッシュとその再生過程の再現計算を行った.フラッシュ時には砂州の消失とそれに伴う河口テラスの形成,その後波浪卓越時には砂州再生が再現された.

  • 岡嶋 理功, 大家 隆行, 熊谷 健蔵, 加藤 史訓, 森 信人
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     気候変動に伴う海面上昇によって,砂浜の大きな地形変化が予想されている.しかし,その予測は修正Bruun則等を用いた汀線変化の考察に留まっている.そこで,本研究では汀線から砕波帯沖側までを含めた平面的な地形変化を精度良く再現するために,XBeachのSurface Roller Energy (SRE)のソース項を修正し,バーから汀線までの地形変化への影響を検討した.静岡県浜松篠原海岸を対象として約7ヶ月間の地形変化計算を行った結果,汀線付近から沖側のバー地形の変化までを精度良く再現できた.特に,SREの散逸項を水深に依存した可変値とすることが地形変化予測精度向上に有効であることが確認でき,今後想定される海浜消失に対する適応策を構築する上で,有効なモデルが得られた.

  • 趙 容桓, 本杉 漣, 中村 友昭, 水谷 法美
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17143
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     沿岸漂砂の阻害が海岸侵食に与える影響は顕著であるが,沿岸漂砂を含む波浪場の動態には解明されていない点が多い.本研究では,沿岸流がもたらす平面海浜地形の変化を解明するため,海浜端部のない連続的な漂砂環境を形成することが可能な円形水槽を利用した実験およびそれを再現する数値計算モデルを提案した.らせん波を使用した実験により,地形変化が沿岸方向に周期性を持ち,その周期性が波の条件に依存することが確認された.数値計算では,円筒形メッシュの問題を解決し,移動メッシュ法を用いた新たならせん波造波方法を提案した.この計算結果により,岸向き流れと戻り流れの相互作用が重要であり,これが沿岸成分の流速を生み出し,結果として沿岸流の発達を促進することを示した.

  • 武若 聡, 岡辺 拓巳, Ivan Aliyatul Humam , 羅 誌遠
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17144
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     天竜川河口域の土砂プロセスをXバンドレーダ観測,漁船が収集した水深データ(漁船ビッグデータ),そしてXBeachによる数値計算により分析した.河口域では出水による河川から河口テラスへの土砂供給,波浪による河口テラスから沿岸域への土砂供給があるとされている.その内,本研究では河口域への土砂供給と河口テラス域の地形変化を多面的に調べた結果を報告する.2021年には複数の出水により河川から海域への土砂供給があった.先ず,これをXバンドレーダ観測結果とXBeachによる計算結果より分析する.続いてXバンドレーダ観測結果と漁船ビッグデータより河口テラスの変形過程を示す.これらより,河口域の土砂プロセスをモニタリングする方法,出水により河川から海域に供給される土砂量等を説明する.

  • 西浦 友教, 鈴木 崇之, 菊本 統, 松村 聡, 伴野 雅之, 比嘉 紘士
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17145
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     砕波帯内での地形変化時には砂層内間隙率も時々刻々と変動する.しかし,その変動の検討は少なく,既存の底質輸送,地形変化モデルでは砂層内での間隙率時空間変動は考慮されていない.そこで本研究では卓上造波装置を用いた実験を実施した.構築した砂斜面に規則波を造波し,時々刻々と地形が変化する状況において砂層部をX線CT装置により撮影し,間隙率の時空間変動を計測した.撮影された画像を解析し,地形変化と砂層内間隙率変動の関係について検討を行った.結果,堆積部と侵食部の両者で地形変化時の表層において間隙率が大きい層の存在が確認できた.また,層厚については堆積箇所で約4mm,侵食箇所で約2mmであり,これは運搬された砂が緩く堆積することと,表層の砂が削り取られる侵食との違いであり,約2倍の差が生じていた.

  • 興井 みのり, 野村 瞬, 谷 和夫
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     海底インフラに被害をもたらす乱泥流において,含まれる土粒子の種類が流動に与える影響について十分に検討されていない.本研究では,工学的分類が異なるシリカ,カオリン,東京湾浚渫粘性土の体積濃度C=0.5~11%の懸濁液を水槽に一定流量で流下させ,乱泥流の先端の進行速度uの平均値uavを比較した.併せて,粘度計を用いて懸濁液の粘性特性を計測した.その結果,粘土鉱物を含まないシリカの乱泥流のuavCの増加に対し非線形に単調増加した.一方,粘土鉱物を含むカオリンや東京湾浚渫粘性土の乱泥流のuavC関係は上に凸の傾向を示し,液性限界の10倍程度の水分量の配合に相当するCuavが最大値となった.その配合を境に粘土懸濁液の塑性粘度や降伏値が顕著に変化しており,層流と乱流の遷移域のレイノルズ数に対応していることが示唆された.

