土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
77 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.37
  • 齋藤 輝, 宇野 宏司
    2021 年77 巻2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年,環境再生の一環として干潟や浅場が造成されており,環境修復材として適性のある覆砂材が必要とされている.転炉製鋼スラグは,環境修復材としての活用が期待される.本研究では,鉄鋼スラグの酸素消費特性を把握するため,神戸港に流入する2級河川生田川河口において,コンテナ内に充填したスラグ材を用いた暴露実証実験を行った.その結果,底層の貧酸素状態改善の有用性を確認した.

  • 内藤 了二, 秋山 吉寛, 萩野 裕基, 新井 功, 田村 明, 岡田 知也
    2021 年77 巻2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     豊かな海域環境の次世代への継承のために生物の生息場等の再生が求められている.また,循環型社会への貢献といった観点からは,建設発生土等の有効活用も求められている.これらの発生土砂は,海域の環境改善材として利用できる可能性がある.しかし気泡式シールドトンネルで発生する土砂には陰イオン界面活性剤AES(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)が主成分として使用されている.AESが高濃度の場合には水生生物への影響がある一方で細菌等の微生物によって分解する特徴がある.本研究は,土砂中に含まれるAESの細菌による分解の基本的な特性を把握するため,温度,細菌の有無,土質に着目した分解実験を行い,分解速度定数を実験結果より導出した.土砂中に含まれるAESの分解速度定数は,15℃から25℃の範囲で線形の温度依存性があることが判明した.非滅菌粘性土中のAESには,実験開始時の細菌の存在と細菌数の増殖が関係していた.砂質土は,細菌数が不検出のため分解しないものと考えられた.

  • 松本 大輝, 中山 恵介, 駒井 克昭, 田多 一史, Hao-Chi Lin , 新谷 哲也
    2021 年77 巻2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     北海道北東部に位置するコムケ湖でアマモの呼吸と光合成を考慮したDIC水平分布について検討した.従来のSAV model(Submerged Aquatic vegetation model)は,湖等の大規模計算を行う際に,アマモの本数が多いため,計算時間が膨大になるという欠点を有していた.そこでまず,実現象にSAV modelを適用するために,複数の水草(Submerged Aquatic vegetation: SAV)を1本で代表させるSuper SAV modelの再現性の検討を行った.流速分布と拡散係数の分布を比較することによって再現性を検討したところ,十分な再現性を確保したうえで,計算時間の大幅な短縮に成功した.さらに,実現象へSuper SAV modelを開発・適用し,呼吸と光合成の効果を考慮することで,DICを高精度に再現できる可能性を示すことができた.

  • 中村 友昭, 白井 開斗, 趙 容桓, 水谷 法美, 倉原 義之介, 武田 将英
    2021 年77 巻2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     規則波下における浮遊ケーソンの動揺に対するFlume式減揺タンクの効果と機構を水理実験により考究した.その結果,Heaveの無次元全振幅に与える減揺タンクの影響は小さいことを確認した.一方,Pitchの無次元全振幅の最大値は,減揺タンクに搭載する自由水の質量の増加とともに減少することが判明した.また,減揺タンクに搭載した自由水による減揺モーメントを推定し,減揺モーメントにとって自由水に作用する重力の寄与が大きいこと,水平方向の慣性力は減揺モーメントの振幅を増大させる効果があることを明らかにした.減揺モーメントからPitchの全振幅を求めたところ,水理実験結果と概ね一致する結果が得られたことから,ケーソンに搭載する減揺タンクについても船舶海洋工学分野における減揺タンクと同様に説明できることを示唆した.

  • 橋本 貴之, 織田 幸伸, 小俣 哲平
    2021 年77 巻2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海上工事の施工計画では,クレーン船など作業船の波浪による動揺を把握し,稼働率の算定精度を向上することが,作業の最適化や工費縮減のために重要となる.また,海上工事の施工可否を判断する際には,船体のみならず,吊荷の動揺にも注意しなければならない.吊荷の動揺を考慮した係留船舶に関する既往研究の多くは線形モデルを用いた数値解析であり,水の粘性や渦等による影響を考慮していない.そこで本研究では,小型クレーン船を対象に水理実験を行い,係留船体の動揺と吊荷の挙動に関する特性を検討し,流体と構造物の連成解析が可能なOpenFOAMによる係留船体の動揺と,これを入力とした単振り子モデルによる吊荷挙動の解析からその再現性を確認した.さらに,船体動揺と吊荷挙動の連成解析が可能なOrcaFlexによる解析結果と比較することで,各手法の妥当性を検証した.

  • 大島 寿治, 伊賀 浩之, 泉田 裕, 下田 潤一, 田中 純壱, 田所 篤博, 大家 隆行, 高橋 武志
    2021 年77 巻2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     我が国の港湾の中長期政策を示すPORT2030では,生産性向上等を目的として「次世代高規格ユニットロードターミナル」の形成が掲げられており,その取組の一つとして船舶の離着岸の迅速化・安全性向上等が期待される自動係留装置(以下,装置とする)の導入が示されている.一方,これまでに我が国の公共岸壁において装置の導入事例は無く,その導入効果や検討手法に関する報告もない.

     そこで本研究では,高規格ユニットロードターミナルの整備を進めている敦賀港鞠山南地区を対象に,船体動揺シミュレーションにより装置の船体動揺抑制効果を検証し,係留索と比較して水平運動成分(Surge,Sway及びYaw)の動揺に対する抑制効果が高いことを確認した.また,岸壁稼働率及び風荷重に対する係留力を試算し,装置の所要基数を算出する一連の検討方法を提示した.

