昭和学士会雑誌
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82 巻, 6 号
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原著
  • 須藤 英隼, 常岡 俊昭, 小野 英里子, 山田 真理, 髙塩 理, 岩波 明
    2022 年 82 巻 6 号 p. 453-459
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    アルコール依存症は,身体的・経済的・社会的な害を引き起こすにもかかわらず,治療を受けている患者は少ない.また低い治療継続率も課題となっており,その向上が予後の改善には必要である.治療継続のためには,飲酒によって家族,健康,財産などの喪失を自身で体験することで断酒に至る底つき体験が必要とされてきた.海外においては,Kirouacらが初めて底つき体験を定義して研究を実施した.本研究では,Kirouacらの先行研究を元に底つき体験を定義し,その有無によりアルコール依存症患者の背景や外来治療継続に違いがあるのかを比較検討した.2016年4月1日から2019年8月31日までに昭和大学附属烏山病院のアディクション専門外来に初診となり,アルコール依存症と診断された患者を対象とした.診療録を用いて性別,年齢,身体及び精神疾患の併存の有無,同居人の有無,初診時の就労の有無,生活保護受給の有無,当院初診時の住所が世田谷区内か区外か,集団治療プログラム参加の有無,自助グループ参加の有無,当院初診後の当院入院の有無,外来治療継続期間,そして受診前の底つき体験の有無について後方視的に調査した.底つき体験の有無を二群に分け,調査項目について単変量及び多変量解析を実施し,また外来治療継続に与える影響を検討するためKaplan-Meier法及びLog-rank検定にて生存分析,Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析を実施した.その結果,様々な要因を考慮しても底つき体験の有無は外来治療継続に影響しなかった(P value=0.10).これは,アルコール依存症治療には底つき体験を待たずに早期介入を積極的にするべきであるという,我々の考えを支持するものであった.
  • 高橋 留美, 高橋 寛, 大野 真機, 須田 拓基, 小倉 浩, 前田 昌子, 吉川 裕介
    2022 年 82 巻 6 号 p. 460-469
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    近年の医療技術の急激な進歩とともに膨大な数の医療系専門語彙が新たに生み出されている状況を背景に,医療系大学の英語教育では特定の目的のための英語(English for Specific Purposes,ESP)を念頭に置いた英語学習指導が標準化しつつある.本研究ではこのような医療系専門分野における専門語彙の変化に対応した語彙リストの作成方法としてテキストマイニングの手法の一つであるトピックモデルの応用の可能性を探る.その第一歩として歯学系専門語彙を対象として,最新の学術ジャーナルに掲載された論文をもとに約3万5,000語のコーパスを作成し,この文書群にトピックモデルの有力な手法の一つである潜在的ディリクレ配分法(Latent Dirichlet Allocation)を適用した.これによって得られた意味的に関連性の高いとみなされる語彙グループがどのようなトピックを構成しているのかを推測し,各語彙グループにトピック名を付して,その妥当性を歯科医師が判断した.その結果,歯学系専門分野の語彙リスト作成におけるトピックモデルの有効性が示されたと同時に,潜在的ディリクレ配分法で生成するトピック数を対数尤度の調和平均の極限値のうちの最小値にすることで学習者の利便性を満たす語彙グループが得られることが分かった.また,このようなトピックモデルを用いた語彙リストの作成手法が専門語彙の学習に関してどのような利点を持つのかを指摘する.
