女性心身医学

中高年女性(祖母)が孫との関わりを持つことは心の健康にプラスに影響するかどうかを明らかにするため,3〜5歳の幼児の母親と祖母に対して質問紙調査を行い,祖母と母親528組について,抑鬱度と主観的幸福感の満足度を心理的健康として分析した.その結果,心理的健康にプラスに影響していた因子は,「健康と感じている」,「日常活動に自立している」,「配偶者が健在である」,「子育てに疲れを感じていない」,「母親との育児方針の相違がない」,「子どもの世話が好き」,「遊びなどを中心とした社会・文化的な子育て参加が多い」などであった.これらのことから,中高年女性では,孫と関わるライフスタイルを主体性に選択すること,母親との豊かな人間関係,遊びを中心とした子育て参加をすることなどを通して,その中で幸福感を見いだしていくことが,心の健康にプラスに影響すると考えられる.

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28名の健常若年女子を対象にして,超音波法による踵骨骨密度測定を行い,同時に骨吸収マーカーであるNTx,骨形成マーカーであるB-ALPを採取し,ACTH,cortisol,IL-6などのホルモン・サイトカインと,性格検査との関連を検討した.NTx/B-ALP比が高い者では超音波法による骨密度は規準値よりも低下を示し,骨吸収に傾くものでの骨量の減少が確認された.NTx/B-ALP比はIL-6によって有意に説明され,末梢IL-6も骨吸収を促進するサイトカインと連動して機能していることが明らかになった.IL-6を平均値の標準偏差の1.5SDでgroup H(n=2), group L(n=26)の2群に分け,POMS性格検査の値を比較するとgroup Hがgroup Lに比し, A-H(抑圧された怒り・嫌悪感)得点で有意に高い値を示した.上記から,NTx・B-ALP比は炎症性サイトカインIL-6と連動して変化し,IL-6には怒り・嫌悪感などの感情的部分をも反映されることから,性格・ストレスによる内分泌・サイトカイン系の変化が骨量にまで影響を及ぼすことが示唆され,女性の心身医学における精神神経免疫学的な視座の重要性が示唆された.

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初経発来以後,青年期から月経前緊張症(PMS)の症状を呈し,30代以降になり増悪した1症例について検討を加えた.性周期4相でY-G,POMS, SDSの心理検査と, ACTH, cortisol, E1, progesteroneその他の採取を行った.性周期と有意な関連を見せたのはE1とprogesteroneであり,月経前でも低下を見せなかった.progesterone ・E_1比は規準値に比し黄体期で明らかに低下していた.Y-G検査では,客観性欠如・協調性欠如・攻撃性の増大の三つの得点の和が黄体期(月経前)で最も高まり,POMSではD得点(抑うつ),A-H得点(怒りと敵意),C得点(混乱)がそれぞれ性周期と有意な二次回帰性を示した.重回帰分析の結果,月経前の抑うつにはACTHが,怒りや攻撃性の上昇にはprogesteroneの低値が関与していることが知られた.PMSに関する対処としてSSRIなどの抗うつ剤と,progesterone製剤の有効性が示唆された.

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婦人科疾患による入院はメンタルヘルスに少なからず影響を与えると考えられているが,その実態はいまだ明らかではない.そこで不安と抑うつを評価するHADS (Hospital Anxiety and Depression Scale)を用いて婦人科入院患者におけるメンタルヘルスを検討した.対象は平成12年9月から12月に当院婦人科に入院した130名(平均年齢:43.8±12.1歳)で,このうち良性疾患に対する手術目的入院(B群)は62名,悪性疾患に対する手術目的入院(M群)は32名,化学療法目的入院(C群)は36名であった.これらに対し,入院後3日以内にHADS日本語版に無記名,自記式にて回答が得られたものを解析した.また,健常女性2,943名を対照群とした.婦人科入院患者全体では,HADSの総得点・不安度・抑うつ度のスコアは健常女性に比して各々有意(p<0.05)に高値であった.群別の検討では,M群は総得点・不安度・抑うつ度はいずれも対象群より有意に高値であった.またM群はB群に比し,総得点・抑うつ度は有意に高かったが,不安度では有意差を認めなかった.B群は不安度のみ対照群よりも有意に高値であった.C群の総得点・不安度・抑うつ度は対象群よりもいずれも有意に高値を示したが,B群やM群とは有意差を認めず,両群の中間のスコアを示していた.項目別の検討では,不安度に対する項目である「何かひどいことが,今にも起こりそうな恐ろしい感じがしますか」と「胃が気持ち悪くなるような一種恐ろしい感じがしますか」の2項目と抑うつ度に対する項目である「身体の動きが遅くなったように感じていますか」において,M群がB群に比して有意に高いスコアを示していた.以上の結果より,婦人科疾患による入院はメンタルヘルスに影響を及ぼすことが明らかとなった.また,婦人科入院時には,メンタルヘルスの状態の把握とともに,良性疾患では不安への対応が,また悪性疾患では不安とともに抑うつへの対応が重要であると考えられ,今後. HADSを用いて対応が必要な患者の選択ができる可能性が示唆された.

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