昭和学士会雑誌
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83 巻, 4 号
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原著
  • 金子 佳右, 鈴木 慎太郎, 眞鍋 亮, 菅沼 宏充, 能條 眞, 島村 美理, 楠本 壮二郎, 田中 明彦, 相良 博典
    2023 年 83 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患は悪性疾患,非悪性疾患を問わず,終末期に呼吸困難感を訴え,苦痛を伴うことが多い.COPDなどの非悪性疾患患者の終末期の苦痛は肺癌患者の終末期の苦痛に匹敵し,時に上回る.悪性疾患に対する緩和ケアは医療として受け入れられ,薬物療法,非薬物療法,社会的支援,ホスピスなどの専門施設,家族へのグリーフケアなど多方面で発展している.一方で非悪性疾患については緩和ケアの概念は必ずしも普及しておらず,その課題に関する研究はまだ少ない.欧米の研究においては,非悪性疾患患者の多くは苦痛を感じたまま最期を迎えていることが明らかとなっており,終末期の中でも最終末期における緩和ケアはより重要な位置づけである.終末期医療の中でも最終末期に焦点をあて,昭和大学病院で施行した呼吸器疾患患者の最終末期医療の現状と問題点についての検討を行った.これらの実態を調査し比較することで,互いに不足している治療・ケアを抽出し,各群それぞれの問題点を明らかにすることを目的とした.2018年1月1日から2019年1月31日の期間中に昭和大学病院呼吸器・アレルギー内科で呼吸器領域での悪性疾患と非悪性疾患で死亡した90例を対象とした.疾患は,悪性疾患が31例,非悪性疾患が59例であった.悪性疾患と非悪性疾患に分けて最終末期の治療・ケアを比較したところ,非悪性疾患ではオピオイド使用頻度が有意に少なく,悪性疾患においてはリハビリテーションの施行が有意に少ない結果であった.悪性,非悪性呼吸器疾患の終末期医療は互いに異なる点は少なくないが,最終末期における緩和ケアにおいて,オピオイド投与やリハビリテーション施行などオーバーラップする部分が存在し,追加介入が検討されうることが示唆された.最終末期においては,悪性,非悪性呼吸器疾患に関わらず十分な緩和ケアの介入がなされているかを常に考える必要がある.
症例報告
  • 河村 陽二郎, 一寸木 宏和, 松浦 聖平, 杉谷 いづみ, 小松﨑 敏光, 藤居 直和
    2023 年 83 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー
    今回われわれは末梢性めまいの疑いで他科から紹介され中枢性めまいと診断した3例を経験したため報告する.1例目は33歳の男性で,受診する1日前から嘔気と頸部痛を認め,翌日から強いめまいを自覚し救急科を受診した.頭部CT検査などで異常は認めず良性発作性頭位めまい症の疑いで耳鼻咽喉科へ紹介されたが,垂直性眼振を認めたことから頭部MRI検査を施行しWallenberg症候群と診断した.2例目は46歳の女性で,急性胃腸炎の治療後からめまいと吃逆を認め消化器内科を受診した.メニエール病の疑いで耳鼻咽喉科へ紹介されたが,垂直性眼振と嚥下障害を認めたことから頭部MRI検査を施行し脳幹炎を認め,脳神経内科で視神経脊髄炎と診断した.3例目は乳癌の化学療法を施行していた55歳の女性で,経過中にめまいや頭痛が出現したため治療を行っている乳腺科を受診した.良性発作性頭位めまい症の疑いで耳鼻咽喉科へ紹介されたが頭部CT検査を施行し乳癌の脳転移と診断した.いずれの症例も診断には画像検査が有用であった.
