日本暖地畜産学会報
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52 巻, 1 号
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研究紹介
総説
原著論文(一般論文)
  • 水町 進, 新城 健, 川本 康博, 仲田 正
    2009 年 52 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    刈取間隔の違いがギニアグラスおよびセタリアのin vitro乾物消化率および窒素含量に及ぼす影響を検討し,栄養収量の観点から適切な刈取間隔についての検討を行った.両草種の窒素含量およびin vitro乾物消化率は刈取間隔を20日から70日まで延長するに伴い低下した.窒素含量はいずれの処理区も夏季に低下したのに対し,in vitro乾物消化率は季節変動が比較的小さいものの,刈取間隔を延長すると夏季に著しく低下した.重回帰分析の結果,栄養価変動の主要因は刈取間隔であることが示された.年間合計窒素収量は刈取間隔の延長に伴い低下する傾向であった.年間合計可消化乾物収量は,ギニアグラスでは30-40日刈で,セタリアでは50日刈でそれぞれ最大で,それ以上の刈取間隔の延長に伴い減少した.夏季における刈取間隔の延長は栄養価の低下を助長するため,夏季の適切な刈取間隔は両草種ともに40日以内が望ましいと示唆された.
  • 中西 良孝, 東 めぐみ, 西田 理恵, 高山 耕二, 伊村 嘉美
    2009 年 52 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    鹿児島県の未利用資源であるモウソウチク(Phyllostachys pubescens)の有効利用とその飼料価値の向上を目的とし,解繊処理竹材(以下,竹材)に甘藷焼酎粕,フスマあるいは白ヌカを加えてサイレージ化した場合の発酵品質を明らかにするとともに,反芻家畜による嗜好性を検討した.得られた結果は以下のとおりである.
    解繊処理後の竹材を室温で開封あるいは密封保存しても1週目で竹材表面にカビが発生し始め,4週目には表面全体に広がることが観察された.次に,竹材のみの竹材区,竹材と甘藷焼酎粕を原物重比でそれぞれ41および59%混合した焼酎粕区,焼酎粕区に加えてフスマあるいは白ヌカを原物重比で5または10%添加したフスマ5区,フスマ10区,白ヌカ5区および白ヌカ10区の計6処理区を設け,4週間嫌気状態で保存し,開封後のサイレージの発酵品質を評価した.pHは竹材区を除き4.2以下となり,白ヌカ10区で最低値を示した.乳酸はフスマ10区および白ヌカ10区とも2.0%以上と他の区よりも有意に多かった(P<0.05)が,酢酸,プロピオン酸および酪酸は全区でほとんど生成されなかった.アンモニア態窒素/全窒素は白ヌカ10区で他の区よりも有意に低かった(P<0.05).V-SCOREは白ヌカ10区で100点と最高値を示し,他の区と比べて有意に高かった(P<0.05).山羊による嗜好性は白ヌカ10区,フスマ10区,焼酎粕区,フスマ5区,白ヌカ5区,竹材区の順となり,糟糠類の添加割合が高まるに伴い嗜好性も向上する傾向を示した.
    以上より,竹材に甘藷焼酎粕および糟糠類を添加してサイレージ化することで発酵品質と嗜好性が改善され,とくに焼酎粕を加えたものに白ヌカを10%添加することにより発酵品質と嗜好性に最も優れたサイレージが得られた.
  • 中川 敏法, 福山 喜一, 川村 啓太, 新美 光弘, 川村 修
    2009 年 52 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    宮崎県内の黒毛和種繁殖牛飼養農家において,無処理の杉ノコクズを主要な粗飼料とする飼養法が普及しつつある.本研究では,この飼養法におけるノコクズの栄養的機能を検討するため,まず消化率の測定を行った.その結果,ノコクズはほとんど消化されなかったので,粗飼料因子(RVI)の確保にのみ機能していると考えられた.そこで,ノコクズの給与量を減ずることが可能であるかどうかを検討するため,ノコクズを一般的な給与量である3 kgから2 kgに減じた場合について調査した.その結果,ノコクズの給与量を減じてもRVIは十分に確保され,ルーメン液性状,血液性状についても特に問題はなかった.
