日本食品工学会誌
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6 巻, 2 号
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  • 並河 良一
    2005 年 6 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    日本農業に大きな影響を与える自由貿易協定 (FTA) の理論および実務の動向を解説した.
    1990年代半ば以降, WTOにおける多角交渉の行き詰まりを背景に, 世界中でFTAの締結が増加している.日本も, 世界のFTAの増加, とくにヨーロッパ連合 (EU) および北米自由貿易協定 (NAFTA) に対抗すべく.最近にいたり, WTO中心主義の政策を変え, アジア諸国とのFTA交渉を積極的に進めている.FTAにおける自由化の例外品目の大半は農産物である.とくに日本では, 農業の国際競争力が弱いため, FTA締結の最大の課題は農産物の扱いである.最近のFTA締結交渉における農産物に関する議論の論点を整理し, 比較優位論, 市場経済主義を背景とする「工業の論理」と, 農業の多面的機能, 食料安全保障, 自然条件の制約など農業の特殊性を主張する「農業の論理」の対立があることを示した.
  • 山崎 理恵, 鍋谷 浩志, 相良 泰行
    2005 年 6 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    地球温暖化や資源枯渇などの地球環境問題を背景に, 再生可能エネルギーかつカーボンニュートラルであるバイオディーゼル燃料 (BDF) が怪油代替として注目を浴びている.このBDFの原料となる動植物油脂は地域によって異なり, 東南アジアではパーム油が原料候補である.今回, パーム油の生産量でそれぞれ世界第1位と第2位を誇るマレーシアとインドネシアにおいて, オイルパームおよびパーム油の研究機関を視察し, パームディーゼル研究の進捗状況およびパーム油産業の現状を調査し, 東南アジアにおけるパームディーゼルの実用可能性について検討した.現状では, BDFが軽油と比して高価なために, 東南アジアで生産したBDFをその地域で消費することは困難であり, 技術的, 政策的なブレイクスルーが必要と考えられる.また, 同時に取り組むべき課題として, オイルパームから発生する油以外のバイオマスに関する有効用途の開発が重要であることがわかった.
  • 石川 智子, 山崎 理恵, 岩本 悟志, 鍋谷 浩志, 小坂田 潔, 宮脇 長人, 相良 泰行
    2005 年 6 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    動植物油脂を脂肪酸メチルエステル (FAME) に変換して粘性を下ずた軽油代: 替燃料が.一般的にBiodlesel Fuelと呼ばれ孝利用されつつある.FAMEの製造方法としては、アルカリ触媒を用いて油脂をアルコリシス反応させる方法が主流である.しかし、触媒除去等の工程を要する点が, コスト低減の障害として指摘されている.本研究では.無触媒アルコリシス反応を利用した装置でのFAME生産の実用性を検討するため, 廃食油を原料とした場合の経済性評価を行うことを目的とした.ベンチスケールの装置での実験結果より得られた原料組威と反応温度をもとに.これをスケールアップした際の所要エネルギーと物質収支を算出した.その数値を基にFAME1kgあたりの製造コストの試算を行った.その結果, 提案した装置が経済的に見合うことを確認した.さらに, 原料油コストのFAME価格に対する影響を確認するため, 異なる財政条件でのFAME生産時の採算性の比較を行い.原料油コストの影響が大きいことを確認した.
  • プラニートラッタナノン スタシニープ, 脇坂 港, 白井 義人, ヴィチェン キッブリーシャワニット
    2005 年 6 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    食品ゴミなどの廃棄物系バイオマスから, 糖化→乳酸発酵→乳酸精製→重合の工程を経て.生分解性フラスチックであるボリ乳酸を製造する研究を行っている.ボリ乳酸の品質には.乳酸の光学純度が大きく影響する.Rhizopus oryzaeは, 選択的に高いL (+) -乳酸生産能を示すことが期られている.前報で, 食品ゴミを基質として.Rhizopus oryzae KPS106株を用いて, 高濃度ならびに高純度のL (+) -乳酸を生産出来ることを報告した.本研究では.Rhizopus oryzae KPS106株を用いる食品ゴミを基質としたL (+) -乳酸発酵において、固定化による生産性向上について検討した.固定化担体として.廉価に入手かつ再生可能なバイオマスであるヘチマに着目した.まず, ボリビニルアルコール (PVA) やポリウレタン (PU) 製の担体との比較を行った、また, ヘチマ固定化担体について, 形状やサイズの影響, さらに, 繰り返し利用時の安定性についても検討した.さらに.フラスコ培養と1Lのリアクターを用いた培養時の基質と代謝産物に関する速度論的解析を行った.
