土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
ISSN-L : 2185-6621
68 巻, 2 号
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特集号(招待論文)
  • 関谷 直也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1-I_11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     日本の防災対策は「想定」を前提とした訓練,ハザードマップ,防災教育や災害時の情報伝達などの手段で避難を促すというソフト対策に過度に重点が置かれている.
     結果,ありとあらゆるところに想定を設け,それにのっとって対策を整えるという「想定主義」に陥っている.そして避難についても,現実的な解を見つけるというより「原則車避難禁止」「危機意識をもって急いで逃げれば被災は回避できる」といった避難の課題を人々の防災意識に帰結する「精神主義」が跋扈している.また,あらゆる災害対策の前提となる被災の原因の検証についても,メディアで言われていることや思い込みで仮説を構築し,そこから改善策を検討・導出してしまう「仮説主義」に陥っている.だが,実際に調査検証が進むに従って,そもそも仮説自体が誤っているといったことが多くみられる.
     これら日本の防災対策の問題点は東日本大震災を踏まえても何も変わっていない.「想定」を重視するのではなく行動の規範を考えること,精神論だけを強調するのではなくハード対策とソフト対策のバランスという原点に立ち返ること,メディアの論調や思い込みではなく,予断を持たず,徹底的に東日本大震災の被災の現実に,科学的実証的に向き合うことが求められる.
特集号(和文論文)
  • 大林 あずさ, 加賀屋 誠一, 鈴木 英一, 川村 里実
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_12-I_17
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     近年水害の頻発により,洪水ハザードマップの重要性が高まっている.ハザードマップの作成は各市町村の防災担当者に任されており,作成要領は必ずしも明確となっていない.石狩川流域における各市町村のハザードマップを収集・検討したところ,整備状況に差があり,防災に対する地域格差などが課題として挙げられ,各市町村からも洪水ハザードマップの実用性を疑問視する声が寄せられた.そこで本研究では,各市町村の防災担当者にアンケートを行い,担当者の立場から洪水ハザードマップの課題を明らかにした.また地形によって洪水特性が異なり,各特性に応じた対策が必要であるという観点から,対象地域の洪水特性を地形ごとに分類した.これらの結果を合わせて,実用的な洪水ハザードマップのあり方・水害対策について検討した.
  • 原田 翔太, 村岡 治道, 田中 耕司, 七里 豊伸, 手塚 聡, 瀧 健太郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_18-I_23
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     近年の豪雨に対応した避難勧告等の発令は,洪水予報・水位情報周知河川の水位を基本としたものとなっており,外水氾濫を想定した避難勧告指示となっている.一方で,実際の豪雨では,内水氾濫の発生や中小河川の氾濫など,堤内地の浸水が外水氾濫よりも先に発生する場合もある.そこで,これらの浸水をシミュレートできる氾濫モデルを利用して堤内地の浸水リスクを把握し,地区別の避難判断基準の作成を試みた.本論文では,まず堤内地で中小河川による浸水リスクから避難方法を選択できるように,水平避難を想定した場合の基準と垂直避難を想定した基準について検討した.さらに,中小河川や内水氾濫の情報は,行政から発信されることが現状で難しいため,住民でも判断できる基準についても検討を行った.
  • 看舎 邦亮, 松見 吉晴, 達川 剛, 藤井 俊久, 太田 隆夫
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_24-I_29
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     災害時の避難対策としては,地域の住民の年齢構成を考慮した徒歩や車による避難誘導や,地理的条件を考慮した避難所設定など,地域特性に依存した避難行動について,ハードおよびソフト防災の両面から検討する必要がある.本研究は,まず高齢社会での災害への備えに関する地域住民の実態調査結果より車での避難誘導の必要性を明らかにし,ついで徒歩と車による避難が混在した条件下での避難行動時の人と車の流れを時々刻々再現できる「動的な避難行動シミュレーション」の構築より,地域の道路事情に基づいた災害時要援護者に対する車での避難誘導方法についても考察したものである.
  • 柳沢 吉保, 古本 吉倫, 高山 純一, 南澤 智美, 尾曽 真理恵
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_30-I_37
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災による甚大な被害は,我が国の地震被災時の対応に対する大きな問題提起となった.国内にも糸魚川-静岡構造線をはじめ,周辺地域に大きな被害をもたらす可能性がある活断層が多数分布しているため,地震発生時の対策を至急検討しなければならない.とくに人命にかかわる救援活動では,消防署・分署などの救急拠点や搬送先病院間の救急駆けつけ搬送において,救急車両を各消防署に適切に配置し,被災現場まで配車を効果的に行うことが求められる.本研究では,リンク交通量に基づく交通量の変動を考慮した救命制約時間信頼性評価に基づき,長野都市圏交通ネットワークにおける救急駆けつけ搬送時の課題を明らかにするとともに,その対応策の方向性について示す.