  • 小林 拓磨, 髙橋 研也, 西畑 剛
    2021 年77 巻2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     気中もしくは没水状態の矩形ケーソンおよび円柱スパー型洋上風車を起重機船で揚重施工する際,波浪によって生じる船および吊荷の動揺特性を把握するための水理模型実験を実施した.吊荷気中時では,特定の波周期に対して吊荷の並進運動が大きくなる共振が見られ,施工が危険となる波浪条件を確認できた.異なる2つの波向に対する動揺量の比較からは,斜め方向の入射波によって横方向の動揺量が誘起される現象を確認し,施工中の波向急変に伴う動揺特性の変化を評価した.円柱吊荷没水時においては,吊荷のYawが卓越するなど激しい動揺が観測され,洋上風車本体とスパー型浮体の連結施工時,急激な動揺量増大リスクのあることが示唆された.また,多方向不規則波実験では単一方向不規則波よりも横方向の動揺量が大きくなることが確認された.

  • 太田 和彦, 西野 友希, 田隈 康裕, 篠田 瞭太, 小杉 広己
    2021 年77 巻2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     港湾内の重要施設や養殖設備等に対して脅威を与えるような海中の不審者・不審物を,ソーナーで自動探知し警告できるようなセキュリティー対策用装置が必要とされている.しかし,湾内のような極浅海域においては,音波の伝搬過程における多重反射や海底残響の影響で海中目標の探知に多くの困難を伴う.このため廉価であるにもかかわらず狭い指向幅が形成されるサイドスキャンソーナーを用いた試験装置を試作し,残響の回避を図ると共にHough変換を利用した目標探知の自動化について海上試験で評価し,その有効性を確認した.また,残響が強く目標検出が困難な場合は,畳み込みニューラルネットワークの適用により,これらの分離が可能なことを試験データより確認することができた.

  • 牟田 直樹, 北出 圭介, 月坂 明広, 松前 芳寿, 梅本 秀二
    2021 年77 巻2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,船舶の接岸や航走波により繰り返し動揺を受ける函間渡橋の挙動を解析し,今後の維持管理に向けた計測手法等を考察した.計測は,サーボ型加速度計,モーションキャプチャカメラ,RTK-GNSS測量器の3つの手法を採用し,浮桟橋と函間渡橋の相対変位と絶対変位計測を試みた.何れの評価項目においてもモーションキャプチャーが最適であったものの,それぞれの手法に一長一短があるため,制約条件など計測環境に応じた適切な手法を採用する必要がある.

  • 望月 航, 鴻巣 真央, 池谷 毅, 稲津 大祐, 岡安 章夫
    2021 年77 巻2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,船舶動揺の簡易な計測手法として,船体に搭載した単一の小型カメラにより,基礎上に設置した標的を撮影した動画像から船体の動揺量を計測する手法を開発し,その精度および適用性について検討を行った.動揺解析では,既知のカメラ内部パラメータと得られた動画のフレームからカメラ外部パラメータをPnP問題として求めることで,船の位置および回転を計算している.精度検証実験の結果,計算手法としてOpenCVのsolvePnPRansac関数を使うことで,標的とカメラの距離が100cm以内であれば,位置平均絶対誤差1.0cm未満,角度の平均絶対誤差1°程度でカメラの位置回転を推定できることが確認できた.モデル船舶を用いた着桟挙動実験では,着岸時の船体の3次元挙動をとらえることができ,本手法の適用性が確認できた.

  • 三神 厚, 藤田 孝康, 三上 信雄, 笠井 哲郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は小型起振器を用いることから制約を受ける共振実験においてマウンド式防波堤の振動特性を把握するための信号処理手順について検討したものである.まず基礎部の欠損が防波堤システムの固有振動特性に与える影響を考察し,基礎部の欠損はばね-マス系のばねが低減することに相当することを示した.その上で,海洋による波動の影響を常時受ける環境下の複数のサイトにおいて,小型起振器を用いた共振実験の応答信号と常時微動観測記録との比較に基づき,起振器実験から得られる観測信号の信号処理の合理的な方法について検討した.その結果,海洋波動によると思われるノイズの除去を行うことで共振曲線の改善を図ることができた.さらに打ち継ぎ面がある場合について防波堤システムの固有振動数評価に与える影響も議論した.

  • 羅 誌遠, 武若 聡
    2021 年77 巻2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     北西太平洋海洋長期再解析データセットFORA-WNP30を用い,1992年から2012年の間の水深1,500mまでの領域に生じた海水温変化による膨張(収縮)を推定し,海面水位変動への各層,緯度領域毎の寄与を分析した.期間中の海水膨張による海面水位上昇は2.0mm/year程度であった.推定された海水膨張による海面水位の経年変化は気象庁が公表している長期の海面水位変動に類似していた.観測された海面水位変化における水温上昇による海水膨張の寄与は大きいと考えられる.

  • 鈴木 崇之, 荒木 大地, 比嘉 紘士, 中村 由行
    2021 年77 巻2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     茨城県波崎海岸に位置する波崎海洋研究施設において,平均汀線位置から陸側に114m,平均海面上11.6mにて波浪音の観測を行い,この音圧レベルを用いた有義波高の推定を試みた.解析には2020年10月20日から11月17日に計測した各種1時間毎の平均値を使用した.始めに,騒音計を用いて推定を行った結果,既往研究と同様に概ねよく推定できることが確認された(R2 = 0.51).次に,安価かつ容易な方法としてICレコーダでの波高推定を行った.ICレコーダによる音圧レベル,相対偏差等を用いて推定を試みたが,R2 = 0.15に留まる結果となった.そこで,計測された過去1.5日分の音圧レベルと有義波高から波高の推定式を導き,その後の12時間をこの推定式で求める方法を実施した.その結果,やや時間遅れが生じてしまうものの精度よく推定できることがわかった(R2 = 0.64).

