【目的】精神病合併妊婦の周産期管理は,健常妊婦に比べ困難であるのか検討した.【方法】本研究は後方視的比較対照試験である.精神病合併妊婦22名(A群),健常妊婦108名(B群)の計120名を対象とした.比較項目は(1)経産婦の割合,(2)妊娠時の年齢,(3)非妊時BMI,(4)非妊時飲酒率,(5)喫煙率,(6)健診間隔「(分娩週数-初診週数)/妊婦健診回数」,(7)妊娠時体重増加率「(分娩時体重-非妊娠時体重)/分娩週数」,(8)妊娠中の飲酒,(9)喫煙率,(10)妊娠高血圧症候群(PIH)発症率,(11)早産発症率,(12)分娩週数,(13)分娩方法(帝王切開率),(14)出生児体重,(15)5分後Apgar score,(16)授乳法として,統計解析を行った.【結果】経産婦の割合,妊娠時の年齢,BMI,健診間隔に差はなかった.体重増加率はA群の方が高かった(p<0.01).飲酒率は非妊時から妊娠中にA群で13.6%から9.6%に,B群で46.2%から7.4%となり,喫煙率はA群で31.8%から31.8%にB群で17.5%から8.3%になった.PIH,早産の発症はA群で高かったが,有意差はなかった.分娩週数はA群の方が早く,出生児体重も低かった(p<0.01).帝王切開率は50.0%および13.8%(p<0.01),母乳率は,27.2%および100%(p<0.01)であった.【考察】精神疾患合併妊婦は健常妊婦に比して妊娠中の体重増加率や喫煙率が高く,自己管理の甘さが懸念される.体重増加に関しては,向精神薬の影響も考慮される.分娩に介入せざるを得ないため,分娩週数が早く,出生児体重が低く,帝王切開率も高くなる.服薬のため母乳率は低い.精神病合併妊婦の周産期管理は,健常妊婦に比べ困難であると考えられた.
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