昭和学士会雑誌
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76 巻, 6 号
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最終講義
資料
  • 樋口 恵子, 上條 由美, 的場 匡亮, 林 宗貴, 柴田 雅子
    2016 年 76 巻 6 号 p. 690-697
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    全国的に救急車出動件数は増加しており,救急搬送に要する時間が延長している.横浜市内の救急活動においても4回以上医療機関に照会をして応需に至らなかった件数が2004年の1,107件から,2008年には2,606件と2倍以上に増加し,現場到着から搬送開始までの時間が年々増加していることが報告されている.今回,救急車の応需件数を増加させることを目的として救急車受け入れ体制を変更した.本研究は,体制変更前後の応需件数と不応需件数,体制変更後の時間・曜日別,診療体制別の不応需率を調査し,今後の課題を検討した.救急車応需体制を変更する前(2011年6月1日から2012年5月31日)と後(2012年6月1日から2013年5月31日)の前後1年間の救急隊から二次救急(Emergency Room,以下ERと略す)に救急車受け入れ要請があった事例について調査した.体制変更により,救急車受け入れ要請件数は4,843件から6,260件に増加し,応需件数は3,365件から4,240件へ増加した.救急車不応需率は30.2%から32.2%と変化は認められず,入院件数は,変更前1,853件(55.0%)から変更後1,618件(38.2%)に減少した.このため体制変更後の,時間・曜日別,シフト別での不応需率,診療体制別の人員配置との関係性と業務内容の違いを見るために,救命救急センターに専従する医師と初期臨床研修医が担当しているAシフトと,各診療科が当番制でER担当医師として臨床研修医とともに診療を行っているBシフトに分けて検討した.全体的に不応需率はAシフトよりBシフトの方が高く,特に不応需率が高いのは休日の夜間のBシフトの時間帯であった.体制変更後の救急車不応需理由の第1位は「処置多忙・他の救急患者の対応等」第2位が「近医・かかりつけ医へ,緊急性なし」,第3位が「ベッド満床」であった.今回の救急車応需体制変更が,救急車の受け入れ要請件数と応需件数増加に影響を与えた要因は,院内の情報伝達が円滑に行われるようになったためと思われる.今後の不応需率抑制への課題としては,Bシフトへの休日夜間のバックアップ体制を強化することが考えられる.今回の体制変更前後の不応需率,不応需理由などをデータ化したことで,救急車の応需状況を把握することができるようになった.データを可視化することは,問題意識を高め業務改善の手助けになったと思われる.
原著
  • ―X線写真計測値を用いた検討―
    鈴木 貞興, 筒井 廣明
    2016 年 76 巻 6 号 p. 698-705
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    体幹機能障害に対し,理学療法を施行する際,骨盤アライメントと腰椎アライメントの関係について考慮することが重要項目の一つであり,この関係については仙骨角と腰椎前弯角に関連するパラメーター間の関係から論じられることが一般的である.本研究の目的は,一般的に採用されているパラメーターに腰椎傾斜角と寛骨傾斜角,骨盤並進を示すパラメーターを加えて腰椎アライメントと骨盤アライメントの関係を再検討し,仙骨角を規定する要因が何であるかを検討することである.2000年10月1日から2011年11月30日に,メディカルチェックを目的に整形外科を受診した,疼痛などの愁訴を持たないスポーツ選手43名である.X線写真撮影時の平均年齢は男性28.8±4.7歳、女性は26.1±4.3歳であった.受診時に撮影した腰部のX線写真と全下肢側面像から,腰椎前弯角,腰椎傾斜角,仙骨角,Pelvic Angle (PA),寛骨傾斜角,骨盤並進の度合いを示す下肢傾斜角を計測した.各変数間の単相関分析,および仙骨角を目的変数,他のパラメーターを説明変数とした重回帰分析を用い,腰椎アライメントと骨盤アライメントの関係を検討した.腰椎前弯角と仙骨角(r=0.91),腰椎傾斜角と仙骨角(r=0.46),腰椎傾斜角とPA(r=-0.59),腰椎傾斜角と下肢傾斜角(r=0.41),寛骨傾斜角とPA(r=0.60),寛骨傾斜角と腰椎傾斜角(r=0.47)に有意な相関関係を認めた.重回帰分析の結果,仙骨角を規定する要因として腰椎前弯角と腰椎傾斜角が抽出された(p<0.01).腰椎前弯角と腰椎傾斜角の2要因が仙骨角を規定しており,PA,寛骨傾斜角,下肢傾斜角との関係は認められなかった.