  • 園部 雅史, 羽柴 秀樹
    2021 年77 巻2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     令和2年7月豪雨の影響により球磨川流域で発生した広範囲かつ同時多発的な土砂災害によって,球磨川に土砂や流木が流れ込んだ.この影響で球磨川河口から大量の土砂や流木が八代海に流出した.このような海洋漂流物は,航行する船舶に影響を与えるだけではなく,養殖産業や観光業にも波及するため,迅速な除去作業を行う必要がある.本研究では,観測後にフリーに入手が可能な時系列なCバンドの特性を有するSentinel-1衛星データを用いて八代海に流出した海洋漂流物の判読調査と抽出について検討した.加えて,異なる観測条件のSAR衛星画像を用いることで海洋漂流物の抽出のための適当な入射角や偏波が検討された.この結果,災害時における海洋漂流物の判読や抽出について有効に活用されることが考察された.

  • 柿木 哲哉, 辻本 剛三, 外村 隆臣
    2021 年77 巻2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     令和2年7月豪雨災害時に,球磨川から八代海に流入した流木が八代海湾奥に大量に漂着した.本研究では,この豪雨災害で発生した流木の移動過程や移動にかかる要因を明らかにすることを目的とし,現地踏査や観測データの解析と数値解析を行った.数値解析では,流入した流木等の物質が移流・拡散方程式に基づいて移動すると仮定し計算を実施した.また,この豪雨災害後の数日は風も強く,流出した漂流物の移動に風の影響も十分考えられたことから,移流・拡散方程式の移流項と拡散項に風の効果を追加した.その結果,流木の流出のタイミングと潮位の位相との関係や流木の流出位置により,流木の到達位置が変わることがわかった.特に,下げ潮時に球磨川から流木が流出すると,八代海北東部の湾奥に流木が向かう傾向にあり,また,前川河口前面の沖側に流木が流出すると三角方面に向かうことなどが分かった.

  • 西 広人, 琴浦 毅, 堺 浩一, 石塚 淑大
    2021 年77 巻2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年,UAV写真測量は状況写真撮影等の汎用性の高さなどにより最も普及しているUAV測量手法の一つである.しかし,周囲を海に囲まれた消波ブロックを対象とする場合,対象物の周囲を標定点で囲んで精度を確保する方法は困難である.そこで本研究では,海に囲まれた構造物に対してUAV写真測量での標定点配置の影響評価と,消波ブロックに隣接する防波堤上部工上に配置した標定点外についての計測精度検証を行った.

     その結果,消波ブロックを対象としてUAV写真測量を行う場合は,標定点を上部工へ100m間隔で2点とその間に1点置くことと,垂直撮影に加え4方向かつ角度45度の斜め撮影を行うことで,標定点から62.5m未満の範囲までは精度が確保できることが明らかとなった.したがって,UAV写真測量の消波ブロックへの利活用の可能性が確認できた.

  • 比嘉 紘士, 市村 康, 宮辻 孝史, 鈴木 崇之
    2021 年77 巻2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では長崎県諫早市小長井地先の干潟漁場を対象として,Unmanned Aerial Vehicle(UAV)空撮画像を使用した標高,中央粒径(D50),ホトトギスガイマットを同時に推定するモニタリング手法を考案した.干潟上の標高は既存のAgisoft photoscanを使用し,D50は空撮画像から得られる輝度値を Reflectanceに基づき推定した.ホトトギスガイマットの推定には機械学習のR-CNN(Regions with Convolutional Neural Net-works)を使用した.標高はグランドコントロールポイントにおけるRMSが0.0178mであり,また,D50はReflectanceとの間にR2=0.615(N=9)の相関関係があった.ホトトギスガイマットの検出は,1200万画素のカメラで高度5~20mのとき70%以上の検出精度となり高度30m以上で50%以下に低下,5000万画素のカメラで高度40mのとき60%以上の検出精度となり, 高度50mで60%以下に低下することが分かった.さらに,推定したそれぞれの空間的な分布との関係を調べることで,ホトトギスガイが発生し易い領域の特定を行なった.

  • 壱岐 信二, 塚本 吉雄, 後藤 和郎, 高柳 茂暢, 小川 豪司
    2021 年77 巻2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     水深4m以浅の浅場は,砂浜海岸では波の作用でサンドバーが岸沖方向へ移動を繰り返すなど地形変化の著しい場である.また,岩礁域ではカジメやホンダワラ類の藻場が生育し,そこを生活の場とする多様な魚介類が生息するなど生態的にも重要な場である.しかし,ここは波が砕けて潮流も複雑なため船も人も近寄りがたい「計測のしにくい場所」で,特に海底地形の情報整備は遅れていた.

     近年,小型航空機に搭載可能なグリーンレーザ測深機が開発され,浅場から陸部を安全に効率の良い計測が可能となった.本稿では,相模灘沿岸の約80kmの海岸を同手法で計測して,最大水深9~15mまでの3次元データを取得した.この結果から詳細な海底地形図を作成するとともに,日常的に海岸を利用している「釣り人」を対象に,海底地形図をwebで公開した.

  • 山本 貴史, 玉置 哲也, 岡崎 慎一郎, 岡崎 百合子, 吉田 秀典, 末永 慶寛
    2021 年77 巻2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     日本海から瀬戸内海沿岸海域では,キジハタ,タケノコメバル等の有用岩礁性魚類の資源生産力向上のため,人工種苗を海域に放流し漁獲へ反映しようとする施策が実施されている.しかし,放流後の天敵生物による食害や適正な生育場(岩礁域)の不足等で歩留まりは僅かに1%程度となっている.筆者らが開発した保護育成機能を有する人工魚礁等の構造物へ放流した場合の歩留まりは,自然放流のそれに比べて高い値を保つことが実証されているものの,稚魚の生残や帰巣に関する定量的なデータが乏しく,正確な歩留まりを評価することが困難であった.本研究では,AIによりキジハタと,天敵となる魚類を判別する手法を開発するとともに,稚魚の人工魚礁への定着率および帰巣量を定量的に評価し,効率的な稚魚の放流技術を提案する.