  • 笠毛 健生, 小野 信幸, 森 伊佐男, 永田 誠一, 林原 伸生, 安本 善征
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     鳥取県中部に位置する北条川放水路の河口では,砂州形成による河口閉塞が頻繁に生じている.本研究は,河口から2.2km上流の北条川との分流地点にある分水堰(空気式ゴム引布製起伏堰)を倒伏して放水路内へ放流し,砂州をフラッシュさせる方法について現地実証実験を行った.実験条件について,井堰や樋門の開閉を含む上流の水位・流量,倒伏前の放水路内の水位および河口砂州天端高に着目し,数値モデルを用いて砂州フラッシュが生じる条件を事前検討した.初期の河口水位と砂州天端の比高と,分水堰倒伏後の河口水位の上昇量が砂州フラッシュの可否に深く関わると想定されたため,実験の初期条件の設定に反映させた.実験では水位変化や砂州フラッシュ過程の動画撮影,前後の地形測量等を実施し,本対策手法の実現可能性および有用性を確認した.

  • 辛 翔, 青木 伸一, 荒木 進歩
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17148
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     渥美半島の伊古部海岸では,2010年頃から海食崖前面に砂丘が形成され始め,現在では高さ20数mにまで発達している.この急速な砂丘の発達は,海岸保全事業による砂浜の拡大に伴う飛砂の増大によるものであるが,一方で砂丘の成長とともに沿岸漂砂下手側の砂浜の侵食が顕著になっており,大規模砂丘の形成が沿岸漂砂に及ぼす影響が現れていることが考えられる.本研究では,砂丘の発達と砂丘周辺の砂浜および海底地形の変化の関係を,地形測量データ,深浅測量データおよび衛星画像などを用いて解析した.その結果,砂丘の発達期間においては,海底土砂の変化量と砂丘体積の変化量に負の相関が見られた.さらに,飛砂量を仮定して砂丘範囲での土砂収支を計算すると,飛砂による砂丘への土砂供給により沿岸漂砂量が有意に減少することがわかった.

  • 工藤 裕之, 宇多 高明, 髙村 裕一, 堀口 敬洋
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17152
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     富山湾に流入する黒部川では,河口部およびその南側に隣接する荒俣地先において,河川流出土砂が急峻な海底を経て深海へと流出している.また一部の土砂は南向きの沿岸漂砂により生地地先まで運ばれ,最終的に生地地先からも深海へと流出している.この地域の海岸保全にはこのような土砂移動が深く係わることから,荒俣地先~生地地先を対象にNMB測量データを用いて海浜地形変化を定量的に解析した.この結果,生地地先では有脚式離岸堤沖において一挙に3万m3もの土砂流出が起きていること,また沖合の海底勾配が限界勾配1/1.9より急になると海底面が不安定となって海底地すべりが起き,砂の沖向き流出が起こることが分かった.

  • 八代 陸也, 越智 聖志, 宮武 誠, 内糸 直樹, 佐々 真志, 松田 達也, 牛渡 裕二, 坪川 良太, 飯田 泰成
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17154
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,波浪(非越波)-地下水相互作用により護岸擁壁背後法面で発生する陥没型被災に関して,対策工断面の有用性を明らかとするため移動床水理模型実験を実施した. 対策工(透水層)の実験は擁壁背後底部において,幅の異なる4ケースで実施し,砂層内の地下水位(マノメータ)及び間隙水圧の計測結果より,砂層内への浸透・滲出流成分を算出し砂層内流動特性を検討した. また,マノメータによる計測から得られる地下水位勾配から,ダルシー則に基づき砂層内の浸透流速を推定した. さらに,解析された浸透流速は既往の浸透流速逆推定手法を用いて,その妥当性を確認した. 以上より,最適な透水層幅の断面では,地下水排水が透水層への砂流入に有効的に働くことで,波の遡上・引き波による砂層内への浸透・滲出流を抑制させていることが示唆された.

  • 宇多 高明, 梅原 裕, 杉本 直弥, 竹内 由衣, 石橋 さくら
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17155
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     清水海岸では,離岸堤やヘッドランドなどが設置されているため,北東向きの沿岸漂砂が確実に北端部まで到達可能かどうか十分明らかにされていない.そこで2022年1月,安倍川の河道掘削土砂(d50=2cm)2.75万m3を4, 5号ヘッドランド(HL)間に投入し,4回のNMB測量とUAV測量によりその移動状況を調べた.これによれば,養浜により2022年5月までに-4m以浅で集中的な堆積が起きたが,その堆積域が波の作用で同年9月までには北東側へと200 m移動した.4, 5号HL間での2022年5月までの総堆砂量は3.8万m3であったが,総量のうち養浜砂は74%を占めた.また,養浜砂の沖への流出量はわずかで,漂砂の移動高8mを保ちつつ沿岸方向に運ばれたこと,またHLがあると沿岸漂砂は一時的に阻止されるが,最終的には北東向きに運ばれることが分かった.

