日本暖地畜産学会報
Online ISSN : 2185-1670
Print ISSN : 2185-081X
ISSN-L : 2185-081X
58 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
研究紹介
原著論文(一般論文)
  • 金子 真, 中村 好德, 山田 明央
    2015 年 58 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    パリセードグラスが出穂しない気候帯の地域において、刈取高さおよび刈取間隔が地下部、株部および可食部の乾物生産に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、刈取高さとして草高10 cm および20 cm の2 水準、刈取間隔として2 週間および4 週間の2 水準を組み合わせた4 処理区と刈取りを行わない対照区のポット試験を行い、可食部生産量、株部現存量、地下部現存量ならびに茎数を調査した。その結果、刈取り開始から8 週目以降、可食部生産量、株部現存量、地下部現存量ともに対照区が顕著に多くなり、10cm・2 週間の刈取り処理区が最も少なかった。また、刈取高さは高い方が、刈取間隔は長い方が可食部生産量、株部現存量、地下部現存量ともに多かった。10 cm・2 週間の刈取り処理区では株部および地下部に減少が見られ、再生が困難であり、パリセードグラスは頻繁な低草高での刈取りに適していないことが示された。
  • 手島 信貴, 宮川 創, 柿原 孝彦
    2015 年 58 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    ホールクロップサイレージ(WCS)用イネの収穫調製作業を受託するコントラクターの経済性に与える,異なる熟期のイネ品種の組み合わせによる適期収穫期間拡大の効果を現地事例調査や栽培試験成績 等より検討した。その結果、機械導入時に公的助成を受けた場合、作業料金を2,500 円/ 個とすると、極晩生品種「タチアオバ」のみでは損益分岐点稼働量を達成できなかったが、早生品種「まきみずほ」、極早生品種「夢あおば」の組み合わせでこれを超えることが可能と試算された。よって異なる熟期の品種の組み合わせは、コントラクターの経営安定化に寄与すると考えられた。一方、機械更新時は公的助成が受けられないため、3 品種の組み合わせでも損益分岐点を超えることができず、この対策としてWCS 用麦類を組み合わせた更なる収穫期間の拡大や、作業料金単価の向上を可能とするイネWCS 飼料価値の向上が必要と考えられた。
  • チョ インイン, 當山 秀美, トゥエ ウインミー, タイクア サラユット, 伊村 嘉美, 川本 康博
    2015 年 58 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    キャッサバミール ( 塊根と葉) 混合飼料の採卵鶏における消化性、飼料摂取量、飼料要求率、体重増加量、産卵成績ならびに卵質に及ぼす影響を検討した。供試飼料は市販の配合飼料中トウモロコシをキャッサバミールでそれぞれ0% ( 対照区;diet I 区)、50% ( 塊根40% + 茎葉10%;diet II 区)、75% ( 塊根65% + 茎葉10%;diet III 区) および100% ( 塊根90% + 茎葉10%;diet IV 区) 代替して調製した。供試鶏として白色レグホン36 羽を用い、供試飼料を4 週間給与した。乾物消化率はdiet II ~ IV がdiet I と比べて低い傾向を示した。産卵成績ではdiet I ~ III の処理区間に有意な差は認められなかったが、diet IV では産卵率が有意に低下した (p < 0.05)。卵黄色を除く卵質は処理区間で有意な差が認められなかった。卵黄色はdiet II ~ IV でdietI と比較して低い傾向を示した。以上より、市販の配合飼料中トウモロコシ配合割合 (57%) の75% までのキャッサバミールによる代替は、産卵成績と卵質の低下をもたらさないことが示された。
  • 大島 一郎, 冨永 輝, 松元 里志, 野村 哲也, 廣瀬 潤, 石井 大介, 片平 清美, 山口 浩, 主税 裕樹, 髙山 耕二, 中西 ...