  • 大井 邦昭, 三上 信雄, 明田 定満, 佐伯 公康, 上岡 洋平, 藤田 孝康, 市村 康
    2021 年77 巻2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海岸では高潮等の被害を防ぐために数多くの陸閘が設置されており,被害を防ぐためには高潮の襲来前に確実に陸閘を閉鎖する必要がある.本研究では,効果的な陸閘の運用のために陸閘の開閉状況を遠隔地で一括監視できる「陸閘監視システム」を開発した.このシステムでは陸閘の開閉判別だけでなく,陸閘とその周辺の画像を共有することで有用性を高めている.陸閘の開閉の判断には画像AIを用いた.本研究ではこのシステムを実装したデバイスを用いて現地実証試験を実施した.その結果,画像AIによる判別結果は昼夜を通して92.2%の正解率を確保したことや,省電力化のために採用したLPWA方式による通信方法の実用性が確認された.また,実証試験フィールドの陸閘の施設管理者や操作者へ本システムの効果についてヒヤリングを行い,システムの有用性を確認した.

  • 秋本 哲平, 江守 辰哉, 片山 遥平, 上野 一彦, 熊谷 隆宏
    2021 年77 巻2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     海底地盤のN値や土質定数を取得するための調査では,自己昇降式作業台船(SEP船)等を必要とし,気象海象の影響を強く受けることから,コーン貫入試験のような簡便かつ短期間で実施可能な調査方法が求められている.コーン貫入試験は,経験的に得られた換算式による土質定数の推定が可能であるものの,土質や場所によって換算式の選定や換算式に用いるパラメータの微調整が必要となる.本研究では土質定数(N値,Fc)の推定精度を高める手法として,人工知能技術(AI)の活用による推定手法の適用性を検討した.検討結果から,AIを用いることで推定精度の向上を見込めることが示唆されたものの,AIで推定する際は,推定する地点における数点のコーン貫入試験結果を取得し,事前に学習する必要があることがわかった.

  • 平山 克也, 川口 浩二, 田中 陽二, 樋口 直人, 田所 篤博, 金子 大介, 伊藤 裕裁, 佐々木 誠
    2021 年77 巻2 号 p. I_727-I_732
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     対象施設の設計波の算定に用いる設計沖波は浅海変形が生じない深海域で設定するのが基本である.しかし,遠浅の海底地形や内湾に面する港湾等では,対象海域の風場による波浪の発達を考慮できるように,浅海域に設けた地点に対し深海条件の波浪推算を実施して疑似沖波を算定することも多い.一方,近年では浅海変形を考慮した波浪推算精度の向上が顕著であり今後の活用が期待される.

     本研究では,浅海条件で得た推算結果を準沖波と定義し,沖波,疑似沖波との共通点・相違点を述べるとともに,準沖波を用いて堤前波を算定する波浪変形計算の方法や留意事項について秋田県能代港沖を事例として具体的に示した.準沖波に対し逆推定された沖波がその地点での波浪推算結果とよく似ていることは,同時に準沖波に対し算定された堤前波の妥当性を示している.

  • 田中 陽二, 吉岡 健, 仲井 圭二, 永井 紀彦
    2021 年77 巻2 号 p. I_733-I_738
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,北九州市沖の観測データを用いて,洋上風力発電施設の疲労照査に必要となる,方向性を考慮した風と波の長期結合確率分布モデルを構築した.風向については風速階級別の経験的確率分布とし,波向については風向階級別のフォンミーゼス分布とした.モンテカルロシミュレーションの結果を観測値と比較し,風向および波向は対象地点の特性を再現していた.また,長期的なデータの外挿に対しても提案モデルは保守側の値となっていることを確認した.

  • 田中 陽二, 樋口 直人, 川口 浩二, 平山 克也, 田所 篤博, 山部 道, 伊藤 裕裁, 佐々木 誠
    2021 年77 巻2 号 p. I_739-I_744
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     設計沖波(確率沖波)の算定には,気象擾乱の抽出,風場推算および波浪推算を精度良く効率的に実施する必要がある.本研究の目的は,主に確率沖波の算定手法について従来手法の問題点を整理し,解決のために導入した手法を,東北地方を事例として具体的に示すことである.加えて,確率沖波の経年変化や極値統計解析期間による確率沖波の違いについて検討を行うことである.東北地方の事例から,効率的な気象擾乱の抽出や,精度の高い波浪推算を実施することができた.また,推算結果から日本海側で年最大波高が増大傾向にあること,および 50 年確率波も増大傾向にあることが示された.

  • 園田 彩乃, 宇都宮 好博, 内田 洋平, 鈴木 隆宏, 窪田 和彦, 鈴木 善光, 内田 裕之
    2021 年77 巻2 号 p. I_745-I_750
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     地球温暖化の影響により高潮がさらなる脅威となっていく中で,資産の多くが標高の低い地域に集積している我が国においては,今後より一層高潮予測へのニーズが高まっていくものと考えられる.本研究では,台風進路の僅かな違いに大きく影響される高潮に対し,アンサンブル気象予報を用いて2019年19号台風による事後予測,及び2020年に実際に日本に接近した10号,12号,14号台風を用いてリアルタイム予測を実施し,最大潮位の見逃しがない予測システムの構築を目指した検討を行った.検証の結果,幅のある予測によって,台風が対象海域に接近する120時間前から概ね最大潮位を見逃さず予測できることがわかった.今後,解析事例をさらに増やしていくことで課題の解決を進めるとともにより一層,提供情報を充実させていく予定である.

