日本暖地畜産学会報
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52 巻, 2 号
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総説
原著論文(一般論文)
  • 中西 良孝, 東 めぐみ, 西田 理恵, 高山 耕二, 伊村 嘉美, 河原 聡
    2009 年 52 巻 2 号 p. 011-015
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    モウソウチク(Phyllostachys pubescens)の飼料化促進を図るため,解繊処理竹材と甘藷焼酎粕を原物重比で41:59に混合した後に白ヌカを10%添加した竹材サイレージの発酵品質,嗜好性および栄養価が良好であったという前報の結果を踏まえ,ルーサンヘイキューブのみを給与した対照区とそのTDNの30%を竹材サイレージで代替給与した試験区を設定し,泌乳山羊2頭を用いた4期の反転法による泌乳試験を行い,乳量,乳成分および山羊乳の脂肪酸組成について比較検討した.その結果,代謝体重当たりのDCP摂取量は対照区と比べ試験区で有意に少なかった(P<0.01)ものの,代謝体重当たりの乾物,TDN,NDFおよびADF摂取量に両区間で有意差は認められなかった.乳量および乳成分に区間差は認められなかったが,乳中総脂肪酸に占める不飽和脂肪酸割合は試験区で高い傾向を示し,とくにオレイン酸(C18:1)およびリノール酸(C18:2)割合は有意に増加した(P<0.05).
    以上より,竹材に焼酎粕と糟糠類を添加してサイレージ化し,慣行飼料に一部代替給与した泌乳山羊の乳生産は慣行飼料と比べ遜色なく,乳中の脂肪酸組成に占める不飽和脂肪酸割合は増加することが明らかになり,乳質面で付加価値を高める可能性が示唆された.
  • 高山 耕二, 伊方 萌, 剥岩 裕, 萬田 正治, 中西 良孝
    2009 年 52 巻 2 号 p. 017-021
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    ガチョウ放飼による果樹園の持続的植生管理技術を確立する上での基礎的知見を得ることを目的とし,ナシ園19a(Pyrus pyrifolia (Burm. f.) Nakai,品種:豊水)にガチョウ12羽(4ヵ月齢,平均体重2.9 kg)を2007年7月から同年10月にかけての69日間放飼し,その除草効果について検討した.
    供試したナシ園には,イネ科草(イヌビエ (Echinochloa crus-galli (L.) Beauv. var. crus-galli) ならびにメヒシバ (Digitaria adscendens H.B.K.) Henr.))が優占していたものの,放飼終了時におけるガチョウ放飼区(以下,ガチョウ区)のイネ科草の被度と現存草量は対照区(ガチョウ無放飼区)に比べ大幅に低下した(P<0.05).放飼ガチョウのイネ科草に対する嗜好性は他の植物種よりも高かった.さらに,ガチョウは樹幹に着生したコケ植物も採食し,放飼終了時における着生ゴケの被度は対照区に比べガチョウ区で有意に低かった(P<0.05).放飼終了時におけるガチョウの体重は4.0 kgであり,放飼期間中で1.1 kgの増体が認められた.
    以上より,ナシ園に放飼したガチョウの除草効果は顕著であり,果樹園の下草管理に有効であることが示された.
  • 黒田 留美子, アーメド アブドラティフ, 難波 靖, 河原 聡, 中出 浩二, 沼田 正寛, 中村 豊郎, 入江 正和, 原田 宏, 六車 ...
    2009 年 52 巻 2 号 p. 023-028
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,食肉を用いて咀嚼・嚥下困難な高齢者に受け入れられるソフト食品を開発研究することである.
    そこで,ショウガ,ジャガイモ・デンプン,タマネギ,味噌と新鮮な生クリームを添加し調製した鶏肉ペースと起泡卵白を混合し,スチームコンベクションオーブンを利用して100%の水蒸気中,80℃で20分間加熱調理することにより,新規なチキンミートローフを開発した.介護老人保健施設での高齢者(平均年齢:82歳)を対象に官能評価をした結果,チキンミートローフが嚥下障害(ソフト(2)グレード)のある高齢者に受け入れられることが明らかになった.また,裏ごしをして繊維分を除去したチキンミートローフは,88歳の女性を対象にした嚥下造影検査の結果からも,スムースに飲み込めることが確認され,咀嚼嚥下困難者用食品のゲル形状にも適合できることが明らかになった.
