日本食品工学会誌
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2 巻, 3 号
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  • 松村 康生
    2001 年 2 巻 3 号 p. 87-95
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    実際の食品エマルションには, タンパク質が乳化剤・安定化剤として多く用いられている。したがって, エマルション油滴表面におけるタンパク質の構造や状態を把握し, それらの変化がエマルション全体の性質に与える影響を明らかにすることは, 極めて重要である。本論文では, タンパク質がエマルション中の油滴表面において, 他成分, とくに脂質成分とどのように相互作用するのか, またそのような相互作用がエマルション物性にどのような影響を与えるのか, 著者のグループの研究例を中心に報告した。前半では, 油滴中に生じた油脂結晶が, 油滴表面のタンパク質の存在状態に影響を及ぼし, 最終的にクリームの物性変化を引き起こすメカニズムについて詳述した。後半では, 乳清タンパク質が卵黄成分によって油滴表面から置換される現象について解説し, とくに温度が置換反応に大きな影響を与えることを指摘した。
  • 寺島 好己
    2001 年 2 巻 3 号 p. 97-101
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    缶詰食品やレトルト食品の加熱殺菌においては, 所定の殺菌効果を達成しながら品質面での劣化をできるだけさけるようにすることが理想的である.これを実現するために, 古くから, 高温殺菌法が注目されている.しかし, 高温で殺菌すると容器の中心部で一定の殺菌効果が達成されている間に容器の外表面の近くの食品は高温にさらされて食品成分の劣化が非常に大きくなることがある.このような食品成分の劣化を克服する方法として殺菌温度を時間によって変化させれば高温殺菌の効果がさらに大きくなることが期待される.ここでは, 缶詰食品やレトルト食品の殺菌前後の食品成分の品質変化を最小にするために, 従来行われてきたレトルト温度およびレトルト温度プロフィールに関する研究について解説する.
  • 西村 喜之, 金谷 隆文, 大久保 典昭, 岡田 和久, 花田 圭司
    2001 年 2 巻 3 号 p. 103-113
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    Ozone is attracting more and more attention in wide areas of applications, especially in food and food processing. For decades, huge amounts of chlorine compounds like sodium hypochlorite have been used for disinfection in food processing. However, its long term use has caused the new problem of the appearance of drug-resistant microbes. Also, consumers want to have natural foods, without additives, free from pollution and disinfectant odor. Ozone is, in contrast to chlorine compounds, one of the oldest chemicals on the earth. It kills viruses and bacteria the same as chlorine and reverts back to oxygen leaving no chemicals behind. Furthermore, it produces no drug-resistant microbes. In this report, the use of highly concentrated ozonated water is introduced with an explanation of its marvelous effects and advanced technology.
  • 渡辺 尚彦
    2001 年 2 巻 3 号 p. 115-118
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
  • 嶋多 優
    2001 年 2 巻 3 号 p. 119-120
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
  • 金 有珍, 鈴木 徹, 松井 悠子, Chidphong PRADISTSUWANNA, 高井 陸雄
    2001 年 2 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 2001/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    スターチは長時間ボールミルすることにより室温でも非晶質のアモルファススターチに転換されると同時にFig.2のようにエンタルピー緩和を伴うことが示されてきた [1] .アモルファス物質のエンタルピー緩和は自由体積の減少といった体積緩和を伴い, アモルファス物質の様々な物性に影響を与える.一般的にボールミルしたスターチは結晶質部分割合が低下するため, 高い水分収着性をもつと考えられてきたが, 先のボールミルによるエンタルピー緩和を考慮すると自由体積減少によって水分収着能の減少が予測される.本研究では, この予想を確認するためボールミル処理時間の違いによるスターチの水分収着能の変化を調べた.
    試料にはポテトスターチを用い, 室温で種々の時間 (1から100時間) ボールミル処理を行った.それぞれ処理時間の異なる試料を, 飽和塩類を用いて相対水蒸気圧をコントロールしたデシケータに25℃で放置し, 試料の重量変化を測定することで水分収着平衡を調べた.ポテトスターチの水分収着平衡量はFig.1に示したようにミル時間の増加とともに, ほとんどの相対水蒸気圧において, 全体的に低下した.この結果は, エンタルピー緩和したアモルファスデンプンは水分収着能が低下するであろうという我々の推測を支持するものであった.さらに詳細な分析のため, ヘンリー型とラングミュア型吸着を合わせた次式のように表される二元収着モデルを用いて検討を行った.二元収着モデルは, ガラス状高分子へのペネトラントの収着に対する解析にしばしば用いられる.
    C=kdp+〓
    ここでC, pはそれぞれ収着量割合およびペネトラントの相対蒸気圧であり, kdはヘンリー定数である.そして, C'H, bはそれぞれラングミュア容量定数および親和力定数であり, 前者C'Hはガラス状高分子内の自由体積と関係するとされる.Fig.3には, 例として22時間ミルした試料の水分収着平衡と上式による曲線を示した.
    その結果, 二元収着モデルはAw=0.8までの範囲で水分収着平衡をよく表せ, ラングミュア容量定数C'Hを決定することができた.さらに, このC'Hとミル時間をプロットしたところ (Fig.4) , C'Hはミルの進行とともに序々に減少することが示された.ただし, Fig.4では, 縦軸を対数表示しているにもかかわらず直線関係が得られないことから, 単純な一次反応的な減少ではないことが明らかになった.ここで, アモルファス合成高分子の緩和過程をよく表現できるとされる次のKWW式を用いて, 水分収着能の時間依存性を検討した.

    ここでC0HCHC'Hの初期値および, 最終値であり, τ, βは緩和時間とその分布を表すパラメーターである.後者3つのパラメーターはfittingによって決定されるものである.
    結果として, Fig.4の実線で示すようにKww式は, τ=19hr, β=0.4のとき, 水分収着能の指標であるC'Hのミル時間による減少過程を非常によく表せた.このような一致は, 水分吸収能減少の現象およびKWW式が本来適用される構造緩和と直接的な対応を有することを保証するものではないが, ボールミルによるスターチの水分収着能の減少は, スターチのアモルファス構造の緩和に起因することを示唆するものと考えられる.
    以上, ボールミル処理によってポテトスターチの水分収着能が低下することがわかった.また, この現象はスターチ内の結晶質の減少としては説明できず, ボールミル処理によりアモルファススターチ分子の構造緩和が引き起こされた結果, 水分子の収着し得る自由体積が減少したと考えることによって理解される.スターチの構造緩和, あるいはエンタルピー緩和は, ボールミル処理時だけでなく, 通常の保存時でも起こりうる現象である.したがって, スターチを用いる食品, フィルム等への水分収着能を考えるうえで貯蔵中の構造緩和の影響を留意する必要性が示唆される.
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