土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
77 巻, 2 号
選択された号の論文の162件中51~100を表示しています
海洋開発論文集 Vol.37
  • Sinta FLORENTINA, Tomoaki NAKAMURA, Yonghwan CHO, Norimi MIZUTANI, Mas ...
    2021 年77 巻2 号 p. I_301-I_306
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     Climate change effects have become global concern through decades due to its emerging hazards. Sea Level Rise (SLR) is one of the effects which may cause harm to the coastal communities due to the risk of damages, such as shoreline retreat and beach erosion. There are many previous studies regarding the effect of SLR on sandy beaches. However, the study regarding gravel beach response under SLR is still rare. Therefore, this study is conducted to investigate the effect of SLR on the past shoreline change by using Bruun rule on currently eroded gravel beach, Ida beach in Shichiri-mihama coast, Mie Prefecture. By comparing the calculation result with the past shoreline change data obtained from network camera system, the proportion of SLR contribution in shoreline change can be assessed. Results shows that SLR contribution is ranging between 5.1 – 8.7% of the actual shoreline retreat from November 2017 to November 2019. This indicates that there are other factors such as extreme waves playing more dominant role in the shoreline change compared to SLR in this gravel beach.

  • 宇多 高明, 星上 幸良, 長谷川 孝幸, 薩川 裕貴, 五十嵐 竜行, 金澤 拓磨
    2021 年77 巻2 号 p. I_307-I_312
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     沼川第二放水路の3門ある水路のうち,東端にある1号水路に開口部を設けてセットバック式(型)に改良したときの排水の可能性を現地実験により調べた.現地実験は2020年12月8日に実施し,UAVにより放水中,および放水前後の画像を取得し,放水路近傍の3次元海浜形状の変化を調べた.また貯水槽と吐口の水位変化を観測した.この結果,貯水槽水位をT.P.+2.74m,吐口水位とのヘッド差を2.1mと設定して放水を行った場合,吐口からの流水は最大流量約5.5m3/sで流れ下り,T.P.+1.95mのバームを越流して流れたことが分かった.

  • 東 祐太, 武若 聡
    2021 年77 巻2 号 p. I_313-I_318
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     オホーツク沿岸の流氷(オホーツク海・総流氷面積,網走沿岸・全氷量),波浪(紋別NOWPHAS),汀線データを収集し,流氷の有無が汀線変動に与える影響について基本的な検討を行った.北見海岸の砂浜(延長約140km)の10m毎の汀線位置を1990年から2020年の期間に撮影された衛星画像より読み取った.網走沿岸・全氷量と有義波高の関係より,流氷が沿岸に到達する波浪を抑制していることが示された.対象域の汀線位置は総じて前進する傾向にあった.流氷量と汀線変動の関係を分析した結果,流氷が少なかった年は長期トレンドと比較し,汀線位置が陸側にあることが示唆された.

  • 宇多 高明, 伊達 文美, 大木 康弘, 関根 雅人, 野志 保仁
    2021 年77 巻2 号 p. I_319-I_324
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     沖縄県南城市知念沖3kmに位置し,リーフに囲まれたコマカ島を研究対象として,2019年7月13日洲島周辺の砂州状況を観察するとともに衛星データにより砂州の汀線変化を調べた.この結果,砂州形状は波の卓越状況により3タイプ(円形,細長い楕円形,長軸の長い楕円形)に分類された.次に,波が円形島の中心点Oに集まるように入射するが,洲島による波の遮蔽により波高分布が変化し,Ozasa and Bramptonとのアナロジーにより波の入射方向と直角方向の波高分布に起因した沿岸漂砂が発生すると考えてBGモデルを改良した.このモデルを用いてコマカ島の変形計算を行ったところ,卓越波の入射条件での島の砂州の変形が,定性的ではあるが再現可能となった.

  • 横田 拓也, 小林 昭男, 宇多 高明, 星上 幸良, 野志 保仁
    2021 年77 巻2 号 p. I_325-I_330
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     稲毛海岸では「白い砂浜」へのリニューアルを目的として,西オーストラリア産の白い砂を用いた養浜工事が2019年に実施された.しかしながら砂浜のリニューアル工事後,海浜に巻き出された白い養浜砂は,台風時の高波浪および強風時の飛砂により海浜背後へと運ばれ,当初目的とした白い砂浜とは異なる景観となった.本研究では,稲毛海岸における養浜後の地形変化について現地調査により調べるとともに,漂砂と飛砂を同時に考慮した地形変化予測モデルを用いて,養浜後の飛砂による地形変化の再現計算を行った.

  • Muhammad Amar SAJALI, Keisuke MURAKAMI, Kaho TSUNENARI
    2021 年77 巻2 号 p. I_331-I_336
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     Miyazaki Sun Marina has been suffering from a sedimentation problem at the entrance of its navigation channel. One of the reasons of this problem is assumed a sediment transport from the north side of the marina. In this study, two sets of data are used to investigate the sedimentation problem. One is a set of long-term depth data that has been measured inside the Miyazaki Port annually from 2008 to 2018. The other is also a set of short-term depth data that has been measured along the marina navigation channel every day from 2018 to 2020. Characteristics of depth change obtained from those data are investigated based on a linear regression analysis. This study suggests an area that causes the sedimentation problem in the marina navigation channel.

  • 関根 雅人, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁, 芹沢 真澄
    2021 年77 巻2 号 p. I_337-I_342
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     芹沢らは,円形島周辺の波浪場をエネルギー平衡方程式法により求めた上で,砕波波高の沿岸方向勾配に起因する沿岸漂砂を組み込んだBGモデルを用いて円形島の変形予測を行った.この計算では,波浪場と地形変化の計算が繰り返し行われているが,本研究では同じくBGモデルを用いるものの,現象の本質は失わずに単純化を図ることにより,波浪場と地形変化の繰り返し計算を必要とせずに円形島の変形予測を行える方式を提案した.計算では,波向を円形島の汀線に直角入射するよう放射状分布とし,波高比のみを与えて,波の入射方向と直角方向の波高分布に起因する沿岸漂砂を取り込んだ.単純な方式であるにもかかわらず計算により芹沢らの先行研究の結果をうまく説明できた.

