東京都立大塚病院「女性専用外来」で得た調査データや静岡県立大学短期大学部に開設した「更年期相談室」の運営から,更年期女性の不定愁訴に対する看護職が行う生活指導を中心としたヘルスケアについて検討した.その結果,看護職が行う,医療施設における更年期女性へのヘルスケアは,(1)患者の緊張を緩和し,コミュニケーションにより受診目的の明確化を図る,(2)女性の訴えに共感し,十分に話を聞き,精神症状の緩和を図る,(3)更年期医療,性差医療などの専門知識を収得し,診療後の治療内容や検査等についてコンプライアンスを図る,(4)受診機会を捉え,管理栄養士,薬剤師,臨床心理士,運動療法士等とも連携を図り,今後の患者のQOLの向上や健康管理のための保健指導による予防医療を実践する,の4項目に留意して実施することが必要である.一方,一般市民がおとずれる更年期相談室での(1)今,抱えている個々の問題点の明確化を行う,(2)個々の問題点の中から相談者が選択でき,実際にできる身体・精神面への助言を行う,(3)健康情報と医師の紹介などを含め,正確な情報提供と更年期に関する教育を行う,の3項目に留意して実施する必要がある.病院施設と更年期相談室とにおける看護職に求められるヘルスケアの違いは,病院施設における医師の診療方針に基づいた診療上の援助と更年期相談室における医療施設や対処法等の情報提供と言った点である.しかし,日常生活面における健康管理の指導においては,どちらにおいても継続的に看護職が主体的にかかわっていくことが必要である.その意味で,更年期女性のヘルスケアに関係する看護職は,更年期医療に対して関心を持ち,多くの知識を習得し,その上で,更年期女性や更年期以降の女性の健康管理にかかわっていくことが求められている.
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