    以上の結果,食肉を利用した高齢者ソフト食の製造に関する有益な基礎的知見を得ることができた.
  • 中村 好徳, 平野 清, 中西 雄二, 常石 英作, 加藤 直樹, 神谷 充, 山田 明央
    2009 年 52 巻 2 号 p. 029-036
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    良質な改良草地(夏期:ギニアグラスおよび冬期:イタリアンライグラス)で周年(昼夜)放牧により育成された黒毛和種去勢牛7頭(同一種雄牛)を用いて,体重539.1±15.3 kgからトウモロコシサイレージと市販配合飼料を乾物比3:7で組み合わせて給与した仕上げ肥育を行った.日増体量(DWG)は,仕上げ肥育期間で0.95±0.02 kg/日,ライフステージで0.74±0.02 kg/日であった.仕上げ肥育期間中の市販配合飼料の摂取量は,湿重量で1,115.8±68.2 kg/頭(6.1±0.1 kg/頭/日)であった.しかし,自家調製したコーンサイレージの平均タンパク質含量は7.9%であり,補助飼料として用いた市販配合飼料(18.2%)より低かった.放牧期に比べて仕上げ肥育期では,特に血漿中レチノール,β-カロテンおよびα-トコフェロール含量が激減(P<0.05, 0.01)した.出荷体重714.7±4.1 kgでの屠畜成績は変動が大きく,A-3(n=1),A-2(n=3)およびB-2(n=3)の格付けで,リブロース中の平均脂肪含量は16.3±1.3%であった.本研究により,周年放牧育成牛を用いたトウモロコシサイレージ主体肥育は,市販配合飼料と乾物割合30%のトウモロコシサイレージの組み合わせで,良好な発育を示すことが明らかになった.
  • 和田 康彦, 林田 瑠美子, 礒兼 妙子, 片渕 直人, 大坪 利豪, 山田 宜永, 佐々木 義之
    2009 年 52 巻 2 号 p. 037-041
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    ウシのEDG1遺伝子は脂肪交雑責任遺伝子の候補として研究が進められており,EDG1の1塩基置換(+166A/G)が大分系統の黒毛和種集団で脂肪交雑と相関を持つことが報告されている.そこで,EDG1の1塩基置換と佐賀県で生産された黒毛和種の種雄牛と繁殖基礎雌牛の枝肉形質の育種価推定値との関連性について検討した.また,QTL解析に利用している佐賀県産種雄牛の糸晴栄の去勢息牛についても枝肉形質との関連性を検討した.種雄牛と繁殖雌牛の遺伝子型はAA 14頭,AG 14頭,GG 5頭であった.分散分析の結果,遺伝子型の効果は牛脂肪交雑基準(BMS)では1%水準で有意であり,ロース芯面積では5%水準で有意であった.BMSではGG型がAA型やAG型よりも有意に大きなBMSの値を持つことが示された.去勢息牛229頭の1塩基置換の遺伝子型は,糸晴栄がAA型で,去勢肥育牛ではAA型 100頭,AG型 129頭であったが,分散分析の結果では,遺伝子型の効果はすべての枝肉形質において有意性が認められなかった.
  • 黒田 留美子, アーメド アブドラティフ, 難波 靖, 河原 聡, 中出 浩二, 沼田 正寛, 中村 豊郎, 入江 正和, 原田 宏, 六車 ...
    2009 年 52 巻 2 号 p. 043-048
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,畜肉を用いて,咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者に受け入れられるソフト食品の開発を行った.
    まず,牛モモ肉,豚バラ肉,卵黄,オリーブオイル,玉葱,片栗粉,生姜,ゼラチンを混合し,スチームコンベクションオーブンを利用して100%の水蒸気中,85℃で8分間加熱調理を行い,新規なミートローフを調製した.このミートローフは,咀嚼・嚥下困難者用食品と同様のゲル形状で,その破断強度は舌でつぶせる範囲(104 N/m2以下)よりもはるかに低く,付着性と凝集性からも,誤嚥の少ない,高齢者に最適な良質なタンパク質を含むソフト食品と考えられた.次に,介護老人保健施設の高齢者(平均年齢:86歳)を対象に官能評価を行った結果,ミートローフが咀嚼・嚥下障害(ソフト(3)グレード)のある高齢者に受け入れられることが明らかになった.また,裏ごしをして繊維分を除去したミートローフは,75歳の女性を対象にした嚥下造影検査の結果からも,スムースに飲み込めることが確認された.
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