免疫反応, 腫瘍転移および浸潤過程など種々の生体反応において極めて重要なステップである細胞運動に, オステオポンティンが大きく関与しているという報告が相次いでなされている.オステオポンティンは一般的には分子のN-末端部にシグナル配列を持つ分泌性タンパク質として知られているが, われわれは, 遊走活性の高い胎生線維芽細胞, 活性化マクロファージ, 融合過程にある破骨細胞および転移性腫瘍細胞において, 細胞内オステオポンティンが存在することを報告している.このことから細胞運動においては細胞内オステオポンティンが重要であることが示唆される.本研究では破骨細胞の細胞運動における細胞内オステオポンティンの機能について知るために, 細胞伸展機能および運動性が低下しているオステオポンティン遺伝子欠損 (OPN-/-) マウス由来の破骨細胞に対する外因性オステオポンティンの影響について検討した.
今回の実験から, 1) M-CSFおよびRANKL存在下で培養したOPN-/-マウス由来骨髄細胞では, 細胞突起形成および細胞融合が顕著に低下しており, 培養6日目に誘導された破骨細胞は野生型に比べて有意に小さい, 2) Transwell
TMを用いた実験で, OPN-/-マウス由来破骨前駆細胞ではM-CSFへの遊走性が野生型に比べて顕著に低下しており, 3) 遊走性の低下はTranswell
TM membraneの上層および下層にオステオポンティンをコーティングした場合にも回復しないことが示された.この様に, オステオポンティンを産出しない細胞に細胞外基質としてオステオポンティンを補充しても十分な細胞機能発現できないことから, 破骨細胞の細胞運動および細胞融合過程において, 細胞内オステオポンティンが必須であると考えられる.
抄録全体を表示