  • 蘒原 洋輔, 笠原 慶太, 黒田 佑介, 諸星 晴菜, 藤崎 恭子, 堀内 一哉, 丹澤 盛, 石井 源, 鹿間 裕介
    2016 年 76 巻 6 号 p. 706-711
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者の重症度,発作強度の判定には自覚症状のみならず,スパイロメトリーやピークフロー測定などの客観的指標を用いることが望ましいが,強制呼気をさせるスパイロメトリーは再現性が乏しく,患者負担も大きい.近年では安静換気時に強制オッシレーション法を用いて呼吸抵抗(Rrs:respiratory resistance)・呼吸リアクタンス(Xrs:respiratory reactance)を測定するモストグラフが開発され臨床で使用されている.気管支喘息患者に対するスパイロメトリーとモストグラフの相関関係をみるとともに,経過観察に有用なモストグラフのパラメーターを検討した.対象は2011年9月〜2013年9月まで昭和大学横浜市北部病院呼吸器センター喘息専門外来を受診し,気管支喘息と診断された患者計55名を対象に診療録から後方的に解析をした.スパイロメトリーのパラメーターとして1秒量(FEV1:forced expiratory volume in 1 second)1秒率(FEV1%=FEV1÷努力肺活量FVC×100),%1秒量(%FEV1=FEV1÷FEV1予測値×100),%V50(a forced expiratory flow at the FVC50%),%V25(a forced expiratory flow at the FVC25%),モストグラフのパラメーターとして,R5,R20,R5-20,X5,Fresを解析対象とした.スパイロメトリーと最も高い相関を認めたのは呼吸リアクタンスがXrs=0となる共振周波数(Fres:resonant frequency)であった.経過観察時においてFEV1%とFresの変化率はP<0.001の相関関係を認め,Fresの変化率はFEV1%と比較し大きかった.気管支喘息患者の経過をみていくうえで,安静換気で測定できるFresは有用な指標になると思われる.
  • 加藤 優, 水谷 徹, 飯塚 一樹, 久保 美奈子, 阪本 有, 大塚 成人, 江連 博光, 井上 由理子
    2016 年 76 巻 6 号 p. 712-719
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    動脈の中膜に存在する弾性線維elastic fiber(EF)の定量化についてはEF数の計測という手法を用いた報告がいくつかある.しかし,市販の画像解析システムによる簡便な定量化の手法は確立されていない.本研究は市販の画像解析システムを用いて,EFを簡便に定量化する手法を確立しようとするものである.Elastica van Gieson(EVG)染色の前田変法を施した総頸動脈の横断切片を顕微鏡に接続したデジタルカメラで撮影した.2種類の画像にしきい値の決定法の違いによる3つの画像処理を行い,各処理における計測領域内のEFの面積比を比較した.各画像処理のうち,計測領域サンプル全体のEFだけが抽出される輝度値を調べ,それをしきい値として2階調化する方法がデータのばらつきが小さく,EFの定量化に最適であった.市販の画像処理ソフトであるAdobe Photoshop®や一般的な撮影機材または光学機材を用いて画像解析システムを構築し,血管壁などに存在するEFを簡便に定量化する手法が確立された.この手法の確立により,頸動脈に存在する弾性線維の部位別の含有量が明らかになり,動脈硬化や血栓症の病態や発症機序を解明するうえで有益な手法であると期待される.