  • 中西 良孝, 東 めぐみ, 西田 理恵, 高山 耕二, 伊村 嘉美
    2009 年 52 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    モウソウチク(Phyllostachys pubescens)の有効利用を図るため,解繊処理竹材(以下,竹材)サイレージの栄養価を明らかにするとともに,成雌山羊に一部代替給与した際の第一胃内性状と血液性状への影響について検討した.得られた結果は以下のとおりである.
    竹材のみの竹材区,竹材と甘藷焼酎粕を原物重比でそれぞれ41および59%混合した焼酎粕区,焼酎粕区に加え,フスマあるいは白ヌカを原物重比で5または10%添加したフスマ5区,フスマ10区,白ヌカ5区および白ヌカ10区の計6区を設け,4週間嫌気状態で保存してサイレージを調製した.調製前の竹材のTDNは約43%であり,稲ワラと同程度であった.DCPおよびTDNは調製前の竹材と比べ焼酎粕区,フスマ5区,フスマ10区,白ヌカ5区および白ヌカ10区で増加する傾向を示し,とくに,フスマ10区および白ヌカ10区のTDNは約60%と有意に高かった(P<0.05).白ヌカ10区サイレージの発酵品質と嗜好性が最も優れたという前報の結果を踏まえ,ルーサンヘイキューブのみを給与した対照区とそのTDNの30%を白ヌカ10区サイレージで代替給与した試験区との間で供試山羊の生理状態を比較検討するために飼養試験を行った.その結果,第一胃内容物のpHと揮発性脂肪酸組成および代謝体重当たりの乾物摂取量に両区間で有意差は認められず,血液性状は両区ともほぼ正常範囲内であった.なお,試験期間中の体重の減少は認められなかった.
    以上より,竹材に焼酎粕と糟糠類を添加してサイレージ化することで栄養価が向上するとともに,本サイレージを山羊に一部代替給与しても飼料摂取量や生理状態に何ら問題のないことが明らかとなった.
  • 高山 耕二, 石井 大介, 内山 雄紀, 吉田 美代, 赤井 克己, 城戸 麻里, 伊村 嘉美, 中西 良孝
    2009 年 52 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    牧場採草地における省力かつ効果的なシカ侵入防止法を開発することを目的とし,2~4段張り電気柵(非通電)に対する飼育シカの行動反応から効果的な電気柵の設置方法(高さ・段数)を探るとともに,これらを採草地に設置した場合のシカ侵入防止効果を検討した.
    1)2~4段張りの非通電電気柵(慣行区:地上高30,60,100および140 cmの4段張り,3-100区:地上高30,60および100 cmの3段張り,3-70区:地上高30,50および70 cmの3段張り,2-60区:地上高30および60 cmの2段張り)に対し,飼育シカは強い警戒を示した.各区とも口唇による地上高60~70 cmの電線への接触が多く観察され,その後,慣行区および3-100区では電線間を通り抜け,3-70区および2-60区では通り抜けと飛び越えがおよそ50%ずつ観察された.2)採草地における2~4段張り電気柵(慣行区,3-100区,3-70区,2-60区および地上高45および90 cmの2段張り電気柵を設置した2-90区)のシカ侵入防止効果については,2-60区においてライトセンサス法により確認されたシカ侵入頭数が他の区に比べ多く認められ(P<0.05),他の区よりも効果が劣っていた.また,2-60区では,最上段の電線を飛び越えて,採草地に侵入するシカの様子が確認され,3-70区においても同様であった.
    以上より,最上段の電線の高さを90~100 cmに設定した2または3段張り電気柵を採草地周囲に設定した場合には,4段張り電気柵と同程度のシカ侵入防止効果が得られ,設置の省力化ならびに低コスト化が図れる可能性が示された.
