昭和学士会雑誌
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83 巻, 5 号
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特集:高度急性期病院におけるリハビリテーションの役割
  • 鈴木 久義
    2023 年 83 巻 5 号 p. 277-278
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
  • 笠井 史人
    2023 年 83 巻 5 号 p. 279-285
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    高度急性期病院におけるリハビリテーション(以下リハ)は,回復期病院・生活期病院や診療所にスムーズに移行できるように準備する取り組みであり,その役割は重症患者に安全に介入して早期離床を進め,早期退院・転院を促して医療資源を効率的に利用することにある.昭和大学病院のリハ部門は迅速性においては十分と言えるが,一患者における実施数は改善の余地がある.適正な人員確保に向けて改善が必要である.遠隔ICU支援センターShowa eConnectやさまざまなデバイスに恵まれ,安全に効率よく早期離床に取り組めており,集中治療後症候群(postintensive care syndrome:PICS)を見据え,回復期・生活期に繋がるリハを展開している.COVID-19のパンデミックにも,専門リハ診療チームを結成しスタッフと入院患者の安全を守りながら直接的治療介入が行えた.周術期リハの効果実証として,食道癌患者について術前化学療法入院時点から全例介入し,術後回復,早期退院をめざすプログラムを行って術後在院日数の短縮を達成した.全手術に適用するのは容易ではないが,効率よい運用を多職種で協力して行うことで大きな効果を生むことが期待できる.高度急性期病院におけるリハは常にその形態を変えつつ進化している.更にその先へ進んでいくために,予防医療領域にまで踏み込む攻めのリハとして広がっていくだろう.
  • 田代 尚範
    2023 年 83 巻 5 号 p. 286-293
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    重症患者の生存率向上に伴い,ICU退室後の長期にわたる後遺症を有する患者の存在やその生活状況が明らかになってきた.退院後も続く身体・認知機能の障害や精神的な障害はICU生存患者の社会復帰や長期予後の障壁となっている.このような中,ICU治療における患者の苦痛やストレスなど,患者を中心とした痛み・不穏・せん妄管理に対し「成人重症患者に対する鎮痛・鎮静薬の使用に関するガイドライン(PADガイドライン)」が改訂され,この中で早期離床を目指したICUでのリハビリテーションに関する内容も組み込まれた.その後PADガイドラインは不動と睡眠に関わる問題が追加されたPADISガイドラインへ改訂され,鎮痛・鎮静管理の進歩によりICUにおける早期リハビリテーションは飛躍的に普及し,人工呼吸期間の短縮や日常生活動作の改善をもたらした.ICUにおける理学療法士の役割は,1)身体機能改善に向けた運動療法や早期離床,ならびに合併症の予防,2)具体的な運動プログラムの立案と実施の調整,3)患者のアセスメント,4)運動時のモニタリング,5)効果のフィードバックと多岐にわたる.重症疾患をのりきった後,やり残していた人生の計画を実現するため,患者がどのように生きるかにしっかり耳を傾け,身体機能の回復支援やさまざまな合併症への対策を多職種で連携して実践することが,退院後の長期予後を明るいものへ変えていくものと考える.今後さらに高齢者人口が増加してくる中,集中治療後症候群に対する確立した治療戦略は未だ明らかになっていない.これからは高齢者の特性に合わせ,長期予後を見据えたきめ細やかな理学療法介入が求められる.
  • 駒場 一貴, 青木 啓一郎
    2023 年 83 巻 5 号 p. 294-300
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    厚生労働省は地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進し,その中で作業療法士が重要な役割を果たしている.地域の支援体制には医療が含まれ,昭和大学附属病院はその一環として地域で重要な役割を担う医療機関である.本稿では,昭和大学の特色である急性期を対象とした作業療法士の実践について考察する.作業療法は,「作業」,すなわち人々が目的や価値を見出す生活行為を中心とした治療,指導,援助である.この観点から,急性期作業療法の役割は,患者が自分らしい生活を早期に獲得できるように,実践的な評価とアプローチを提供することであると筆者らは認識している.日本における作業療法士の実践内容や介入体制には大きな差異があり,それはこの分野がまだ発展途上であることを示している.したがって,本稿を通じて,多職種の専門家には急性期における作業療法士の役割について理解を深めていただきたい.また,急性期で従事する作業療法士に対しては,本稿が実践の参考になることを期待している.