  • —これまでの調査の共通設問の回答の比較—
    小倉 浩, 正木 啓子, 須長 史生
    2022 年 82 巻 6 号 p. 470-491
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    本稿は,2016年度以降毎年継続して実施している「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の結果報告の第5報である.この調査は,18歳〜20歳代前半の人々の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにする目的で企画,実施してきたものである.今回報告する2020年度の調査においても,調査対象はこれまでの4か年と同様にA大学1年次在学生とした.これまでの4か年の調査では,回収率約80〜90%程度の回答を得ていたが,2020年度調査における回収率は30%程度と急減した.要因は,実施時の協力要請を対象者に直接呼びかけることができなかったためであると考えられる.それゆえ今回の調査研究はこれまでとは異なり限定的な解釈をする必要がある.なお各設問に対する単純集計結果,これまでの複数回の調査結果から読み取れる性的マイノリティに対する意識・態度の変化の傾向,ジェンダー別の回答傾向について,その主要な結果を列挙すると以下となる.・単純集計結果より,性的マイノリティに対する接触機会は過去の調査と比較して最も多く,知人または同じ大学の人が性的マイノリティである場合の嫌悪感は最も低く,共感的態度が増加傾向を示していることが明らかとなった.・性的マイノリティに関する正しい知識を習得したいという意欲をもつ回答者の割合は,増加傾向を示していることが明らかとなった.・2017年度〜2020年度の4か年分に渡って共通の設問回答に対して主成分分析を実施した結果,第1主成分(単純ホモフォビア成分)および第2主成分(パターナリズム成分,従来表層的共感成分と呼んでいた成分)の主成分得点は,一貫して減少傾向を示していることが明らかとなった(呼称を変更したことについては本文にて後述).・性的マイノリティに関する知識を問う「日本では戸籍上の性別を変更することができる」という設問の正答率が明確に減少傾向にあること,性的マイノリティに対する共感度の男女差が固定もしくは拡大傾向にあることが明らかとなった.
  • 黒田 沙, 関 健次, 荒木 和之
    2022 年 82 巻 6 号 p. 492-501
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    現在,歯科治療において歯科用コーンビームCT(以下CBCT)は安心安全な治療を行うために多用されている.CBCTは硬組織の状態を精密に診断できるが,今後はその情報に加えて軟組織や口腔内状態などの診察・検査資料と複合的に評価することが臨床上有用と考えられる.そこで本研究ではCBCT画像を3D化ソフトウェアで研究用模型のデータと合成し,その精度を評価した.研究方法は,対象を顎模型の取り外しが可能な口内法デンタルX線撮影実習用ファントムとし,上下歯列の研究用模型を作成した.このファントムはX線撮影時に歯や顎骨が人体と同等の濃度で描出されるよう作られている.ファントムとその研究用模型をそれぞれvoxel size 0.40mm×0.40mm×0.40mm,0.25mm×0.25mm×0.25mmの条件にてCBCTの撮像を行い,3Dモデル合成ソフトにて重ね合わせを行った.重ね合わせた画像から歯の咬頭頂部,近心部,遠心部,頰側面,舌側面で誤差の最大値,最小値を計測し,voxel size 0.40mm撮像時と0.25mm撮像時との関連をT検定にて検討した.結果,voxel size 0.25mm撮像の方が0.40mmの時より歯の咬頭頂部,近心部,頰側面で有意に誤差が小さく精度の高い合成画像が得られた.広範囲を撮像する上での被ばく線量のことを考慮すると,研究用模型のデータと合成することで低被ばくを目指した撮像条件でも歯の形態の見えにくい部位を補助できる可能性がある.結論として3Dモデルを合成する際は使用するソフトや目的によって適切な撮像条件を選択する必要があると考えられる.
症例報告
  • 詫間 章俊, 神尾 義人, 渡邊 徹
    2022 年 82 巻 6 号 p. 502-506
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    コカインは米国では中毒死の主要な原因物質の1つだが,日本でコカイン中毒に遭遇する機会は稀であり症例報告もほとんどない.当院で経験した,コカイン中毒疑いにて来院した2症例について報告する.症例1:20歳代男性.心肺停止状態で発見され救急搬送となった.来院時JCS300.トライエージDOA施行し,コカイン陽性であり,心肺蘇生を施行したが死亡確認となった.症例2:20歳代男性.路上で暴れて倒れていたところを発見され警察に保護されていたが,強直性の痙攣を認め当院に救急搬送となった.来院時,JCS300,自発呼吸無し.トライエージDOA施行し,コカインとアンフェタミンが陽性であった.人工呼吸,血液浄化などの集中治療を行ったが,第5病日に多臓器不全にて死亡した.2例ともトライエージDOAにてコカイン陽性であり,知人の証言からコカインの摂取が疑われた.症例2に関してはAMPも陽性であったことから,コカインと覚せい剤の併用が推測された.