  • Ain Natasha Balqis , 倉原 義之介, 原 知聡, 武田 将英, 梶川 勇樹, 黒岩 正光
    2021 年77 巻2 号 p. I_343-I_348
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,局所洗掘に関する数値流体解析のベンチマークとなるべき水理実験データを得るための,効率的な超高解像度地形計測手法について提案するものである.本研究では,波・流れ共存場,流れ単独場,波単独場における洋上風力発電基礎のモノパイル周りの局所洗掘を対象に,小規模な模型実験を行い,提案する手法により洗掘孔の地形計測を行った.地形計測では,自走台車に搭載した,同期した2種類のレーザー変位計を用いることによって,計測時間の効率化を図りつつ,モノパイルの直径に対して 1/20 以下の格子間隔となる超高解像度の洗掘地形を取得できることを示した.

  • 升谷 武尊, 辻本 剛三, 金 洙列
    2021 年77 巻2 号 p. I_349-I_354
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     サンゴ礁海浜として沖縄の瀬底島,安田海岸の複数地点において底質採取と海浜勾配の計測を行った.底質の分類はサンゴ破片,有孔虫,貝殻片,鉱物,ウニ棘に分類し,さらに有孔虫は星砂,太陽砂,その他に分類した.底質特性として従来の粒径,円形度に加え,新たにフーリエ解析により得られる高次元情報を用いた.これらの物理特性から底質の移動方向を検討した.

     有孔虫の形状評価の結果,星砂の摩耗の進捗に伴い高調和数成分が減少し,スペクトル強度も低下し粒径が小さくなる.瀬底島での漂砂の移動方向は底質全体ではNE方向,星砂ではSW方向に卓越し,それぞれ過去の空中写真や既存の報告と一致した.有孔虫の形状変化を定量的に評価することでサンゴ礁海浜の漂砂の移動方向を議論することが可能である.

  • 大泉 洸太, 石橋 邦彦, 中村 亮太, 高橋 明
    2021 年77 巻2 号 p. I_355-I_360
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,新潟県荒川河口部の出水期を対象として,河口砂州の地形変化に関する再現計算を行った.複数の波浪境界条件を用いて,土砂輸送モデルXBeachによる数値計算を行った結果,地形変化結果が観測値と定性的に符合していた.さらに開口機構を高度に解明するため,再現計算の定量的評価を行った.具体的には,定量的指標であるBSSを用いて,河口砂州の地形変化の再現計算を評価した.結果として,測線箇所や波浪境界条件の違いによって,測線毎に再現性が異なっていたものの,開口部ではBSSの値が概ね0.5以上となっていた.そして,最も再現性が高い数値計算結果から,荒川河口部の開口機構を評価した.その結果,河口砂州で発生した地形変化は,河川流量の卓越により引き起こされた底面シアの急激な増加によることが確認された.

  • 稲垣 聡, 新原 雄二, 鈴木 一輝, 岩前 伸幸
    2021 年77 巻2 号 p. I_361-I_366
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     洋上風力発電におけるモノパイル基礎において,普及が進む欧州では石を用いた洗掘防止工が最も一般的に用いられる.砂地盤の吸出しを防止するための砕石によるフィルター層の上に,フィルター層の飛散を防止するための大き目の石を用いたアーマー層を設置する構造が使われる.我が国においては特にアーマー層について良質な石の入手が難しく,アーマー層にフィルターユニット(FU)を用いる洗掘防止工を提案する.本研究では,移動床を用いた水理模型実験により,高波浪時の安定性の確認と洗掘防止工設置の平面的範囲を変化させた場合の検討を行った.FUを用いた洗掘防止工は,洗掘防止工全体の沈降や周辺洗掘の顕著な発生などが見られず,良好な機能を示した.検討した条件下ではFU設置範囲をモノパイル径の3倍の範囲まで縮小しても洗掘防止の機能に大きな低下は見られないことが分かった.

  • 鷲田 正樹, 室井 直人, 高橋 智幸
    2021 年77 巻2 号 p. I_367-I_372
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     太平洋に面する高知海岸では,台風の異常波浪による海浜の崩壊と,常時波浪による海浜の再形成作用の両者が均衡する海浜過程特性を有している.本論文では,異常波浪による南国工区の海浜変形に着目して,2011年から2019年の主要な24ストームに対する海岸侵食機構を数値解析する.浅水域での波浪および風による吹送流と,砕波帯内の海浜流で形成される共存場の漂砂モデルを用いて,海浜変形過程を再現する数値解析手法を適用する.モデルの妥当性を確認するために,マルチナロービーム深浅測量の地形変化結果から漂砂モデルの検証とチューニングを行い,改良した海浜変形モデルによるシミュレーションで,計画されている南国工区の漂砂制御工法の実効性が期待できることを示した.

  • 大埜 明日香, 小林 薫, 大和田 繁, 釜土 則幸, 安原 一哉
    2021 年77 巻2 号 p. I_373-I_378
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年,短時間大雨と共に堤防決壊も増加しており,堤防決壊要因の約9割を越水が占める.今後も,水災害の頻発化・激甚化が予想され,堤防決壊までの時間を延ばす「粘り強い堤防」の必要性が高まっている.堤防の危機管理型ハード対策は,天端をアスファルト舗装等で,裏法尻をコンクリートブロック(以下,保護ブロック)等で保護する対策である.この対策には,越水に伴う裏法面の保護ブロック未被覆部分の侵食や,各保護ブロック間からの吸出しによる保護ブロック裏面の空洞発生など課題が残されている.また,北海道や青森県等では,使用方法が定まっていないホタテ貝殻が沿岸域に野積みされ,悪臭等の環境問題が生じている.以上の課題に対し,本論文では堤防の裏法面浅層部または保護ブロック裏面に破砕貝殻層を敷設すると,越水に対する侵食および吸出し抑制効果が発揮されることを実験的に明らかにした.

