日本暖地畜産学会報
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60 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
研究紹介
原著論文(一般論文)
  • 加藤 直樹, 服部 育男, 小林 良次
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    スーダングラスの条播栽培において,作物と雑草との競合関係を明らかにするため,条間を17 cm, 30 cm,75 cm の3 水準,播種時期を5 月または7 月に設定し,被度の推移や収量を調査した.5 月播種では条間 が狭いほどスーダングラスの被度が速やかに増加し,雑草量が減少した.一方,7 月播種では条間17 cm,30 cm のスーダングラス被度は同様に推移し,75 cm でも5 月播種より被度の増加が速く,雑草量はすべての条間で5 月 播種よりも少なかった.気温の高い7 月播種ではスーダングラスの成長が速く,高い雑草抑圧効果を示したと考え られた.収量は5 月播種では,条間が狭いほど高かったが,7 月播種では条間による有意な差はなかった.以上から, スーダングラスの条播栽培では,低温時には条間を狭めること,また,条間を狭められない場合には,高温時に播 種することで,高い雑草抑圧効果が得られ,多収になると考えられた.
  • 髙山 耕二, 原 裕, 馬場 和則, 吉田 拓人, 石井 大介, 柳田 大輝, 松元 里志, 片平 清美, 大島 一郎, 中西 良孝, 赤井 ...
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    肥育牛舎におけるイノシシ害防除に関する基礎的知見を得るために,電気柵による侵入防止効果を 検討した.2011 年2 月から2012 年1 月にかけて,肥育牛舎への野生哺乳類の侵入状況を赤外線自動撮影装置を用 いて調査したところ,イノシシが延べ8,152 頭,アナグマが延べ186 頭,タヌキが延べ169 頭およびノネコが延べ 30 頭確認された.イノシシは牛舎の出入り口に設置したネット下を潜って侵入し,飼槽内で濃厚飼料を盗食する 状況が観察された.2012 年2 月から2013 年1 月にかけて,牛舎入口に地上高15 および30 cm の2 段線電気柵(12 ㎜幅の青色リボンワイヤーを使用)を設置したところ,鼻先で電線に触れ,逃避するイノシシの状況が観察され, 成イノシシによる侵入は皆無であり,幼イノシシの侵入は2 月における19 頭のみであった.  以上より,肥育牛舎に侵入するイノシシに対して,電気柵設置による侵入防止効果は顕著であることが示された.
  • 神谷 裕子, 野中 最子, 神谷 充, 服部 育男, 田中 正仁
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    妊娠末期の乳牛を用いて,飼料の主たるデンプン源を圧ぺんトウモロコシまたは破砕玄米とする発 酵TMR を給与し,分娩前の飼料摂取量および消化率ならびに分娩後の泌乳成績に及ぼす影響を検討した.分娩前 のTMR 摂取量には,両区で有意な差は認められなかった.分娩前の乾物(DM), 粗タンパク質(CP),粗脂肪(EE), 中性デタージェント繊維(NDFom)および酸性デタージェント繊維(ADFom)消化率には両区で有意な差は認 められなかった.玄米区における非繊維性炭水化物(NFC)消化率はトウモロコシ区と比較し,有意に(P<0.05) 高かった.分娩3 週間後の乳量ならびに乳タンパク質率,乳脂肪率および乳糖率には,両区で有意な差は認められ なかった.以上より,分娩前飼料において圧ぺんトウモロコシを破砕玄米で代替しても分娩前の摂取量や分娩後の 泌乳性に明らかな影響を及ぼさないと考えられた.
  • 髙山 耕二, 園田 正, 林田 雄大, 石井 大介, 柳田 大輝, 冨永 輝, 松元 里志, 片平 清美, 大島 一郎, 中西 良孝, 稲留 ...
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,山間部に位置する牧場草地へのシカ侵入の季節的変化を明らかにするとともに,侵入 防止柵に対するシカの行動反応について検討した.鹿児島大学農学部附属農場内入来牧場におけるシカの侵入状況 を定期的に調査したところ,シカの平均出現頭数は179 頭/ 日であった.採草地(2 ha)周囲に設置した物理的防 護柵(高さ175 ~ 200 ㎝の金網とプラスチックネットの併用柵)に対し,シカが柵基部に生じた30 ㎝程度の隙間 から侵入する状況が確認された.5 段張り電気柵(高さ140 ㎝,20 ~ 40㎝間隔で架線)に対するシカの行動反応は, 電線を視認あるいは電線に接触して後方に逃避する個体が観察された一方で,電線に触れることなく,電線間を通 り抜ける個体も確認された.  以上より,牧場草地には多数のシカが年間を通して侵入しており,より効果的な侵入防止策の構築が緊要な課題 であることが示された.