  • 阿部 光香, 阿久津 靖, 恩地 由美, 手塚 美紀, 矢幡 由佳子, 河村 光晴, 小林 洋一, 三邉 武彦, 内田 直樹, 小口 勝司, ...
    2016 年 76 巻 6 号 p. 720-726
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    記憶障害・見当識障害・実行機能障害などの認知症中核症状のほかに出現する徘徊・妄想・せん妄などの周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)(以下BPSD)は,摂食障害や嘔吐・下痢・脱水など引き起こし,生命に危険を及ぼす.しかしながら一見自覚症状や身体所見が明らかでない認知症患者の在宅管理は,精神症状の緩和により,BPSD症状への進行を防ぐことが最優先され,顕著な身体的異常が出現するまで,さまざまな検査が後回しになりがちである.本研究の目的は,明らかな身体的症状のないBPSD症状のある進行した認知症患者において,血清電解質と心電図検査の異常を明らかし,血清電解質血清カリウム値・心電図異常特に突然死の原因になるQT値測定による身体的異常の早期発見の重要性を評価することであった.2014年7月から12月まで明らかな身体症状や所見のない,主に行動異常および心理症状であるBPSD周辺症状の悪化で昭和大学烏山病院認知症病棟に入院した52例(82±7歳,女性比51.9%)を対象として,入院時および入院3か月後で血液所見と心電図上の心拍数補正QT時間(QT corrected for heart rate: QTc)の変化を比較した.入院時血清電解質は,ナトリウム139±3mEq/l,カリウム4.0±0.5mEq/l,クロール104±3mEq/lであり,低ナトリウム血症(≤135mEq/l)は3例(5.8%),低カリウム血症(≤3.5mEq/l)は11例(21%)を示したが,高ナトリウム血症は認めなかった.入院時心電図上のQTc延長(≥450msec)は5例(9.6%),低カリウム血症の2例(18.2%)がQTc延長を示した.低カリウム血症の有無は,年齢,性別,生活習慣病,脳心血管障害の既往,アルブミン,BUN,Cr,BUN/Cr比,外来処方薬剤の既往で差がなかった.3か月後にはすべての患者でBPSDが改善した.入院時低カリウム血症11例は入院3か月後,血清カリウム値が平均3.3mEq/lから3.9mEq/lへ改善し(p<0.01),入院時低カリウム血症を示さなかった41例と差を認めなくなった.入院中カリウム剤投与のない50例中抑肝酸投与13例は,非投与37例に比べ入院3か月後の時点で,血清カリウム値が低値(平均3.7±0.5mEq/l vs 4.0±0.5mEq/l,p<0.05)を示した.入院時QTc間隔は抑肝酸投与の有無で差がなかったが(420±19ms vs 423±29ms,p=0.61),入院3か月後抑肝酸投与継続例で延長した(平均420msから430ms,p<0.05).明らかな身体症状のない進行した認知症患者にとって,血清カリウム値と心電図QTc間隔の異常が認められ,血清電解質と心電図検査による定期的測定評価が重要であると考えられた.
  • 吉川 泰司, 中村 正則, 助崎 文雄, 澤田 貴稔, 宮岡 英世, 稲垣 克記
    2016 年 76 巻 6 号 p. 727-737
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    小児期の保存療法に抵抗した発育性股関節形成不全に対して,観血的に三宅の広範囲展開法で整復した症例の長期術後経過を検討した.1992年から,当科で広範囲展開法を施行した手術時年齢が3歳以下の症例で,14歳以降まで経過観察が可能であった22例24股を対象とした.全例が女児で,手術時平均月齢は20か月,調査時平均年齢は17歳で,経過観察期間は平均189か月であった.追跡調査率は90%であった.最終診察時に寛骨臼形成不全が軽度であったSeverin分類I,II群に該当するものは17股70%であった.最終診察時に骨頭変形が残存した重症例のうち,Kalamchi&MacEwen分類II,III,IV群で大腿骨頭壊死が術後に生じたと考えられたものは3股12.5%であった.関節症変化は3股12.5%に認められた.術後に行われた補正手術は4股であった.6歳時から最終診察までの間にSeverin分類III群からII群へ臼蓋被覆改善を認めた症例が存在し,就学前の股関節補正手術は慎重に行うべきであると考えられた.今後,乳幼児の股関節脱臼治療の成績を向上させるためには,脱臼の早期診断,術前の保存療法の改善,手術侵襲の低減と手技の改善が必要である.
