日本暖地畜産学会報
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63 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 菊川 裕幸, 蔡 義民, 柴田 昌三
    2020 年 63 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域の低・未利用資源である竹材をサイレージの主原料として用いるため,2種類の竹種,マダケ(Phyllostachys bambusoides Siebold et Zuccarini)およびモウソウチク(P. pubescens Mazel ex Houzeau de Lehale)の稈部および葉部の部位別に,水分含量を35,45,55%に調整し(試験1),試験2では2種類の竹材の部位別に酒粕と乳酸菌RO50,ならびにその両方を添加し,ともにサイレージ化後の飼料成分を分析した.試験3では,モウソウチクに酒粕と糖蜜を5,10,15%添加し,試験4ではモウソウチクにRO50,セルラーゼ,糖蜜および酒粕を添加し,ともにサイレージの発酵品質を分析し,試験5では,試験3と試験4に供したサイレージの飼料成分を分析した.その結果,水分含量はサイレージの化学成分に影響を及ぼさず,一方,酒粕を5%添加することによりサイレージのpHを有意に低下させ,粗タンパク質を増加させ,かつ酪酸やプロピオン酸が少なく良質な品質のサイレージとなった.

  • 山中 麻帆, 林 英明, 中川 敏法, 浅野 桂吾, 長嶺 樹, 平山 琢二
    2020 年 63 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    獣害対策に関連して,近年ニホンジカの食肉利用が重要な課題となっている.しかし,日本においてシカ肉は獣臭い,硬いなどといったネガティブなイメージが強く,食肉利用は未だ十分に進んでいないのが現状である.著者らは前報において,シカ肉をワカメで添加処理することで食味が改善することを報告した.また,アルギン酸は高い保水性を有していることから,前報ではワカメ中のアルギン酸がシカ肉の食味改善に関与した可能性があると考察した.このようなことから本研究では,シカ肉へのワカメおよびアルギン酸添加処理がシカ肉の理化学性状に与える影響について検討した.測定項目は,ドリップロス,加圧保水性,加熱損失,剪断力価,遊離アミノ酸および関連化合物含量とした.食肉のジューシーさに関連する加圧保水性は,無添加に比べアルギン酸で添加処理したものが有意に上昇した.また,食肉の硬さに関連する剪断力価は,無添加に比べワカメで添加処理したものが有意に低下した.このことから,シカ肉へのワカメ添加処理がシカ肉の物理性状を改善することが示唆された.

  • 大小田 勉, 井之上 弘樹, 高橋 宏敬, 喜田 克憲, 多田 司, 井尻 大地, 大塚 彰
    2020 年 63 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    体重約60kgの「かごしま黒豚」(バークシャー種去勢雄)27頭を,トウモロコシ・大豆粕主体の対照(0%)区と甘藷を10%,20%,30%配合した試験区に分け(6~7頭/区),TDN70%・CP13.5%の各試験飼料を制限給餌して,115kgに達した時点でと畜・解体した.甘藷配合量の増加に伴い,1 日増体量は0%区の602gから,20%および30%区の565gへと減少し,出荷日齢は10%区が最短で,30%区が最長であった.枝肉重量は20%区で最も低かったが、ロース断面積および上物率に負の影響はなかった.筋組織中の19種類の代謝物が甘藷給与に応答して有意に増減し,タンパク質代謝経路の変動が示唆された.食味評価においては,甘藷給与区では“香りの好ましさ”と“脂肪のサッパリさ”についての評価が高く,30%区では“噛み切りやすさ”,“咀嚼しやすさ”,“歯ごたえの好ましさ”についての評価が最も高かった.

  • 屋良 朝宣, 波平 知之, 川本 康博, 仲村 一郎
    2020 年 63 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    沖縄地域のジャイアントスターグラス(GS)とトランスバーラディジットグラス(TR)の黒毛和種繁殖牛の輪換放牧地において,¹⁵N同位体窒素(¹⁵N)を用いて施肥由来窒素の利用効率を測定し,化成肥料投入の集約的放牧管理下の施肥効率について検討した.放牧牛による採食部位の乾物収量,全窒素含量ならびに¹⁵N回収率に有意な草種間差はなく,採食部位の施肥由来窒素の利用効率は,4回の輪換放牧管理でGS草地が33.8%, TR草地が31.8%となった.両草地における部位別の¹⁵N回収率から,退牧後に追肥した施肥由来窒素の5.1%が根と刈株に吸収・蓄積され,10.7%が根圏土壌中に蓄積され,32.8%が採食部位に吸収・利用されていた.両草地の植物体―根圏土壌圏内における¹⁵N回収率は48.6%となり,施肥由来窒素の51.4%が放牧地圏外に流亡・脱窒していることが示唆された.

