妊娠末期から産後2年間における女性の心理社会的状態を把握し,育児期女性のリスクや問題の早期発見と予防的支援のあり方を検討するために縦断調査を行った.調査期間は2000年2月〜2002年8月であり,対象は妊娠末期又は産褥早期の調査に参加し,継続調査に同意の得られた者である.調査は第1回の後,産後1ヵ月,7ヵ月,1年,2年の計5回である.方法は自記式質問紙を用い,郵送法によって行った.内容は母親の心配尺度(MCQ), EPDSおよびGHQ30, SEで構成した.本稿は5回の調査結果から,各期の特徴と関連について分析した.(1)妊娠末期は産褥早期より抑うつ気分,情報不安定,心理的緊張が有意に高かった.(2)産褥早期は情緒不安定が産後の他の時期より低かった.産後1ヵ月以降のMCQパターンは各項目とも類似しており,総得点は,産後7ヵ月以降低下した.(3)どの時期においても夫のサポート,ボディーイメージに関する得点は高かった.(4)GHQは産後1,2年に行ったが2年の方がやや低くなった.しかし,一般女性の得点と比較し高い傾向であった.(5)MCQ, EPDSの得点とどの時期においても有意な関連を示したのは出産歴であり,初産婦の方が経産婦よりも心配やうつ的な傾向が高かった.(6)MCQ, EPDS, GHQは全ての時期において有意に正の相関があり,SEは各々と負の相関があった.以上の結果から,妊娠末期または産褥早期の心身の健康状態は,その後の健康状態と関連あること,また,産後2年間においても不安・疲労が強いことから,早期にスクリーニングをしておくことの必要性と長期にわたるフォローの重要性が示唆された.
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