日本食品工学会誌
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5 巻, 4 号
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  • 安達 修二
    2004 年 5 巻 4 号 p. 223-233
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    主要な食品成分の一つである脂質の高度利用を達成するための工学的課題として, 抗酸化性に優れた粉末化脂質の合理的な調製法の確立, 有機溶媒中でのリパーゼを用いた親水性物質と脂肪酸の縮合による多様な乳化剤の合成および亜臨界水への脂肪酸の溶解とそれに基づくO/W型ナノ・エマルションの調製を取り上げた.粉末化による脂質の酸化抑制は, 食品高分子乾燥層の酸素に対する拡散抵抗のみならず, 脂質と食品高分子の相互作用が重要な役割を果たすことを示唆し, それを定量的に表現するモデルを提出した.また, 有機溶媒中でのリパーゼを用いた乳化剤の合成においても, 基質と水または基質と溶媒の相互作用により濃度基準の見掛けの反応平衡定数が大きく影響されることを示した.さらに, 各種の乳化剤を連続または半連続的に合成するための反応器システムを構築し, いくつかの興味深い特性をもつ生成物を得た.広い温度範囲にわたって脂肪酸の水への溶解度を測定するとともに, その知見に基づいて油滴径が100nm以下で分散の狭いナノ・エマルションを調製する新たな方法を提案した.
  • 高富 哲也, 伊東 章, 城 斗志夫, 渡辺 敦夫
    2004 年 5 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究は, 固形食品の高温短時間殺菌処理による色調やフレーバーの改善効果と, 消費拡大が期待される風味付き魚肉ソーセージ, かまぼこ, 味付けツナ, ジャムなどの固形食品を中心とした流動性の乏しい食品 (以下固形食品) の製造を目的とした.ここでは成分調整したモデル溶液を使用し, 食品内部の温度を不均一にさせる原因の解明とその対策について研究を行い, 以下の結果を得た.
    モデル溶液の加熱テスト結果より, 食品内部温度を不均一にする要因のひとつはNaClであることを確認した.食品の殺菌においては, 内部の均一な殺菌温度が必須であり, その対策として有効な方法はエッジ効果を軽減することである.
    つまり, 食品を充填包装密封し, その周囲を蒸留水の厚さが2mmとなるように浸漬させ, 見かけ上の食品の周辺部 (エッジ部) を蒸留水が代用することによってエッジ効果を低減させることが可能であった.
    また, その蒸留水の半減深度は充分深いため, 食品の加熱効率を著しく低下させるものではなかった.この結果をふまえて, 今後は連続殺菌システムを構築するとともに, 種々の固形食品におけるマイクロ波特性および殺菌の研究を進める予定である.
  • 熊谷 聡, 林 信行, 藤田 修二, 坂木 剛, 安達 芳雄
    2004 年 5 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    我々はこれまで加圧熱水をキーテクノロジーとする木質系バイオマスの変換法について種々検討を行ってきた.本報告では, 加圧熱水流通式反応装置を用いてスダジイを処理し, キシロース, キシロオリゴ糖収率に及ぼす加圧熱水圧力および温度の影響について検討を行った.その結果, 今回検討した範囲内では処理圧力は収率および可溶化時間に対してほとんど影響しないことが明らかになった.温度については, 220℃においてキシロース, キシロビオース, キシロトリオースの収率が最大となったが, さらに処理温度が高くなるとそれらの収率は減少し, かつWI中にセルロースの加水分解物も含まれるようになった.200℃において得られたWSのIRスペクトルを調べたところ, リグニン由来の吸収が観察され, 流通式反応装置による処理は回分式の場合よりもより多くのリグニンがWI中に含まれることが明らかになった.
  • 鈴木 実, 渡辺 学, 酒井 昇
    2004 年 5 巻 4 号 p. 249-257
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    食品の乾燥方法には, 天日乾燥, 熱風乾燥, 真空乾燥, マイクロ波乾燥, 真空凍結乾燥, 噴霧乾燥, 流動層乾燥などがある.また, 食材としての乾燥食品は, (1) 保存性, (2) 柔らかさやみずみずしさ, 味や風味, 色調といった感覚的なものを維持していること, (3) 調理の際に短時間で乾燥前の状態に復元できることなどが求められている.真空凍結乾燥は, 品質劣化が少なく復水性も良好であるが, (1) 多孔質であるために吸湿や酸化が速く長期保存が難しいこと, (2) 水分の昇華による乾燥のためエネルギー効率が低く対象物の大きさと形状によっては乾燥時間が非常に長くなること, (3) 煮沸などの加熱処理をした後, 凍結させる前処理を必要とするため, 他の乾燥方法に比べエネルギー消費が多く設備費を含めて生産コストが嵩むことなどの問題がある.したがって, 真空凍結乾燥は, 小型で薄く比較的高価な食品を対象としていて, 大型で厚みのある食品を対象とする場合は, 工業的にほとんど使用されておらず, 天日乾燥や, 熱風乾燥によっているのが現状である.しかしながら, 天日乾燥や, 熱風乾燥による方法は, 乾燥前の本来の色や食感は維持されず, 乾燥後は, 著しく異なったものになっている.そこで本研究は, 大型で厚みのある食品を対象として, 乾燥前の品質をなるべく維持する新たな乾燥方法について検討することを目的とした.
