呼吸器疾患は悪性疾患,非悪性疾患を問わず,終末期に呼吸困難感を訴え,苦痛を伴うことが多い.COPDなどの非悪性疾患患者の終末期の苦痛は肺癌患者の終末期の苦痛に匹敵し,時に上回る.悪性疾患に対する緩和ケアは医療として受け入れられ,薬物療法,非薬物療法,社会的支援,ホスピスなどの専門施設,家族へのグリーフケアなど多方面で発展している.一方で非悪性疾患については緩和ケアの概念は必ずしも普及しておらず,その課題に関する研究はまだ少ない.欧米の研究においては,非悪性疾患患者の多くは苦痛を感じたまま最期を迎えていることが明らかとなっており,終末期の中でも最終末期における緩和ケアはより重要な位置づけである.終末期医療の中でも最終末期に焦点をあて,昭和大学病院で施行した呼吸器疾患患者の最終末期医療の現状と問題点についての検討を行った.これらの実態を調査し比較することで,互いに不足している治療・ケアを抽出し,各群それぞれの問題点を明らかにすることを目的とした.2018年1月1日から2019年1月31日の期間中に昭和大学病院呼吸器・アレルギー内科で呼吸器領域での悪性疾患と非悪性疾患で死亡した90例を対象とした.疾患は,悪性疾患が31例,非悪性疾患が59例であった.悪性疾患と非悪性疾患に分けて最終末期の治療・ケアを比較したところ,非悪性疾患ではオピオイド使用頻度が有意に少なく,悪性疾患においてはリハビリテーションの施行が有意に少ない結果であった.悪性,非悪性呼吸器疾患の終末期医療は互いに異なる点は少なくないが,最終末期における緩和ケアにおいて,オピオイド投与やリハビリテーション施行などオーバーラップする部分が存在し,追加介入が検討されうることが示唆された.最終末期においては,悪性,非悪性呼吸器疾患に関わらず十分な緩和ケアの介入がなされているかを常に考える必要がある.
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