  • 岡本 修
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_38-I_45
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     本稿では,東日本大震災後に我が国の各港湾が受けた影響について幅広く調査した結果について紹介する.具体的には,被災港湾の回復状況や日本海側港湾の代替輸送の状況などである.本稿では,また,国際輸送であるコンテナ輸送やクルーズ輸送の状況についても記述している.ほかにも,東北地方の震災後の燃料輸送や飼料輸送の状況も整理している.最後に,こうした調査結果を踏まえて今後の事業継続計画のあり方に関して考察を行なった結果について記載している.
  • 坂田 朗夫, 川本 篤志, 伊藤 則夫, 白木 渡
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_46-I_51
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     大規模広域災害を想定した場合,従来の地域防災計画では対応できないことを東日本大震災の貴重な教訓として受け止める必要がある.中央防災会議の中間報告では,起こりうる最大規模の被害を想定した対応を求めており,市町村では少なくとも各行政機能の中枢を担う庁舎の業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定が必要である.さらに,地域全体や複数の行政機関に跨る業務継続計画(DCP:District Continuity Plan)を策定し,災害発生後の早期復旧・復興を目指した危機管理対策を実施することが求められている.
     本研究においては,東日本大震災における被災市町村等の対応から課題を抽出し,発災後の市町村の体制,情報収集・共有・発信の在り方を再検討し,発災時に実効可能なアクションプランとして市町村BCPの在り方,ならびにその策定に際してDCPの考え方の必要性について検討する.
  • 磯打 千雅子, 白木 渡, 井面 仁志
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_52-I_57
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では多くの企業や市町村が機能不全に陥ったことから,大規模地震や津波を対象とした事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)策定の必要性が指摘されている.近い将来,首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が危惧されている中,BCPの普及に努め地域の防災力向上を目指す必要がある.本研究では,香川県内企業のBCP普及率の向上を目指して,東日本大震災発生後1年弱経過した時点での県内企業のBCP取り組み状況の調査を実施した.同様な調査を2008年にも実施しており,東日本大震災をふまえた調査結果の変遷と普及率向上のための課題と対策について検討する.香川県は四国の災害対策拠点地域に指定されていることから,企業だけでなく地域全体の継続を考える必要性があり,地域継続計画(District Continuity Plan:DCP)との関わりという観点から企業のBCP策定の在り方についても検討する.
  • 粕淵 義郎, 中野 晋
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_58-I_65
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では東北と北関東の大学で人的被害や建物被害を生じた.そればかりか,東日本の多くの大学で入試日程変更など大学の業務継続の問題が発生した.南海トラフ地震などの巨大災害の危険性が高まっている中,国立大学法人を始め,大学が業務継続力を持つことはますます重要となっている.東日本大震災における大学の被災と応急対応から得られた課題を整理した後,徳島大学で進めている事業継続計画策定の取組を紹介する.
  • 今井 裕太郎, 小池 則満, 西村 雄一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_66-I_73
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     木曽三川下流・伊勢湾岸の低平地においては、東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会が設置され、巨大台風に対する大規模な事前広域避難について検討がされている。そこで本研究では、名古屋市内の港区、南区、中川区の伊勢湾台風被害のあった公立小学校計6校の5年生もしくは6年生の保護者対象にアンケート調査を行った。その結果、事前広域避難そのものへの認識が低く、現状では円滑な広域避難は期待できないこと、ほとんどの家族が浸水域内に避難してしまうこと、大多数がマイカーで移動することが予想され、渋滞・駐車場対策が必要であることを述べた。また、上陸時間によって避難開始の時間が異なることから、呼びかけのタイミングが重要である可能性があることなどを指摘した。
  • 二神 透, 大本 翔平
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_74-I_81
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     四国においては,来るべき南海・東南海地震に備え,避難情報等の情報の悉皆性を確保する必要がある.2011年3月東日本大震災において,愛媛県宇和海沿岸には,津波避難勧告が発令された.著者らは,これらの地域において,避難勧告情報伝達に関する,行政,自主防災組織,住民を対象としたアンケートを実施するとともに,防災行政無線の現状を調査した.それらの結果,各市町の問題点や課題が明らかなるとともに,それぞれの行政が,地域に合わせた形での整備を行っていることと,今後の,公共情報システムの展望について述べた.
