日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
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21 巻, 4 号
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解説
  • 柴田(石渡) 奈緒美
    2020 年 21 巻 4 号 p. 149-159
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

    食品の製造において求められる,安全性と品質の両方を担保した加熱条件を提示する方法の1つにシミュレーション手法が挙げられる.本稿では畜肉を対象とし,熱移動・物質移動のみならず,タンパク質熱変性,旨味成分の酵素分解など,速度論的な解析を融合させた調理シミュレーションについて解説した.真空調理法に基づき調理したローストビーフを対象とし,調理シミュレーションを利用した結果,以下の結果が明らかとなった.(1)アクチンの変性が終了していないため,肉がやわらかく仕上がる,(2)グルタミン酸とイノシン酸は,調理過程において試料内部に形成される分布が異なる,(3)真空調理法は呈味成分の流出を抑制した方法である,(4)肉内部の殺菌効果は低いため,新鮮な食材の選定や肉内部で菌が増殖しないよう,徹底した衛生管理が必要である.

  • 熊谷 仁
    2020 年 21 巻 4 号 p. 161-169
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

    食品の水分活性とガラス転移に関して概説した.水分収着等温線は,食品中の水と固体成分の相互作用に関する情報を与える.水分収着等温線を溶液熱力学を用いて解析することにより,水と固体両方の熱力学的パラメータが求められる.積算ギブス自由エネルギー変化ΔGsは熱力学的観点から,固体と水との相互作用の程度評価するのに適するパラメータである.水分収着等温線の熱力学的解析によって得られるパラメータと水分収着に伴うガラス転移温度(Tg)の低下には関係がみられる.水分収着等温線から得られる熱力学的パラメータΔGsaTgの低下の程度ΔTg(≡TgTg0; Tg0は乾燥試料のTg)と高い相関を示した.言い換えれば,水のガラス状食品に対する可塑剤としての効果がΔGsaにより評価しうることになる.

原著論文
  • 宮脇 長人, 表 千晶, 小栁 喬, 笹木 哲也, 武 春美, 松田 章, 田所 佳奈, 三輪 章志
    2020 年 21 巻 4 号 p. 171-177
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

    流路閉鎖循環方式PFC装置を用いて巨峰果汁の凍結濃縮を行い,糖度を19.5 Brixから29.9 Brixに濃縮し,有機酸分布,香気成分分布について,濃縮前後の分布プロフィールにほとんど変化のない高品質濃縮が可能であることがわかった.凍結濃縮果汁を発酵させて巨峰ワインを試作した結果,アルコール濃度は17.1 vol-%となり,補糖を必要とせず,十分に高いアルコール濃度が得られることがわかった.巨峰ワインの有機酸分布は,発酵により一部の有機酸が増加,香気成分分析においては,発酵により原果汁香気成分のいくつかは消失し,これに代って,発酵生産物が大きく増大したものの,全体としては巨峰香気成分を十分保持しており,本方法によりこれまでにない,高成分濃度で香気豊富な新しいタイプの巨峰ワイン製造への可能性が示された.

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