日本食品工学会誌
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8 巻, 2 号
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  • 鈴木 徹
    2007 年 8 巻 2 号 p. 47-58
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    食品工学にとって食品物性の理解と予測が重要であることは述べるまでもないが, 近年発展しつつあるガラス状態の科学はそれら予測, コントロールへの道を拓くと考えられる.しかし, 食品のガラス状態に関する知見は乏しく未知な部分が多い.筆者のグループはそういった食品のガラス状態研究に取り組み, いくばくかの進展がみられた.本解説ではその事例について紹介する.まず実際の食品であるカツオ節, および生体関連物質のガラス転移とガラス状態のエンタルピ緩和減少の実例を示し, その緩和速度がKohlrausch-Williams-Watts (KWW) 式あるいは, Adam-Gibbs (AG) 形式で記述予測することが可能であることを示した.またガラス化のプロセスの特殊例として常温乾式ボールミルによるデンプンのガラス化, およびゼラチンのガラス化コントロール法を紹介する.
    さらにガラス化食品のエンタルピ緩和と物性変化との相関の例としてガラス状態デンプンやカツオ節の水分収着特性がエンタルピ緩和と同時に減少することについてふれた.またガラス状食品内での諸反応を検討した例として冷凍マグロ肉の鮮度低下に関わるATP分解自己消化反応がマグロ筋肉のガラス転移温度 (-60~-70℃) 以下では急激にその反応速度が小さくなること, 種々のガラス物質内に埋め込まれた糖―タンパク質問のメイラード反応の進行はガラス状態の分子運動性だけでなくガラス物質と糖―タンパク質問の相互作用に強く依存することを紹介する.さらに食品の凍結時においてみられるガラス転移を理解するために水和タンパク質 (牛血清アルブミンBSA) の低温でのガラス転移の詳細検討結果, また, 糖―リン酸混合溶液の相互作用による異常ガラス転移現象, 凍結スリミのガラス転移温度に及ぼす添加糖の影響などについて解説する.
  • 山田 晃弘, 日佐 和夫, 福岡 美香, 萩原 知明, 崎山 高明, 渡辺 尚彦
    2007 年 8 巻 2 号 p. 59-71
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    多品種少量生産型の食品製造現場においてHACCPと同等レベルの衛生管理を実現し, これらの現場で製造された食品の安全性向上に資することを目的として, 中食の調理加工工場の実地調査を通じて, 多品種少量生産食品製造現場におけるHACCP実施に伴う問題点の詳細な把握を試みた.その結果, (1) 管理する品目の数が多い, (2) 交差汚染防止に効果的とされるゾーニングや一方通行化を図れるほどの施設設備的な余裕がない, (3) 製造プロセスが現場の裁量により臨機応変に変わる, といった問題点が具体的に明らかとなり, 単一生産を前提とした現行のHACCPの実施は非現実的であることがわかった.これらの問題点の中で, 特に管理品目の数の多さの問題に関連して, 現行の単一生産を前提として作成したHACCPプランを, 危害原因物質, 発生要因, 防止措置が同様のものをグループ化・再構築してスリム化する手法を解決策として考案した.
  • 鈴木 寛一, 今岡 賢一, キョウカイカ ソムチャイ, 羽倉 義雄
    2007 年 8 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    液体の機械的物性は, おもに粘度または流動挙動で論議されているが, 非ニュートン流動性を示す液状食品の多くは, 粘弾性体としても挙動する.定形性をもたない液状材料の粘弾性は, これまでは動的測定法で得られる複素弾性率や損失正切 (tanδ) などの動的粘弾性パラメータで論議されてきたが, 動的粘弾性は周波数などの測定条件によって大きく影響を受けるため, 得られる動的粘弾性パラメータの物理的意味が複雑または曖昧となる問題がある.そのため, 一般的には限定された線形領域の測定値で粘弾性を評価しているが, 液状食品の製造工程管理や品質設計を行うために必要な評価条件にそぐわないことも多い.
    一方, 最近著者らが開発した非回転二重円筒型レオメータでは, 液状材料の粘度およびずり弾性率 (静的粘弾性) を任意のずり速度で同時に直接測定することが可能である.この方法では, カップ (外筒) が定速で軸方向に微小距離 (0.1~0.2mm) 移動する問に試料がプランジャ (内筒) に作用する総合力Fの時間変化曲線から静的粘弾性を測定するが, 測定開始直後のFの時間変化曲線が2種類に大別されることを見い出した.1つは, Fの瞬間的増加に続いて上に凸の曲線となってFが増加するもの (曲線1) であり, 他の1つは, 作用力の瞬間的増加後は, 時間に対して直線的にFが増加するもの (曲線II) である.
    そこで本研究では, 非回転二重円筒法で測定されるFの変化曲線の形の違いは, 液状材料の粘弾性の発現機構の違いに起因するものと推定して, 2つの2要素粘弾性モデル, すなわち, 粘性要素と弾性要素の直列モデル (Maxwellモデル) および同要素の並列モデル (Voigtモデル) を用いて液状食品の粘弾性挙動の解析を試みた.2要素モデルは, 動的粘弾性の挙動を説明する際によく用いられるものであり, 非回転二重円筒法で測定される静的粘弾性と動的粘弾性の対応関係を検討する場合にも都合が良い.ここでは, 2種類のFの変化曲線と2要素モデルとの対応性および液状食品の性状と2要素モデル適合性を検討した.
