土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
77 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.37
  • 宇多 高明, 古波蔵 健, 永田 満, 五十嵐 竜行
    2021 年77 巻2 号 p. I_901-I_906
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     沖縄名護市の東江海岸では,高潮対策のために天端幅70m, 天端水深1.3m(開口部水深3m)の人工リーフが40mの開口部を設けて設置された.それに加え,長さ100mの不透過突堤3基が伸ばされ,その間で人工海浜が造成された.しかし台風時の高波浪の作用により,この人工海浜では侵食が進み,前浜が狭まってきた.本研究では,深浅測量データよりこの海岸の縦断形や海底形状の変化を調べた.測量データの解析によれば,東江海岸では天端水深3mの開口部を通じて養浜砂(チービシの浚渫土砂)の沖向き流出が起きた.よって現在の形状の人工リーフでは,チービシの浚渫土砂を用いた養浜には限界があることが分かった.

  • 竹田 聖二, 井手 喜彦, 児玉 充由, 橋本 典明, 山城 賢
    2021 年77 巻2 号 p. I_907-I_912
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     地球温暖化に伴う台風の強大化等により高潮災害の激甚化が懸念されていることから,台風が来襲する数日前に高潮の規模及び発生時刻を予測するリアルタイム高潮予測の研究が行われている.しかし,台風時の気象予測は不確実性が大きく,気象外力に起因する高潮の正確な予測は難しい.不確実性を考慮した検討にはアンサンブル実験の実施が求められるが,膨大なケースの数値シミュレーションをリアルタイムで行うことは計算コストの観点から現実的ではない.そこで本研究では,ニューラルネットワークを用いて,台風予測の不確実性を考慮した確率論的リアルタイム高潮予測システムを開発した.本システムでは,生じうる高潮偏差を信頼区間とともに導出でき,自治体が住民に適切な行動及び対策を呼びかける際の新たな指針となり得る情報の提示が可能となる.

  • 大岡 宏行, 遠藤 徹
    2021 年77 巻2 号 p. I_913-I_918
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     大阪南港野鳥園の人工塩性湿地に生育する海藻類の炭素吸収機能を明らかにするため,光合成培養実験により野鳥園に代表されるミナミアオサ,シラモ,スジアオノリの総生産速度を測定するとともに,任意の環境条件における総生産速度の推定式を作成し,野鳥園における各藻類の光合成活性度の年変動について検討した.各藻類の水温と塩分に対する総生産速度と光強度の関係を整理した結果,ミナミアオサとスジアオノリの炭素吸収活性は塩分に強く依存し,シラモは光量子に依存することが明らかとなった.また,野鳥園における平年的な水質の季節変動における各藻類の光合成活性度の経月変化を比較した結果,年間を通じてミナミアオサの吸収活性がシラモやスジアオノリよりも大きく,ミナミアオサが野鳥園の炭素吸収機能に大きく寄与していることが明らかとなった.

  • 伊藤 優子, 大泉 洸太, 石橋 邦彦, 中村 亮太, 加藤 茂
    2021 年77 巻2 号 p. I_919-I_924
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,新潟県青山海岸において,離岸堤付近における現地調査と海浜変形の数値計算を実施した.現地調査は,空中写真測量を9月中旬と11月下旬に行い,DEM(陸域データ)を取得した.また,9月の調査では,ソナーを用いた深浅測量を実施した.陸域のデータから,離岸堤背後の陸域は一部で若干の堆積が見られたが,全体的に侵食傾向だった.次に,数値計算モデルXBeachを用いて離岸堤付近の海浜変形を引き起こした外力を評価した.Surfbeatモードを用いた場合と比較すると,Non-hydrostaticモードを用いた数値計算結果は,全体的に海浜が侵食傾向にあるものの,離岸堤背後の水面下では堆積傾向にあり,空間的にみると調査結果と符合していた.また,10月後半から11月前半において断続的に発生した高波浪により,離岸堤付近において海浜変形が発生していたことが示唆された.