  • 大島 一郎, 柳田 大輝, 野崎 郁, 石井 大介, 冨永 輝, 飯盛 葵 , 松元 里志, 片平 清美, 中村 南美子, 髙山 耕二, 中 ...
    2020 年 63 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    黒毛和種去勢牛(10ヵ月齢)8頭を4頭ずつ2区に分け,粗飼料として稲ワラを給与する対照区および解砕繊維状竹粉サイレージを給与する試験区を設け,発育と枝肉特性に及ぼす影響を調査した.粗飼料給与以外の飼養管理を両区とも同様に行い,28ヵ月齢で両区一斉に屠畜・解体した.試験区では,18ヵ月齢以降,徐々に採食量が低下した.対照区に比べて試験区で11,22および25ヵ月齢時の採食行動型割合と11,13,18および22ヵ月齢時の反芻行動型割合はいずれも有意に低下した(P<0.05).また,18ヵ月齢時の粗飼料価指数(RVI)と第一胃内pH は対照区よりも試験区で有意に低下した(P<0.05).試験区では,21ヵ月齢以降で体重増加が鈍化し始め,24ヵ月齢で体重が減少に転じた.試験区の出荷時体重は対照区のそれを100㎏以上下回ったものの,枝肉成績に有意差は認められなかった.また,両区とも供試牛の胃の内部形態に差はなく,病変も確認されなかった.以上より,解砕竹粉サイレージは肥育牛の稲ワラ代替粗飼料として給与可能であるものの,100%代替して肥育全期間給与した場合には発育停滞を招くことが示された.

  • 中島 悦子, 川添 建太郎, 森山 洋憲, 吉金 優, 沢村 正義
    2020 年 63 巻 2 号 p. 101-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    本研究では,ヤギ乳の成分特性を調べた.ヤギ乳では牛乳よりも乳脂肪分,タンパク質および乳糖の含量が有意に低く(P<0.05),乳固形分は牛乳と同程度含まれていた.ヤギ乳中の一般成分については,季節変動と産地間の差が認められた.ヤギ乳では中鎖飽和脂肪酸(以下,MCSAFA)の割合が平均21.0%であるのに対し,牛乳のそれは13.1%であった.MCSAFAの割合は,6,10および11月で,他の月よりもやや高かった.ヤギ乳は年間平均5.4mg/100mLの遊離タウリンを含有し,牛乳のそれの2倍程度であった.遊離タウリン含量は産地によって異なるとともに,季節によっても変動し,4~5月において最も高く,徐々に低下した.ヤギ乳中のαS1-カゼインは,牛乳と比べて極めて少なかった.以上より,ヤギ乳は牛乳よりもMCSAFAとタウリンを多く含むが,αS1-カゼインは極めて少ないという成分特性を示した.

  • 中村 好德, 福間 康文, 細見 亮太, 細田 謙次
    2020 年 63 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/17
    ジャーナル フリー

    交雑種去勢雄牛8頭の半腱様筋を用いて,氷点下(-1℃)の未凍結貯蔵による包装種別(簡易および真空包装)の違いが牛部分肉のドリップロスに及ぼす影響を調査した.0,36,72ならびに108日間の貯蔵試験を行ったところ,官能検査は貯蔵108日目の簡易包装のみに異常(腐敗臭)が認められた.また,簡易包装のみ,ドリップロスおよびpHは貯蔵0日目に比べて貯蔵72日目以降で有意に高かった.水分含量は貯蔵108日目に包装種別で違いが認められた.遠心保水性,一般生菌数ならびに凝固点に包装種別の違いは認められなかった.一方,包装種別に関係なく筋肉細胞間隙の拡大や細胞内の崩壊は確認されず,部分肉中央部の筋肉組織構造は貯蔵中も維持された.以上より,-1℃貯蔵では貯蔵72日目までは包装種別に関係なく肉質は維持されるが,それ以降は包装種別の影響を受けることが示唆された.

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