     本論文では,これらの点を踏まえて,ハード・ソフト面での災害時の情報伝達のあり方について言及する.
  • 鈴木 猛康, 津田 哲平
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_82-I_87
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     行政から住民への災害情報伝達においては、1)今何が起こっているか、2)今後どのように展開するか、そして3)住民がどのような行動を取るべきかの3点を、4)わかりやすく伝達することが重要である。本論文では、市町村の災害対応業務を情報共有、情報管理の点から支援するために開発した災害対応管理システムに、上記の原則に基づき、さらに曖昧な用語の使用をチェックできる定型文登録機能を開発した。この機能を新潟県見附市の災害対応管理システムに実装し、豪雨水害を対象とした図上訓練を実施した。その結果、住民に対してとるべき行動をわかりやすく,的確に伝えることができたことを確認することができた.また,速やかな情報伝達を,時間と手間をかけずに,情報の漏れなく行うことができ,さらに定型文があると思うだけで安心感があった等,防災担当者による好評価を得ることができた.
  • 井面 仁志, 白木 渡, 今井 慈郎, 磯打 千雅子, 竹本 雅晴, 横井 孝博
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_88-I_95
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     「東日本大震災」は未曾有の大規模広域災害であった.最大震度7の地震発生,巨大津波の襲来により自治体の庁舎が流出し行政機能が停止した.さらに,道路や上下水道,ガスや電気等の生活インフラ,電話や行政無線等の情報インフラ等が寸断され,被害状況の確認ができず安否確認や救命活動に遅れが生じ,復旧や災害対策に支障を来し被害を拡大する事態となった.本研究では,行政無線等が機能せず被害拡大に繋がったことに着目し,被災地域の行政および消防機関へのアンケート調査とヒヤリング調査をもとに、大規模広域災害時における防災情報伝達,防災情報システムの在り方について検討する.
  • 大幢 勝利, 日野 泰道, 高梨 成次, 高橋 弘樹
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_96-I_103
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     近年,従来型の単管足場に替わり,組立・解体時における作業性からくさび緊結式足場の使用が拡大している.このくさび緊結式足場については,わく組足場とは異なり,手すり先行工法の導入が困難である場合が多い.さらに,くさび緊結式足場は比較的低層の足場として用いられることが多い等の理由により,安全帯等による墜落防護さえなしの状態で,組立・解体作業が行われることが多いという問題点がある.そこで,本研究では,くさび緊結式足場における安全帯使用を徹底させるための方策を提案することを目的として,足場のくさび取付穴に安全帯を掛けた場合の足場の安全性について,人体ダミーを用いた落下実験により調査し,その結果より,くさび緊結式足場の安全な組立・解体方法を提案した.
  • 高橋 弘樹, 大幢 勝利, 高梨 成次
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_104-I_109
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     墜落災害対策として,平成21年に労働安全衛生規則が改正され,新たに墜落防止用の手すりなどを足場に取り付けることが義務付けられた.これらの部材は,足場の1側面に取り付けることが多く,足場には偏った荷重が作用する.本論文では,足場の鉛直荷重を支える部材である建わくを対象として,偏心荷重を受ける建わくの座屈実験を行い,その強度について検討した.更に偏心荷重を受ける建わくの座屈強度の計算方法を示し,実験結果と比較することでその計算方法の妥当性を検討した.この計算方法は実験結果と良い対応を示した.また,偏心荷重を受ける建わくの座屈荷重は,偏心荷重の比率が大きくなるほど値が小さくなる結果が得られた.手すりわくなどを取り付けて足場を高く設置する場合は,偏心荷重の影響を考慮して設計した方がよいと考えられる.
  • 山田 忠, 松本 康夫, 柄谷 友香
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_110-I_117
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,水害に関する知識の実態を把握した上で,転入者の知識取得と家屋被害との関係を検討し,家屋対策を判断する際に役立つ知識を見出すことを目的とした.まず,自治会長へのヒアリング調査の結果,堤防や洗堰など河川構造物の存在,土地の高低や河川の狭窄部など地形の知識,過去の破堤地点など災害史の知識を有していた.次に,これらの知識の質と量に着目し,転入者の知識取得と家屋被害との関係についてクロス集計と数量化III類を用いて検討した.その結果,取得知識数が多いほど,また,内容では河川構造物の存在及び地形の知識の両方を有することが,家屋被害の軽減につながることを示唆した.