  • 高木 泰士, 杉生 高行, 富安 良一, 小宅 知行, 荒木 健人, 菅野 高弘, 国生 隼人
    2021 年77 巻2 号 p. I_925-I_930
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     津波や高潮の浸入対策として,港口を可動式防潮堤で締切る技術が普及段階に入りつつある.本論文ではこの技術を常時に活用し,港内外の潮位差より有意な発電を行うことが可能か試算するため,可動堤の隙間で生じる局所的な急潮を小型水車に作用させる発電方式について検討を行った.1/10スケールの循環流実験の結果についても利用し,可動堤前後の水位差より港規模での発電量を導く方法を構築した.発電量には,潮汐モードや振幅,港内面積,水深,閉鎖時間,水車径・配置数,隙間幅,発電効率など多くのパラメータが関係するが,大まかに条件を仮定して発電量試算を行った.その結果,商用売電や港全体への電力供給というレベルには達しないものの,養殖設備や海水ポンプなど主要な電力を賄うことや,電動船の充電,可動堤の昇降用電源など,地産地消型の小発電システムとして活用できる可能性が示された.

  • 西 隆一郎, 鶴成 悦久
    2021 年77 巻2 号 p. I_931-I_936
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海岸保全工法の一つとして割石を内部に詰め込む蛇籠構造物が各地海岸で用いられている.しかしながら,海岸に設置された蛇籠構造物の被災機構や被災評価法に関しては必ずしも明らかでない.しかも,波による蛇籠の被災機構と被災の評価方法を明確にしなければ,現地海岸での適切な利用や維持管理が達成できない.そこで,本研究では,現地に設置された蛇籠の被災調査に基づいて波による蛇籠の被災機構を推定し,加えて,蛇籠の単独ユニットおよび連結された蛇籠構造物群の実用的な被災評価を試みた.なお,手持ちのカメラを用いた現地踏査調査やレベルを用いた水準測量などでは定量的かつ面的な蛇籠の被災調査は困難であるので,本研究では,蛇籠の被災調査にドロ-ンを用いることにした.

  • 中西 敬, 比嘉 義光, 谷口 洋基, 新垣 善憲, 松下 紘資, 西村 博一, 葛西 博文, 小田島 勉
    2021 年77 巻2 号 p. I_937-I_942
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     社会基盤整備と環境の両立を目指し,港の維持管理・機能強化事業にサンゴの増殖を組み込む仕組みづくりを試行した.折れたサンゴの枝を簡便に取り付けることができるコンクリート基盤を開発し,アスパラギン酸を混和することによってサンゴの活着が促される可能性が示唆された.折れたサンゴの枝を活着させたブロックを防波堤工事で使用し,その後のモニタリング調査によりサンゴが順調に成長していることが確認できた.①社会基盤整備と環境の両立が図れること,②ボランティアではなく有償の事業としてサンゴの再生が成り立つこと,③地域の水産業・観光業にも相乗効果が導出される可能性があることが確認できた.

  • 齊藤 創太, 石塚 新太, 池野 勝哉, 山本 敦
    2021 年77 巻2 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     斜面スリット型透過式ケーソン(S-VHS工法)は静穏海域の創出,背後地の浸水防止,砂浜の海岸侵食防止を目的とした有脚式離岸堤である.本工法のRC函体製作時の課題として,現場施工の煩雑化,マスコンクリートによる温度ひび割れの懸念等が挙げられる.これらの課題に対し,現場施工の省力化,生産性向上,およびコンクリートの品質向上を図るため,函体をPCa部材に分割して工場製作し,現場搬入後に接合し一体化するPCa型S-VHS工法を提案している.工場製作したPCa部材同士は機械式継手で接合されるが,現場打設による従来工法と比較して,接合部の剛性低下や目地開きによる鉄筋腐食等が懸念される.そこで,本検討では接合部を有するPCa部材を対象とした載荷実験およびFEM解析を行い,PCa型S-VHS工法における機械式継手の適用性を確認した.