  • —2年間のスーパー救急の作業療法実施状況—
    古賀 誠, 小林 崇志, 佐藤 範明
    2023 年 83 巻 5 号 p. 301-308
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    昭和大学附属烏山病院は,世田谷区に位置し近隣の地域密着型の中核的精神科病院の役割を担い,精神科救急病棟(以下,スーパー救急)を94床有する.作業療法士はスーパー救急に出入りして,集団をベースとした作業療法(以下,OT)を展開する.今回,スーパー救急における2年間の入院患者の概要をまとめ,入院患者のOT利用状況から急性期におけるOTの役割について考察した.2年間の入院患者は1,006名であり,強制入院患者が約80%を占めた.退院患者617名のうち,OT処方を受けたものは434名(70.3%)であった.90日以内に536名(86.9%)が退院していた.退院した患者の多くがOTを利用していたことが判明した.スーパー救急という精神科医療の入口においては,自らを整理し,他者とのつながりや小さな成功体験を行い,自分の存在を肯定するための模擬社会といえる集団をベースとしたOTのなかに自然と溶け込み,回復感をもち,今後の治療を継続する準備性を整えることが優先される.
  • 一関 千聡, 武井 良子
    2023 年 83 巻 5 号 p. 309-316
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    急性期リハビリテーションにおける言語聴覚療法の対象領域は,摂食嚥下障害,構音障害,失語症を始めとする高次脳機能障害などによって起こるコミュニケーション障害への対応など多岐にわたる.藤が丘病院リハビリテーション室に言語聴覚士が配属されたのは2019年からであり,年々処方数は増加傾向にある.藤が丘病院における言語聴覚療法の現状を明らかにするために 2022年度の言語聴覚療法の実績調査を行った.その結果,言語聴覚士1名が1年間に依頼を受けた患者数は575名であり,対象となる原疾患も多様であることが明らかとなった.初回介入時に対象とした障害は摂食嚥下障害が最も多く,急性期摂食嚥下障害に対するリハビリテーションのニーズが高まっていることが伺えた.発症から言語聴覚士の初回介入時期については,67%の患者に発症後1週間以内に介入しており,早期から言語聴覚療法が必要とされることが明らかとなった.食事やコミュニケーションに支障をきたす急性期患者は多く,言語聴覚療法の需要は高い.しかし,急性期病院における言語聴覚士は少ないのが現状であり,その中で患者へ提供する医療の質を維持・向上させるためには,他職種との連携をより強化することや,少ない介入頻度でも高い効果が得られる方法を模索することが必要であると考える.また,昭和大学附属病院において急性期言語聴覚療法をより活発に実施していくためには,急性期リハビリテーションを担うことができる言語聴覚士の教育に取り組むことが急務である.さらに,急性期言語聴覚療法の必要性を示していくために,急性期言語聴覚療法の有効性を明らかにするためのデータを蓄積していくことが必要である.
原著
  • 〜ビタミンDは慢性痛患者の睡眠障害を改善する〜
    武冨 麻恵, 福田 悟, 信太 賢治, 大江 克憲, 米良 仁志
    2023 年 83 巻 5 号 p. 317-324
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    難治性の慢性痛患者では睡眠障害を合併している例も少なくない.睡眠障害にはビタミンD(VD)不足が関与していることが報告されているが,日本ではVD不足の注目度は低く,慢性痛患者の睡眠障害に対する補充療法の報告もほとんどない.本研究の目的は,VD補充療法による睡眠と慢性痛への影響を明らかにすることである.2018年8月〜2022年7月の間にペインクリニック外来を受診した,当科で神経ブロック治療や薬物治療を行っても痛みが継続している罹患3か月以上の難治性慢性痛患者を対象とした.主要評価である痛みはNumerical Rating Scale (NRS)で評価した.睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票日本語版を用いて評価し,副次評価項目とした.補充療法は血中25 (OH) Dが20ng/ml以下の場合,VDサプリメント1,000IU/日を3か月間服用した.3か月後に20ng/ml以下であれば2,000IU/日に増量し,さらに3か月後に測定を行い,その効果を確認した.慢性痛患者45例中39例にVD不足があり,補充療法満期まで追跡できた28例のデータを用いて解析を行った.VD補充療法後には,全例でVD不足は改善し,NRSは5.8±1.6から5.6±1.9と慢性痛が有意に改善するという結果は得られなかった(P=0.73)ものの,睡眠スコアが7.9±3.2から7.0±3.8へ有意に改善した(P=0.04).また補充療法後の痛みスケール(NRS, SF-MPQ-2)と睡眠スコアには正の相関があり(r=0.46, (p=0.01),r=0.61,(p<0.01)),睡眠の質が悪いと痛みが強かった.全例において有害事象の発生はなかった.VD補充療法は慢性痛を有意には改善しなかったが,慢性痛を伴う睡眠の質を安全に改善させた.