    PVAやPU製のスポンジへの固定化と比較して, 高い乳酸収率を示した.これは, ヘチマ担体において、良好に酸素および基質が供給されたためと考える.また, 菌毒代の遊離もみられないことから, ヘチマスポンジは, R.oryzaeの固定化に適した担体であることが示唆された.固定化担体としてのヘチマの形状やサイズについて検討したところ.表面積の大きい1cm角の立方体状としたものが.最も高い乳酸収率を示した, フラスコによる回分振とう培養の結果.固定化を行わない場合には.63.7±3.8% (w/w) の乳酸収率であるのに対して, 72.6±2.5% (w/w) とより高い乳酸双率が得られた.さらに.ヘチマ固定化菌体を3回の回分培養で繰り返し利用できることを確認した.3回の回分培養における乳酸収率は, 平均73.3±1.9%, (w/w) であり, 繰り返しにより乳酸取率が大きく損なわれることはなかった.1cm角のヘチマ固定化担体を用いて, 1Lのジャーファーメンターによる培養 (攪拌速度100rpm, 通気速度100vvm.温度35℃) を行ったところ, 乳酸収率は, 69.2% (w/w) であり, 72時間後の到達乳酸濃度は.70.5g/Lであった。
    以上のとおめ本研究の結果から.ヘチマ担体へのR.oryzaeの固定化が, 食品ゴミを基質としたL (+) -乳酸発酵の生産性向上に有効であることが明らかとなった.
  • 浅野 一朗, 藤井 繁佳, 尾崎 和人, 竹原 功, 矢野 夕幾, 福原 育夫
    2005 年 6 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    コーヒー飲料製造業において, コーヒー抽出粕は燃料や産業廃棄物として処理されている.コーヒー抽出粕にはβ-マンナンが多く含まれており, 著者らはコーヒー抽出粕の有効利用法として, 抽出粕に含まれるマンナンを加水分解して得られるマンノオリゴ糖 (MOS) の生理機能性について検討してきた.本研究では, MOSを含むコーヒー飲料の体脂肪に及ぼす影響について, 二重盲検ヒト試験で検討した.肥満 (1度) (25kg/m2≦BMI<30kg/m2) の成人30名を2群に分け, 一方には1日300mLの飲用でMOSを3gが摂取できる試験コーヒー飲料を.もう一方にはMOSをコーンシロップソリッドで置換したコントロールコーヒー飲料をそれぞれ12週間摂取させた.そして, 摂取開始時, 4週目, 8週目, 12週目に医師による診察, 採血尿, 理学検査, CT撮影を行った.
    試験飲料群は, コントロール飲料群に比べ臍部横断面全脂肪面積, 皮下脂肪面積, 内臓脂肪面積の有意な低下が観察された.これより, 本試験飲料 (MOS摂取量: 3g/日) の摂取により, 体脂肪を減少させることができると考えられた.
  • Pariya THANATUKSORN, Chidphong PRADISTSUWANA, Pantipa JANTAWAT, 鈴木 徹
    2005 年 6 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2011/01/31
    ジャーナル フリー
    フライ調理は世界的にも主要な調理手法であり, 各国で古くから利用されてきた.近年では, 調理冷凍食品産業, ファーストフード産業なとにおいても大量に生産される機会か多くなっている.健康問題.また資源・環境問題からフライ調理品に油脂吸収残存を少なくする努力が払われている.しかし, フライ調理過程は熱移動, 水分の蒸発と拡散, デンプン糊化, タンパク質変性が相互に関連しながら進む非常に複雑な過程であり, そのメカニズムに関する科学的理解は十分とはいえない.欧米ではボデトフライを食すことが多く, ポテトを対象としたフライ調理研究か多い.また, 衣を付けたフライ食品も比較的多く.バッターに関する研究も見られる.しかし, それらは断片的であり.フライ調理過程を体系的に捉えようとした試みはなかった.水分含量に着目した場合.フライ調理の対象となる食品は初期水分含量 (IMC) によってその呼び名が異なり, それぞれ個別の研究対象とされてきた.例えは, 小麦粉に対して水分が少ない場合はドウ, 水分が多いとバッターとされる.本研究では, そういった (小麦粉―水) の混合物を1つの系ととらえ, 水分含量を「ドウ」のレベルである40%から「バッター」の領域80%まで大幅に変化させてフライ調理過程の相違を調べ, そのメカニズム解明の手がかりを探った。
    小麦薄力粉に対して, 40, 60, 70, 80%のく水分含量になるように調整した試料をフラットな円盤状 (厚さ約2mm) に成型, あるいは型に流し込み.その試料を150℃のパーム油中で7分までフライ調理を行い.油から取り出したのち, 数分間冷却を行った.フライ中また, 冷却中2分ごとに試料を取り出し.残存水分含量.油吸収率の時間経過を調べた.また同時に、各時間経過後における.それそれの試料の微細構造を走査型電子顕微鏡にて観察した.
