女性心身医学
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22 巻, 3 号
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巻頭言
特集 第46回日本女性心身医学会学術集会報告
原著
  • 坂本 美和, 白土 なほ子, 宮上 景子, 廣瀬 達子, 和泉 美希子, 関沢 明彦
    2017 年 22 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    生殖補助医療(ART)患者は近年増加傾向にあり,妊娠後も出生前検査の多様化に伴い選択肢も増え,妊婦の心身的ストレスは続く.今回我々は無侵襲的母体血性胎児染色体検査(NIPT)の遺伝カウンセリングを行った妊婦に対し,不妊治療歴があることによるストレス因子,不安,うつの影響について検討した.当院で平成26年6月から9カ月間にNIPTを施行した529名のうち,ARTを実施した121名のART群(22.9%),自然妊娠した288名のN群について,背景問診,心理社会的要因評価票,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を検討した.ART群,N群の妊婦の平均年齢はそれぞれ39.2±2.8(mean±SD),38.1±2.7歳,夫年齢は41.1±4.6歳,39.4±4.9歳であった.背景因子ではART群はN群に比して本人,夫の年齢が高く,分娩回数は少なく,NIPT施行週数は早かった.流産回数,年収,学歴などの背景因子には有意差はなかった.両群においてHADS-A,HADS-D,VAS,要因点数に有意な変化は見られなかったが,ART群のVASはN群より高い傾向にあった.我が国のARTによる出生児の割合は2012年に3.7%であるのに対し,今回NIPTカウンセリング希望者の中では23%と高かった.

    ART群はN群より本人年齢・夫年齢が高く,実施週数が早いことから新しい出生前検査に対する関心が高いと考えられた.

    また,ART群はその治療までの過程でストレス因子が高いと予想され,N群よりストレスがより高い傾向にあったため,N群より注意深い心理的サポートが必要であると考えられた.

研究報告
  • 藤田 佐知恵, 堀川 香吏, 濱田 朋美
    2017 年 22 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
  • 日下部 典子
    2017 年 22 巻 3 号 p. 278-284
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    産後の母親のメンタルヘルスを考えたとき,産後うつ病,マタニティ・ブルース,育児ストレスなどがあり,母子の心身の健康のために有効な介入が望まれている.たとえば産後うつ病の発症に妊娠中のメンタルヘルスが大きく関与していることが明らかとなっている.すなわち,妊娠中のメンタルヘルスを明らかにし,うつ症状の緩和やストレス低減を図ることは,妊婦はもちろん,出産後の女性のメンタルヘルスにとっても重要である.そこで,本研究では,妊婦49名(平均年齢31.82歳)を対象に,うつ状態とストレスコーピングおよび被援助志向性との関連を明らかにすることを目的とした.EPDSの結果から,18%にうつ症状が,さらにそのうち半数がうつ病の可能性が濃厚であった.またうつ得点の高い対象者は「夫へのサポート希求」,「夫以外の知り合いへのサポート希求」が有意に低く,「回避・諦め」コーピングと「被援助への懸念」が有意に高かった.階層的重回帰分析の結果,「夫へのサポート希求」がうつ傾向に影響を及ぼす要因であることが明らかとなった.以上のことから,妊娠中の女性約2割にも抑うつ症状が認められ,妊婦への抑うつ状態軽減の対策が必要であることが明らかとなり,サポート希求コーピングの獲得,被援助懸念への認知修正が抑うつ状態緩和に関係することが示唆された.妊娠中のうつ軽減は妊婦自身はもちろん,産後うつ予防にも有効であると考えられる.

  • 添田 わかな, 望月 善子, 茂木 絵美, 深澤 一雄
    2017 年 22 巻 3 号 p. 285-291
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は産後の継続看護を必要とする際の「継続看護連絡票」を用いて退院時の心理的要因を可視化できるか検討した.【方法】平成27年3月~平成28年4月まで当院で分娩管理した妊婦634例のうち,継続看護連絡票を用いて訪問した99例について検討した.継続看護となる要因を児の問題,母の身体的,社会的,心理的問題に分類し比較検討を行った.【結果】心理的要因43例の中で,初産による育児不安(33例)が最も多く,NICU入室のための母児分離不安(3例),児の奇形などの不安,子供への関心が低いなどが続いた.児の問題での継続看護は41例,母の問題では身体的要因55例,社会的要因35例であった.すべての事例において心理的要因のみで継続看護となるものはなく,様々な要因が重複していた.【考察】心理的要因のみで「継続看護連絡票」が作成された例が今回なかったことは,独立した記載欄が存在しないことも一因である.当センターでは他科の医師や助産師,看護師,メディカルソーシャルワーカーと連携しチームで種々の視点から課題を検討し心理的要因に対し援助している.身体的,社会的要因がある者には心理的要因もあるということを念頭におくことで産後のメンタルヘルスケアを充実できると考える.【結論】「継続看護連絡票」に心理的要因である「育児不安」の有無を尋ねる項目を追加することにより地域の保健師に詳細な連絡ができると提案する.今後は行政の切れ目のない「妊娠,子育て支援」体制が整えられつつあるが育児のスタートから地域との円滑な連携が期待される.

  • 香川 香
    2017 年 22 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
  • 塩谷 友理子, 我部山 キヨ子
    2017 年 22 巻 3 号 p. 299-306
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は出産後1カ月までの母親と父親の抑うつ状態の変化とそれに影響する要因を検討した.

    方法:出産後の両親376組に,産後早期と産後1カ月時にアンケートを実施した.内容は基本属性,妊娠中の気分,出産満足度,育児不安の有無,抑うつ状態(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)等である.EPDS 9点未満を「正常」群,EPDS 9点以上を「産後うつ病が疑われる」群として検討した.

    結果:回答は母親307名と父親218名から得られ,産後うつ病が疑われる群は母親では産後早期12.4%,産後1カ月時16.8%,父親では産後早期3.7%,産後1カ月時6.9%であった.また,母親・父親共に産後早期と産後1カ月のEPDS得点間に有意な中程度の正の相関(母ρ=.524 p<0.001,父ρ=.480 p<0.001)がみられた.母親においては,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,産後早期では「妊娠中の気分」において「不安定な時期があった」とする割合が高く,「出産満足度」でも「満足である」と感じている割合が有意に低率であった.産後1カ月では,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,「育児不安がある」「混合栄養」「経済的な不安がある」の割合が有意に高かった.一方,父親においても,産後1カ月では産後うつ病が疑われる群は正常群よりも「育児不安がある」の割合が有意に高かった.

    結論:父親・母親ともに産後早期と産後1カ月のEPDS得点には関連があることから,母親のみならず,母親をサポートする上で重要な存在となる父親に対しても産後早期からの精神的サポートの必要性が示唆された.

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