    2015 年 58 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    黒毛和種育成雌牛用敷料として利用したオガ屑(以下、オガ屑区)およびモウソウチク解砕繊維状竹粉(以下、解砕竹粉、竹粉区)の堆肥化試験を行った。両区とも水分調整および切返しを行いながら5 ヵ月間堆肥化発酵処理を行い、葉菜類および根菜類の発芽試験を行った。敷料利用前の解砕竹粉は、オガ屑に比べ有意に高い酸性デタージェント溶液可溶有機物含量を示した(P <0.05)。堆肥化開始後2 ヵ月目以降,オガ屑区で切返し後の温度上昇が鈍化した。堆肥化開始後1 ヵ月目以降、竹粉区でpH は有意に高く推移した(P <0.05)。堆肥化発酵時に発生したアンモニア濃度は、オガ屑区で2 ヵ月目以降不検出となったが、竹粉区では4 ヵ月目まで検出された。発芽試験では、竹粉区で発芽率が有意に低下した(P <0.05)。以上より、解砕竹粉は、オガ屑よりも長期の堆肥化期間を要し、5 ヵ月間の堆肥化では、作物の発芽に影響を及ぼす可能性が示唆された。
  • 坂本 信介
    2015 年 58 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    小規模・離散型畜産農家をモデルとした農業生態系において、防風林の下草管理が林内に自然分布するノネズミの個体数の変化や人為的環境への近接に与える影響を検証するため、5 つの捕獲プロットを防風林に、 9 つの捕獲ラインを防風林に隣接する家畜飼料用トウモロコシ畑に設け、防風林の下草除去にともなうこれら捕獲地点での個体数の変化を解析した。本研究ではアカネズミの成体のみが捕獲され、他のノネズミは捕獲されなかった。下草を除去した3つのプロットのうち、初期個体数の少ない2 つのプロットでは下草除去区のみにおいて著しい個体数の減少が観察された。また下草除去によって、全ての捕獲ラインの個体数が減少した。すなわち、一般の農作業の過程でおこなわれる程度の下層植生の管理でも防風林内に生息する野生のアカネズミの個体数を減らすことができ、その結果、防風林から畑作地への侵入頻度を下げることができると考えられた。
  • 日置 久美子, 川崎 千穂子, 山元 正博, 林 国興, 屋 宏典
    2015 年 58 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では黒麹および黒麹リキッドフィード(LF) 給与が肥育豚の生産性に与える影響を調べた。実験1 では鹿児島バークシャーを用い、市販配合飼料に黒麹0.05%および0.1%を配合して給与した。その結果、無添加対照区に比べ黒麹0.05%区において増体量は改善傾向にあり飼料要求率(FCR)は有意に低下した。実験2 では三元交雑種(LW・D)去勢雄に乾物として配合飼料の20%および40%をLF(食品残さを黒麹で発酵させた)で代替して与えた。その結果、対照区(配合飼料区)に比べ20%給与区で増体量は改善されFCRは低下した。実験3 では、実験2 に準じ、配合飼料の20%を2 種のLF(黒麹と2 種の乳酸菌で調製した)で代替して与えた。その結果、Lactobacillus casei で調製したLF 給与区において、増体量およびFCR が顕著に改善された。以上のことから、黒麹を利用して栄養価の高いLF を作ることができ、黒麹給与により肥育豚の生産性が向上することが示された。
  • 主税 裕樹, 花田 信太郎, 木山 孝茂, 廣瀬 潤, 大島 一郎, 髙山 耕二, 中西 良孝
    2015 年 58 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    ヤギを利用したエゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)(以下、ギシギシ)の生物的防除技術を確立する上での基礎的知見を得ることを目的とし、ギシギシが侵入した約1ha のイタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)草地において、放牧密度がほぼ等しくなるようにウシ区とヤギ区を設け、2009年4 〜 5 月の40 日間連続放牧した際の採食行動を両区間で比較した。