  • 赤星 怜, 趙 容桓, 渡辺 樹也, 中村 友昭, 水谷 法美
    2021 年77 巻2 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     内湾の生態系再生方策として造成される干潟・浅場の動的特性解明の一環として,乾燥かさ密度の変化計測,一様流下での細粒分含有率変化に関する水理模型実験,及びそれらを考慮した地形変化に関する数値解析を行い,かさ密度の変化が混合土砂から成る地形の変化特性に与える影響について検討した.その結果,細粒分の流失によって乾燥かさ密度の変化とその算定方法を得ることができた.また,総巻上げ量を考慮する際には砂質性混合土砂においては細粒分の割合の増加による総巻上げ量の増加を,粘着性混合土砂では粘着力の増加による差の巻上げ量の減少を考慮する必要があることが示唆された.数値解析では,実験で得られた乾燥かさ密度式を用いて細粒分の流失による地形変動の特性について検討し,地形変動傾向の把握した.

  • 栗原 大, 高橋 英紀
    2021 年77 巻2 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     東日本大震災では津波により混成堤が破壊し,その対策として混成堤を腹付工で補強することが検討されている.これまでの研究では,腹付工による補強により混成堤の滑動と支持力の各破壊モードに対する耐力が増加することが分かっているが,耐力を超す津波が来襲し,混成堤が破壊したとしても,その機能を少しでも維持するためには,混成堤の破壊過程を知ることが重要である.そこで,本研究では腹付工を有する混成堤が津波越流により破壊する過程について遠心模型実験によって調べた.実験では,水位差,浸透流,越流,腹付工の洗掘が複合してケーソンが転倒した.腹付工の断面積や幅が大きくなることで,ケーソンが腹付工を乗り越えた後,海底面まで落ちにくくなること,石材の粒径や重量が大きくなることで,転倒が進行しにくくなることが示唆された.

  • 惠藤 浩朗, 鹿島 瞳, 居駒 知樹
    2021 年77 巻2 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     弾性係留索は,浮体側の係留索取付点が上下しても浮体動揺を抑える特性を有する.しかし弾性係留索は桟橋や養殖イケスなど小型,中型浮体の係留に利用されているが,500mを超える大型浮体に適用された例はみられない.そこで本研究では干満差による水深変化や石炭の積載状態に伴い係留索取付点位置が大きく上下する大型石炭貯蔵浮体(LFTS)の運動応答特性に関するパラメトリックスタディを行い,弾性係留索の有用性について運動応答特性の観点から検討した.その結果,弾性係留索は,水深や喫水の変化に対して柔軟に対応可能であり,係留索がカテナリー係留と比較して短いことから海域の占有範囲は狭く,大型浮体の係留方法として経済的かつ有用的な係留方法であることを確認した.

  • 2021 年77 巻2 号 p. I_967-I_971
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     土木学会論文集 B3(海洋開発)特集号, Vol. 76, No. 2, I_432-I_437において,数値解析に用いた地盤要素(砂層 1 [Dr=50%])に関して,要素シミュレーションにおけるパラメタフィッティングの目標値(室内試験結果)に誤りがありました.そのため,フィッティング目標(液状化強度)を正しい実験結果に基づいて訂正したうえで,パラメタフィッティングを再度実施し,液状化特性パラメタ(w1, p1, p2, c1)を再設定しました.なお,要素シミュレーションのフィッティング目標である液状化強度は,当初の液状化強度よりも大幅に低く見直す必要がありましたが,元論文での簡易設定法により設定した変形特性は変更せずに,液状化特性のみを再設定した条件で動的解析を実施すると,地盤が不安定化することが確認されました.そのため,液状化特性以外に,地盤の変形特性についても,室内試験結果に基づく精度の高い設定が必要となったことから,変形特性パラメタのうち,基準初期せん断剛性Gmaおよび基準初期体積弾性係数Kmaについて,元論文での相対密度Drから推定する簡易設定法から,室内試験結果(三軸圧縮試験結果)に基づき設定する方法に変更することとしました.よって,本訂正においては,砂層 1および砂層 2の両要素について,変形特性パラメタの見直しと液状化パラメタの再フィッティングを実施しています.また,解析に使用した入力加速度は,検討ケースごとに計測時の誤差が含まれていることを確認したため,加速度時刻歴を補正して解析に使用することとしました.以上の条件変更のもと2次元の解析計算を再度実施し,関連する図表および一部本文の訂正,ならびに参考文献の追加をいたしました.

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