  • 新原 雄二, 大野 進太郎, 小林 孝彰, 平佐 健一, 田代 聡一, 小澤 敬二, 野口 孝俊, 野津 厚
    2021 年77 巻2 号 p. I_379-I_384
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     羽田空港D滑走路では,2010年10月の供用開始から5か月後の2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し強震記録が得られた.この観測記録を用いてD滑走路の地震時挙動の把握と耐震設計の妥当性の検証を行った.埋立/桟橋接続部の設計に用いたFLIPのモデルに,3.11地震で観測された工学的基盤の加速度波形を入力して再現解析を行った.その結果,埋立部と桟橋部のFLIPによる応答波形は観測値とよく一致していた.一方,接続部護岸に関してはFLIPの解析結果が観測値を上回っており,FLIPを用いた設計が安全側の評価になっていたことを確認した.3.11地震後のD滑走路では航空機の運航に支障のある変状は発生せず,L1地震時の要求性能をほぼ満足していたことが示された.

  • 石塚 新太, 池野 勝哉, 天谷 公彦, 前 嘉昭, 川端 雄一郎, 加藤 絵万, 岩波 光保
    2021 年77 巻2 号 p. I_385-I_390
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年,建設現場の省力化を目的に,コンクリート構造物のプレキャスト化(以下,PCa化)が求められている.港湾工事における桟橋上部工は,PCa化により波浪等の外的要因を受ける海上作業を削減できるため,多くのメリットがある.著者らは,PCa部材を全て工場製作および陸上運搬し,現場搬入後にポストテンション方式のプレストレスによって一体化するPC圧着構造を提案している.本工法は主要部材の現場打ちが不要であり,現場施工の省力化・省人化が図れるものと期待される.本研究では,PC圧着されたPCa部材に一様なせん断力を載荷し,PCa部材の接合部におけるせん断耐力を評価するとともに,既往の評価式の適用性について検討した.その結果,PCa部材の接合部は既往評価式で想定される摩擦力以上のせん断耐力が確認された.

  • 近藤 明彦, 小濱 英司, 渡辺 健二, 国生 隼人, 天野 俊, 小山 萌弥, 永尾 直也, 吉原 到
    2021 年77 巻2 号 p. I_391-I_396
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,桟橋式係留施設の耐震性を安価かつ容易に向上する方法の開発を目的とし,直杭式桟橋の基礎杭間に制振部材を追設する方法について,縦桟橋(陸地から海に向かって突出している桟橋)と横桟橋における耐震改良効果を模型振動台実験により検討した.実験断面は,水深-7.5m相当の断面を対象として,3種類の入力地震動を用いて検討を行った.制振部材の追設による耐震改良効果は,制振部材におけるエネルギー消費と荷重の分担によって基礎杭の最大・最小曲げモーメントと構造全体の最大応答変位が低減された.その効果は横桟橋の方が大きい結果が得られた.桟橋構造全体の減衰定数は,縦桟橋と横桟橋で共に増加した.制振部材のエネルギー消費は縦桟橋の方が大きく,横桟橋では桟橋構造全体の変位が大きく地盤の減衰等の増加によって減衰定数が増加した可能性が考えられる.

  • 高野 大樹, 森川 嘉之, 杉山 友理, 松尾 康成, 濱野 吉章, 荒井 郁岳
    2021 年77 巻2 号 p. I_397-I_402
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     係船岸などの抗土圧構造物の受働抵抗の増大を期待して前面地盤を改良する場合,改良効果の定量評価が設計では重要となる.特に正規圧密状態の粘性土地盤において鋼管矢板の前面を固化し岸壁背後地盤からの土圧に対する受働抵抗を増大させる場合,受働抵抗の発揮メカニズム,改良範囲と改良効果の関係について不明な点が多い.簡易な設計法として,梁バネモデルによる簡易設計法が挙げられる.しかし,この方法は砂地盤への適用を念頭においたものであり,粘性土地盤への適用性については未確認である.そこで,本研究では既存重力式岸壁を増深改良する際に鋼管矢板を用いその前面を固化改良する場合の梁バネモデルを用いた設計法の適用性を,遠心模型実験を用いて検証する.

  • 水野 健太, 土田 孝, 小林 正樹, 渡部 要一, 森川 嘉之, 橋爪 秀夫
    2021 年77 巻2 号 p. I_403-I_408
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     軟弱地盤上に港湾施設や埋立人工島を構築する場合,弾・粘塑性構成モデルを用いた有限要素解析が一般的に使用されるようになってきた.しかしながら,有限要素解析の予測精度が検証されることは稀であり,解析結果の信頼性や土質パラメータセットの妥当性に関する知見は依然として不足しているのが現状と思われる.特に側方変位挙動に関しては,解析値が過大評価であること,変形モードが実際に観測される事象と異なっていることがしばしば指摘されている.このような背景から,著者らは側方変位の予測精度向上を目的とした粘性土の弾・粘塑性構成モデルを提案している.本稿では,5種類の地盤改良工法が採用された実工事に対してこのモデルを適用し,有限要素解析の予測精度を検証した結果を再整理するとともに,従来モデルよりも側方変位の予測精度が向上したことを示している.

  • 竹之内 寛至, 佐々 真志, 足立 雅樹, 岩城 徹也, 岡田 宙, 金子 誓
    2021 年77 巻2 号 p. I_409-I_414
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     新たな CPG 工法の高い隆起抑制効果と液状化対策効果を得るU/D施工の等価改良率の実験的検証を目的として一連のせん断土槽実験及び加振実験を行った.その結果,異なる注入管径・改良体本数(改良率)・繰返し回数が,隆起抑制・相対密度・K0値・液状化抵抗,並びに,等価改良率に及ぼす影響を明らかにした.とくに等価改良率は,圧入による改良率と繰返し体積率の単純に等価な合計ではなく,補正係数αを介した等価改良率で規定できることを明らかにした.本補正係数αは,繰返し体積率の関数で得られ,当模型実験でU/D施工の繰返し体積率が20%の場合は,補正係数αが約0.5となり,モルタル圧入による改良率にして10%相当の等価な改良効果を,隆起抑制に伴う密度・K0値・液状化抵抗増大効果として見込みうる.