  • 小原 裕貴, 中村 亮太
    2021 年77 巻2 号 p. I_751-I_756
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,日本海側の5つの港を対象に時系列データの特徴量を保持できるLSTM層を組み込んだニューラルネットワークを用いて波浪予測を実施した.ここで,LSTMを用いた日本海側の波浪予測の適用性を検証することは,海洋工事の可否判断に資すると考えられる.本研究では,波浪予測の入力データに日本海海域のメソ数値予報モデルMSMの気象データ(地表風速,気温,海面更正気圧,相対湿度)を用いた.入力データの組み合わせによる精度の違いを評価し最適な入力パラメータの検討を行った.結果として,入力パラメータには波の発生に大きく影響する風速項以外に気圧や気温を入れることで精度が向上しており,LSTMを用いた波浪予測が高精度に適用可能であることが示された.

  • 山城 徹, 鎌田 真希, 齋田 倫範, 城本 一義, 吉野 広大, 中村 大志
    2021 年77 巻2 号 p. I_757-I_762
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     2019年,2020年の冬~春先にかけて小島漁港と枕崎漁港,女島,宇治島,中之島の5地点で観測された水位データを用いて,女島,宇治島,中之島で出現する海洋長波と南九州西岸域の小島漁港,枕崎漁港で発生する副振動の関係を調べている.女島(中之島)で海洋長波に伴う周期8~32分の水位変動の強度が5(6)cm2以上になると,約49(47)%の確度で小島(枕崎)漁港において全振幅100(80)cm以上の副振動が発生していることを示した.2020年3月29日には小島漁港で気象庁の観測記録を大きく上回る全振幅352cmの副振動が観測された.この副振動は女島で波高43cmをもつ海洋長波が浦内湾へ入射することで発生したと推察している.このとき海洋長波の波高は小島漁港で約8.2倍に増大している.

  • 片山 裕之, 鵜飼 亮行, 三浦 成久
    2021 年77 巻2 号 p. I_763-I_768
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     沿岸域における洋上風力発電では,発電効率だけでなく施工中また完成施設の安全性の観点でも,波浪や風の特性を把握することは重要である.全国の灯台で観測された風データは40年程度の長期観測が行われており,一般的に観測高度も高く,施工検討の基礎データとして風況の特性を把握する上で有意義であると考えられる.

     本研究では,全国の灯台で観測されている風データを用い,洋上風力施工検討の基礎データとするため全国沿岸の海上風の特性を把握した.また年最大風速に対する最適分布関数および確率風速について調べた.さらに海上風の鉛直分布の議論をするため,灯台観測風データとMSMによる推算高度風の比較を行って考察した.

  • Chathura MANAWASEKARA, Mangala AMUNUGAMA, Katsuyuki SUZUYAMA
    2021 年77 巻2 号 p. I_769-I_774
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     In recent years, highly accurate meteorological Grid Point Value (GPV) data has become easily available in Japan, and also been used in coastal engineering practices. Those mainly include the Japanese 55-year Reanalysis (JRA-55), the Meso-Scale Model (MSM), and the Local Forecast Model (LFM) data provided by Japanese Meteorological Agency (JMA). Their intended use differs on own characteristics (for instance, spatio-temporal resolution). As high-resolution data [i.e. LFM (2 km x 2 km), MSM (5 km x 5 km)] limited to the area covering Japan, in practice, global scale wind data [i.e. JRA-55, the fifth generation of ECMWF atmospheric reanalysis of global climate (ERA5)] need to be incorporated as wind forcing in sea wave simulation. Hence, it is necessary to investigate the characteristics of simulated wave depending on different input wind forcing. The objective of this study is to conclude the important points to consider when applying each meteorological GPV data for wave simulation in practice. In this study, mainly considering the applicability in overseas projects, global wave simulation was performed using JRA-55 and ERA5 as external wind forcing. Wave characteristics of the two simulations were compared. In addition, the accuracy of the simulation was examined by comparing simulated and measured wave data. Moreover, the application of JRA-55, ERA5 and LFM wind data (processed with WRF model), in the simulation of typhoon-generated wind wave is discussed in the latter part.

  • 三木 脩平, 村上 晃一, 黒岩 正光, 梶川 勇樹
    2021 年77 巻2 号 p. I_775-I_780
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     人工リーフ周辺では,開口部における洗堀,背後の水位上昇に伴う強い流れの発生による砂浜の決壊などの問題が発生している.人工リーフ近傍とその周辺の砂浜の維持管理を検討する際には適切な3次元の海浜変形予測モデルが必要不可欠である.本研究では,海浜流モデルの精度向上のため,リーフ天端上の波浪場の計算の検討と海浜流場における渦動粘性係数を1方程式乱流モデルで求める海浜流モデルを構築し,潜堤模型実験結果,現地観測データとの比較を行い,波と海浜流モデルの適用性を検討した.その結果,リーフ上における波の砕波変形及び2次砕波と波の再生の様子をよく再現でき,乱流モデルの導入により人工リーフ開口部に強い離岸流の発生や人工リーフ端部で発生する循環流などが計算され有用性が確認できた.

