歯科用薬剤や歯科材料によりアレルギーが発症するが, 原因となる物質やそのメカニズムなどは充分解明されていない.今回, 覆髄剤や根管充填剤などに配合されているロジンについて, 薬理学的および免疫薬理学的検討を行った.まず, モルモットを用いたadjuvant and patchtestを行った.濃度25, 12.5, 5%のロジンで, 感作誘発24時間後, 3匹全てに紅斑が認められ, 25%では1匹に浮腫も認められた.次に, ロジンがIV型アレルギーを発症するかを, マウスを用いてear swelling testで検討した.耳介腫脹率は, ロジン濃度5%以上で対照群との間に有意差が認められ, 25%では55%という高い値となった.以上の2種の試験結果より, ロジンを含有する歯科用薬剤や歯科材料によって, IV型アレルギーである接触性皮膚炎を発症すること, アレルギー反応の強さはロジンの濃度に依存する可能性のあることが示唆された.さらに, ear swelling testにおいて, 濃度25%のロジンを投与したマウスの免疫担当細胞の動態を検討した.すなわち耳介とリンパ節における免疫担当細胞の分布を, 間接酵素抗体法を用いて免疫組織化学的に検討した.Thy-1.2, CD4, IL-2R, IL-4RおよびCD8陽性細胞を光学顕微鏡で検出したところ, IL-4RおよびCD8陽性細胞の数が, 惹起反応誘発期に増加した.その所見から, ロジンによるアレルギー発症にはTh-1よりもTh-2の関与がより大きいことが示唆され, また, CD8陽性細胞の関与も明らかになった.
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