  • 堤 道生, 中村 好德, 金子 真, 林 義朗, 莟 博行, 山田 明央, 小林 良次
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    褐毛和種去勢雄牛生産システムへの周年放牧肥育技術導入による環境影響低減の効果を,ライフ サイクルアセスメントの手法を用いて検証した.まず,肥育段階における周年放牧および慣行法(舎飼)の環境影 響を評価するとともに,一般的な肥育素牛生産についても評価を行った.この結果と枝肉成績に基づき,肉用牛生 産システム全体の環境影響を枝肉重量あたりで評価し,両肥育法の間で比較した.周年放牧肥育における増体量あ たりの環境影響は,地球温暖化,酸性化,富栄養化およびエネルギー消費へのインパクトについて慣行肥育での値 をそれぞれ22,87,81 および57% 下回り,全ての評価項目において飼料輸送プロセスでの環境影響低減による寄 与が最も大きかった.周年放牧肥育で生産された枝肉の重量あたりの環境影響は,慣行肥育での値を地球温暖化, 酸性化,富栄養化およびエネルギー消費のそれぞれについて8,53,47 および36% 下回った.
原著論文(短報論文)
  • 中村 好德, 金子 真, 小林 良次
    原稿種別: 短報論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    褐毛和種,黒毛和種,ホルスタイン種および日本短角種牛計25 頭を用いて,牛肝臓の栄養成分に 及ぼす品種と飼養方法の影響を調査した.調査項目のうち,エネルギー,たんぱく質,脂質,灰分,ナトリウム, 鉄ならびにα - カロテン含量については,品種と飼養方法の影響は見られなかった.しかし,水分,炭水化物,カ リウム,レチノール,β - カロテンならびに遊離アミノ酸含量は品種と飼養方法の影響がそれぞれ見られ,特に, 周年放牧飼養された褐毛和種のレチノールおよびβ - カロテン含量は他のグループに比べて12 ~ 39 倍および17 ~ 136 倍と高かった.
  • 山田 明央, 川島 知之
    原稿種別: 短報論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
     バヒアグラス主体草地上にイタリアンライグラスを追播した際に生じた発芽密集地について調査 し、その出現原因を検討するとともに、効率的なイタリアンライグラスのウインターオーバーシーディングによる 導入について考察した.調査した24 a の放牧地内に出現したイタリアンライグラス発芽密集地は67 個所,播種し た種子の1000 粒重を4.9 g とすると,発芽密集地に集積された種子重量は259.0 g と推定され, 密集地1 個所を出 現させる種子量は 半径49.6 cm の円内に播種された種子量に相当した.出現した発芽密集地にはアリの巣穴が同 時に観察され,草地を生活圏として種子を餌とするクロナガアリの関与が推察された.イタリアンライグラスのウ インターオーバーシーディングでは,昆虫による種子の採集と採食による影響を考慮して播種期を選定することに より,種子のロスと空間的不均一化を抑制することができると考えられた.
  • 服部 育男, 神谷 充, 塔野岡 卓司, 加藤 直樹, 林 義朗, 細田 謙次
    原稿種別: 短報論文
    2017 年 60 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    飼料用オオムギ適性品種選定の一環として,穂に付随する芒の形状の違いが黒毛和種育成牛にお ける嗜好性に及ぼす影響を検討した.オオムギ品種はるか二条( 普通芒) およびその無芒,三叉芒の準同質遺伝子 系統の3 品種・系統を用い,乾草およびサイレージを調製し,一対比較法による嗜好度を調査した.乾草において 三叉芒の粗タンパク質含量はやや高く,繊維成分,TDN がやや低かった.嗜好性に品種・系統間で有意な差が認 められ,普通芒よりも無芒,三叉芒で平均嗜好度が高かった(P < 0.05).サイレージでは普通芒,無芒は良質な発 酵品質となり,三叉芒は不良な発酵品質であった.嗜好性については乾草と同様の傾向が認められた(P < 0.1).
原著論文(技術報告)
  • 中村 好德, 福間 康文, 金子 真, 小林 良次
    原稿種別: 技術報告
    2017 年 60 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種去勢雄牛16 頭の半腱様筋を用いて,熟成処理の違いが肉質に及ぼす影響を調査し た.熟成処理は無処理(NA),冷蔵熟成(2˚C で38 日間;WA),氷温熟成[ − 1˚C で54 日間(HA-S)と108 日 間(HA-L)] ならびに乾燥熟成(2˚C で38 日間;DA)に区分した.NA に比べてWA とHA-S でドリップロスが 有意に増加した.HA-L とDA で破断強度が有意に低下し,DA で過酸化物価が有意に上昇した.WA で一般生菌 数が有意に増加したが,大腸菌群数は全ての検体で陰性だった.遊離アミノ酸総量は有意に増加し,特にHA-L で 顕著であった.また,脂肪融点,タウリンとカルノシン含量,遊離アミノ酸組成は変化しなかった.と畜後の熟成 処理により肉質は変化し,熟成方法によりその変化は異なることが示唆された.
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