日本暖地畜産学会報
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53 巻, 2 号
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原著論文(一般論文)
  • HASYIM Hadijah, 石井 康之, WADI Ahmad, 井戸田 幸子, 杉本 安寛
    2010 年 53 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,ポット栽培した矮性ネピアグラスに対して数段階の堆肥を施用し,植物体の成長特性に及ぼす影響を検討したものである.堆肥として,矮性ネピアグラスにバイオガスプラントから産生した有機物発酵消化液(LDEM),堆肥にLDEMを添加して調製した高濃度固形堆肥(SDEM)および化成肥料の施用の影響を検討した.矮性ネピアグラスでは,堆肥の施用量が増すにつれて草高,茎数,葉面積および乾物収量が増加した.年間の刈取り回数は2回であったが,年間の植物体全乾物重は,同一のN施用量となる堆肥施用量の下ではほぼ同等で,地上部重/地下部重比(T/R比)が矮性ネピアグラスでは約2未満と低く,地下部への乾物分配率が高いことが示された.したがって,LDEMとSDEMはともに,植物体の成長促進に対して化成肥料に類似した施肥効果を有するが,同一N施用量の下では,SDEMに比べてLDEMの増収効果が高くなることが示された.
  • 中川 敏法, 福山 喜一, 小林 郁雄, 新美 光弘, 川村 修
    2010 年 53 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    宮崎県内の黒毛和種繁殖牛飼養農家で,無処理の杉ノコクズを主要な粗飼料とする飼養法が普及しつつある.本研究では,この飼養法におけるノコクズの粒度が採食・反芻,粗飼料因子(RVI),ルーメン液性状,血液性状に及ぼす影響について調査した.3頭の黒毛和種繁殖牛を用い,約1カ月間の試験期間の前半を対照区,後半を処理区とした.対照区では通常のノコクズを,処理区では5 mm篩を通したノコクズを,それぞれ濃厚飼料と3:4で混合して給与した.両試験区ともローズグラス乾草を1日1頭当たり0.5 kg補給した.
    その結果,反芻期数,平均反芻時間,採食終了から反芻開始までの時間,RVIは試験区間に有意差が認められなかった.また,反芻時間は両試験区とも十分に確保された.ルーメン液性状,血液性状についても,両試験区ともに特に問題はなかった.以上のことから,このような飼養法においては,ノコクズの粒度に特に留意する必要はないと考えられた.
  • DANG Huy Quang, 河原 聡, 中島 有紀子, 浜本 信也, 告田 政秋, 永崎 収一, 堀之内 正次郎, 岩切 正芳, 六車 ...
    2010 年 53 巻 2 号 p. 133-143
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    乳酸発酵した水産廃棄物の給与が豚肉の脂肪酸組成,色調,酸化安定性および官能特性に及ぼす影響について検討した.マアジのあらを主体とする水産廃棄物に乳酸菌スターターを添加,発酵し,乳酸発酵水産副生物(LFB)を調製した.このLFBと配合飼料を等量混合し,ビタミンとミネラル混合物を添加した試験飼料を調製した.これを給与して生産した豚ロース肉の品質について,配合飼料給与(配合区)および配合飼料の5%を市販魚粉(魚粉区)に置換した飼料により生産した豚ロース肉と比較した.LFB給与は赤身部分の肉色,ドリップロス,皮下脂肪の融点に顕著な影響を及ぼさなかった.しかし,LFB区の豚肉は脂肪色が若干褐変する傾向が認められ,脂肪含量が配合区より低くなった.豚肉脂肪の性質に関しては,LFB区の豚肉は,他の区と比較して,エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)含量が高かった(P<0.01).一方,脂肪中のリノール酸含量は減少し,これに伴ってn-6/n-3比が改善された.しかし,LFB区の豚肉は酸化安定性が低下し,1週間の冷蔵保存後のTBARS値は他の試験区の値より高かった.加えて,官能検査では匂いを中心に評価が低かった.これらの要因として,EPAやDHA含量の増加に伴う酸化ポテンシャルの上昇や,飼料中の低いビタミンE含量の影響などが考えられた.
  • DANG Huy Quang, 河原 聡, 告田 政秋, 新美 光弘, 堀之内 正次郎, 岩切 正芳, 六車 三治男
    2010 年 53 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    非加熱のリサイクル飼料製造法を開発する目的で,宮崎県内で発生した豆腐製造残さ(オカラ),親サトイモ発酵物等を混合した後,バッグ内で乳酸発酵させてオカラサイレージを調製した.さらに,このオカラサイレージを15%,30%および60%含有し,トウモロコシ等で粗タンパク質量を調整した試験飼料を作製した.これらの飼料を仕上期の肥育豚に60日間自由摂食させた.同時に市販配合飼料を給与する試験区も設け,生産性の比較等を行った.肥育豚の発育成績はオカラサイレージ15%給与区のみが他の3区と比較して有意に低下した(P<0.05).サイレージ30%区および60%区のロース肉は,他の2区のそれと比較して,脂肪含量が高く,剪断力価が低くなった.また,オカラサイレージの給与はロース肉の脂肪酸組成に明確な影響を及ぼさず,脂肪融点について試験区間で有意な差を認めなかった.また,他の2区と比較して,サイレージ30%と60%給与区では多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比およびn-6/n-3比が若干低下した.また,市販配合飼料を給与した豚と比較して,オカラサイレージを給与した豚の盲腸内容物では大腸菌群,エンテロバクター科細菌,および大腸菌の菌数が有意に減少した(P<0.05).以上の結果から,オカラサイレージの肥育豚への給与は豚肉の品質を低下させず,肥育豚の衛生状態を改善できることが示唆された.