  • 遠藤 敏雄, 規矩 大義, 菅野 高弘, 藤井 照久, 高田 圭太
    2021 年77 巻2 号 p. I_415-I_420
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     筆者らは,溶液型薬液注入工法1)によって液状化対策を実施した場合に,サンプリング時に乱れの影響を受けやすい一軸圧縮試験による品質確認方法に代えて,原位置における動的コーン貫入試験を導入することで,改良後における一軸圧縮強さを適切に推定する方法を示した2).しかし,建設残土等で埋め立てられた地盤は,土性のばらつきが大きく,薬液が注入されているにも係わらず,改良前後の動的コーン貫入試験の差である⊿Nd値では改良効果を判断できない場合がある.本論文は,この事象に対して,土性に応じた複数の指標を用いて総合的に改良効果を評価する方策を検討したものである.

  • 野口 孝俊, 赤坂 幸洋, 田中 淳
    2021 年77 巻2 号 p. I_421-I_426
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     広大な一般海域に建設される洋上風力発電設備の設計は,効率的かつ経済的な地盤調査が求められている.特に着床式構造物の設計は,地盤条件が大きく影響するため様々な調査が必要とされるが,最適な調査計画指針は策定されていない.本稿は,地盤リスク低減を考慮した効率的な地盤調査に対する考え方について考察し,洋上風力発電設備建設の手続きに応じた,実務的な地盤調査内容を検討したものである.

  • 杉村 裕二, 篠崎 晴彦, 赤司 有三, 松村 聡, 水谷 崇亮, 森川 嘉之
    2021 年77 巻2 号 p. I_427-I_432
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     昨今,国土強靭化の重要性が認識され,港湾構造物等に粘り強さを持たせるための検討が行われている.本研究では,浚渫土と製鋼スラグを混合したカルシア改質土に粘り強さを付加した新しい地盤材料の検討を行った.まず,三軸圧縮試験により,拘束圧や製鋼スラグの粒径・混合率が強度や粘り強さに与える影響について整理し,製鋼スラグの細粒分はピーク強度に,粗粒分はピーク後の粘り強さに寄与することを示した.また,高強度と粘り強さの双方を得るには,製鋼スラグの混合量が大きい方が有利となる結果が示されたが,浚渫土の有効活用の観点からは好ましいとは言えない.そこで,一般的なカルシア改質土における製鋼スラグ混合率と同等の範囲で,中間粒度を除いた製鋼スラグと浚渫土の配合を提案し,目標性能が確保できることを示した.

  • 杉村 裕二, 松村 聡, 水谷 崇亮, 森川 嘉之, 篠崎 晴彦, 赤司 有三
    2021 年77 巻2 号 p. I_433-I_438
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     昨今,国土強靭化の重要性が認識される中,港湾構造物等に粘り強さを持たせるための検討が種々行われている.その中で,筆者らはカルシア改質土に粘り強さを付加する配合設計を提案している.本研究では,提案する粘り強いカルシア改質土(製鋼スラグ混合土)を裏込めとして利用した矢板式岸壁の模型振動実験を実施し,同程度の一軸圧縮強さを有するセメント改良土との挙動特性の比較を行った.その結果,加振後の矢板の水平変位や曲げモーメントは製鋼スラグ混合土を用いたケースの方が小さいことがわかった.この傾向は,セメント改良土では変形に伴い改良体に発生したクラックが貫通する一方で,製鋼スラグ混合土ではクラックの貫通が生じないことに起因する可能性が示された.

  • 赤司 有三, 山越 陽介, 藤井 郁男, 勝見 武
    2021 年77 巻2 号 p. I_439-I_444
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     浚渫土砂の有効利用技術であるカルシア改質土は,施工時のカルシア改質材混合直後のフレッシュな状態において,粘性が増大して流動性が低下する特徴を有する.この特徴から,カルシア改質土は潜堤等の勾配を有する海中構造物に適用が可能な技術となっている.今回,少数の研究事例で得られていたカルシア改質土の法面勾配形成技術について,実務における施工検討へ展開することを目的に,流動解析の活用検討を行った.その結果,フレッシュなカルシア改質土の流動性はフレッシュなコンクリートと同様にビンガムモデルとして表現でき,その降伏値はスランプ値から求めることが可能であることを明らかとした.また,その値を用いることで実施工試験の形成勾配の結果をシミュレートできることを示した.施工事例検討では,カルシア改質土の流動性を制御することで,消波ブロック等の空隙充填材への適用の可能性についても示した.

  • 谷本 尚希, 粟津 進吾, 山本 佳知, 野中 宗一郎, 赤司 有三, 浅田 英幸, 近本 雅彦, 北門 亨允
    2021 年77 巻2 号 p. I_445-I_450
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     カルシア改質土の施工簡略化工法として開発中の原位置混合工法(海底粘土の掘削,改質材との混合,改質土の投入の工程を原位置で実施)を,含水比が液性限界より低い粘土地盤にも適用できるようにするため,混合装置の改良および掘削した粘土への加水手法の構築を目的に,1/5モデル実験を行った.実験の結果,混合装置の改良により,含水比w= 0.9wLwLは液性限界)の粘土に対しても,wwLの粘土と同等以上の品質で改質土を製造できるようになった.また,掘削した粘土の解泥と同時に注水することで,効率的に粘土の含水比を高め,改質材との混合性を向上させることができた.粘土と水の混合時間が短いと改質土の強度ばらつきが大きくなることに留意する必要があるが,w < wLの粘土地盤に対しても本工法の適用性は十分であるといえる.

