日本暖地畜産学会報
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54 巻, 2 号
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総説
  • 神谷 充, 服部 育男, 上村 昌志, 佐藤 健次
    2011 年 54 巻 2 号 p. 149-159
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    肥育牛における飼料自給率向上に向けて,飼料用米や食品残さの活用が重要である.飼料用米は,肥育牛の濃厚飼料中に乾物ベースで籾米30~60%,玄米30~40%,籾米ソフトグレインサイレージ30%程度は問題なく給与できると報告されている.食品残さは,ビール粕5~30%程度,豆腐粕10~30%程度,焼酎粕は数%程度の給与実績がある.
    飼料用米と食品残さを組み合わせた発酵TMRの給与技術に関しては,黒毛和種経産牛の肥育期,去勢牛の仕上げ肥育期,および肥育中後期に,玄米,豆腐粕,フスマ,カンショ焼酎粕濃縮液または醤油粕等で調製した発酵TMRの給与試験を実施した.配合飼料の約60%代替給与したが,飼養成績に問題なく,良好な枝肉成績が得られた.また,カンショ焼酎粕濃縮液を含む発酵TMRを給与すると,胸最長筋中αトコフェロール含量が増加したことから,飼料用米と組み合わせる食品残さの種類によって,飼料自給率の向上と牛肉の高付加価化が期待できると考えられた.
原著論文(一般論文)
  • 小池 晶琴, 仁木 隆博, 佐伯 真菜美, 内平 倫義, 松田 靖, 岡本 智伸, 村田 達郎, 芝田 猛, 椛田 聖孝
    2011 年 54 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    本実験では,ブロイラーの腹腔内脂肪蓄積に及ぼすヤーコン茎葉給与の影響を明らかにすることを目的とした.乾燥粉末化したヤーコン茎葉を添加した(外付け)飼料を,10日齢から63日齢まで雄ブロイラー(チャンキー系)に給与し,体重,体3部位重量および腹腔内脂肪の重量と脂肪酸組成を調べた.その結果,対照鶏と比べ,ヤーコン茎葉給与鶏は21日齢から成長が遅れ,63日齢で体重は有意に小さくなった.しかし,胸肉とササミを含む前肢部,もも肉を含む後肢部の重量に有意差は認められなかった.これに対して,腹腔内脂肪の重量は給与鶏が対照鶏より著しく低く,明らかな減少を示した.一方で,腹腔内脂肪の脂肪酸組成に大きな変動はなかった.以上の結果より,ブロイラーにおいてヤーコン茎葉乾燥粉末の給与は産肉量を著しく損なうことなく,腹腔内脂肪の蓄積に抑制的に影響することが示唆された.
  • 神谷 裕子, 神谷 充, 服部 育男, 佐藤 健次, 鈴木 知之, 林 義朗
    2011 年 54 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    黒毛和種肥育牛4頭(平均月齢11.6±0.4ヶ月,平均体重:364.5±37.2 kg)を供試し,市販配合飼料(配合区)またはカンショ焼酎粕濃縮液を含む発酵TMR(TMR区)に稲わらを給与して,クロスオーバー法により,血中ミネラル濃度および尿中ミネラル排泄に及ぼす影響を検討した.総乾物摂取量には,両区で有意な差は認められなかった.ミネラル摂取量では,配合区と比較しTMR区でナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl),リン(P),カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)摂取量が有意に多かった(P<0.01).血漿中Na,K,Cl,無機リン(Pi),CaおよびMg濃度には両区で有意な差は認められなかった.配合区と比較しTMR区において,尿中Mg濃度が有意に低く(P<0.05),尿中Ca濃度が高い傾向(P<0.10)を示した.クレアチニン当たりの尿中ミネラル含量については,配合区と比較しTMR区において,K含量が有意に高く(P<0.05),Cl含量が高い傾向(P<0.10)を示し,Mg含量が低い傾向(P<0.10)を示した.尿量および尿pHには,両区で有意な差は認められなかった.
  • 小荒井 晃, 住吉 正, 佐藤 健次, 加藤 直樹, 服部 育男, 中野 洋, 吉川 好文, 大段 秀記
    2011 年 54 巻 2 号 p. 177-188
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    飼料用イネ2回刈り直播栽培では,最初の収穫時期が1回刈り直播栽培と比較して,2か月程度早まるため,一部の除草剤が使用できず,除草剤を使用した雑草防除体系は1回刈り直播栽培と比較して不完全な体系とならざるを得ない.そこで,2回刈り乾田直播栽培において,不十分な除草体系を補完するために,イネ品種自体が持つ雑草抑圧力が優れた品種「ルリアオバ」を活用した雑草制御法を検討した.その結果,クサネム(Aeschynomene indica L.)が優占しない水田ではイネ出芽前にグリホサートカリウム塩液剤および入水前にシハロホップブチル・ベンタゾン液剤を処理する除草体系,クサネムが優占する水田ではイネ出芽前にグリホサートカリウム塩液剤,入水前および入水後にシハロホップブチル・ベンタゾン液剤を処理する除草体系で,ほぼ完全に雑草を制御できることを明らかにした.
