昭和学士会雑誌
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77 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特集:女性医学:最近のトピックス
総説
  • 野部 浩司, 野部 裕美, 加園 恵三
    2017 年 77 巻 4 号 p. 385-396
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    哺乳類における細胞の多くは,機能発現時にさまざまな力を発生させる.筋肉細胞はもちろん,分泌細胞や免疫系細胞などの非筋細胞においても力を発生することが予想されている.しかしながら非筋細胞による収縮反応を検出することは,その発生張力が極めて微弱であることから困難とされてきた.近年,特定の受容体やチャネル,細胞内因子に変化を加えた培養細胞が容易に調製できるようになり,その変化がどのように細胞機能に影響するかについて興味の対象となっている.そのため,目的とする細胞因子とその機能の関係を理解する一つの指標として非筋細胞収縮の評価が有用であると期待されるが,その有効な評価方法は確立されていない.本総説においては,非筋細胞収縮のためにこれまで試みられてきたいくつかの手法について紹介し,著者らが線維芽細胞を用いて進めてきたコラーゲンファイバー法による収縮測定法の詳細について解説する.また,コラーゲンファイバー法による知見と問題点を挙げ,この方法が非筋細胞における細胞機能や細胞内情報伝達系を理解する上で有用な手法であることを提案する.
特別講演
研究紹介講演
資料
  • ―病棟看護師が抱く実習指導に対する認識や仕事と実習指導のバランスのとり方に関する意識調査―
    佐々木 仁美
    2017 年 77 巻 4 号 p. 415-422
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    大学病院は,学部と臨床の連携を強化し,学生の実習指導に取り組んでいる.このことから,教員や実習指導者だけでなく,病棟看護師も学生の指導に関わることが多い.しかし,病棟看護師の実習指導に対する認識や業務と実習指導とのバランスのとり方,あるいは臨床教員が実習指導者や,病棟看護師に対し,学生が主体的に実習できる支援内容や方法について検討した報告は認められない.これらを明らかにすることによって病棟看護師が,看護学生に対して効果的な実習指導への参加を可能にするとともに,実習指導がよりよくできる支援内容や方法の示唆を得たいと考えた.本研究では,大学病院に勤務する実習指導に携わった経験のあるクリニカルラダーレベル2以上の病棟看護師で,同意が得られた23名に,半構成的面接を実施した.その結果,病棟看護師は実習指導に対して,【実習指導に対する不安・とまどい】【余裕がなく,実習指導に関心が薄い】【指導者との連携不足】【実習調整や指導の役割を意識した関わり】という認識を持っていることが分かった.このことから,臨床教員や実習指導者は,病棟看護師に対して,指導者役割の一部を担う役割モデルとして機能していること,また,情報共有や連携,指導を通して成長していることをフィードバックし,1)学生指導における役割の明確化,2)実習目的や目標の共有,3)指導者・臨床教員との連携,4)指導を通しての学び・達成感の共有が重要であることが示唆された.
  • —手術室看護師が感じた手術室見学実習記録用紙を用いた指導の効果—
    大滝 周, 大木 友美, 加藤 祥子
    2017 年 77 巻 4 号 p. 423-433
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    周手術期実習では,手術前,手術中,手術後の経過を辿る患者を理解するために病棟だけではなく手術室での実習が組み込まれている.手術室実習の多くは患者が手術を受けている数時間で完結となり,実習指導は手術室看護師に一任されていると言われている.本研究では,看護学生が意図的な思考で手術室見学実習に臨めるように作成された手術室見学実習記録用紙(以下,記録用紙)を用いた指導の状況および手術室看護師が感じた記録用紙を用いた指導の効果を調査した.調査方法は,38名の手術室看護師に対して記録用紙を用いた指導に関する自記式無記名質問紙調査であった.分析対象を本調査に同意が得られた34名のうち1回以上記録用紙を用い指導を行った手術室看護師とし,単純集計および質的帰納的分析を行った.本研究は筆者らが所属する機関である倫理委員会の承認を得た(No. 214).手術室看護師38名中34名(回収率89.5%)から回答を得た.本研究の結果より,手術室看護師は看護実習指導者講習会を受講していない手術室看護師が指導に携わらなければいけない状況の中で,兼任という複数の役割を遂行しながら看護学生へ指導していることが明らかとなった.また,記録用紙を用いた指導に関する自由記述から得られた記述内容より,186コード,38のサブカテゴリー,12のカテゴリーを抽出した.その結果,記録用紙の流れに沿った指導が及ぼした効果として,『手術室看護師が感じた指導者側の効果』,『手術室看護師が感じた学生側の効果』『手術室看護師の指導への思い』に関する効果が明らかとなった.