  • 山口 天宗, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 柿原 結香, 高田 明旺, 降旗 咲乃
    2021 年77 巻2 号 p. I_451-I_456
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     建設残土の中には薬剤を含むため汚泥として処理され,有効利用が進んでいないものがある.一方,港湾では埋立材量を十分に供給できない場合があり,製鋼スラグと混合した埋立材料として利用することが検討されている.本研究では,この混合地盤材料を水中投入した時の材料分離特性を検討した.特に,投入時の水深と材料の混合が,材料分離に与える影響を検討した.その結果,投入水深が深くなることで材料分離しやすくなる傾向が得られた.また,材料を混合することによる材料分離の低減は確認されなかった.ただし,別途行なった平面投入実験では材料分離が少なく抑えられた.このように,混合土を大量に短時間に投入すると,材料分離が低減される可能性が示された.

  • 粟津 進吾, 大矢 陽介, 小濱 英司, 岡 由剛, 篠崎 晴彦
    2021 年77 巻2 号 p. I_457-I_462
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     鉄鋼生産の副産物である製鋼スラグは,天然砂と比べて内部摩擦角が大きく,サンドコンパクションパイル材(以下,SCP材)に用いた場合,円弧すべりの安定計算では改良幅を縮小できる.一方,耐震性能照査で実施される地震応答解析では,製鋼スラグの内部摩擦角だけでなく,SCP改良地盤としての解析モデルが必要となる.本研究では,原位置試験と室内試験のデータから,製鋼スラグのSCP改良地盤の物性を検討した.その結果,天然砂のSCPと比べて,密度が3割程度,内部摩擦角とせん断剛性が1割程度大きくなった.また,重力式岸壁を対象に解析したところ,密度と内部摩擦角が大きいことで,製鋼スラグのSCPでは単位面積で負担するせん断抵抗力が大きくなり,天然砂より改良幅を縮小しても岸壁の変形量が同等になることが分かった.

  • 柿原 結香, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 高田 明旺, 山口 天宗, 降旗 咲乃, 吉川 友孝
    2021 年77 巻2 号 p. I_463-I_468
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     カルシア改質土や製鋼スラグ混合粘性土は,強度発現が一様ではなく,強度発現の要因が不明な点が多い.そこで,本研究では,転炉系製鋼スラグを混合した粘性土のせん断強度発現について,混合土の固化によるせん断強度発現に影響を与える粘性土や製鋼スラグの物理・化学的要因について検討した.その結果,製鋼スラグ混合粘性土の固化によるせん断強度の発現は,製鋼スラグの最大粒径4.75mm,細粒分含有率0~30%,製鋼スラグ中の遊離石灰量が3.5mass%以上のものを用いる場合,製鋼スラグの粒度分布や遊離石灰量の影響よりも,粘性土の種類の影響が大きいことが分かった.特に,粘性土中の非晶質シリカ含有率と非晶質シリカの構成比率が異なるとせん断強度やせん断強度の発現傾向が大きく異なることが分かった.

  • 高田 明旺, 柿原 結香, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 山口 天宗, 降旗 咲乃
    2021 年77 巻2 号 p. I_469-I_474
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     浚渫土や粘性土に転炉系製鋼スラグを混合すると固化する性質を持つが,固化するまでに時間がかかる場合,混合土に上載圧が作用すると圧密を伴いながら固化することが考えられる.既往の研究から,粘性土と製鋼スラグの混合土を一定の上載圧下で養生することでせん断強度が増加することがわかっているが,この要因として考えられる圧密による乾燥密度の増加および含水比の低下と養生時の拘束圧の影響の度合いは不明であった.本研究では,乾燥密度・含水比と養生時の拘束圧が粘性土と製鋼スラグの混合土のせん断特性に及ぼす影響を検討した.その結果,上載圧を作用させて圧密を行いながら養生することによるせん断強度の増加には,養生時の拘束圧の影響は小さく,圧密に伴う乾燥密度の増加および含水比の低下が影響を与えていることが分かった.

  • 毛利 惇士, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 崎元 和樹, 一瀬 健太郎, 森安 俊介
    2021 年77 巻2 号 p. I_475-I_480
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     杭や矢板等のたわみ性壁体に水平力が作用した際に生ずる地盤反力は,一般に,Winklerばねに置換した検討がされる.地盤の水平反力に関する既往の研究の多くは,杭頭に水平力を受ける場合の変形モードに限定されたものであるが,周知のように,壁体に作用する地盤反力は壁体の変形モードに依存する.本研究では,壁体の変形モードの違いによる地盤反力の変化について,二次元模型地盤を用いた実験により調べた.同一のたわみが生じた際の地盤反力は,浅い区間では直線関係と近似できるが,およそ地盤反力の最大値となる深度以深では,直線とはならない結果となった.このような現象はWinklerばねを用いた手法では評価できない.よって,地盤反力係数は深度方向に一定値とはならず,また,その深度分布は壁体の変形モードによって異なるものであった.

  • 松岡 宏樹, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 平尾 隆行, 竹本 誠, 岡田 朋也
    2021 年77 巻2 号 p. I_481-I_486
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海面廃棄物処分場跡地を高度利用する際には,構造物を支持する基礎工として支持地盤への杭打設が必要となると考えられ,その場合,遮水基盤(粘性土地盤)を貫通するような杭の施工が必要である.杭を打設した場合には廃棄物を遮水基盤以下へ連れ込むことが懸念される.本研究では杭の肉厚より大きな廃棄物に着目し,それを平板に簡略化してモデル化し,これを杭が押し込む実験を行うことで,偏心傾斜荷重を作用させた平板の貫入抵抗と回転挙動の関係について観察し,杭肉厚より大きな廃棄物が杭に押し込まれるときの挙動について検討した.実験の結果,偏心度が大きいほど平板は回転しやすくなり,貫入深度が浅いところで杭から外れること,平板の貫入抵抗は偏心量が大きいほど小さくなることがわかった.