放牧地におけるギシギシの株被食率およびその現存量を調査するとともに、出現植物の相対積算優占度(以下,SDR2')および両家畜の採食植物頻度(以下、GF)からギシギシに対するIvlev の選択性指数に基づく指数(以下、SI)を求めた。ギシギシの現存量は放牧16 日目および退牧時においてウシ区に比べ、ヤギ区で有意に少なく(P< 0.05)、その株被食率は試験期間中、後者で有意に高い値を示した(P<0.05)。ギシギシに対するGF はウシ区で0 〜 0.6%、ヤギ区では11 〜 14%であり、SI はいずれも負の値であったものの、放牧初期および後期ともにウシ区に比べてヤギ区で小さい値を示した。以上より、ウシおよびヤギともにギシギシを好まない傾向が認められたものの、後者でその程度が小さかったことから、後者は前者ほど強くギシギシを忌避しないことが示唆された。
  • 長嶺 樹, 松村 柚香, 砂川 勝徳
    2015 年 58 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、長期間保存できる豆腐粕サイレージを調製し、豆腐粕サイレージの給与が雄子ヤギの成長及び肉生産に及ぼす影響を明らかにすることであった。本研究で調製した豆腐粕サイレージは長期間保存することが可能であり( 乳酸含量が高く、酪酸は含まず)、嗜好性が良好であった。12 頭のヤギ( 日本ザーネン種×ヌビアン種、3 カ月齢、平均体重22.3 kg) が、2 つのグループ(control feed group: CFG、tofu lees silage group: TSG) に配置された。CFG の動物には粕を配合しない対照飼料を、TSG の動物には豆腐粕を20%含む豆腐粕サイレージを、それぞれ1 日増体量100 g が達成できる量を給与した、アルファルファヘイキューブは、各グループに1 日1-2 kg を2 回に分けて給与した。クレイングラス乾草と飲水は自由に摂取させた。3 〜12 カ月齢まで、体重及び体各部位のサイズを月1 回測定した。12 カ月齢時に動物を屠畜し、枝肉とロース肉の性状を分析した。TSG 及びCFG におけるTDN 及びDCP 摂取量は、成長に必要なTDN 及びDCP 要求量を充足していた。ところが、TSG における成長速度及び肉生産量は、CFG におけるそれらより有意(p < 0.05)に大きな値を示した。本研究の結果は、豆腐粕サイレージを用いて子ヤギを育成すると、成長が促進され、肉生産量が増大することを示している。
  • 建本 秀樹, 大城 柳子, 島田 晴加, 金野 俊洋, 山中 賢一, 芦沢 幸二
    2015 年 58 巻 1 号 p. 75-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    精液輸送時の精子への精漿暴露時間の延長により、沖縄在来豚アグー精子の凍結融解後の精子性状は著しく低下する。そこで本研究では、カゼインを添加した精液輸送用懸濁液(BTS) を用い、アグー精液輸送時のカゼイン処理が凍結融解後の精子性状を改善するか否かについて検討した。アグー3 頭から手圧法で採取した精液を、直ちにカゼインナトリウムを含むBTS で等倍希釈し( カゼイン最終濃度0.5%)、30℃保温下で1.5-2 時間をかけて研究室に持ち帰った。そして、既報に従い凍結処理を行った後、融解精子の性状を各種パラメータを用いて測定した。その結果、個体間で差が認められたものの、カゼイン無添加区( 対照区) に比較して、カゼインを含むBTS で精液を希釈輸送し凍結した全ての精子で精子運動性とミトコンドリア正常性が改善された(P < 0.05)。また、精液輸送時のカゼイン処理により凍結前の精子細胞内コレステロール量が対照区に比べて高く保たれた。さらに、対照区に比較して、カゼイン処理区の細胞内ATP 含有量や先体由来タンパク質分解酵素活性は高いレベルで維持され、逆に、活性化型カスパーゼならびに断片化DNA を有する精子の割合は有意に減少した(P <0.05)。以上の結果から、BTS への0.5% カゼイン添加は、精液輸送時の精漿成分によるアグー精子耐凍能低下を抑制し、凍結融解後の精子性状を効果的に改善することが明らかとなった。
  • 坂本 信介