  • 脇屋 裕一郎, 安田 みどり, 坂井 隆宏, 大曲 秀明, 河原 弘文, 宮崎 秀雄, 下平 秀丸
    2009 年 52 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    前報において市販飼料に製茶加工残さを2%混合給与することで,枝肉中の背脂肪厚が減少し,肉質中のα-トコフェロール含量が高くなることが確認された.本試験では,一番茶よりも渋みは増すものの,機能性成分を多く含む二番茶の給与試験を行い,単飼条件下における枝肉,肉質および免疫に与える効果について検討した.供試豚はLWD三元豚の去勢豚とし,試験区分は製茶加工残さを肥育前期では無抗菌剤飼料に対し2%,肥育後期では市販飼料に対し1%添加した一番茶区および二番茶区,無抗菌剤飼料を給与した無抗菌剤区,抗菌剤入りの市販飼料を給与した対照区の4試験区とし,各試験区4頭ずつ供試した.試験はコンクリート平床豚房で単飼により行い,試験豚の平均体重が30 kgを超えた時点で試験を開始した.肥育前期から後期への飼料の切り替えは,各試験区の平均体重が65~75 kgの範囲に達した段階で行い,試験期間中は不断給餌とした.供試豚が110 kgに達した時点でと畜を行った.
    供試した製茶加工残さの成分において,二番茶は一番茶と比較してα-トコフェロール含量およびカテキン含量が高くなることが確認された.発育成績においては,試験区間での差が確認されなかった.枝肉成績において,枝肉重量に有意差は認められなかったが,背脂肪厚(肩)については,対照区と比較して,一番茶区および二番茶区が薄い傾向にあった.枝肉中のα-トコフェロール含量は,背脂肪においては有意差が確認されなかったが,胸最長筋は対照区と比較して二番茶区が高い傾向にあった.血中のAR抗体価は有意差が確認されなかったが,IgG濃度については,試験開始後56日目において,二番茶区が無抗菌剤区と比較して高い傾向にあった.
    以上の結果から,製茶加工残さ二番茶は一番茶と比較して,枝肉成績や肉質を向上させ,さらに免疫を増強させる可能性が示唆された.
  • 嶋澤 光一, 本多 昭幸, 尾野 喜孝
    2009 年 52 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    筋肉内脂肪含量の多い高品質な豚肉生産を目的にリジン含量を日本飼養標準・豚におけるリジン要求量の80%程度になるように調製したバレイショ混合サイレージの給与が肥育豚の血清生化学成分に及ぼす影響を調査した.バレイショ混合サイレージを給与する8頭(バレイショ給与区)と市販配合飼料を給与する7頭(対照区)に区分けし,試験飼料給与開始前,給与開始後5および10週の血清生化学成分を調査した.増体量はバレイショ給与区が対照区より有意に劣るが,飼料要求率に差は認められなかった.血清生化学成分において,総蛋白質(TP),アルブミン(Alb)および尿素態窒素(BUN)はバレイショ給与区が対照区より有意(P<0.01)に低かったが,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT),アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST),乳酸脱水素酵素(LDH),総コレステロール(T-Chol)および高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)では飼料による違いは認められなかった.またこれらの血液生化学成分値は概ね正常値の範囲であり,と畜検査においても内臓等に異常は認められなかった.以上の結果,筋肉内脂肪含量の高い高品質豚肉生産を目的にリジン含量を要求量の80%程度に調製したバレイショ混合サイレージの豚への給与は,発育はやや劣るものの,健康に悪影響を及ぼす可能性は低いことが示唆された.
  • 橋元 大介, 嶋澤 光一, 川口 貴之, 中山 昭義
    2009 年 52 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    交雑種(黒毛和種雄×ホルスタイン種雌)肥育における父系統の影響を明らかにし,父系統に適した交雑種肥育技術体系を確立することを目的とし,肥育試験を2回実施した.試験1では,糸桜系および但馬系種雄牛産子交雑種去勢牛を供試し,同じ給与体系で肥育試験を行い,試験2では但馬系種雄牛産子交雑種去勢牛を供試し,試験1に比べ肥育中期を2ヵ月間延長しその時期を変えた2区の給与体系で肥育試験を行った.その結果,試験1では交雑種肥育は父系統の影響が大きく,糸桜系では但馬系よりも有意に発育が優れ,枝肉重量も多かった.また,但馬系は糸桜系より肥育中期の血漿中ビタミンA濃度の低下が遅い傾向であった.試験2では,但馬系において肥育中期を約2ヵ月間延長すると,血漿中ビタミンA量を適正に制御でき,試験1に比べ脂肪交雑の向上が示唆された.以上の結果から,交雑種(黒毛和種雄×ホルスタイン種雌)肥育における父系統の影響は大きく,それぞれの父系統に適した飼養管理体系が必要となることが明らかとなった.
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