原著
  • 丹澤 盛, 笠原 慶太, 酒井 翔吾, 黒田 佑介, 藤崎(工藤) 恭子, 蘒原 洋輔, 堀内 一哉, 石井 源, 松倉 聡, 門倉 光隆
    2017 年 77 巻 4 号 p. 434-441
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    2016年の本邦において,肺がんは全がん死亡数の中で一番目に多い疾患である.本邦の肺がん検診では,非高危険群に対する胸部X線検査,および高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法が行われている.当院が位置する横浜市都筑区の肺がん検診の結果を,横浜市全域および全国集計の結果と比較しながら,都筑区における肺がん検診の動向を検討した.検診受診者数および受診率は経年的に増加傾向にあり,医療従事者および都筑区民の肺がん検診に対する意識向上が窺い知れる.要精検とされた患者群の精査結果では,陳旧性炎症性変化と非結核性抗酸菌症を含む気管支拡張症が多く,次いで間質性肺炎が多かった.また,肺がんを疑う症例の多くは当院に紹介されており,都筑区における当院の信頼度の高さを示す結果となった.精度管理指数である要精検率は,11%から8%へと経年的に低下傾向である.フィルム出力からデジタル出力に移行し階調調整ができるようになったことで,従来から読影が困難とされてきた部位が評価しやすくなったことが理由の1つとして重要である.厚生労働省の精度管理目標として提示している要精検率3%に比し,都筑区の要精検率は高い値を推移しているが,胸部CTにて精査される症例が多いゆえ,肺がん発見率は全国結果に比し高い値を示していると考えられる.しかし,肺がん検診における読影者のd判定,e判定の認識および肺がん発見率の集計方法に,肺がん検診ガイドラインと検診実施地域間で解離が存在することが懸念され,さらなる検討が必要であると考えられた.
症例報告
  • 櫛橋 幸民, 勝田 秀行, 池田 賢一郎, 江川 峻哉, 池谷 洋一, 齋藤 芳郎, 倉澤 侑也, 木村 百合香, 小林 一女, 嶋根 俊和
    2017 年 77 巻 4 号 p. 442-447
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    結核は全身のさまざまな臓器に多彩な症状を引き起こす感染症で,結核を疑って精査を進めない限り診断に至ることが難しい疾患である.今回われわれは,非典型的な頸部嚢胞性疾患に対して診断と治療を兼ねて摘出術を施行した結果,病理組織学的診断にて結核性肉芽腫であった症例を経験した.非典型的な病変に対しては結核性病変を鑑別の1つに挙げることが重要である.頸部の結核性肉芽腫について文献的考察を加え報告する.
  • 外谷 衣都子, 鈴木 立紀, 龍 家圭, 山崎 太義, 竹ノ下 祥子, 肥田 典子, 三邉 武彦, 内倉 健, 内田 直樹, 小林 真一
    2017 年 77 巻 4 号 p. 448-454
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    昭和大学臨床薬理研究センターで実施された健康成人男性対象の第Ⅰ相試験において,8泊9日の入院期間中に血清トランスアミナーゼ(TA)上昇例を認めた.TA上昇は入院期間中のエネルギーの過剰摂取に由来すると考え,エネルギー摂取量の調節により基準値逸脱の発現を抑制し得た事例を報告する.入院期間中に2,500kcal/dayを摂取した群(コホート1, 2)では血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)値とも,入院中に基準値逸脱を認めた.一方,入院期間中の摂取エネルギーに調整を加えたコホート3(全期間2,200kcal/day),コホート4(2,500kcal/dayで開始し入院5日目に2,200kcal/dayに減量),コホート5(2,200kcal/dayで開始し入院6日目に2,300kcal/dayに増量)では血清AST,ALT値の基準値逸脱は認めなかった.入院管理下の健康成人男性に生じる血清TA値の上昇は,アンバランスなエネルギー収支により生じると考えられた.入院期間中の適切なエネルギー摂取により,試験薬との因果関係のない臨床検査値の変動を抑制できると考えた.
