昭和大学臨床薬理研究センターで実施された健康成人男性対象の第Ⅰ相試験において,8泊9日の入院期間中に血清トランスアミナーゼ(TA)上昇例を認めた.TA上昇は入院期間中のエネルギーの過剰摂取に由来すると考え,エネルギー摂取量の調節により基準値逸脱の発現を抑制し得た事例を報告する.入院期間中に2,500kcal/dayを摂取した群(コホート1, 2)では血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)値とも,入院中に基準値逸脱を認めた.一方,入院期間中の摂取エネルギーに調整を加えたコホート3(全期間2,200kcal/day),コホート4(2,500kcal/dayで開始し入院5日目に2,200kcal/dayに減量),コホート5(2,200kcal/dayで開始し入院6日目に2,300kcal/dayに増量)では血清AST,ALT値の基準値逸脱は認めなかった.入院管理下の健康成人男性に生じる血清TA値の上昇は,アンバランスなエネルギー収支により生じると考えられた.入院期間中の適切なエネルギー摂取により,試験薬との因果関係のない臨床検査値の変動を抑制できると考えた.
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