  • 中野 晋, 湯浅 成昭, 粕淵 義郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_118-I_123
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では岩手,宮城,福島3県で園児・児童・生徒553名が亡くなったが,大川小学校などの事例を除くと引き渡し後に自宅や帰宅途中で犠牲になった子供たちが多いと伝えられている.一方,学校施設は災害直後から避難所として利用され,多くの教職員が避難所の開設・運営,さらに被災した学校の復旧や代替施設での学校再開など平常とは異なる膨大な業務の上に,児童・生徒のメンタルケアにも心を砕く必要があった.こうした教育機関での災害対応上の課題を整理し,これらの教訓から教育機関の防災管理のあり方について述べる.これを踏まえて徳島県でまとめた学校防災管理マニュアルガイドラインとこれの普及方法について報告する.
  • 鈴木 雄二, 古屋 貴司, 笠井 尚哉, 花井 義道, 小柴 佑介, 栗山 幸久, 上原 美都男
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_124-I_129
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     平成23年3月11日に東北地方で発生した東日本大震災を契機に,横浜国立大学では災害対策再構築の学内プロジェクト事業を推進した.筆者らは大学内の災害対策体制の強化のためプロジェクトワーキンググループを編成し,学内災害対策マニュアルの実質的な改訂と災害対応訓練を企画し,実施に協力した.本報告では,災害対策本部図上訓練および全学的避難訓練の実施並びに訓練参加者に対するアンケート結果を踏まえ,今後の大学における大規模地震に対する組織対応のあり方について検討した結果を報告する.
  • 高西 春二, 中野 晋, 宇野 宏司, 仁志 裕太
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_130-I_137
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     近年では,2004年および2011年の新潟・福島豪雨災害,2009年の佐用町豪雨災害,2011年の台風12号による紀伊半島豪雨災害などによる甚大な被害が発生している.これら洪水では,家屋・人的被害に加えて,各種事業所や病院,公共施設,ライフライン等が浸水のために大きな経済被害を被っている.そこで本研究では,沿川に立地しているために洪水被害を受けやすく他事業の復旧期間に大きく影響する『水道事業』に着目し,被災事例を調査した.浸水被害が水道事業者にもたらす影響と課題について考察するとともに,BCPの必要性と水道事業者が想定すべき事前対策等について提案する.
  • 高木 元也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_138-I_145
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     厚生労働省の第11次労働災害防止計画において,労働災害多発業種に指定されている建設業の労働災害防止対策の一つに,発注者による安全衛生への配慮の促進が掲げられるなど,今後の建設工事の労働災害防止の推進には発注者の取組みが重要である.
     本稿では,労働災害に伴い発生する発注者の法的責任,国が推進する発注者の安全配慮促進方策等を概観するとともに,全国の地方自治体の公共工事発注担当者を対象としたアンケート調査を実施し,発注者による元請業者への指導等,建設現場の安全配慮の実態,労働災害防止の担い手としての発注者の関わり方,入札段階における入札参加業者の安全評価等の実態を把握し課題の抽出を行い,これらを踏まえ今後の公共工事発注者の安全配慮のあり方等について考察を行った.
  • 城下 英行
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_146-I_152
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     英国における安全教育,わけても安全教育センターでの取り組みについて,わが国の防災教育センターと比較することで,その特徴を明らかにする.さらに,英国では,安全教育センターという「専門家」とセンターへの来訪者という「非専門家」の間に立つボランティアが,センターの運営上,欠かすことができない役割を担っていることを紹介する.さらに,そうしたボランティアが,センターで専門家と非専門家の「つなぎ手」となることで,ボランティア自身も,活動を通じて学ぶことができる「複層的な学び」が提供されていることを紹介し,わが国の安全教育,防災教育の改善に向けた提案を行う.
  • 田中 耕司, 大久保 省良, 村岡 治道, 北村 祐二, 前田 善一, 小根田 康人
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_153-I_160
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,人的被害が発生する地区を対象に実施した減災対策のプロセスについて,内水・外水氾濫シミュレーション結果を用いて検証を行った.研究ではマップ作成などのツール適用を重視するのではなく,住民や自主防災会と行政の協働によって減災対策を実施する上での合意形成が重要であることを示す.さらに,減災対策として住民の防災意識の差を解消するための方策,避難方法や経路といった避難判断・行動の支援方策を実施した.
  • 二神 透, 大本 翔平, 細川 雅博
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_161-I_166
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     今後,発生が想定されている南海地震に対して,被害を軽減するための早急な対策が必要となる.特に,木造住宅が比較的密集した市街地では,二次災害として地震火災の発生が懸念される.地震発生時の気象条件次第では,火災延焼が広域に及ぶため,甚大な被害となる可能性が高い.著者らは,地震火災リスクを住民に提示し,防災意識を持たせることが大事であると考えている.