    2015 年 58 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    採餌効率と環境の安全性を低下させると動物の環境利用頻度が低下するという関係を利用して、家畜飼料用トウモロコシ農地における採餌効率を制御し、また農地に隣接する防風林の枝打ちをおこなうことで鳥類の農地利用を制限できる可能性を検証した。乳牛の餌槽への侵入という観点から問題視されるスズメ、ハシブトガラス、ハシボソガラス、キジバト、また穀類の食害被害を引き起こすカワラヒワが高頻度に農地に侵入していた。飛来ごとの滞在時間により定義した餌あきらめ時間は低採餌効率条件より高採餌効率条件で有意に長かったが、小型鳥類の場合、防風林の枝打ちをすると採餌時間が短くなった。採餌条件を設定後4 日目、8 日目の餌あきらめ時間は低採餌効率条件を経験した場合に短い傾向にあった。本研究により、農地の辺縁部に低採餌効率の環境を提示することによって、鳥類の農地内での採餌活動を一時的に減らせる可能性が示唆された。
  • 服部 育男, 神谷 充, 春日 久志, 吉田 広和, 川田 隆博, 井 将也, 加藤 直樹, 小林 良次
    2015 年 58 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    南西諸島で普及が進んでいる飼料用サトウキビと未利用資源を活用した発酵TMR 調製技術を開発することを目的に、製糖残さや焼酎粕の混合が発酵TMR の発酵品質と人工乾物消化率(IVDMD)に及ぼす影響を検討した。TMR 中の乾物割合で30%、40% および50% をハカマとバガスを等量(1:1) で混合し、残りを飼料用サトウキビサイレージとした区を対照区とした。これに焼酎粕2%、焼酎粕2% と糖蜜5%、糖蜜5% を飼料用サトウキビサイレージと置換した区を設け、パウチ袋で発酵TMR を1 月と6 月に調製した。1 月調製ではV-score はいずれも90 点以上で優れていた。6 月調製ではハカマ・バガスの混合割合は発酵品質にほとんど影響しなかった。V-score は対照区では80 点前後であった。焼酎粕の単独添加は80 点以上で他より高い傾向を示した。IVDMD は両月調製のいずれもハカマ・バガスの混合割合が高まると低下した。
原著論文(短報論文)
  • 竹田 志郎, 久保田 大樹, 竹之山 愼一, 河原 聡, 六車 三治男
    2015 年 58 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では食肉の消化酵素分解物の抗酸化作用についてDPPH ラジカル消去法および酸素ラジカル吸収能(ORAC) 法により検討した。その結果、牛肉、豚肉、鶏肉の消化酵素分解物に、抗酸化物質であるカルノシンと同等以上の抗酸化活性が認められたが、それらの活性値に大きな差異は認められなかった。ORAC 法により、各種食肉の消化酵素分解物の抗酸化力持続能を比較したところ、消化酵素分解鶏肉の抗酸化力持続継時変化様式は、消化酵素分解牛肉および豚肉の継時変化様式と異なった。この要因として、消化酵素処理により生じたペプチドの種類が影響している可能性が考えられた。以上より、ヒトが食肉を摂取したとき、体内で消化により生じる食肉分解物が抗酸化作用を発揮する可能性が考えられた。また、各種食肉消化酵素分解物を構成するアミノ酸類の違いにより、 ORAC 法の抗酸化力持続継時変化様式が異なることが示唆された。
原著論文(技術報告)
  • 江藤 毅, 正木 美佳, 大久保 慶信, 加藤 悟郎, 森田 哲夫
    2015 年 58 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    サーモクロンは温度を連続記録できる安価で最小のデータロガーである。これを腹腔内に埋め込むことで中核温の記録が可能となり、それにより小型内温性動物の温熱生理に関する研究が飛躍的に進展した。しかし、完全防水ではないため、腹腔内に埋め込む前に防水処理を必要とするが、その手法を具体的に記した論文はない。そこで、本研究では、パラフィンと樹脂を被覆材とする防水処理の手順を記し、本被覆材による温度記録精度の信頼性について検討した。防水処理は融解した被覆材に木綿糸を結びつけたサーモクロンを沈め、引き上げることで行った。本被覆材による防水処理は温度記録精度に影響しなかった。我々は、本手法で防水処理したサーモクロンを小型種の腹腔内に留置し、恒常的に体液に曝露される条件下で中核温の連続記録に成功している。このことは、家畜を含む大型種においては測定部位を選ばない体温モニタリングを可能にすると考えられた。
feedback
Top