女性心身医学
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29 巻, 3 号
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巻頭言
特集 第52回日本女性心身医学会学術集会 第38回日本女性心身医学会研修会報告
【第38回日本女性心身医学会研修会】
【第52回日本女性心身医学会学術集会】
原著
  • 荒木 智子, 野村 由実
    2025 年29 巻3 号 p. 320-327
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症拡大により,配偶者による暴力(Intimate Partner Violence:以下IPV)は増加している.本研究では,産後1年以内のIPVの実態を把握すること,IPVによる関連要因を検討することを目的に,インターネットによる質問紙調査を行った.質問紙調査では,基本属性,コロナ禍による生活の変化を聴取した.また,IPVに関するスクリーニングとしてVAWS(Violence Against Women Screen),精神的健康状態として抑うつと不安について聴取した.さらに首尾一貫感覚(Sense of Coherence)および身体感覚の気づき(失体感尺度),健康関連QOL(SF-12v2)を聴取した.対象は産後1年以内の女性で,932名に説明文及び回答用のURLを送付し,787名より回答を得た(回答率84.4%).最終的に615名が解析対象となった.その結果,IPV陽性は全体の32.0%(418名)に及び,先行研究より高率であった.IPV陽性群と陰性群の群間比較では,年齢,子どもの人数,失体感尺度,首尾一貫感覚,HRQOLの精神的側面,役割/社会的側面に違いがあることが明らかとなった.また,不安や抑うつも高率にみられていた.身体症状としては慢性疲労や頭痛がIPV陽性群に高率にみられ,日常生活が自立していると過小評価してしまう可能性が示唆された.IPV陽性に影響を及ぼす因子としては,相談相手がいないこと,体感同定困難の傾向があること,首尾一貫感覚が低いことが影響していた.これらの結果は女性の健康のみならず,育児等にも影響を及ぼすことが考えられ,現在実施されているIPVのスクリーニングに加え,身体愁訴や心理的側面についての把握も必要であると考えられた.

  • 香西 祥子, 河西 邦浩
    2025 年29 巻3 号 p. 328-336
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    妊娠・授乳中の薬の使用について不安を感じる女性は少なくない.妊娠期は妊婦健診の際に相談することができるが,授乳期の薬については産後1カ月健診を終了すると医療機関との定期的な接点が減り相談できる機会が少ないのが現状である.当院は2012年より薬剤師が産婦人科にかかわっており,2018年に産婦人科内に「妊娠と授乳のお薬相談センター」(以下相談センター)を開設し,妊婦・授乳婦専門薬剤師(以下専門薬剤師)が相談に対応している.授乳中の相談は電話でも可能としているため他院で分娩した授乳婦からの相談も少なくない.今回,2015年1月から2020年12月までに専門薬剤師が対応した授乳期の相談161例について解析した.相談件数はセンター開設前の2017年は4件であったが2018年には45件と約11倍となり,それ以降も同様の件数で推移していた.相談時期は分娩後1カ月から6カ月未満の相談が64例と最も多かった.分娩施設は他院分娩女性からの相談割合が分娩経過とともに増え,児が1歳以上では78%であった.相談回数は46%が複数回の相談であった.相談回数3回以上の相談事例では,半数が基礎疾患の治療薬であった.当院で分娩した女性はすべて妊娠中から専門薬剤師が介入していた.授乳中の薬剤の処方元は89%が産婦人科以外であり,4%は一般市販薬の相談であった.相談外来を開設したことにより相談件数が大きく増え,また複数回の相談も多いことから継続したサポートが必要であると考えられる.一方で当院のように専門薬剤師が対応している施設は少ない.そのため,授乳中の薬剤について相談ができる施設の構築だけでなく,相談施設につながるためのネットワークの構築が必要である.

総説
  • 淨沼 和浩, 伊藤 大輔
    2025 年29 巻3 号 p. 337-346
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)や月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy;以下,CBT)による介入プログラムをレビューし,従来,PMSやPMDDに対するCBTにおいて扱われてきた治療アウトカムや介入要素を整理することであった.抽出された14編の介入プログラムをレビューした結果,従来扱われてきた治療アウトカムとして最も多く用いられてきたのは月経前症状であった.また,生活支障度やquality of life(以下:QOL)に関わる変数を測定している研究は7編であり,コーピングなどのメカニズム変数について測定している研究は4編であった.次に,介入要素を一般的なCBT的技法と,PMSやPMDDに特化した技法に分類した.その結果,一般的なCBT的技法では,認知再構成法とリラクセーションが,PMSやPMDDに特化した技法では,PMSやPMDDに関する心理教育が多く行われていた.以上のことから,PMSやPMDDに対するCBTを実施する際は,月経前に起こる心身の不調についての正しい情報提供を行ったうえで,月経前期における症状への対処法としてリラクセーションスキルと,認知再構成スキルの獲得を目指すようなコンポーネントを中核として構成することが有用である可能性が示された.今後は,月経前症状による生活への影響の改善度も併せて測定し,効果的に月経前症状やQOLを改善させるために,CBTでターゲット変数となる自動思考や非機能的スキーマなどの認知行動的変数と,月経前症状や月経前期におけるQOLとの関連をより詳細に明らかにしていく必要があるだろう.

研究報告
  • 田中 梨穂, 篁 宗一, 太田 尚子
    2025 年29 巻3 号 p. 347-352
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー

    13トリソミーまたは18トリソミーと確定診断された妊婦への妊娠期におけるケアを,看護職者の視点から明らかにすることを目的とした質的記述的研究である.研究協力者は助産師3名であった.データ収集方法は,インタビューガイドを用いた半構造化インタビューで,データ収集期間は,2018年8月から10月であった.分析の結果,13トリソミーまたは18トリソミーと確定診断された妊婦へのケアは,34のサブカテゴリー,8のカテゴリーで構成された.

    助産師は,13トリソミーまたは18トリソミーと確定診断された妊婦へのケアを行うにあたり,【妊婦の子どもへの愛情と不安の揺れを受け止める】ことで,妊婦の気持ちを汲み取ろうとしていた.そして,妊婦の気持ちや選択肢を支援するために,【最適な支援体制が組まれるような環境の整備をする】ことを行っていた.他職種も含めた妊婦に対する支援体制が組まれ,助産師として【予後が不良な子を出産する妊婦へ配慮する】一方で同時に【通常の妊婦と変わらないケアを提供する】ことを行っていた.妊婦と助産師が初めて会った段階から【継続的に段階を踏んでケアをしていく機会を保障する】ことが開始されており,段階を踏むほど関係性が構築され,より濃厚なものとなっていた.そしてそれが【画一化できない個別性に応じた支援を行う】ことを可能とし,個別性に応じた支援の中には前述の,【予後が不良な子を出産する妊婦へ配慮する】ことと【通常の妊婦と変わらないケアを提供する】が含まれていた.また,前述の【継続的に段階を踏んでケアをしていく機会を保障する】ことによって【妊婦の受容段階と理解に応じた情報提供をする】ことに繋がっていた.そしてケア全体を通して,【揺れ動く感情を持ち看護職者として自分自身を律しながらケアを提供する】ことを行っていた.

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