    本研究は, 上記の問題点や乾製品に対する要求を踏まえて短時間で品質劣化の少ない方法として遠赤外線による真空乾燥を検討した.対象物を補助的に加熱する一般的な真空乾燥ではなく, 遠赤外線を積極的に使用した乾燥方法である.遠赤外線は, 放射伝熱のため真空乾燥に応用できる利点がある.しかし, FIRエネルギーが大きすぎると, 試料の表面温度が上昇し, 色の劣化をおこしてしまうため, FIRエネルギーを調節することが重要になる.本研究の結果では, 試料の表面温度が80℃を超えると色の劣化が著しいために, 80℃を超えないように設定した.
    乾燥の対象とした試料は, 真空凍結乾燥では不向きな大型で厚みのある水産食品であるホタテの貝柱である.本研究の遠赤外線真空乾燥は対象物を煮沸などの前処理を行ったのち, ただちに乾燥工程に移し, 真空中で遠赤外線を照射ながら常温のまま乾燥させる方法である.評価は, 温度分布と含水率の変化, 色調の変化, 収縮による形状の変化, 硬さの変化, 復水性, 味, 風味, 歯ごたえについて行った.その結果, 真空凍結乾燥に近い特性を示す結果であった.
    乾燥室は, 縦41cm, 横26cm, 奥行28cmで, 20mm厚のアクリル樹脂製で, 油回転真空ポンプにより内部を12hPaにした.上部には放射率0.95以上のセラミック製遠赤外線放射板を取り付け, 照射距離を10cmに固定した.試料へは, 遠赤外線が垂直方向から照射される.試料は, ボイル済みのホタテの貝柱を使用し, 試料の中心, 表面, 裏側の3箇所に温度センサーを設置した.遠赤外線放射板の表面と試料に設置した温度センサー, 電子天秤およびデジタル圧力計はすべてパーソナルコンピュータに接続し, 計測と同時に記録できるようにした.含水率の変化は, 電子天秤により質量の変化を測定し, その結果より求めた.
    遠赤外線放射板の表面温度を350℃で3時間遠赤外線真空乾燥を行った場合, 遠赤外線放射板の表面温度を250℃で6時間遠赤外線真空乾燥を行った場合, いずれの場合も含水率は0.2未満であり目的の乾燥を終了した.乾燥後期では含水率が減少し, 試料表面の温度が上昇し, 色調が変化して品質が著しく低下するため温度制御が重要であることがわかった.また, 遠赤外線放射板の表面温度を250℃から350℃にすると乾燥時間がほぼ半分で乾燥が終了することがわかった.表面温度が80℃を越えると色調が著しく変化することから, 遠赤外線放射板の表面温度を350℃にして遠赤外線真空乾燥し, 試料の表面温度が80℃になった時点で, 遠赤外線放射板の電源を切った場合, 試料は変色することなく乾燥を終了した.乾燥方法の違いによる含水率の変化と乾燥時間との関係は, 遠赤外線真空乾燥が他に比べ短時間で目的の乾燥を終了できた.
  • 劉 海傑, 中嶋 光敏, 西 泰治, 木村 俊範
    2004 年 5 巻 4 号 p. 259-266
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    Monodispersed water-in-oil emulsions were prepared successfully using polymer microchannel (PMC) with hydrophobic property, low cost and high anti-alkalinity fabricated by molding injection method. In order to enhance the efficiency of PMC emulsification, it is important to know the critical flow velocity of the dispersed phase, and the critical pressure at which the dispersed phase outflow occurs. In this study, we investigated the effect of the continuous phase flow velocity on the average droplet diameter, coefficient of variation, and the critical pressure during the PMC emulsification process. Furthermore, aiming the optimization of PMC pattern for efficient production of emulsion, various PMC plates with different structures were fabricated, and were used for emulsification. The effects of various parameters on droplet formation characteristics were investigated. The results showed that the continuous phase flow velocity did not affect the average droplet diameter and coefficient of variation, but affected the critical pressure. The critical flow velocity increased slightly, when PMC plates with different structures were used. In particular, the average droplet diameter range became wider, coefficient of variation decreased, and the critical flow velocity increased significantly with the increase of PMC length, which showed higher productivity of the emulsion.
  • アクタス タルカン, 山本 修一, 藤井 幸江
    2004 年 5 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    野菜を熱風乾燥させて容量および重量減とともに安定性を向上させることは食品工業において重要である.凍結乾燥は復水特性の優れた製品を製造できるがコスト高となる.熱風乾燥においては望ましくない収縮や色の変化が生じることが多い.前処理により, このような望ましくない変化を避ける方法が検討されているが, その機構と乾燥中および乾燥後の特性についての検討は十分ではない.
    本研究では, 糖溶液による前処理の乾燥野菜製品の品質変化について検討した.ポテトおよびニンジンのスライスサンプル (0.5mm厚さ) をブランチングしたのちにショ糖とトレハロース溶液に浸漬し前処理とした.この前処理したサンプルを323Kで熱風乾燥した.乾燥後の製品を298Kあるいは373Kの水に漬けて, 復水 (吸水) 過程を測定した.比較のために前処理しないもの, ブランチングのみ行ったものも使用した.
    吸水過程は初期の急速に吸水する領域とその後の緩慢な領域とに分けられた.トレハロース浸漬処理がもっとも高い復水量を示した.顕微鏡による細胞観察ではトレハロース処理では細胞のダメージが最も少ないことが示唆された.また, 乾燥後の収縮の程度は, 無処理では激しい収縮が観察されたのに対して糖溶液処理では収縮が抑制された.トレハロース処理をした乾燥製品はほとんど収縮もなく細胞組織が保存されていた.また色調も良好であった.
  • 柴田 恒彦
    2004 年 5 巻 4 号 p. 273-274
    発行日: 2004/12/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
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