  • 小池 晶琴, 岡本 智伸, 椛田 聖孝
    2010 年 53 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    精製阿蘇黄土を市販飼料に添加給与し,子豚の血液性状,増体および行動に及ぼす影響を検討した.実験1では4~8週齢の子豚に5%量の精製阿蘇黄土を添加し,各週齢の血液性状と体重測定,8週齢時に行動調査を行った.実験2では3~8週齢の子豚に2%量添加し,各週齢の体重測定と行動調査(4~8週齢)を行った.両実験ともに,市販飼料のみ給与した対照区を設けた.実験1で,両区の血清鉄,不飽和鉄結合能に差異が認められ(P<0.05),対照区での血清鉄量は,5週齢時に著しく上昇し,それ以降高い値で推移した.物ならびに他個体との接触行動および移動行動は添加区で有意に低かった(P<0.05).実験2の4,6週齢の添加区において鉄舐め行動の発現割合が有意に低下した(P<0.05).両実験において両区間の体重変動に差はなかった.以上より,阿蘇黄土の子豚への給与が,鉄摂取に関わる行動を軽減させる可能性が示された.
  • 神谷 裕子, 田中 正仁, 神谷 充, 鈴木 知之
    2010 年 53 巻 2 号 p. 165-173
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    高温環境下における泌乳初期の栄養摂取と乳生産および血液成分との関係を明らかにするため,7,8月に分娩した経産牛16頭を供試して分娩後3週間の飼養試験を行った.体重当たりの乾物摂取量(%)は,分娩1,2および3週間後に,1.79,2.05および2.32であった.可消化養分総量(TDN),粗蛋白質(CP),カルシウム(Ca)およびリン(P)の充足率(%)はそれぞれ,分娩1週間後に58,84,80および69,2週間後に65,95,93および79,3週間後に70,103,102および88であった.分娩1週間後にTDN充足率と乳脂肪率との間に1%水準で有意な負の相関が,乳糖率との間に1%水準で有意な正の相関が認められた.分娩1週間後において,Ca充足率と乳中Ca濃度との間に1%水準で,P充足率と乳中P濃度との間に5%水準で有意な負の相関が認められた.TDN充足率と血漿中NEFA濃度との間には,分娩後3週間において1%水準で有意な負の相関が認められた.
  • 服部 育男, 佐藤 健次, 鈴木 知之, 神谷 充, 加藤 直樹
    2010 年 53 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    焼酎粕濃縮液を原料が異なる4工場から経時的にサンプリングし,飼料成分の特徴と変動および発酵TMR原料を想定した場合の発酵品質に及ぼす成分について調査した.焼酎粕濃縮液の飼料成分は原料によって大きく異なり,米,麦焼酎粕濃縮液は高エネルギー、高蛋白,カンショ焼酎粕濃縮液は高エネルギーの特徴があった.原料が単一の場合,年間を通じて変動が比較的大きいのは乾物率で,含量が多い粗蛋白質,可溶性無窒素物は変動が小さかったことから,飼料成分は原料と乾物率を確認することで,ほぼ特定できることが明らかとなった.一方,原料が単一でない場合は粗蛋白質は含量も多く,変動も大きいこと,また他の成分も比較的変動係数が大きかったことから,原料構成の確認と成分分析が必要であると考えられられた.発酵に影響を及ぼす成分は,低pHであることから正の影響と緩衝能が高いこと,糖含量は高いが5炭糖が主であることから,負の影響も考えられた.
  • 小荒井 晃, 住吉 正, 大段 秀記
    2010 年 53 巻 2 号 p. 183-192
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/05
    ジャーナル フリー
    飼料用イネの暖地向けを含む14品種について,暖地ですでに広く普及しているか,あるいは今後普及が見込まれる13除草剤に対する感受性を検討し,「ミズホチカラ」および「モミロマン」はカフェンストロール・ベンスルフロンメチル・ベンゾビシクロン粒剤,「ルリアオバ」はカフェンストロール・ベンスルフロンメチル・ベンゾビシクロン粒剤およびテフリルトリオン・フェントラザミド水和剤の処理により,白化症状を引き起こし,標準使用量でも枯死を伴う強い薬害が生じた.上記品種は,それ以外の11除草剤の処理では強い薬害は生じなかった.一方,上記品種以外の11品種は,いずれの除草剤でも強い薬害は生じなかった.薬害は,その症状より,トリケトン系の化学構造をもつ4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)阻害型除草成分のベンゾビシクロンおよびテフリルトリオンが主因と推察された.したがって,混合成分による相互作用の影響などについては,さらに検討する必要があるが,「ミズホチカラ」,「モミロマン」および「ルリアオバ」の栽培にあたっては,ベンゾビシクロン,テフリルトリオンなどトリケトン系の4-HPPD阻害型除草成分を含有する除草剤の使用は避けるように,除草剤を選択することが重要である.
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