この10年間,野菜飲料市場は急拡大してきたが,ここ数年は伸び悩んでいるのが現状である.そこで,野菜飲料市場の活性化に向け,野菜飲料の新ブランド・新商品「やさいしぼり」の開発を開始した.「やさいしぼり」の開発にあたっては,“野菜本来のおいしさを実感できること”を目標品質に掲げた.
本商品では,野菜本来のおいしさを追求した結果,内容物のpHが高く,高い殺菌条件が必要となった.通常使用している間接加熱殺菌方式(プレート式)で殺菌したところ,加熱臭が強く,目標品質と程遠い結果となった.また,生産面では間接加熱殺菌方式(プレート式)では,短時間でプレートの焦げ付きの兆候がみられ,連続生産困難と判断された.
何とか,このおいしさを商品化できないかと考え,殺菌での熱履歴の低減が期待できる,直接加熱殺菌方式(蒸気と内容物を直接接触させ,瞬間的に加熱殺菌・冷却)の検討を行った.直接加熱殺菌方式としては,スチームインジェクションとスチームインフュージョンの両者について検討を行った.
その結果,間接加熱殺菌方式と比較して,直接加熱殺菌方式の方が高い品質が得られ,さらに,直接殺菌方式の中ではスチームインフュージョンの方が高い品質が得られたことにより,インフュージョン式を採用した.また,連続生産性については,プレートのように焦げ付き問題はなく,連続生産可能であった.
今後も,世界中から厳選した“原料”とおいしさを損なわない“商品化技術”により,市場に新しい価値を提供し続けていきたい.
抄録全体を表示