  • 鳥居 大和, 菊 雅美, 水谷 法美, 中村 友昭
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     七里御浜海岸に接続する複数の中小規模河川では,砂礫による河口閉塞が生じている.河口閉塞の進行は流域の氾濫の危険性を高めるため,対策が必要である.本研究では,河口閉塞対策として,連杭を用いて千鳥状に設置した.対策工に対して,バームの高さを低くする・バームの形成位置を沖側へ前進させる・陸域の堆積量を抑制する効果に着目した.対策工の設置条件の違いによる地形変化への影響を明確にするため,様々な波浪条件を対象に水理模型実験からその効果について検討した.対策工の配置間隔によらず,対策工を設置することで,陸域に遡上する礫の堆積を抑制する効果が確認された.特に,波形勾配の大きい波浪条件下では,対策工の配置間隔が密になるほど,対策工の効果は顕著となることがわかった.

  • 中村 一郎, 川島 和義, 村野 幸宏, 榧場 亮太, 浅野 剛, 菅木 渉馬
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17157
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     富士海岸富士工区(静岡県富士市)に位置する元富士樋管は,沿岸漂砂や高波浪による吐口閉塞が問題となっていた.これに対し,平成28年度から複数年にわたって水理模型実験を実施し,「突堤移設+吐口背後掘削」という事例のない工法が最適案として選定された.令和2年度までに現地での施工が完了して以降,継続的にUAV等による簡易計測や写真撮影を実施し,吐口の埋没状況や掘削箇所の埋め戻し状況,高波浪によって形成されるバームの変化についてモニタリングを行ってきた.その結果,対策工の効果が確認されるとともに,バーム高T.P.+2.5mが吐口背後掘削実施の一つの目安となることがわかった.

  • 大原 緋奈乃, 関口 大樹, 吉田 芽生, 榎本 容太, 鈴木 高二朗, 有川 太郎
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     マングローブは津波減衰や海岸侵食防止効果を有する.山本ら(2015)は侵食実験と平面二次元モデルを用いた計算の比較を行い,使用した数値モデルが地形変化について十分な精度を有することを示したが,より詳細な検討には三次元計算が必要である.マングローブの津波減衰効果に関して吉田ら(2023)は,三次元計算において計算コストを抑えたDupuit-Forchheimer則を用いてマングローブのモデリングを行い,数値計算の妥当性を示した.本検討では吉田ら(2023)と同様のモデリング手法を用いてマングローブ背後の土砂移動計算を実施し,実験との比較と抵抗係数の影響に関する検討を行った.実験と同様にマングローブ背後での砂の侵食量が小さくなり,マングローブが前面にない範囲では侵食量が大きくなる結果が得られた.

  • 大沢 朋也, 吴 連慧, 佐々木 信和, 岡安 章夫
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17161
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     海岸線モニタリングのため,合成開口レーダ(SAR)の活用が期待されているが,高解像度SAR画像から海岸線を効率的に抽出する手法は確立されていない.本研究では,畳み込みニューラルネットワークであるDeepLab-v3+を用いて,解像度1mのXバンドSAR画像からの海岸線抽出手法を構築した.離岸堤など構造物のある海岸での適用性も検討するため,学習させる画像の組み合わせを変化させ複数のモデルを作成した.構造物のない海岸では,当該海岸の画像を学習に使用することで,平均誤差3~4mで海岸線を抽出可能であった.構造物のある海岸に適用する場合でも,構造物のない海岸の画像も併せて学習に使用することで,同程度の誤差に抑えられた.これらにより,海岸線観測に高解像度XバンドSAR画像の使用の可能性を示した.

  • 曽田 康秀, 伊藤 史晃, 石田 勝志, 酒寄 千展, 八木 裕子, 岡辺 拓巳
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17163
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     広域の海底地形を長期間継続してモニタリングする漁船ビッグデータ(BD)手法では,不規則な漁船の航行位置で記録された水深情報を格子点状に整理して地形データを生成するため,大量の水深データの補間(空間的な内挿)操作が必要とされる.地形データの内挿処理で多く用いられているKrigingは,異常値除去のための計算コストを要し,多量のデータを扱うBD手法ではこれが課題であった.一方,機械学習の一つであるサポートベクトル回帰(SVR)は,空間領域ごとに異常値の影響の少ない曲面を推定するのに適している.本研究ではSVRをBD手法の内挿に適用し,Krigingと同等の精度が得られること,50m格子の地形生成に係る計算時間が1点抜きKrigingの約2.5%となることを明らかにした.