  • 上野 和敬, 杉村 佳寿, 笠間 清伸, 春日井 康夫, 片桐 雅明, 瀬賀 康浩, 西野 智之, 高嶋 紀子
    2021 年77 巻2 号 p. I_487-I_492
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     著者らは, 高圧脱水固化処理装置によって, 高含水比の浚渫土砂を高強度ブロックとして有効利用する技術開発を行っている. 本論文では, 放射状排水理論に着目してブロック作製時の圧密特性と強度特性を調査した. さらに, 放射状排水理論を用いた強度推定を行い, 実測値との比較によってこの推定方法の妥当性を評価した. 得られた結論をまとめると以下のようになる. (1) 固化処理土ブロック作製時の圧密時間は, 放射状排水理論を適応させた脱水棒を用いることで用いない条件の45時間から6時間となり約39時間短縮する事ができた. (2) 脱水棒を用いて作製した高圧脱水固化処理土ブロックの28日強度は10.5MPa となった. (3) 放射状排水理論を用いた強度推定の実測値との誤差は, 1.5MPa以内となり, 高い精度での強度推定が可能となった.

  • 髙田 義人, 杉村 佳寿, 笠間 清伸, 春日井 康夫, 片桐 雅明, 瀬賀 康浩, 西野 智之, 高嶋 紀子
    2021 年77 巻2 号 p. I_493-I_497
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     著者らは, 高含水比の浚渫土砂に高圧脱水固化処理を施すことにより, 高強度なブロックを作製する技術開発を行っている. 本論文では, この固化処理土中のセメント水和生成物や土粒子の鉱物の種類と量に着目し, X線回折法により定量した化合物の質量割合と一軸圧縮試験による強度特性を調査した. さらに, 2つのパラメータ-を用いて比較・評価し, 強度推定を行った. 得られた結論をまとめると以下のようになる. (1) 固化材添加率40%の固化処理土の一軸圧縮強さとセメントの水和反応で生成されるCa(OH)2にはR2 = 0.82の強い相関があり, Ca(OH)2の割合が6.3%増加すると, 一軸圧縮強さが14.6MPa増加した. (2) 固化材添加率80%の固化処理土の一軸圧縮強さとセメントの水和反応で生成されるCa(OH)2にはR2 = 0.80の強い相関があり, Ca(OH)2の割合が1%増加すると, 一軸圧縮強さが20.9MPa増加した.

  • 岡村 郁耶, 土田 孝, 北出 圭介, 藤岡 晃平
    2021 年77 巻2 号 p. I_499-I_504
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     建設汚泥に発生土,固化材等を添加・混合して粒状固化したリサイクル土の再利用が進められている.再利用制度による広島県の登録リサイクル製品であるリサイクル土について,一連の室内土質試験によって港湾工事用埋立材としての適用性を検討した.今回用いたリサイクル土は,水浸により細粒化して粒度特性が大きく変化すること,水浸により圧縮性が増加し埋立材としては液状化強度が低いことがわかった.少量のセメントを添加した場合は,圧縮性が減少し液状化強度も大きく増加するので,事前混合処理による改良リサイクル土として使用すれば埋立材として使用できると考えられる.

  • 工代 健太, 佐々 真志, 高田 康平, 梁 順普, 大下 倭駆, 大塚 悟
    2021 年77 巻2 号 p. I_505-I_510
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     細粒分混じり混合砂質土の液状化予測判定は,細粒分含有率(Fc)及び塑性指数(Ip)に応じて補正したN値から液状化強度を予測し行われる.しかし, 細粒分の含有率や物性が補正N値と液状化強度の相関に及ぼす影響を検討した事例は少ない.本研究では,Fcと細粒分のIpが混合砂質土の液状化予測判定に及ぼす影響をより詳細に検討することを目的に,細粒分の含有率,鉱物特性及び粒度を変化させた中空ねじりせん断試験と実物大標準貫入試験を実施した.その結果,現行の基準を用いた場合,Fc≧15%,なおかつ混合砂質土のIpが10未満の場合に液状化予測判定精度が低くなることを明らかにした.具体的には,上述の条件下で含有する細粒分が粘土の場合は液状化予測判定結果が過度に安全側となり,主に非塑性シルトを含む場合は危険側となることを示した.

  • 伊藤 輝, 宮本 順司, 佐々 真志, 角田 紘子
    2021 年77 巻2 号 p. I_511-I_516
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,消波構造物としての機能だけでなく海底盛土等の土留壁,海底埋設構造物盤の安定化対策工など様々な機能が期待できる海底の潜堤や捨石マウンドの安定性検討の観点から,砂地盤-水中礫マウンド系の波浪実験を行い,波による液状化と礫マウンドの沈込みとの関わりを詳しく調べている.実験は遠心力場70gで行った.実験により,礫マウンド周辺の地盤浅部で液状化が発生した後,液状化は地盤の深度方向及びマウンド直下地盤へ進展・拡大していき,それとともにマウンドは地盤へ沈込んでいくことを観察した.さらに,マウンド直下へのシート敷設,基礎地盤の礫置換などの沈込み対策工の効果を検討した.その結果,液状化が発生し拡大すると対策工の効果はなく礫マウンドは大きく沈み,液状化が進展しない場合は沈込みが発達しなかった.これより礫マウンド付近の上部工対策ではなく液状化の進展を抑えることが重要であることを示した.

  • 藤江 佑大, 原 弘行
    2021 年77 巻2 号 p. I_517-I_522
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海水曝露された固化処理土表面には劣化の進行を遅延させる効果を持つ白色の水酸化マグネシウム層が析出する場合がある.本研究では,感潮河川における当該物質の生成に関する検討を行うため,濃度を変化させたマグネシウム水溶液を河川水の代用としたセメント処理土の浸漬試験を実施した.その結果,比較的濃度が低いマグネシウム水溶液に浸漬させ,処理土表面のpHが一定時間10以上を維持できた場合に水酸化マグネシウム層が析出した.また,処理土と接触するマグネシウム水溶液の濃度に関わらず,水酸化マグネシウム層が観測された場合,カルシウムの溶出ならびにマグネシウムの浸透が大きく抑制され,力学的劣化領域も小さくなることが示された.

  • 折田 清隆, 谷 和夫, 鈴木 亮彦, 古庄 哲士
    2021 年77 巻2 号 p. I_523-I_528
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     著者らは,粗粒・高密度の海底鉱物資源を効率的に揚鉱するために,キャリア物質(粒状体を含む粘性流動体,CM)を用いる方法を提案した.しかし,揚鉱に適切なCMの材料と配合は未検討である.そこで,掘削泥水に広く用いられるベントナイト懸濁液を粘性流動体,珪砂を粒状体としたCMの揚鉱効率を検討した.

