日本食品工学会誌
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11 巻, 2 号
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解説
  • 山本 修一
    2010 年 11 巻 2 号 p. 73-83
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    重要な物質移動物性としての拡散係数について乾燥脱水挙動に着目して解説した.はじめに希薄溶液中の拡散係数について,拡散係数の定義や分子量による推算式とともに説明した.次に,ゲル中の拡散係数について,ゲル物性(構造)と拡散係数の関係を述べた.拡散係数からゲルの細孔構造を評価することもできる.
    濃厚溶液中の拡散係数についてはショ糖-水系を例として詳細に解説した.拡散係数は水分濃度の減少とともに低下し,とくに過飽和溶液となる水分濃度30%以下で急激に低下する.過飽和領域では拡散係数の活性化エネルギーは希薄溶液の値20 kJ/molから増加する.また,脱着等温線と等量微分吸着熱から,この領域の水は水素結合により強く束縛されていると解釈される.また,濃厚溶液中の拡散係数は流体力学的粘度(マクロ粘度)ではなく,電気伝導度などで測定されるミクロな領域での粘度により支配されている.ゲル化された糖溶液の乾燥速度は,2種類に分けられる.寒天ゲルは,比較的大きな(あるいは疎な)網目構造を形成する.その結果,ゲルそれ自体は水分の移動にほとんど影響せず,糖溶液中の水分拡散が乾燥速度を支配する.一方,ゼラチンゲルでは乾燥直後に緻密な皮膜が表面に形成され,乾燥速度は著しく低下する.この種のゲルでは糖溶液の拡散のみならず表面ポリマー膜内の拡散が乾燥速度を決定する.表面物性と内部水分濃度は乾燥挙動に大きく影響し,みかけ上まったく同じ乾燥曲線となることもあるので注意する必要がある.
    糖溶液の乾燥において,初期の恒率乾燥期間終了後に内部拡散支配の減率乾燥となる.揮発成分は恒率乾燥期間に散逸し,熱感受性物質(酵素など)は減率乾燥期間に失活する.どちらについても拡散係数が支配するので,重要な物性値である.
原著論文
  • 吉田 咲, 福岡 美香, 酒井 昇
    2010 年 11 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    老化米飯の評価方法として,定量性に優れているために一般的によく用いられる方法として,DSC測定,BAP法がある.しかし,試料の調製方法の煩雑さや,初期段階の老化評価が難しいという欠点がある.
    本研究では,マイクロ波加熱を用いて炊飯した米粒の老化の進行を,X線回折を用いて定量化することを目的とした.また,一般的に行う粉末処理をせずに,より簡便な測定方法としてすり潰した試料を直接測定することによって老化米飯の評価方法を検討した.また,偏光顕微鏡観察を同時に行い,老化の程度を可視的に確認し,X線回折の結果と合わせて考察した.
    結晶化度の算出を行った結果,低温貯蔵12時間後から老化の進行が認められた.得られた結晶化度よりAvrami式を用いて,老化速度定数の算出を行った.老化速度定数は,炊飯後の飯粒含水率に大きく影響を受け,含水率が低いほど老化速度定数は大きかった.
技術論文
  • 坂本 幸司, 土澤 和之, 勝岡 貴久
    2010 年 11 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    シガレットの香味や硬さを設計する際,たばこ葉脈は不可欠な原料として使用される.キュアリングとよばれる特殊な乾燥によって収縮したたばこ葉脈は,加水および乾燥処理により膨張する.コスト低減に寄与する本処理技術の合理設計には,膨張の主要機構の解明が必要である.著者らは,(1)乾燥による葉脈内の水の気化,および(2)含水率および温度依存性を示す葉脈組織の応力-歪み特性の2点が,膨張に影響を与える主要因子であると考えている.そこで,機構解明の第一段階として,葉脈の乾燥特性を明らかにする.本報では,空気流および過熱水蒸気を混合した湿り空気流によって膨張するたばこ葉脈の含水率および温度を定量的に記述する乾燥モデルを示す.
    予備検討により,長さ10 mm以上の葉脈では,半径方向の水および熱移動が主経路であると予想された.そこで,次の3つの仮定をモデルに導入し,不定形材料の乾燥現象を簡素化した:(1)たばこ葉脈は円筒形状をした均質材料である;(2)長さ10 mm以上の葉脈内の物質および熱移動は,半径方向の1次元拡散として記述される; および(3)水の蒸発は固気界面(葉脈の表面)のみで生じる. さらに,観察の結果,乾燥の初期段階で膨張はほぼ終了することから,膨張した葉脈の円相当半径を拡散長として規定した.ある気流条件では,乾燥の初期に水蒸気が葉脈表面へ凝縮する.本モデルでは,凝縮はエネルギー収支のみにより決まり,表面温度が気流の露点に達すまで継続するものとした.これら支配方程式を離散化し,Gauss–Seidel法により数値解を求めた.