    試料には, 製造者が異なる2種類のケチャップ (KA, KB) とマヨネーズ (MC, MD) を用いた.マヨネーズの分散相体積分率φは0.75以上である.各試料の初期水分は, KA=72.6wt%, KB=73.8wt%, MC=17.5wt%およびMD=20.0wt%であり, これらの試料に加水して, 水分を20~32%の範囲で7段階に調整したマヨネーズ試料と74%, 76%, 78%に調製したケチャップも用いた.測定には, (株) サン科学製のレオメータ (CR-200) を用い, カップ直径は29.2mmとし, マヨネーズ試料の測定には直径25.1mmのプランジャ, ケチャップ試料には直径27.1mmのプランジャを用いた.プランジャの初期液深は60mm, カップの移動速度0.333mm/sとした.すべての測定は25℃で行い, 粘度と弾性率の値は, 1条件で4~6回の測定での平均値とした.
    ずり速度一定条件での2要素モデルの解析結果は, 曲線Iと曲線IIは, それぞれ直列モデル (Maxwellモデル) と並列モデル (Voigtモデル) に対応することを示した.実験結果は, 粘度とずり弾性率はマヨネーズ試料とケチャップ試料のどちらも水分の減少とともに減少することを示した.しかし, マヨネーズ試料は, 水分が約25%付近で水分に対する減少傾向が変化した.また, 水分が25%以上のマヨネーズ試料とケチャップ試料 (水分は, 約73%以上) は, プランジャへの作用力Fの瞬間的な増加に続いて上に凸の増加曲線となる曲線Iを示したが, 25%以下のマヨネーズ試料は, 曲線IIとなった.25%以下のマヨネーズ試料の分散相体積分率φは, 球状粒子集合体の細密充填濃度 (φ=0.7405) 以上となっているものと推定される.したがって, 分散相または分散固形物の体積分率が細密充填濃度を超える場合 (φ>0.75) には, 分散相と連続相の変形または移動が相互に干渉しあう挙動, すなわち, 粘性要素と弾性要素の並列モデル (Voigtモデル) 的な挙動を示すものと考えられる.これに対して, φ<0.75の液状食品では, 分散相の変形または移動に対する連続相の制限が少なくなるか相互が自由に変形できるため, 直列モデル (Maxwellモデル) 的な挙動となるものと考えられる.まとめとして, 液状食品の粘弾性挙動は, 2つの2要素モデルのどちらかで近似でき, 分散相の体積分率が0.75より高い液状食品は並列モデル的な粘弾性挙動, 0.75より低くなると直列モデル的な粘弾性挙動を示すものと推察した.
  • ―密封・開封・炭酸ガス中の全貯蔵条件を満たす鮮度予測―
    喜多 裕子, 加藤 宏郎, 金 鉉台, 藤谷 伸一, 樫森 亜由子
    2007 年 8 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    鶏卵の鮮度指標には, 時間的指標である産卵後の経過日数と物理的鮮度指標のハウユニットがある.ハウユニットが低下する主原因は卵内の炭酸ガスの散逸であるとされている.開封貯蔵, 密封貯蔵, 炭酸ガス中の3種類の保存条件を設定し, 保存条件がハウユニットに与える影響を調べるとともに, 透過分光法により, ハウユニットと経過日数の非破壊計測を行った.その結果, ハウユニットの経時変化から, 炭酸ガスにハウユニットの低下を抑制する効果があることが確認でき, 水分蒸発はハウユニット低下に殆ど影響しないことがわかった.さらに, 全卵の吸光度スペクトルからPLS回帰分析を用いてハウユニットと経過日数の予測を行った結果, 3種類の異なる保存条件におけるデータを合わせて作成した検量線でも, 高い精度で鮮度予測が可能であるとわかった.すなわち, 保存条件に関係なく鶏卵の鮮度を非破壊計測することができた.
  • 飯塚 泰弘, 安藤 泰二, 菊地 基和
    2007 年 8 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    希塩酸を電気分解することにより生成する微酸性電解水は種々の微生物に対して殺菌効果を有しており, 洗浄や殺菌などの幅広い用途に利用されている.所定の有効塩素濃度やpHへの調整を行うには, これらに及ぼす操作因子の影響を定量的に評価することが重要である.本報文では, 電解槽内の電気化学反応に加えて, 炭酸カルシウムや次亜塩素酸などの微酸性電解水中の各成分に関する解離平衡を考慮し, 製造される微酸性電解水の有効塩素濃度とpHを予測可能なモデルの構築を試みた.本モデルの計算結果は, 実験結果において有効塩素濃度の増加に伴いpHが減少する様子, および希釈水供給流量の増加に伴いpHが低下する様子を表現できた.また, 電解液のpHは0.5以下と推算され, 発生した塩素ガスは電解液に溶解しないとした仮定と一致した.本モデルは異なる硬度の原水を用いて製造した微酸性電解水の有効塩素濃度とpHの関係も予測可能であった.
  • 桑原 有司
    2007 年 8 巻 2 号 p. 97-98
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
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