日本暖地畜産学会報
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65 巻, 2 号
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一般論文
  • 邉見 広一郎, 續木 靖浩, 徳丸 美夢, 小林 郁雄
    2022 年 65 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    季節による放牧牛の生理状態を把握することは,適正な飼養管理のために有効である.本研究では黒毛和種繁殖雌牛において放牧地草量の違いが体温,歩数,体重に与える影響を明らかにするために春季と夏季で比較を行った.放牧期間は両季節とも7日間であり,放牧前後に草量を測定した.非妊娠で子牛のいない同じ雌牛5頭を供試牛として用いた.体温は小型データロガーを腟内留置型黄体ホルモン製剤に装着し腟内に挿入し,測定した.歩数は左前脚に歩数計を装着した.放牧前後の体重を測定し,放牧中の体重増加量を計算した.体温変動は季節間で大きく異なり,放牧中の体温と歩数は春季が夏季より高かった(P<0.01).両季節とも歩数と体重増加量の間には有意な負の相関が認められた(P<0.05).放牧時期の違いにより放牧地の草量と質が異なり,草を探すために放牧地を歩き回った結果,運動量が増加し,放牧中の体温上昇が季節により異なったものと示唆された.

  • 六車 三治男, 川越 聖人, 木本 早紀, 川北 久美子, 竹之山 愼一, 中村 豊郎
    2022 年 65 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    日本独自の鰹節カビ菌「ユーロティウム ハーバリオラム(Eurotium herbariorum)」を利用して生ハムを発酵させ,熟成風味と食品機能性が付与された新規な発酵食肉製品を開発した.豚肩ロース肉を塩漬後,鰹節菌を噴霧し,20℃,湿度85% でカビを発生させた.さらに18℃,湿度65% で歩留70%,60%,50% になるまで熟成・乾燥させた.鰹節菌の噴霧後4日でカビの発生が認められ,10日で全面がカビで被覆された.歩留が70%,60% および50% になるまでに,それぞれ14日,32日および84日を要した.いずれの製品もpHは約6で水分活性は0.89以下であった.発酵・乾燥過程で熟成風味が発現し,高い血圧上昇抑制効果や抗酸化活性などの食品機能性が認められた.また,カビ発酵に伴い筋肉で代謝される分岐鎖アミノ酸のVal,Leu,IleやAlaの有意な増加が認められ,スポーツ栄養の分野にも貢献できる可能性が示唆された.さらに,好ましい食味と食感を持ち,GluやAspが豊富な旨味成分の凝縮された新規和風生ハムが完成された.

  • 中西 良孝, 鶴 由璃子, 久冨 紫音, 中村 南美子, 奥津 果優, 髙山 耕二, 大島 一郎, 菊地 早織, 板垣 亨哉
    2022 年 65 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    ウイスキー粕を用いた肥育牛向け発酵TMRを開発するための基礎的知見を得ることを目的とし,糖化残渣(以下,BDG),蒸留残渣(以下,BDS),稲わら,ビートパルプおよび糖蜜を混合した発酵TMRの品質,採食性および栄養価を検討した.BDGとBDSを原物重比で等量混合したBDG・BDS区,40:60で混合したBDS60区,各々に乳酸菌製剤(以下,LAB)を添加したBDG・BDS・LAB区およびBDS60・LAB区の計4区を設けた.フリーク評点はBDS60・LAB区で99点と他の区と比べて有意に高く(P<0.05),最も評価が高かった.BDS60・ LAB区に対する肥育牛の採食率は給与後3日目で約80%となった.BDS60・LAB区の粗タンパク質含量は15.1%,可消化養分総量は68.5%であった.以上より,LABを添加し,BDGよりもBDSを50%多く混合した発酵TMRの品質は優れ,嗜好性および栄養価も比較的良好であることが判明した.

  • 中西 良孝, 野島 舞葉, 久冨 紫音, 中村 南美子, 髙山 耕二, 大島 一郎, 園田 寛人, 山内 正仁
    2022 年 65 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    異なるアブラヤシ(Elaeis guineensis)副産物(空果房および樹幹)を主体培地としてヒラタケ(Pleurotus ostreatus)菌床栽培した後の廃菌床を含む発酵TMRの品質および肉用繁殖牛による嗜好性を検討した.廃菌床を含まない対照区(原物重比でチモシー乾草40.5%,配合飼料8.6%,パイナップル残渣14.6%および乳酸菌製剤0.1%以下)と発酵処理した空果房(以下,FEFB)および樹幹(以下,OPT)主体培地由来廃菌床を用いて対照区の材料を原物で5%または10%代替した4試験区の計5処理区(各区3反復)を設け,乾物率が50~55%となるよう水分調整した.pHは全区とも4.3以下であり,乳酸および酢酸含量に有意な区間差は認められず,酪酸は検出されなかった.また,フリーク評点は全区とも99点以上であり,区間差はみられなかった.さらに,ウシによる嗜好性にも区間差はなかった.以上より,異なるアブラヤシ副産物主体培地由来のヒラタケ廃菌床を用い,肉用繁殖牛向け発酵TMRの材料を10%まで代替しても,発酵品質および嗜好性は廃菌床を含まない場合と比べて遜色ないことが明らかとなった.

