骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1を通常のαMEM培地 (1.87mM Ca
2+, 対照群) ならびに低カルシウム培地 (0.34mM Ca
2+, 低カルシウム群) で通法によりsubconfluenceまで培養し, 無血清培地と交換した後, 24時間さらに培養した.それらの細胞に, カルシウムイオノホアであるA23187, Ca
2+, あるいはA23187+Ca
2+を添加し, それぞれ30分後に細胞は回収して全RNAを抽出してc-
fos mRNAの発現をNorthern blot法を用いて分析を行った.その結果, A23187単独添加の場合, c-
fos mRNAは対照群の方が低カルシウム群と比べより強く発現したが, Ca
2+, あるいはA23187+Ca
2+添加のいずれの場合においても, 対照群と比較して低カルシウム群において, c-
fos mRNAの発現の発現がより増大していることが示された.また, 対照群においてはA23187単独添加の場合と比較して, A23187+Ca
2+添加の場合, c-
fos mRNA発現の低下が認められた.これらの事実から低カルシウム環境下に置かれるとMC3T3-E1細胞はCa
2+流入に対する感受性が亢進し, A23187添加によるc-
fos mRNAの発現が増大していることが示され, 低カルシウム環境という異常な環境に抗して, 正常機能を維持しようとする何らかの機構が作動していることが示唆された.また, 細胞外カルシウム濃度が増大すると, A23187添加によるCa
2+流入に伴う細胞内情報伝達に抑制が生じていることが示唆された.
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