  • 中條 壮大, 森 信人
    2021 年77 巻2 号 p. I_781-I_786
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     近年の極端台風の増加は,今後の災害対策における設計要件としての台風統計量の見直しの必要性について考える動機となっている.本研究では確率台風モデルを用いて,2009-2020年の台風資料の追加が台風統計量に及ぼす影響を調べた.近年の資料の追加によって,台風の通過頻度は全般的に減少する傾向にあった.また中心気圧の変化は小さいものの,平均値としては西日本側で減少,東日本側で増加する傾向がある.一方で極端台風の発生頻度についてはどの地点でも増大する傾向が見られた.進行速度については太平洋上ではやや減少する傾向が見られるが,日本付近では変化が小さく,特に日本海側西部において増加する傾向が見られた.これまでの確率台風モデルを用いた極値評価に大きな影響を与えるほどの大きな変化ではないが,温暖化による台風の強度増加といった,これまでに知られている温暖化の影響と一致するような変化傾向が表れた.

  • 嶋田 陽一
    2021 年77 巻2 号 p. I_787-I_792
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     夜間光衛星画像Suomi-NPPから春季から秋季の日本海山口県沖合における集魚灯を用いて操業する漁船の動向を調べた.漁船は卯持ノ瀬,その周辺及び岡千里と八里ヶ瀬から成る谷に分布した.対馬暖流第一分枝の一部は卯持ノ瀬の南から岡千里と八里ヶ瀬から成る谷を通過するので,漁船はこの流速場の影響を受けて分布する.したがって,日本海山口県沖合における漁業操業海域つまり漁場は,海洋モデルで計算された流速場を用いて推定できる可能性を示す.

  • 松下 紘資, 鶴江 智彦, 河村 裕之, 平山 隆幸, 平石 哲也, 間瀬 肇
    2021 年77 巻2 号 p. I_793-I_798
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     港湾の長周期波による荷役障害を軽減するための反射波対策として,没水型のマウンド構造物を採用する事例が増えている.このマウンド構造物に使用する消波ブロックの所要質量は,港外側からの越波に対して算定することが既往研究によって提案されている.しかしながら,既往の実験においては用いられている消波ブロックの種類や実験時の波周期の条件は限定的である.そこで本研究では,既往の研究と形状や空隙率が異なる2種類の消波ブロックを用い,波周期を3種類とした水理模型実験を実施して,ブロックの種類や断面形状の違いによる安定特性を明らかにした.また,波形勾配に応じて安定性が異なること示し,波形勾配に応じた安定数算定式を求めた.

  • 宇多 高明, 吉岡 敦, 佐々木 常光, 藤谷 匡哲, 大谷 靖郎, 三波 俊郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_799-I_804
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     三浦半島西岸に位置する逗子海岸は,南端にある葉山港による波の遮蔽域に含まれているため,遮蔽域の外から内へ向かう沿岸漂砂が誘起され,南部では堆砂が進んでいる.その際,沿岸漂砂の一部が透過性導流堤の隙間を通して田越川河口内へと直接流れ込み,河口内堆砂量の増大を招いて河口閉塞の原因となっている.対策として河口内堆砂を浚渫し,海岸北端へ運ぶサンドリサイクルが行われてきたが,河口のため浚渫に手間がかかる上,浚渫土砂には礫や流木が混入することから北部での養浜にはそのまま使えない.サンドリサイクルの維持コストを下げるには,導流堤の隙間を埋めて田越川河口への流入土砂量を減ずることが有効である.

  • 宇多 高明, 吉岡 敦, 佐々木 常光, 藤谷 匡哲, 大谷 靖郎, 三波 俊郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_805-I_810
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     横須賀海岸秋谷(大崩浜田)地区では2007~2014年に総量8万m3の礫養浜が行われ,海浜が復元された.しかし礫浜は大きく広がったものの,海浜が急勾配となると同時に海浜地盤高と護岸天端高の比高が小さくなったことから,背後地への越波や礫の打ち込みなどの課題が残された.また,漁港北側にあるL型突堤を越えて礫の一部が海水浴場へと流入する状況も見られた.本研究では,既往研究の結果について整理するとともに,秋谷・大崩浜田地区の空中写真・衛星画像を示した上で汀線変化を調べ,さらに縦断測量データより養浜に伴う縦断形変化や海浜面積の変化と養浜量の関係などについて調べた.これらを基に,L型突堤の付け根の高さをバーム高に等しい3mまで嵩上げすること,護岸前面で高さ+3m以上に堆積した礫を汀線へ戻す維持管理を行うことが望ましいことを明らかにした.

  • 宇多 高明, 田村 貴久, 小金 宏秋, 大谷 靖郎, 三波 俊郎, 伊達 文美
    2021 年77 巻2 号 p. I_811-I_816
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     鎌倉海岸由比ケ浜地区は,東端の逗子マリーナと西端の埋立地に挟まれた長さ約2.2kmのポケットビーチである.この海岸では海岸両端部が侵食傾向で,浜幅が狭まって高波浪時に漁具倉庫に被害が出るとともに,海岸利用にも支障をきたす状況となっている.このため中央部の滑川河口部で砂を採取し,両端部へ運ぶサンドリサイクルが2011年以降継続的に行われてきたものの,なお侵食が進んでいる.そこで2007~2019年の海浜変形の実態を空中写真解析により明らかにした上で,BGモデルを用いてその再現を行い,連続的な砂浜を保つための養浜の効果について検討した.

  • 宇多 高明, 吉岡 敦, 佐々木 常光, 藤谷 匡哲, 大谷 靖郎, 三波 俊郎, 伊達 文美
    2021 年77 巻2 号 p. I_817-I_822
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     金田湾に面した北下浦漁港~三浦海岸間の海浜変形について,1965~2020年に取得された6時期の空中写真・衛星画像の判読を行い,汀線位置を読み取って近年の汀線変化を解析した.また,三浦地区で2006~2020年に行われた深浅測量データより海浜縦断形の変化解析も行った.この結果,三浦海岸では1965~1988年に海浜土砂量が急激に増加し,その後地形変化がほとんど生じていないことが見い出された.これより,この間の地形変化は人為的なもので,当時建設中であった北下浦漁港の本港付近から南側の三浦海岸へと人工的に砂が運ばれたことにより,土砂の偏在が起きた可能性が大きいことが分かった.