  • 田内 麻依子, 中山 健, 板倉 桃子, 宮崎 知哉, 堀 祥子, 中尾 紗由美, 宮村 知弥, 丸山 大介, 佐々木 康, 森岡 幹, 小 ...
    2022 年 82 巻 6 号 p. 507-514
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    卵管癌は卵管采に腫瘤を形成し,腹膜播種と癌性腹水を伴う進行例が多い.胸水貯留と鼠径ヘルニア内の腹膜転移を契機に診断された卵管上皮内癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳,1妊1産,49歳で子宮筋腫のため子宮摘出術を施行されている.主訴は咳嗽,胸水貯留があり精査加療目的で当院紹介となった.全身造影CT検査で右側胸水貯留と右鼠径ヘルニア内に嚢胞状腫瘤を認めた.胸水細胞診で悪性細胞を認め,胸膜の病理診断は漿液性腺癌の疑いであった.骨盤MRI検査で右鼠径ヘルニア嚢胞内に拡散強調像で高信号,造影効果を有する壁在結節を認めた.腹膜癌を疑い,鼠径ヘルニア嚢胞摘出術+両側子宮付属器摘出術を施行した.術後の病理診断では腹膜結節にHigh-grade serous carcinoma(HGSC),右卵管采にSerous tubal intraepithelial carcinomaを認めた.両者は同様の免疫染色像を示しており,卵管癌ⅣA期(FIGO2014)と診断した.腹膜漿液性癌の50%は卵管上皮癌由来とされ,従来原発性腹膜癌と考えられてきたもの中にも卵管原発のものが含まれている可能性が論じられている.近年,HGSCの原発巣決定の基準が提案され,卵管および卵巣の詳細な組織的検索でこれらの臓器に原発巣と考えられる病変を欠く場合のみ腹膜原発と診断することと定義された.今回の症例も,術前の画像検査では子宮付属器に病変は認められず腹膜癌を疑ったが,術後の病理学的診断により卵管に顕微鏡レベルの病変がみられ卵管癌の診断にいたった.
  • 小野 貴広, 金澤 建, 池田 裕一
    2022 年 82 巻 6 号 p. 515-521
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は月齢1の男児である.発熱を主訴に来院し,肝脾腫,白血球増多,貧血,血小板減少などの急性白血病に類似した所見を認め,輸血療法前の感染症検査で児の梅毒感染が判明した.問診で母体の梅毒罹患歴はなかったが,追加検査で梅毒罹患が明らかになり,先天梅毒と診断した.近年,本邦では梅毒感染症患者は増加傾向にあり,それに伴い先天梅毒の報告数も増加傾向である.梅毒の垂直感染は,母体への治療が適切に行われた場合も1-2%の確率で成立する可能性があり,母に過去の治療歴などを含めて詳細な問診を行うことが先天梅毒の診断には重要である.しかし,梅毒感染症は自覚症状に乏しく,本症例のように母体が感染した自覚がないまま垂直感染が成立する可能性がある.先天梅毒は急性白血病症状を呈することがあり,小児で急性白血病症状を呈した場合は,問診から母体の梅毒感染が明らかでない場合も先天梅毒を鑑別に挙げる必要がある.本症例と過去の報告例と比較し考察し,報告する.
  • 滝鼻 理那, 佐藤 義剛, 三川 武志, 外山 大輔, 三輪 善之, 松橋 一彦, 阿部 祥英
    2022 年 82 巻 6 号 p. 522-526
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は8歳の男児である.頚部腫脹を主訴に来院し,血液検査や頚部造影CT検査,吸引リンパ節細胞診から臨床的に菊池病と診断した.急性期に血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値が一過性に低下し,回復期には上昇した.血清ALP値の低下と疾患との関連についての報告は少なく,血清ALP値の低下が菊池病の診断の一助になる可能性がある.
講演
第383回昭和大学学士会例会(歯学部会主催)
第384回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
第385回昭和大学学士会例会(保健医療学部会主催)
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