     本研究では,香川県丸亀市と愛媛県松山市の2地域を対象として,著者らが開発した大震時火災延焼シミュレーション・システムを住民に提示する前後で,自助・共助・公助に関するアンケートを実施している.そして,事前事後アンケートの回答結果を比較分析することで,開発したシステムが住民の意識に働きかける効果を分析している.最後に,今後のシステムの課題とリスクコミュニケーションへの活用方法について述べている.
  • 高田 知紀, 梅津 喜美夫, 桑子 敏雄
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_167-I_174
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,多くの神社が津波被害を免れたことが指摘されている.本研究では,日本の神社に祀られる祭神の多様性は,人びとの関心に応じた差異化の結果であるという仮説から,宮城県沿岸部の神社についてその祭神と空間的配置に着目しながら被害調査を行った.祭神については特に,ヤマタノオロチ退治で知られるスサノオノミコトに着目した.スサノオは無病息災の神として祀られることから,洪水や津波といった自然災害時にも大きな役割を果たすと考えられる.また,地域の治水上の要所に鎮座していることが多い.東北での調査から,スサノオを祀った神社,またスサノオがルーツであると考えられる熊野神社は,そのほとんどが津波被害を免れていることを明らかにした.この結果は,地域の歴史や文化をふまえたリスク・マネジメントのあり方について重要な知見を提供する.
  • 達川 剛, 財賀 美希, 藤井 俊久, 松見 吉晴, 太田 隆夫
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     地域住民の災害に対する危機意識についてのアンケート調査より,住民は周囲の状況から危機を自ら認知するということよりも,実際は行政からの情報に依存している傾向が高く,避難に対して自律的な意思決定をしているとは言い難い状況にあることが明らかにされている.本研究は,災害時の住民の行政依存から自律的防災・減災行動に向けた意識改革を目的に実施された地域での研修会(具体的には避難シミュレーションや地域防災マップ,地盤高マップ等の防災を考える支援ツールの利活用のための説明)をはさんで,二度の住民の防災意識に関するアンケートを実施し,自律的な意思決定に有効な支援ツールについて共分散構造分析等の統計解析より検討したものである.
  • 小舘 亮太, 田中 岳
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     大震災以降,個々の防災力の向上のため,行政,地域社会,住民相互の連携が求められている.児童に着目すれば,学校社会での防災教育と保護者との知識,情報の共有が重要となる.しかし多くの学校現場では,防災訓練と教員の試行錯誤による教育の実践にとどまっている.
     本研究では,防災教育プログラムの開発を目的として,身近な災害の紹介などと,防災意識調査とによる教育プログラムを児童に実践すると共に,その保護者にも同様の調査を実施し,その教育効果と,児童と保護者間の防災意識の相違を検証した.その結果,児童と保護者の防災意識の向上として,本プログラムの教育効果が確認された.また,児童と保護者間で避難経路や避難場所の情報共有に差違が認められた.
  • 山岡 俊一, 坂本 淳, 今田 寛典
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,広島県呉市宮原地区と阿賀地区の斜面住宅地を事例として,複数回のアンケート調査とそのアンケート調査結果を反映させた対象地区独自の防災学習パンフレットを活用したコミュニケーションによる防災教育を実施し,その効果を計測した.
     その結果,豪雨由来の斜面災害に対する正しい知識を身に付ける傾向が確認された.その一方で,実際の防災に関する準備行動においては効果が小さいことがわかった.
  • 末澤 弘太, 山城 新吾, 木村 泰之, 浜 大吾郎, 正部 洋典, 中野 晋, 佐藤 章仁
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_193-I_200
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,地震・津波災害を対象とした防災学習や避難訓練が活発となりつつあるが,大きな災害を経験していない住民や児童・生徒にとって,これまでの座学や避難訓練だけでは現実感を得られない場合も多い.著者らは防災に興味のない児童・生徒にも関心を持たせる方法の1つとして2006年に避難シミュレーションゲームを開発し,小・中学校を中心に防災教育を進めてきた.2011年からは徳島県の協力を得て,「生き残る・実践防災訓練プロジェクト」として,幼稚園,小・中学校などの教育機関,社会福祉施設,一般企業,自主防災会の防災研修や防災フェスタなどのイベントを通して防災啓発に取り組んでいる.避難シミュレーションゲームの開発経緯や活用方法,実施効果,普及に向けた人材育成戦略について報告する.
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