目的:本研究では摂食障害の治療初期において患者が有する治療に対する抵抗感を明らかにし,治療行動に関連する認知的要因との関連性について検討を行った.方法:(予備調査)ED患者6名を対象とした半構造化面接を行い,治療初期における治療に対する抵抗感に関する項目を抽出した.抽出された143項目について整理・検討を行い,最終的に26項目からなる治療に対する抵抗感の質問紙が作成された.(本調査)外来通院中のED患者56名を対象とした自己記入式質問紙調査を行い,治療初期における治療に対する抵抗感,治療行動に関連する認知的要因の評価を行った.結果:治療に対する抵抗感の原項目26項目について,主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い,最終的に4因子10項目からなる因子構造が得られた.抽出された4因子について,それぞれ「無力感」「回避的態度」「治療意欲の欠如」「世間体の悪さ」と命名した.治療に対する抵抗感の各因子得点と治療に関連する認知的要因の各得点についてSpearmanの順位相関係数を算出した.その結果,治療に対する抵抗感の第III因子「治療意欲の欠如」と「治療に対する重要性」「治療に対するセルフ・エフィカシー」「治療内容の理解」「治療への満足感」において有意な負の相関が認められた.考察:EDの治療初期に患者が有する治療に対する抵抗感の特徴が明らかにされた.治療に対する抵抗感にはED患者の中核的病理に関連する項目も含まれ,特に患者の治療意欲と治療行動に関連する認知的要因との関連性が示された.患者が有する治療に対する抵抗感を低減させることにより適切な治療導入を図ることが,患者の治療行動の促進に有効である可能性が示唆された.
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