  • 宇多 高明, 安達 優介, 柴田 光彦, 大木 康弘, 星上 幸良, 高橋 紘一朗
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17164
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     2023年,阿字ヶ浦海岸北部より8,500m3の砂を採取し,海岸南部で投入するサンドリサイクルを行った.砂投入前の6月1日,投入後の7月8日と10月10日にはUAV測量を行い,砂投入に伴う地形変化を調べた.この間,8月10日~8月15日には台風7号に伴う高波浪が作用し,養浜砂の流出が起きた.流出前後に実施したUAV測量はdiscreteな観測であったために,地形の経時変化過程は明らかではない.そこで8台のタイムラプスカメラを設置して定時観測を行い,波の遡上と前浜の侵食状況を観測した.この結果,養浜砂は台風7号時のH1/3=3m,T1/3=10sの比較的周期の長い高波浪の作用時に一挙に運び去られ,砂採取域ではT.P.+2.8mのバームの再形成が進んだことが分かった.

  • 伴野 雅之, 棚谷 灯子, 冨井 隆春, 冨井 天夢, 堺 浩一, 桑江 朝比呂
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17167
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     沿岸域の海底地形の計測方法として,音響測深に加え,水中透過性の高いグリーンレーザーによる光測距(LiDAR)が近年注目されている.特にスキャナが小型化され,UAVに搭載されるようになったことで,様々なシーンでの利活用が期待されている.しかしながら,UAVからLiDARによって沿岸域の海底地形を計測するうえでの技術的な指針が存在せず,ナローマルチビーム測深や航空レーザー測深などの計測方法との違いが十分に理解されていない.そこで本論文では,効率・測深性能・点群密度・フットプリントの観点から各計測方法の特徴を整理するとともに,LiDARによる実際の計測事例をもとに,地形計測における留意事項や有用な情報を整理した.高精度な沿岸域の地形データ取得によって,地形変化への理解も大きく進むことが期待される.

  • 馬込 伸哉, 武田 将英, 浅田 英幸, 粟津 進吾
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17168
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
    ジャーナル 認証あり

     シルテーションによる航路埋没に対して模型実験のみの対策検討は難しく,数値解析を併用した効果検証が重要である.しかし,従来の解析モデルは低分解能で静水圧近似を用い,航路や構造物の地形と周辺の渦を分解できないため,航路周辺に潜堤や窪み等を設けたことによる埋没対策効果の解析検証が難しい.そこで本研究では,格子サイズが約0.25mの高分解能の鉛直2次元非静水圧モデルを用いて,航路を横切る流れによる浮泥流入を計算して埋没分布を検討した.その結果,無対策では,航路上流側で発生する渦により,高濃度SSが航路上流の渦外縁を水平流速と鉛直流速の比で斜め下方に沈み,渦直下の低流速域に堆積する現象が確認された.窪みと潜堤を設けた対策航路では,窪み内のSS堆積と渦下層のSS堆積減少により,航路内の埋没量が5~7割低減した.

  • 白木 喜章, 片山 理恵, 杉原 勝宣, 江﨑 圭祐
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17169
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     東予港では,台風等の擾乱後にシルト質の土砂が航路に堆積していることが確認されている.本研究は,深浅測量結果や波浪・河川流量データ等を解析するとともに,航路堆積が生じるプロセスを数値シミュレーションにより確認した.データ解析では,2018年以降,定期的に実施されている航路断面測量から堆積量の変動を推算し,同期間の波浪・河川流量変動と高い相関性があることを示した.これにより,出水時に河川から流入した土砂が高波浪により沈降と再懸濁を伴いながら航路方向に輸送されることが推察された.数値シミュレーションでは,鉛直方向にシグマ座標を採用した流動・浮遊泥モデルにより2018年台風24号による航路堆積量を定量的に再現した.とくに,河口部で生じる海浜流が航路方向への土砂輸送を促していることがわかった.

  • 大塚 尚志, 乗松 晃生, 江島 悟, 塩谷 篤史, 太田 愛乃, 口石 孝幸, 加藤 憲一, 吉松 健太郎, 小坂田 祐紀, 三木 脩平, ...
    2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17170
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/01
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     皆生海岸皆生工区のクレスト型人工リーフ周辺では,台風の強大化に伴う高波や冬季風浪の影響により,局所的な海岸侵食が発生している.緊急養浜などの砂浜保全対策を実施しているものの,継続的な維持養浜を解消する状況には至っていない.そこで,本研究では,皆生工区の砂浜を保全するため,波浪・流況観測及び定点カメラによる現地調査を実施し,人工リーフ周辺の地形変化メカニズムについて推定した.

     2024年1月下旬の高波浪により発生した人工リーフ周辺の地形変化状況は,人工リーフ背後の水位上昇や高波浪時に人工リーフ開口部から進入した波浪が低減せず,人工リーフ岸側まで遡上し,人工リーフ開口部の砂浜を侵食したことが要因と推定した.

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