     まず,CMの粘性特性を計測した結果,ビンガム流体(塑性粘度𝜂p,降伏応力τy)の特徴とおおむね一致した.次に,揚鉱実験を実施した結果,破砕した鉱石を海水と共にポンプアップする既存の方法よりも粗粒・高密度の鉱石を小さな流速で揚鉱することができた.また,τyの大きいCMほど,より粗粒・高密度の鉱石を効率的に揚鉱できることを確認した.

  • 森田 浩史, 清水 幸三, 泉田 城史, 小沼 健人, 竹中 寛, 水谷 征治, 猿橋 正晃
    2021 年77 巻2 号 p. I_529-I_534
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年日本で進められている,国土強靭化に対応した防災・減災対策構造物の一つとして,海底設置型フラップゲート式可動防波堤が開発されてきた.この防波堤の初号機の施工では,コンクリートを長距離かつ複雑な配管で圧送し,水中の閉塞された空間内に充塡する計画であったが,類似条件下でのコンクリートの流動性および充塡性の知見は少ない.また,実施工におけるコンクリートの性状を事前に把握するためには,実大規模の試験が有効となるが,その実施には費用と期間を要する.本研究では,長距離圧送試験を行い,圧送性の確認を行うとともに,水中へ圧送されたコンクリートの流動性および充塡性を確認した.さらに,今後の実大規模の試験の簡略化を目的に,コンクリートの流動解析を行った結果,水中へ圧送されたコンクリートの流動性および充塡性を精度良く再現できることを確認した.

  • 滝 泰臣, 大内 久夫, 飯干 富広, 吉塚 尚純, Mohamad AIT EL AAL , Abdellah Ouali
    2021 年77 巻2 号 p. I_535-I_540
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     我が国のRC製消波ブロックは厳しい海象環境における防波堤に用いられる場合が多い.この特性を生かし,波浪の大きなアフリカ北部地域など海外への展開が期待される.一方,RC製消波ブロックの使用実績が非常に少ない海外の場合,ブロックの力学特性だけでなく,塩害への懸念が強く,耐久性に対する定量的な評価が求められる.また,日本と現地のセメントの違いがコンクリートの諸性能(耐久性,熱特性等)に及ぼす影響が明確でなく,結果として,日本国内でのブロックの使用実績が参考にしづらい現状である.そこで本検討では,モロッコ国を主対象とし,現地材料を用いたコンクリートの強度特性,耐久性(塩化物イオン浸透性,硫酸塩劣化に対する抵抗性等)について,各種の室内試験および実環境での暴露試験等を基に評価を行いRCブロックの適用の可能性を明確にした.また,上記のコンクリートと,日本国内のコンクリートとの耐塩害性能の比較を行った.

  • 中嶋 道雄, 前田 庫利
    2021 年77 巻2 号 p. I_541-I_546
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     2012年に国土交通省がCIM(2018年よりBIM/CIMと呼称)の概念を発表してからすでに8年が経過している.港湾工事では2017年度から試行工事として始まり,2023年度には例外を除きすべての工事がCIM対象工事となる予定である.CIMとは調査・設計・施工・維持管理のすべてのフェーズにおいて,3次元情報を中心とした情報蓄積及び活用を目的としている.施工においては3次元で施工計画を行い,施工前に干渉等の不具合や,より安全で効率的な施工方法を発見し,その結果をいかに正確に現場で実施できるかの管理に活用している.今後これらのデータを活用する方向性を,従来のデータ構築方法や,現状での活用方法及び将来性を元に検討したものである.

  • 高橋 紘一朗, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
    2021 年77 巻2 号 p. I_547-I_552
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     高波浪の作用を受ける富津岬南岸と波浪作用が弱い富津岬北岸を対象に,作用波高の違いによる植生帯分布域の変化を現地調査により調べた.南岸・北岸ともに数種類の植生が混在していたが,出現頻度の高い植生はほぼ同一の標高帯に生育していた.南岸では成帯構造の前縁をなす一年草は確認できず,植生帯前縁線から多年草が繁茂していた.一方,北岸では一年草であるメヒシバが繁茂し,その背後に多年草と低木が生育しており,成帯構造が維持されていた.北岸の作用波高は南岸の作用波高よりも約30cm低く,一年草が生育できる環境条件を有していたためこの結果が得られたと考えられる.

  • 弓岡 亮太, 德丸 直輝, 井山 繁, 日比野 忠史
    2021 年77 巻2 号 p. I_553-I_558
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     アサリの生産量の減少が著しい沿岸域において,生産量を向上させる造成干潟を構築するために,浚渫泥を用いた新たな干潟造成手法が必要である.本研究では,浚渫泥投入後,段階的に覆砂が行われて造成された干潟を調査対象とし,底質分析,底生生物調査から段階的覆砂の有効性の評価を行った.覆砂完了後,数年経過した地点では,砂層の上に浚渫泥と砂が混在する層が確認され,その環境で生物が多く生息していることが明らかとなった.対象干潟ではアサリの着定の場として良好な砂泥混合層が形成されているが,栄養塩状態はリン制限があるため,アサリの十分な成長が期待できない.アサリの生産のためには,干潟へのリン供給源が必要であり,浚渫泥がリンの供給源として期待される.

  • 岡田 卓, 及川 隆仁, 井山 繁, 日比野 忠史
    2021 年77 巻2 号 p. I_559-I_564
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年,貧栄養に起因したアサリの生産量の低下が問題となっている.本研究では貧栄養状態にある海域を対象とし,石炭灰造粒物(GCA)を被覆した浚渫泥の造成干潟で,アサリの生息場を形成することが目的である.感潮域に敷設されたGCAと浚渫泥の試験干潟に,アサリの籠装置を設置した.アサリの生存と成長,干潟材料の栄養供給(溶出イオン量),珪藻の生産性(付着珪藻量)を検討することで,アサリの生息場適性を評価した.その結果,季節や地盤高(浸水時間)を考慮したアサリの生存特性を,殻長や湿重量などの成長度,丸型指数から,GCA浚渫泥干潟がアサリの生息に適応できることが確認できた.GCAが浚渫泥の栄養供給を促進し,付着藻類の増殖場として機能させることがアサリの生息場として適した環境を形成し得る一因であることが明らかにされた.