  • 宇多 高明, 田村 貴久, 小金 宏秋, 大谷 靖郎, 三波 俊郎, 伊達 文美
    2021 年77 巻2 号 p. I_823-I_828
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     鎌倉海岸七里ヶ浜地区を対象として空中写真による汀線変化解析を行った.また,BGモデルを用いて2009~2019年の地形変化を再現し,七里ヶ浜では西寄りからの斜め入射波の作用下で,稲村ケ崎を超えて約4,000m3/yrの沿岸漂砂が流出したことが侵食要因であった可能性が高いことを明らかにした.その上で,当海岸を保全するために必要とされる養浜量について検討したところ,稲村ヶ崎の西側隣接部において約1万m3/yrの養浜を実施すれば汀線の前進を図ることができることが分かった.

  • 宇多 高明, 田村 貴久, 小金 宏秋, 三波 俊郎, 大谷 靖郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_829-I_834
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     2005年以降行われてきたNarrow Multi-Beam(NMB)測量のデータや空中写真を用いて,相模川河口とその東側に隣接する柳島海岸の地形変化の解析を行った.相模川河口部では1980年代までに著しい侵食が起きたものの,近年では2017年10月23日に襲来した台風21号や,2019年10月12日に襲来した台風19号に伴う大洪水により河口沖テラスでの堆砂が続いて起き,河口砂州の汀線も前進しつつあることが明らかになった.

  • 宇多 高明, 吉岡 敦, 佐々木 常光, 藤谷 匡哲, 大谷 靖郎, 芹沢 真澄
    2021 年77 巻2 号 p. I_835-I_840
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     酒匂川河口の東2.5kmに流入する森戸川の河口沖には規模の大きな海底谷が発達し,海岸線近くまで深みが迫る.この海底谷の背後に広がる小田原海岸国府津・前川地区では近年侵食が著しい.そこでこれらの海岸を対象に空中写真を基にした2009~2020年の汀線変化解析を行い,さらに2005年以降の縦断形変化を調べた.その上でBGモデルを用いて海浜変形の再現を行い,砂浜維持に必要とされる養浜量について検討した.この結果,砂浜維持のためには国府津地区では2万m3/yr,前川地区では0.8万m3/yrの養浜が必要なことが分かった.

  • 石川 仁憲, 宇多 高明, 田村 貴久, 小金 宏秋, 横田 拓也, 大谷 靖郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_841-I_846
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     粒径を考慮した等深線変化モデルによる河口デルタの長期地形変化予測と,BGモデルとセルオートマトン法を組み合わせた漂砂・飛砂予測モデルを用いて,湘南海岸全体の海岸保全対策について検討した.飛砂の計算では,辻堂海岸での飛砂量を定量的に再現することができ,辻堂海岸で見込まれる1万m3/yr程度の飛砂を菱沼海岸での養浜材として有効利用できることを示すことにより,広域土砂管理の一手法を明らかにした.

  • 宇多 高明, 大中 晋, 市川 真吾, 森 智弘
    2021 年77 巻2 号 p. I_847-I_852
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     インド洋に位置するMaldives, Addu環礁内のMeedhoo島を対象として,人為改変に伴う洲島の変形について調べるために,現地調査と空中写真による汀線変化解析を行った.Meedhoo島北岸では侵食が著しく,また砂浜下にあったbeach rockの破壊が進み,破砕片が陸側へと大量に運ばれていた.この侵食にはinletの閉鎖とリーフの掘削が関与している可能性が高いことが指摘された.また,新設inletでは,外洋側からlagoon側へと運ばれた砂が浚渫後漂砂系外へと運び出されており,これも海浜土砂量の損失を招いていると推定された.洲島でのinletの改変や砂の採取は,サンゴ洲島へのマイナス影響をもたらさないよう十分に注意して行う必要がある.

  • 宇多 高明, 横田 拓也, 高橋 紘一朗, 伊達 文美
    2021 年77 巻2 号 p. I_853-I_858
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     霞ヶ浦(西浦)南部の天王崎において,2011年以降国土交通省により湖浜が創生された.湖浜創生から10年が経過したことから,湖浜創生に伴う汀線変化を衛星データをもとに調べたところ,計画に示された汀線が安定的に保たれていることが確認された.さらに2020年11月4日にはGPS-RTKにより汀線形状と6測線での縦断測量を行い,これらの測量データより,湖浜が波向(風向)変動に応じて変動しつつも湖浜は安定的に推移していることが明らかになった.

  • 高橋 英紀
    2021 年77 巻2 号 p. I_859-I_864
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     越流に対する堤防の補強方法として,地震動や津波の越流による法面の破壊を許容して天端高さのみを保つ工法が提案されている.著者は,堤防中央部に深層混合処理工法で固化処理土壁を構築し,地震動や津波越流が作用しても天端高さを保つ工法を検討している.本稿では,越流に対する改良効果について述べた.具体的には,堤体中央部に改良体を埋め込んだ堤防模型において遠心力場で越流状態を作り出し,越流時の堤防の状態を調べた.その結果,堤体に改良体を埋め込むことで,裏法面の洗掘は改良体で止まり,裏法面は洗掘されるが表法面や天端の崩壊は免れた.ただし,固化処理土壁にある程度の厚さや強度が必要なことも分かった.また,堤体内部を飽和化させないことで改良体への土圧の増加を抑制できることも示した.