  • ―投与速度の適正化の試み―
    八木 仁史, 向後 麻里, 氏家 秀太, 佐藤 千秋, 玉木 大輔, 林 誠, 佐々木 忠徳
    2016 年 76 巻 6 号 p. 738-744
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    脂肪乳剤には適切な投与速度(0.1g/kg/hr以下)があるにもかかわらず,処方時に投与速度の指示があることは少ない.脂肪乳剤の適正使用,特に投与速度の適正化を推進するため,脂肪乳剤の使用実態を調査した.さらに,各医療スタッフへ脂肪乳剤に関する情報を提供し,その有用性を評価した.脂肪乳剤の使用実態を明らかにするため事前に医療スタッフを対象に脂肪乳剤に関するアンケート調査を実施した.アンケートの回収率は85.2%であった.アンケート結果より,脂肪乳剤の投与速度に関する理解不足が明らかとなった.そこで,情報提供活動として,NSTニュースの回覧,脂肪乳剤に関する勉強会の開催,脂肪乳剤の投与速度の提案等を行った.情報提供の有用性を評価するため,情報提供活動の前後で,脂肪乳剤処方における適正な投与速度の遵守率を比較した.適正な投与速度の遵守率は,情報提供前(18.7%)より情報提供後(64.7%)で有意に増加した(P<0.01).情報提供が脂肪乳剤の適正使用,特に投与速度の適正化に貢献したものと考える.
  • 本多 英彦
    2016 年 76 巻 6 号 p. 745-750
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンは融解温度域において,動的熱測定により複素比熱が測定される物質である.融解は一次相転移に分類される相転移である.熱力学において,一次相転移は相転移が完了するまで温度変化が起こらない相転移として定義され,吸収される熱量はすべて相変化に使われる.しかし,実際には,局所的な相変化により内圧の上昇等が起こり,相転移の進行が抑制され,温度変化を伴う場合がある.相転移の進行に必要な熱の吸収・放出を測定するのが動的熱測定であるが,相転移温度域において温度変化が観測され,かつ,相転移の進行が温度変化に対して時間遅れを示す,つまり,熱の吸収・放出が遅れを示す場合,比熱は複素比熱として測定される.相転移の進行が抑制される機構は物質ごとに異なる.ヒスタミンで複素比熱が測定される原因は動的熱測定だけでは解明できないため,本研究は偏光顕微鏡を用いたその場観察を行い,複素比熱の原因を考察した.融解温度域で顕微鏡観察を行うと,ヒスタミンは,融解により発生した液相の中に,結晶である固相が点在する相共存状態をとることが分かった.また,わずかに温度を変動させると,結晶の大きさもわずかに変動し,液相と固相の大きさの比率は新しい平衡状態へと変化した.比率の変化は,温度変化に対して時間遅れを示し,デバイ型緩和を示した.動的熱測定で得られた複素比熱もデバイ型緩和を示しており,両者の緩和強度の温度依存性と,緩和時間の値は良い一致を示した.したがって,複素比熱として測定された熱の吸収・放出の時間遅れは,融解温度域において液相と固相の共存状態をとることが可能なヒスタミンの,液相と固相の大きさの比率変化が温度変化に対して遅れを示すことに対応していると考えられる.