    推算の際,乾燥による膨張の有無に関わらず,頻度因子Doおよび活性化エネルギーEaをパラメータとする水の有効拡散係数DD0exp(-Ea/RT)を内部移動に適用した.ここで,RおよびTは,それぞれ気体定数および温度である.乾燥実験を行った含水率領域では,葉脈中の吸着水は結合水として存在する.そこで,膨張した葉脈を2相(たばこと水の相,およびガス相)とみなし,膨張した葉脈の有効熱伝導度をMaxwell–Euckenの式により補正した.これら有効拡散係数および熱伝導度は,各time stepおよびcontrol volumeで求めた.
    たばこ葉から幅5±0.5 mmの葉脈を切り取り,長さ30 mmに裁断した.初期含水率の調整のため,これら葉脈片を温度 295 K・相対湿度80%で吸湿平衡にした.通気型乾燥機の電動スライダに取り付けた1本の葉脈片を気流に対して垂直に投入し,所定時間乾燥した.気流として,空気(温度 373-473 K, 混合比 0.01 kg of water/kg of dry air(kg-H2O/kg-DA)),および湿り空気(温度423, 473 K, 混合比 0.27, 2.48 kg-H2O/kg-DA)を使用し,気流速度を10から20 m/sとした.さらに,気流乾燥管の側面に設けたフッ化バリウム製の窓をとおして,放射温度計による葉脈表面温度の測定およびデジタルビデオカメラによる膨張過程の観察を行った.熱風乾燥(373 K, 1 h)により,乾燥葉脈の含水率を求めた.
    推算値と実測値を比較すると,乾燥初期段階の表面温度にずれを生じた.この誤差は,(1)熱収支とwmax(Dubinin-Astakhov式の最大含水率)のみで水蒸気の凝縮を規定したこと,および(2)拡散長を最大半径に固定したことに起因すると考えられた.初期段階を除くと,温度および含水率の推算曲線は,それぞれの実測値にほぼ一致した.さらに,湿り空気流の場合,モデルは,乾燥初期に生じるたばこ表面への水蒸気の凝縮および凝縮熱による急激な温度上昇を記述できた.
    以上より,本実験条件で本乾燥モデルは妥当であり,膨張するたばこ葉脈の乾燥曲線の推算に適用できるものと判断した.
  • 小林 正宜, 芦屋 譲, 長山 貴之, 森川 晃好, 長井 直士
    2010 年 11 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    Recently, Most consumers concern for safety and relief to the products and this tendency is remarkable to the food products. Once serious defect of the products is detected in the market, company must search all detected objects. So traceability performance is very important for beverage products company. Additionally, company should take responsibility for the products, therefore accountability that proves products safety is also important. For these reasons, our company has already introduced some systems for traceability and accountability. These systems help us to know what kinds of materials are used in the products and when the products proceed through each equipment in the factory, but these systems can't identify “a bottle product” because of system mechanism. It is very difficult to recognize “a bottle product” because manufacturing conveyer line is too complicate and speedy in real situation. To solve this problem, we introduce new systems with character recognizing technique. The new systems enable us to identify “a bottle product” and to improve accuracy and speed over 92% compared with previous ones. According to the new systems, we can provide more detailed and complicated information to consumers. As a result, both quality assurance level and company values can be raised.
  • 堤 一代, 小川 あかね, 福田 翼, 森田 洋
    2010 年 11 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    これまでフィブロインの膜化には様々な検討がなされてきた.本研究では,フィブロイン膜の不溶化要因の検討を行った.グリセリン添加量において,0.05 v/v%以下の添加ではフィブロイン膜は溶出し,0.10 v/v%以上の添加ではフィブロイン膜は溶出しなかった.乾燥条件の検討では,温度30℃以上,湿度70%RHで不溶化することが確認された.pHによる影響では,pH 11以下で不溶化した.フィブロイン濃度の影響では,2-10 mg/mLで不溶化を示した.膜化のためのフィブロイン濃度の検討を行った結果,2.0 mg/mL以上であることが確認された.
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