  • 波平 知之, 高橋 憲司, 仲村 一郎, 赤嶺 光, HOSSAIN Md. Amzad, 玉城 政信
    2011 年 54 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    沖縄県内の黒毛和種子牛生産における妊娠期間の2001~2010年の推移と,それに関する産次,子牛性別,子牛の父牛の系統について検討した.平均妊娠期間は287.7±5.5日で,産次ごとでは初産次の286.2±5.8日が最も短く,2産次以上より有意(p<0.01)に短かった.産次を経過するにつれ妊娠期間は長くなり8産次で288.8±5.6日と平均より1.1日長く,最大値となった.雄子牛の在胎期間は雌子牛に比べて有意(p<0.01)に1.2日長かった.子牛の在胎期間を父牛の系統別に比較すると田尻系は藤良系よりも0.7日,気高系よりも1.1日いずれも有意(p<0.01)に長かった.分娩年次では2001年の妊娠期間が286.5日と最も短く,年次を経過するにつれほぼ長くなったが,年次を経るごとに産次数も増加傾向にあり,重回帰分析によると妊娠期間に対して有意な関係があるのは産次であった.したがって年次の経過に伴う妊娠期間の増加は産次がその要因の一つと示唆された.
  • 西村 慶子, 中原 高士, 中西 良孝
    2011 年 54 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    乳用牛における圧ぺんモミ米の給与割合が,養分摂取,第一胃内容液性状ならびに窒素出納に及ぼす影響を調べた.4頭のホルスタイン種乾乳牛を用い,対照区にはモミ米を給与せず(0%区),試験区は乾物ベースで濃厚飼料中の20%(20%区)および40%(40%区)をモミ米に置き換えて給与した.乾物摂取量に有意な区間差は認められなかった.給与飼料のデンプン含量は0%区,20%区および40%区の順に14.8%,20.9%および26.1%であったが,その消化率に区間差は認められなかった.TDN含量は0%区と比べて40%区で有意に低かった(P<0.05)ものの,TDN摂取量に区間差は認められなかった.第一胃内容液性状は,プロピオン酸比率を除き,pH,総VFA濃度,酢酸比率,酪酸比率,アンモニア態窒素濃度に区間差は認められなかった.また,糞中窒素割合は他の区よりも40%区で有意に低かった(P<0.05)が,可消化有機物摂取量当たりの第一胃内微生物態窒素合成量および血中尿素態窒素濃度に区間差は認められなかった.以上の結果から,乾乳牛に給与する濃厚飼料の一部を圧ぺんモミ米で40%まで代替することが可能なことが示唆された.
原著論文(短報論文)
  • 常石 英作, 田中 正仁, 鈴木 知之, 神谷 裕子, 中村 好徳, 神谷 充, 柴 伸弥
    2011 年 54 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    乳廃牛のロース芯カルニチン含量は,食肉向け出荷前の最終乳期搾乳量との間に顕著な負の相関が認められ,乳廃牛24頭において回帰式 « カルニチン含量(mg/100 g) = -0.004 × 最終乳量(kg) + 104 » が得られた.未経産牛1頭を含めた場合(n=25)は,重回帰式 « カルニチン含量(mg/100 g) = 107 + 0.56 × 月齢 - 15.0 × 分娩回数 - 0.0050 × 最終乳量(kg) » が得られた.牛乳中のカルニチン含量は筋肉中の含量と比較して少ないものの,乳牛では乳生産量が極めて多いため,搾乳量が体内カルニチン蓄積量に影響することが明らかになった.
  • 神谷 裕子, 鈴木 知之, 田中 正仁
    2011 年 54 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    夏季高温下において,妊娠育成牛6頭を供試し,分娩前3週間の飼料の違いが周産期の栄養状態および乳生産に及ぼす影響を検討した.分娩前の飼料は対照区TMR(TDN:69.8%,CP:12.4%,NDFom(中性デタージェント繊維):43.5%)または高エネ区TMR(TDN:73.9%,CP:12.1%,NDFom:37.4%)とし,妊娠育成牛の要求量の1.1倍を上限に自由採食させた.分娩後は,両区で同一の泌乳牛用TMR(TDN:75.3%,CP:12.9%,NDFom:36.0%)を給与した.供試牛の体温は,分娩前2週間,9:00に高エネ区で有意に低下していた(P<0.05).分娩前の飼料摂取量には,有意な差は認められなかった.分娩2週間前のTDN充足率は対照区で97.8%,高エネ区で106.0%であった.分娩前の総コレステロール濃度は,対照区と比較し高エネ区で有意に高くなった(P<0.05).分娩前飼料の違いは,分娩後の血漿中代謝産物に影響を及ぼさなかった.分娩後1-4週において,対照区と比較し,高エネ区では乳量が有意に高くなった(P<0.05).分娩後初回排卵日数は,分娩前飼料の影響を受けなかった.
  • 高山 耕二, 島袋 卓, 中西 良孝
    2011 年 54 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/20
    ジャーナル フリー
    アイガモ農法における野生鳥獣害防止法の確立に向けた基礎的知見を得ることを目的とし,アイガモ農法実践農家を対象に郵送によるアンケート調査を実施し,水田放飼したアイガモ雛への野生鳥獣害について検討した.
    有効回答数は75(回答率21%)と決して多くはなかった.アンケート回答者に限ってみれば,アイガモ雛への野生鳥獣害の発生(2008年度)は65.3%であり,水田放飼開始直後(0~7日目)の被害が最も多かった.アイガモ雛を食害した野生鳥獣は農家によりカラスおよびイタチと認識されている場合がそれぞれ24.9および23.6%に上り,その一方で野生鳥獣の種類を特定出来ない場合が40%以上あった.被害防止法としては鳥類に対してはテグス類,哺乳類には電気柵の使用が大半を占めたが,被害発生の状況をみる限り防除効果は十分ではなかった.
    以上のように,回答した農家の多くがアイガモ雛に対する野生鳥獣害を被っており,アイガモ雛を食害する野生鳥獣の特定を急ぐとともに,効果的な被害防止法の確立に向けた検討を進めていく必要性が示唆された.
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