  • 今井 敦, 小澤 由季子, 新城 秀典, 小林 玲, 村上 幸三, 加藤 正子, 新谷 暁史, 豊福 康介, 西村 恵美, 原田 堅, 師田 ...
    2023 年 83 巻 5 号 p. 325-333
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    局所進行非小細胞肺癌の根治的治療において放射線治療は重要である.照射野に,かつては予防的に領域リンパ節を含めていた(Elective Nodal Irradiation:ENI)が,近年は省略される(Involved field radiation therapy:IFRT)傾向にある.当院での局所進行非小細胞肺癌の治療成績の解析を通してそこに問題点はないか探った.2015年9月から2021年12月までに当院で診断され化学放射線治療または放射線治療が行われたⅡB~ⅢC期の非小細胞肺癌50例について解析したところ,全生存期間は中央値38.5か月,2年生存率64.2%,無増悪生存期間は中央値14.2か月,2年無増悪生存率32.1%と良好な結果であり,有害事象も少なく当院での治療は適切なものと考えられた.また,当院でのENI症例とIFRT症例の間で2年生存率,2年無増悪生存率に有意差は認められなかった.一方で照射野外局所リンパ節再発が,上葉原発のIFRT症例2例に認められた.予防的リンパ節照射の必要性を検討すべき症例が確実に存在することが示された.上葉原発肺癌であれば照射される肺体積が許容される範囲で予防的に領域リンパ節も含める必要性が示唆された.
症例報告
  • 山下 莉奈, 寺田 知正, 東 みなみ, 大塚 康平, 江畑 晶夫, 高瀬 眞理子, 長谷部 義幸, 宮沢 篤生, 水野 克己
    2023 年 83 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    ドナーミルク(以下DM)は早産児において自母乳が使用できない場合に推奨される.DMを用いて早期から経腸栄養を行うことが可能となり壊死性腸炎をはじめとしたさまざまな疾患の罹患率が低下することが知られている.一方で,DMのみによる長期の経腸栄養は体重増加不良につながる.今回,私達は自母乳を使用できない児に対して,DM栄養を修正26週から修正34週まで使用した超低出生体重児を経験した.母親は先天性心疾患のため搾乳を行うことが困難なため,DMによる経腸栄養となった.修正30週には−2.5SDと体重増加不良を認めた.修正34週に低出生体重児用ミルクに変更したところ,体重増加は改善した.経過中,壊死性腸炎に罹患することなく,未熟児網膜症も治療を要さなかった.自母乳が使用できない場合のDM栄養は,多くの疾病リスクを軽減することから今後も極低出生体重児をはじめとした早産児の栄養として重要である.一方DMの長期使用に伴い体重増加不良をきたしたことから,DM使用中の母乳強化方法の改善が必要と考えられた.海外では人乳由来の母乳強化を行う完全人乳栄養(exclusive human milk-based diet:EHMD)を行うことで良好な成績を収めており,今後日本でも人乳由来の母乳強化剤を使用することで,より良い栄養管理を行うことができる可能性がある.
  • 三上 里枝子, 峯尾 アヤ, 川嶋 昌美, 宮田 幸子, 上田 邦枝
    2023 年 83 巻 5 号 p. 340-347
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    新型コロナウィルス感染症(以下,COVID-19陽性)の褥婦は新生児への感染予防のため,母乳育児にとって重要である早期からの母子接触,母子同室が困難な状況にある.A大学病院においても,新生児への感染の予防的措置として母子分離をしている.このような状況下において効果的な母乳育児支援の方法について検討する.本症例は30歳の1妊0産の褥婦,COVID-19陽性のため妊娠38週5日に腹式帝王切開術で2,973gの女児を娩出した.COVID-19陽性と診断され多くのストレスを抱えていた褥婦に対し,思いの傾聴をしながら母親としてできる搾乳という行動を促せたことは,母乳育児へ向き合うまでの支援として効果的であったと考える.また,母乳育児を継続するための支援として,①自己決定の尊重,②褥婦が母親としてできることを褥婦自身に認識できるようにする関わり,③母乳育児の困難感に対するコーピング行動への支援,④産後直後から生後4か月までの切れ目のない継続的な支援が重要であると考えられた.
講演
第390回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
第391回昭和大学学士会例会(薬学部会主催)
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