  • 駒井 克昭, 佐藤 辰哉, 千葉 俊之, 中山 恵介
    2021 年77 巻2 号 p. I_565-I_570
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究ではアマモを用いた水槽実験による溶存無機炭素の変化のモデル解析とアマモの成分分析の結果から,アマモの季節的な光合成活性の違いが溶存無機炭素の吸収・放出特性に及ぼす影響を明らかにした.アマモによる溶存無機炭素に関する最大光合成速度の最適値は実験の時期によって異なることが明らかになった.モデルによる推定値とアマモのクロロフィルa含有率の結果から,アマモの生長段階の違いが光合成活性や最大光合成速度に影響したことが示唆された.アマモの詳細な諸元の測定値に基づいて得られた結果をモデルに適用し,溶存無機炭素の鉛直プロファイルの特性とアマモの分岐の構造との関係を明らかにした.

  • 柴田 早苗, 幸田 隆史, 髙山 博史, 仲本 豊, 伊藤 靖, 末永 慶寛
    2021 年77 巻2 号 p. I_571-I_576
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     サンゴ礁は,水質浄化や観光,防災,文化や環境教育の場等のほか,水産生物の餌場や産卵場等として水産増殖機能を有している.近年のサンゴ礁の衰退に伴い,サンゴ礁域の沿岸漁業の漁獲量も減少してきている.一方,森林の適切な管理のための間伐を促進する取り組みの一つとして,木材を水産生物の増殖に資するため,全国各地で木材増殖礁の開発・普及が進められている.沖縄地域で発生した木材を有効利用しながら,サンゴ礁の水産増殖機能の一部を補っていくことを目指して,木材増殖礁を開発し,実証試験で検証を行った.

  • 梁 順普, 佐々 真志
    2021 年77 巻2 号 p. I_577-I_582
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     干潟・砂浜において,波の遡上や潮汐作用による地下水位変動に伴う土砂内部のサクションの動態が,多様な底生生物が生息する表層土砂の間隙,剛性,硬さ等の住環境を形成する上で本質的な役割を担っており,サクションを核とした地盤環境動態が多様な生物活動の適合・限界場を支配していることが明らかになっている.本研究では,沿岸環境の整備,維持管理及び沿岸生態系の保全再生に活用しうる基盤として,上述の筆者らの知見に基づいて構築した沿岸底生生態-地盤環境動態統合評価予測プラットフォームを断面2次元から3次元に拡張し,現地への適応を行った.その結果,当該プラットフォームは,台風イベントによる干潟地形変化に伴うコメツキガニの分布域の空間的な移動を整合的に予測・再現しており,その有効性を実証した.

  • 梶原 瑠美子, 大橋 正臣, 打田 拓真, 的野 博行, 門谷 茂
    2021 年77 巻2 号 p. I_583-I_588
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,保護育成機能の寒冷域漁港での整備手法提案のために,漁港周辺での魚類のインターバル写真撮影や物理環境観測,波動場解析を行うことにより,波高による魚類行動への影響とともに,港内の魚類の高波浪からの避難場機能を評価する手法について検討した.解析の結果,波高が大きくなるに従い出現個体数や出現頻度は減少し,一定の波高以上で魚類は観察されなかった.そのため,高波高は魚類行動に影響を与えると考えられた.そこで,波高閾値を用いて漁港内の区分領域の避難場機能の評価手法を検討したところ,領域区分による機能の強弱を評価することができた.今後,詳細な検討が必要であるが,この評価手法は,避難場機能を定量評価できるため,機能強化の整備に向けた有益な情報と考えられる.

  • 杉本 憲司, 小林 和香子, 吉永 圭介, 菅野 孝則, 岡田 光正
    2021 年77 巻2 号 p. I_589-I_594
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,創出した人工岩礁性藻場生育基盤に着生したクロメ衰退原因とその後の藻場の回復状況を明らかにするため,定点設置型カメラによる連続的な観察と海水中の環境DNA中の特定魚類の把握を組み合わせることで,食害魚類の分布を調べるとともに,食害後の海藻遷移を観察した.2019年5月の海藻の衰退は,岩礁性藻場生育基盤において茎だけ残ったクロメが多くあり,食害痕が残っていたことから,食害による影響が大きかったと考えられた.茎だけ残ったクロメの割合とアイゴ,クロダイ及びカワハギそれぞれの設置型カメラで観察された出現頻度と間に相関はなかった.クロメの衰退があった2019年5月まで人工岩礁性藻場生育基盤においてアイゴDNAはほとんど検出されず食害痕以外の直接的な食害の証拠は確認できなかった.食害によって海藻が衰退した人工岩礁性藻場は,創出直後と同様に小型海藻が再び出現し,19ヶ月程度で大型海藻クロメも出現し,衰退直前の海藻種が優占した.

  • 駒井 克昭, 篠原 健人, 内田 悠介, 園田 武, 松田 烈至
    2021 年77 巻2 号 p. I_595-I_600
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     汽水域の水産有用種にとって重要と考えられている塩分を制約条件として懸濁物質と鉄に拡張した概念モデルを用いて,藻琴湖とシブノツナイ湖における諸過程の寄与の大きさを検討した.概念モデルにおいては,潟湖における流入河川水の滞留,懸濁物の沈降・再懸濁,溶存物質の溶出,および生物的な取り込みを考慮した.モデルによる解析の結果,藻琴湖では流域の土地利用に畑地が多く,土砂流入が大きいため沈降と再懸濁の寄与が比較的に大きいと考えられた.感度解析の結果,シブノツナイ湖の汽水環境は河川改修や気候変動による流量変化,湖内の地形変化,および湖口の閉塞等に対して脆弱であることが示された.

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