  • 石川 琢也, 池田 裕一, 岡本 奈央子, 児玉 雅彦, 秋山 康介, 岡本 義久, 外山 大輔, 西岡 貴弘, 藤本 陽子, 磯山 恵一
    2017 年 77 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    デング熱は蚊が媒介するデングウイルスの感染症であり,主に熱帯・亜熱帯地域で流行している.日本では長らく輸入感染例のみ報告されてきたが,2014年8月,海外渡航歴のない国内発症のデング熱症例が報告された.当院では同時期にデング熱の2小児例を輸入感染例と国内感染例を1例ずつ経験したので報告する.症例1は12歳男児でタイに渡航歴がある輸入感染例,症例2は11歳女児で代々木公園に訪問歴のある国内感染例であった.2例とも全身倦怠感が強く入院加療を行い,輸液療法で軽快し退院した.発熱と全身倦怠が強い患者では,渡航歴がない場合でもデング熱を鑑別すべきであると考える.
  • 櫛橋 幸民, 藤居 直和, 勝田 秀行, 池田 賢一郎, 江川 峻哉, 齋藤 芳郎, 倉澤 侑也, 鴨志田 慎之助, 北嶋 達也, 嶋根 俊 ...
    2017 年 77 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    鰓原性嚢胞は胎生期の鰓溝性組織の遺残から発生し,比較的稀な疾患である.今回われわれは反復性の頸部膿瘍に対して耳下腺管造影により耳下腺管から交通する嚢胞性疾患が判明し,病理組織学的所見から嚢胞壁に線毛円柱上皮を認め鰓原性嚢胞と診断した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は13歳の男児で幼少期より左耳下部腫脹を繰り返していた.X年に近医より内服治療にて改善しないため当科を紹介され受診した.頸部造影CT検査にて左耳下部に膿瘍形成を認め,保存的治療にて改善したが約1年間で5回の膿瘍形成を繰り返した.原因検索目的で耳下腺管造影を施行したところ耳下腺管と交通する嚢胞性病変を認めた.小児の頸部膿瘍の原因として頸部リンパ節からの炎症が多いが,反復する耳下部の膿瘍には鰓原性嚢胞が鑑別として挙げられる.瘻管がはっきりと認められない場合は本症例のように耳下腺管造影と造影後のCT検査が有用であると考えられた.
  • 折坂 勝, 土肥 聡, 八木 由里子, 河野 春香, 奥山 亜由美, 瀬尾 晃平, 秋野 亮介, 中里 佐保子, 松浦 玲, 加藤 明澄, ...
    2017 年 77 巻 4 号 p. 467-474
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル フリー
    胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma, 以下ASPS)は稀な軟部肉腫疾患で,女性性器原発は大変稀である.今回,われわれは子宮頸部原発の胞巣状軟部肉腫を経験したので報告する.症例:50歳,2経妊1経産.子宮頸管ポリープ間質に異型細胞を認め,当院へ紹介受診.画像所見から悪性腫瘍が疑われる頸部腫瘤3cmを認め,頸管内膜組織診からASPSが疑われたため,準広汎子宮全摘術および両側付属器摘出術を施行.楕円形核と淡明な胞体を有する異型細胞の胞巣状増殖,TFE3(Transcription Factor E3)免疫染色陽性からASPSと最終診断された.術後13か月の時点で再発なく経過している.
第336回 昭和大学学士会例会(医学部会主催)
第337回 昭和大学学士会例会(薬学部会主催) 
第338回 昭和大学学士会例会(歯学部会主催)
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