  • 中村 好德, 福間 康文, 細見 亮太, 細田 謙次
    2022 年 65 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    ブタ8頭,ニワトリ12羽を用いて,可食期間に及ぼす氷点下の未凍結貯蔵の影響を調査した.真空包装された豚部分肉および鶏中抜き半丸を−1℃でそれぞれ0-57日間と0-47日間貯蔵した.官能評価は豚肉で41日目,鶏肉で30日目まで異常は認められなかった.一般細菌数,低温細菌数ならびに嫌気性細菌数は貯蔵によりそれぞれ漸次増加したが規制値以下で推移した.pH,メトミオグロビン含量,2-チオバルビツール酸反応性物質含量ならびに揮発性塩基窒素(VBN)含量のうち,鶏肉のpHとVBN含量が有意に上昇したが,氷結晶生成により内部崩壊した筋肉細胞は認められなかった.従って,豚部分肉と鶏中抜き半丸を−1℃貯蔵すると,それぞれ32日間および24日間の可食期間の設定(安全係数0.8の場合)が可能であり,肉質が保持されることが示唆された.

短報論文
  • 佐藤 正道, 秋友 一郎
    2022 年 65 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    竹粉砕物サイレージ給与が肥育豚の血液性状,枝肉成績および豚肉の味覚等に及ぼす影響を調査した.供試豚は三元雑種豚(LWD:平均体重75.7±3.8kg,雌雄混飼)12頭を用い,配合飼料のみ給与する対照区と,配合飼料に竹粉砕物サイレージを重量比で10% 置き換えた飼料を給与する竹サイレージ区に分け,不断給餌した.血液性状は竹サイレージ区でマグネシウムが有意に高く(P<0.05),アルブミンが有意に低かった(P<0.05).枝肉等級は両区で有意差はなく,格落頭数も同等であったが,竹サイレージ区で「締まりきめ」が良い格付傾向(P<0.1),「肉の色沢」が有意に良い格付(P<0.05)であった.味認識装置を用いたゆで肉の味覚分析の結果,竹サイレージ区で旨味を強く感じる可能性が示唆された.

    以上より,肥育豚への竹粉砕物サイレージ給与は,血液性状および枝肉成績に影響はなく,「締まりきめ」および「肉の色沢」の等級向上と,ゆで肉を食べた時に旨味を強く感じる可能性が示唆された.

技術報告
  • 大島 一郎, 成田 空子, 柳田 大輝, 冨永 輝, 石井 大介, 松元 里志, 片平 清美, 髙山 耕二, 中西 良孝
    2022 年 65 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    夏期(6~9月)において,黒毛和種哺乳子牛6頭(雄1頭および雌5頭)を2群に分け,直射日光を浴びない対照区(雌3頭)と日中6時間自由に直射日光浴が行える試験区(雄1頭および雌2頭)とし,4日齢から10週齢までの間の日光浴の有無が発育に及ぼす影響を検討した.試験期間中,試験区の気温は対照区に比べて有意に高く,相対湿度は有意に低い値であった(P<0.05).試験区の紫外線露光量は対照区の100倍以上の値であり,有意に高かった(P<0.05).試験区の日射量を考慮した体感温度および温湿度指数はいずれも対照区に比べて試験区で有意に高い値を示した(P<0.05).4~17日齢における試験区供試牛の体温は対照区に比べて有意に高かったものの(P<0.05),呼吸数に差は認められなかった.体重および日増体量に有意な区間差は認められなかった.骨の成長度を示す管囲は,2週齢から10週齢にかけて両区とも同等の増加率となった.また,試験区の供試牛では対照区に比べて舐塩行動が有意に低下した以外,他の行動に違いは認められなかった.以上の結果より,夏期において黒毛和種哺乳子牛に10週齢まで自由に日光浴を行わせた場合,哺乳初期に軽度の暑熱ストレスが負荷されたものの,発育に影響を及ぼすものではなかった.

  • Hiroki SHICHIJO, Shirow TATSUZAWA, Shinsuke H. SAKAMOTO, Tetsuo MORITA
    原稿種別: Technical Note
    2022 年 65 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/14
    ジャーナル フリー

    Deer osteophagia, although rarely occurring in Japan, was observed on Mageshima Island. We examined the relationships among bone density of sika deer, plant species composition, and Ca and P contents in plants of the island. Samples were collected during summer in 1994, 1995, 1997, and 1998 from 1 m2 quadrats placed in grasslands in northern, central, and southern areas of the island. Species constitution of the flora changed considerably among years but Gramineae plants comprised more than 89% of the flora in any year. Plant P contents in northern, central, and southern areas were as low as 0.08%–0.1%, 0.12%–0.23%, and 0.07%–0.13%, respectively. The Ca:P ratio mostly ranged from 1:1 to 5:1. The bone density tended to be reduced (p = 0.0542) between 1991 and 1993, and kept low from 1993 through 1998. During the same period, the Mageshima Island deer population was significantly (p < 0.05) lower in bone density than the Tanegashima Island deer population. As the period of low bone density coincides with 1992 when the incidence of osteophagia increased drastically, a relationship between bone density and osteophagia may exist. These results suggest P shortage could occur in the Mageshima Island sika deer population.

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