    その結果.初期水分含量IMC40, 60, 70%の試料では5~7分間のフライ過程後期では, 十分な脱水.が進行し残存水分含量に有意な差がみられなかった, が.IMC80%試料では他の試料に比較してやや多くの水分が残存する傾向かみられた.方, 油吸収量の時間の推移はIMC40, 60, 70%の試料ではフライ加熱中に油か多く吸収され冷却期間では大きく増加しなかった.これに対して.IMC80%試料では油吸收のパターンに他試料と明らかな相違がみられた.すなわち, IMC80%試料はフライ加熱時には油の吸収は低く抑えられているものの, 冷却時に急激に油吸收されるといった現象が明確に確認された.
    また, それら速度過程を検討するために水分の一次元移動払散律速を想定して水分減少と油吸收をフライ時間tの事方根に対してプロットしたところ, 水分減少はいずれの初期水分でも直辛泉関係が得られた.しかし.油吸収量は初期水分が80%の場合にはt1/2に比擁するものの.IMC70%以下では直線関孫は得られなかった.さらに, 初期水分含量て残存水分を割り基準化した水分減少率で脱駅過程を比較検討したところ, 初期水分含量が70%以下の試料はほぼ同一の曲線に従うものの.IMC80%の試料のみ逸脱したカーブを示した.SEMの観察結果とあわせて検討したところ, IMC70%以下ぐでは澱粉の糊化による水分の吸收と水分の蒸発脱水か同時に進行するが, IMC80%試料では澱粉の糊化が著しく多量の, 水分を吸收し蒸発が少ないことが示唆された.油の吸收速度と水分蒸発速度との関係Fig.7は.上記推論を裏づける結果を示した.すなわち.初期水分含量が70%以下の場合にはいずれの初期水分含量でも同一の曲線に乗り, 水分の蒸発速度が大きいフライ初期では油の吸収速度は小さく, 水分が少なく水分の蒸発速度が低くなるに従って, 急激に油の吸収速度が上昇する傾向がみられた.これは油の吸収は初期水分含量に関係なく水分の蒸発速度だけによって制御されていろことを意味し, 水分が蒸発し続けている間は蒸気圧によって油が侵入できないといったメカニズムが働いていると考えられる.
    一方, 初期水分80%の試料では水分は澱粉の糊化に使われ蒸発する水分は少なく, 油の浸入は容易と考えられるが, 十分糊化した澱粉糊にはポアが少なく油が侵入するスヘースがなく澱粉糊がフィルムとなって逆に油の進入を抑えているメカニズムが作用していると考えられる.以上, 小麦粉―水のを混合物のフライ過程では混合比が澱粉の糊化に影響を与え.それ, がせが水分の蒸発速度に影響をおよぼし結果として油の吸收速度に影響をおよぼしていることが推察された.また.そのメカニズムの変化が初期水分70%から80%の間で起こることも明らかとなった.しかし, 本研究ではフライ過程でのデンプンの糊化についての直接情報がなく糊化との関係については多くの推察が含まれる.今後。本研究の結論を確実なものにするためにはフライ時のデンフンの糊化進行についての実証研究が必要となると考えられる.
  • ラフマン アイラ, 城 斗志夫, 伊東 章, 片岡 龍磨, 大西 真人, 渡辺 敦夫
    2005 年 6 巻 2 号 p. 151-160
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    包装餅工場を対象に繁忙期と閑散期について紅場内の用水使用量の調査を行った, 洗米工程と浸漬工程ともに, シーズンによる違いはなく.米1トンあたり約5m3の絹水が使用されており.両工程で工場全体の用水使用量の約60%に相当することがわかった,
    そこで, 包装餅の品質.とくに微生物による保蔵安定性を損なうことなく.餅製造工場の洗米等用水 (ここは、洗米用水と浸漬用水の両者を併せて洗米等用木とする.以下洗米等排水、洗米等工程についても同様の意昧で用いる) 費用と排水処理コストの低減を目的に洗米等排水を膜分離技術により毒生し, 洗米等用水としてリサイクルすることを目的に本研究を行った.排水の再生には.予備試験の結果等からUFにより再生することとし, 分画分子量3万.10万および15万の3種の中空糸UF膜モジュールを用い, 膜モジュールの選定を行った.
    また, 洗米等排水の成分分析結果から, 1次・2次洗米排水には溶質等戒分 (溶質と懸濁成分を合わせて溶質等成分とする) の濃度が高く, また予備実験の結果UF処理におけろ透過流束が著しく低いことがわかった.したがって, 1次・2次洗米排水は活性汚泥法で処理することにし, 溶質等成分の少ない3次洗米排水以降のものを再生することにした.
    3次洗米以降の洗米排水と浸漬排水を混合した洗米等排水を試料とし.UF処埋による再生とリサイクルに関する研究を行った.
    透過流束.高分子成分としてのタンパク質と低分子量成分としての脂肪酸阻止性能, さらに.膜の洗浄回復性の点から分画分子量15万の膜が洗米等排水の処理に適していることがわかった.
  • 井尻 哲
    2005 年 6 巻 2 号 p. 161-162
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
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