  • 村上 和仁, 中嶋 英哉, 松本 尚也, 類家 翔, 稲森 隆平, 稲森 悠平
    2021 年77 巻2 号 p. I_865-I_870
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     富栄養化した閉鎖性水域の底質溶出水が水圏生態系に如何なる影響を及ぼすかについて,マイクロコズムWET試験によるエコシステムレベルでの影響評価解析を試みた.谷津干潟の最奥部である船溜り(ふかんど)と最前部である三角干潟(ヨシ原)で採取した底泥について評価解析を行ったところ,構造パラメータ(個体数),機能パラメータ(DO,P/R比)のいずれについてもマイクロコズム無影響濃度(m-NOEC)は40%(<80%),毒性単位(TU)は1.25となり,谷津干潟の底質溶出水は水圏生態系に大きな影響を及ぼしていないと評価され,外部負荷に比べて影響は小さいと考えられた.

  • 福永 勇介, 江口 拓生, 野津 厚, 山田 雅行, 長坂 陽介, 八木 悟, 羽田 浩二, 呉 双蘭
    2021 年77 巻2 号 p. I_871-I_876
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     港湾の施設の技術上の基準・同解説には,設計対象の港湾施設の設置地点のサイト増幅特性の評価法の一つに当該地点とその近隣の地震観測点の2地点の微動HVSRを用いる方法があり,それには,サイト増幅特性のピーク周波数のみ補正する方法,サイト増幅特性のピーク周波数とピーク値の両方を補正する方法の2種類がある.それらの選択には前述の2地点の微動HVSRのピーク値の比を用いるが,その閾値の設定は設計者の判断に委ねられていた.

     本研究ではその閾値を決定するために,その閾値と速度PSI値の関数で表され,かつ港湾施設にとって危険側のサイト増幅特性の設定となる場合にペナルティを考慮した期待損失を目的関数として提案し,40地点の観測データから求めた速度PSI値を用いて,閾値に関する最小化問題を数値的に解いた.その結果得られた最小解1.90を統一的な閾値として提案した.

  • 中村 倫明, 鷲見 浩一, 小田 晃, 武村 武, 落合 実
    2021 年77 巻2 号 p. I_877-I_882
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     東日本大震災を発端とした東京湾での放射性物質の懸念は今なお続いている.この中で事故直後の濃度分布再現や中長期的な濃度予測評価にはモニタリングに加えて数理モデルによる検討が不可欠である.放射性物質の拡散解析については生態系モデルの利用や外洋域での事例を参考にこれまでに検討がなされている.しかしながら,沿岸域や河川近傍域の高濃度域の再現性について課題が挙げられてきた.本研究では,外洋域における放射性物質拡散モデルとして構築されたOECD_NEA6)モデルとClegg&Whitfield5)モデルを東京湾内での解析に適応するように改良し,これまでの課題の解決を試みた.

     その結果,モデル概念の変更とともにパラメータを調整することにより,沿岸域,鉛直分布ともに実測と類似した傾向を示した.

  • 宇多 高明, 吉岡 敦, 佐々木 常光, 藤谷 匡哲, 大谷 靖郎, 石川 仁憲, 芹沢 真澄
    2021 年77 巻2 号 p. I_883-I_888
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     平塚・大磯海岸を対象として,空中写真と衛星画像をもとに1954~2020年の海岸線変化を調べるとともに,現地調査により侵食状況を確認した.平塚海岸では堤長350mの離岸堤(平塚ヘッドランド)が造られた後,大磯港近傍から離岸堤背後へと砂が輸送され,土砂投入が行われた.この結果,離岸堤背後には規模の大きな舌状砂州が形成された.この間の地形変化をBGモデルを用いて再現した.計算によれば,大磯港の東側隣接部では今後も緩やかな堆積が続くので,堆積土砂を花水川河口東側区域へ戻して浜幅を確保するサンドリサイクルを行うことが必要とされる.

  • 宇多 高明, 高岡 達也, 吉澤 重男, 高橋 幸一, 大谷 靖郎, 三波 俊郎
    2021 年77 巻2 号 p. I_889-I_894
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     酒匂川の西側に位置し,早川から山王川に至る長さ2.7kmの小田原漁港海岸(御幸の浜)では,東向きの沿岸漂砂が卓越しているが,早川からの流出土砂量の減少に伴って河口部汀線が大きく後退してきた.このような特徴を有する御幸の浜の長期的変遷について空中写真と衛星画像の比較により調べるとともに,汀線変化や浜幅の変化解析を行った.また,代表断面における縦断形の変化を調べた上で,2020年7月16日には早川河口より山王川河口付近に至る区域の海岸調査を行った.これらの解析結果と現地状況をもとに今後の侵食対策手法について考察した.

  • 片桐 雅明, 春日井 康夫, 重村 洋平, 瀬賀 康浩, 西野 智之, 貞方 貴宏, 菊池 喜昭, 橋爪 秀夫
    2021 年77 巻2 号 p. I_895-I_900
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     航路整備のための浚渫工事から発生する大量の浚渫粘土と,製鉄所から産出される製鋼スラグを混合して,固結作用を期待した混合土(以下,改質土)の研究開発が進められている.本論文では,この改質土を捨石マウンド形式護岸の腹付け部に用いることを念頭に,再構成試料の強度に及ぼす混合してから再構成させるまでの時間の影響を検討するために,施工中の管理基準値を設定する基礎資料となる若齢改質土の強度特性をベーンせん断試験で,完成時の設計定数に関わる固化後の強度を一軸圧縮試験で求めた.

     限られた実験条件ではあるが,改質材の混合から盛立てまでの時間が6時間を超えなければ,練返し・再構成の影響をほとんど受けないこと,期待する改質土の強度が高いほど練返し・再構成の影響を受けることが確認できた.

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