女性心身医学
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21 巻, 1 号
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巻頭言
第45回日本女性心身医学会学術集会 プログラム・抄録
原著
  • 江川 美保, 岡本 和也, 西村 史朋, 森野 佐芳梨, 粂 直人, 青山 朋樹, 小西 郁生
    2016 年21 巻1 号 p. 105-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    月経前症候群(premenstrual syndrome:以下PMS)は心身の不快な症状が月経前の黄体期に繰り返し出現する病態であるが,その診断は患者自身による前方視的記録に基づいて月経随伴症状の出現時期と反復性を確認することに依る.したがってPMSを正しく診断し適切に治療するには患者が症状記録を実践することと症状の変調を医師―患者間で確認することが重要である.これを簡便化,効率化する目的で,患者が月経随伴症状やその他の健康情報をスマートフォンで簡便に入力できるアプリと,その内容を病院内のサーバに保管し医師,患者ともに閲覧できるシステムを開発し,臨床使用を開始した.20歳から45歳までの通院患者28人を対象にアプリ記録群と紙記録群にランダムに割り当て症状記録を84日間継続させた.その結果,両群ともに心理的負担やデータ管理上の有害事象は出現せず,症状記録頻度は両群間において有意差がないこと(症状記録平均日数:アプリ群59.2±16.4日,紙群65.3±26.8日,p=0.483)が示された.症状記録後のアンケートの結果,症状記録によって主治医とのつながりを感じる傾向はアプリ記録群に,内省やセルフケアが促される傾向は紙記録群に,より強く表れた.アプリ記録群では記録の簡便さやデータの見やすさなどのメリットが認識される一方で,紙記録群では面倒さや煩雑さが指摘された.総じて,我々の開発したアプリは従来の紙媒体への記録法に劣らない症状記録法であることが示された.患者本人による症状記録はPMS診断に役立つのみならずそれ自体が認知療法的効果も発揮すると言われており,これを簡便に効率よく行える本システムは診療場面のみならずICTの普及する一般社会においても女性のヘルスケア向上のために有効に活用され得ると考察された.

  • 松浦 倫子, 安達 直美, 小林 俊二郎, 中埜 拓, 白川 修一郎
    2016 年21 巻1 号 p. 114-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    【目的】睡眠に関する訴えは50代以降の女性で高率に見られる.本研究では,睡眠の質の低下を訴える中高年女性の主観的な睡眠改善を目的に,αs1-カゼイン加水分解物(カゼインペプチド)+L-テアニン含有食品の有効性をプラセボと比較し検証した.

    【対象と方法】56~69歳の女性11名を解析対象者とした.参加者は,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品あるいはプラセボ食品をそれぞれ10日間ずつ就床1時間前に摂取した.各条件の間で4日間のウォッシュドアウト期間を設けた.食品摂取の順序は,参加者間で順序効果が相殺されるようランダムに配置し,食品条件についてはダブルブラインドとした.各条件の後半3日間は,就床・起床時の気分と眠気(Visual Analog Scale),起床時の睡眠内省(OSA睡眠感調査票MA版,入眠感調査),最終日にはピッツバーグ睡眠質問票を聴取した.事前調査時と各条件の最終日には,参加者に簡略更年期指数質問票の記入をさせた.

    【結果】カゼインペプチド+L-テアニン含有食品の摂取は,プラセボに比べて就床前に眠気が高まっており,PSQIにより評価した睡眠の質が高かった.また,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品を摂取した条件でのみ簡略更年期指数による自律神経症状の得点が,事前調査時に比べて有意に低下し改善した.

    【考察】カゼインペプチドとL-テアニンを併せて摂取することにより,就床前の眠気を高め,睡眠の総合的な質を改善する可能性が示唆された.

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