  • 佐藤 有里子, 齊藤 芳郎, 宮本 裟也, 安部 勇蔵, 安田 有沙, 佐藤 仁, 船津 敬弘, 嶋根 俊和, 代田 達夫
    2023 年 83 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー
    骨形成線維腫は,セメント質や骨様の硬組織形成を伴う線維性結合組織の増生からなる良性腫瘍である.15歳以下に発生し,急速に成長するものは若年性骨形成線維腫と言い,稀な疾患である.今回われわれは,上顎骨に生じた巨大な若年性骨形成線維腫の1例を経験したので報告する.症例は12歳,男児.半年前より上顎前歯部の腫脹が生じ,急速に増大してきたため精査・加療目的に当科を受診した.右側上顎第一小臼歯から右側上顎中切歯にかけて,唇側および口蓋側に無痛性膨隆を認めた.パノラマX線およびCTでは,右側上顎第一大臼歯から左側上顎犬歯にかけて内部に不規則な構造を有した硬組織が散在する境界明瞭な透過性病変が認められた.上顎骨腫瘍の臨床診断の下,全身麻酔下に腫瘍摘出搔爬術を施行した.病理組織学的には,大部分を錯綜する太い膠原線維束の増生からなる線維組織であり,その中にセメント質様の小球状の石灰化物や小塊状の骨様石灰化物の散在を認めたことから,骨形成線維腫と診断した.患児は12歳であり,急速な腫瘍増大を伴うことより,最終診断は若年性骨形成線維種と診断した.術後2年が経過したが,明らかな再発は認めない.本腫瘍の再発率は高く,今後も慎重な経過観察を行う予定である.
  • 藤井 歌倫, 川上 敬子, 宮本 真豪, 明樂 一隆, 三澤 亜純, 中尾 紗由美, 田内 麻依子, 宮村 知弥, 中林 誠, 丸山 大介, ...
    2023 年 83 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症のリンパ節での発生は稀少部位子宮内膜症とされている.子宮内膜症のリンパ節病変は骨盤内リンパ節が多く,骨盤内の深部子宮内膜症を伴うことが多い.今回,深部子宮内膜症を伴わない傍大動脈リンパ節子宮内膜症の一例を経験した.症例は44歳,過多月経による貧血のため,当科へ紹介となった.MRI検査で子宮腺筋症および子宮筋腫を認めた.子宮筋腫は8.7cm大で,拡散強調画像で軽度高信号とADC mapで一部低信号を呈したため悪性を否定できなかった.全身検索のため造影CT検査を施行したところ,多発肺動脈血栓と左下肢静脈血栓,12×25mm大の嚢胞状に腫大した右傍大動脈リンパ節を認めた.抗凝固療法および下大静脈フィルター留置後に腹式子宮全摘術と両側卵管摘出術と右傍大動脈リンパ節生検を施行した.術中所見では,骨盤および腹腔内に内膜症病変を認めなかった.術後病理診断では,子宮筋腫と子宮腺筋症に悪性所見を認めなかった.腫大リンパ節に内膜症病変を認めた.子宮内膜細胞がリンパ管や血管を介して骨盤外臓器に出現することが報告されていることを考慮すると,孤立したリンパ節に子宮内膜症が発生したものと考えられた.今回は偶発的に発見されたが,嚢胞状に腫大したリンパ節病変を認めた場合,悪性疾患によるリンパ節転移のほかにリンパ節子宮内膜症を考慮する必要がある.
  • 糸瀬 昌克, 山口 真吾, 筑田 洵一郎, 安部 勇蔵, 鎌谷 宇明, 代田 達夫
    2023 年 83 巻 4 号 p. 272-276
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー
    含歯性嚢胞は比較的頻度の高い歯原性嚢胞であり,下顎智歯部と上顎犬歯部に好発するが,上顎洞内を満たす症例は稀である.今回われわれは,眼窩底に接する智歯を含み,上顎洞内を満たす含歯性嚢胞の症例を経験したので報告する.症例は25歳女性で,左側下顎智歯の抜歯依頼にて来院し,X線検査を行ったところ,左側下顎智歯は埋伏し,また左側上顎には眼窩底に接する智歯を含み上顎洞底から眼窩底に及ぶ34×32×21mmの不透過性病変を認めた.左側上下顎埋伏智歯および左側上顎含歯性嚢胞の臨床診断の下,全身麻酔下に埋伏智歯抜歯術および顎骨嚢胞摘出術を施行した.病変は眼窩底に接していたため,眼窩底に穿孔がないことを術中に内視鏡で確認した.病理組織学的診断は含歯性嚢胞であった.術後の経過に異常は認められていない.
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