  • 佐賀 信之, 森田 哲平, 新井 豪佑, 徳増 卓宏, 幾瀬 大介, 石部 穣, 笹森 大貴, 横山 佐知子, 五十嵐 美紀, 横井 英樹, ...
    2016 年 76 巻 6 号 p. 751-759
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    2014年4月より2015年3月までの1年間に昭和大学附属烏山病院を初診し,DSM-IV-TRの診断基準によってADHD(注意欠如多動性障害)と診断された成人ADHD患者54名(男性30名,女性24名,平均年齢29.4±7.9歳)を対象とした.うつ病など他の精神障害の診断を受けているものは被験者54名中4名であった.被験者らに知的な遅れはなく平均15年の高等教育を受けていた.全被験者に対し,次の評価尺度を施行した.抑うつ症状については,SDS(Self-rating Depression Scale)を,不安症状についてはSTAI(State Trait Anxiety Inventory),ADHD症状の程度については,CAARS-S(The Conners' Adult ADHD Rating Scales),自閉症スペクトラム障害の症状の程度についてはAQ(Autism-Spectrum Quotient),知的機能についてはJART(Japanese Adult Reading Test-25)で評価を行った.その結果,被験者らの抑うつ症状は日本人の神経症圏における抑うつの度合いと同程度であった.不安症状は,STAIの段階IVに相当する高い不安であった.自閉症的傾向は健常人より有意に高かった.項目間の相関をSpearmanの相関係数を用いて解析を行うと,ADHD症状と抑うつ症状の間には,弱いが有意な正の相関がみられた.ADHD症状と不安症状の間には,中程度の有意な正の相関がみられた.本研究の被験者の多くは気分障害や不安障害の診断を受けていないが,それでも,被験者が有する不安症状や抑うつ症状の程度は,健康人のそれと比して高いものであった.さらに,ADHD症状が強い場合,不安症状や抑うつ症状が強くなる可能性があることが示唆された.
  • ―無作為化比較試験のネットワークメタ解析―
    安藤 浩一, 田中 明彦, 横江 琢也, 大西 司, 井上 紳, 相良 博典
    2016 年 76 巻 6 号 p. 760-767
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,軽症から中等症の気管支喘息患者において,ブデソニド/ホルモテロール合剤発作時頓用療法の,従来の喘息療法に対する非劣性を検証することである.われわれは,軽症から中等症の気管支喘息患者において,喘息治療薬の定期吸入を行わないブデソニド/ホルモテロール合剤発作時頓用療法(NON-REG+OD-BUD/FM療法)の効果を,従来のブデソニドおよびブデソニド/ホルモテロール合剤定期吸入療法(発作時に短時間作用型β2刺激剤を頓用使用),(REG-BUD+OD-SABA療法,REG-BUD/FM+OD-SABA療法)と比較をするために,無作為化比較試験のネットワークメタ解析を行った.主要評価項目は,喘息症状のコントロール状態とした.各治療群間において,効果量と,95%信頼区間が算出された.効果量は喘息コントロールの指標の平均差(MD)で表された.各治療について,最良の治療である確率(probability being the best treatment)およびsurface under the cumulative ranking(SUCRA)を算出し,各治療群で比較した.NON-REG+OD-BUD/FM療法の,REG-BUD+OD-SABA療法,およびREG-BUD/FM+OD-SABA療法への非劣性は示されなかった(MD 0.06;95%CI –0.26, 0.39, MD 0.15;95% CI –0.03, 0.35).最良の治療である確率は,NON-REG+OD-BUD/FM療法,REG-BUD+OD-SABA療法,およびREG-BUD/FM+OD-SABA療法において,それぞれ5.5% 18.1% 76.4%であり,SUCRAは,0.2,0.4,0.9であった.軽症から中等症気管支喘息患者におけるNON-REG+OD-BUD/FM療法の,症状コントロールに対する効果は,従来療法と比べると限定的である可能性が示唆された.適応や患者選択については,慎重に検討されるべきと考えられた.
第63回昭和大学学士会総会
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