山階鳥類研究所研究報告
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28 巻, 1 号
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  • 千国 幸一, 三中 信宏, 池長 裕史
    1996 年 28 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアのシトクロムb遺伝子の部分配列646塩基と18Sリボソーム遺伝子の部分配列293塩基をヒタキ科を主とするスズメ目の鳥20種について決定した.シトクロムb遺伝子の塩基配列から作成した分子系統樹はツグミ属の単系統およびアカハラ,シロハラ,マミチャジナイの近縁関係を高い確率で示した.しかし,トラツグミはツグミ属の分岐に含まれず,ツグミ属とは異なった種であることが示された.ハシブトガラスは20種からなるスズメ目系統樹において最も先に分岐し,他の科と遺伝的に離れた関係が示唆された.また,ムクドリはヒタキ科と同じ分岐に含まれ,カラス科との類縁関係は認められなかった.ホオジロ科,ハタオリドリ科,メジロ科の3科は同一系統である可能性が示唆されたものの,スズメ目全体の科の系統関係は明かとならなかった.18Sリボソーム遺伝子の塩基配列はルリビタキ,イソヒヨドリ,キビタキの3種以外のスズメ目の種で一致していた.これらの3種は塩基配列の同じ部位に同じ塩基の置換が1ヶ所あり,これら3種が共通の祖先から分かれたことを示唆するのではないかと考えられた.
  • 中村 雅彦, 上馬 康生
    1996 年 28 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.1994年の6月と7月,白山と乗鞍岳の山頂部で繁殖するイワヒバリの餌場利用頻度,採食環境と残雪の上の昆虫量を比較した.
    2.個体を捕獲し識別するため,ムキアワ,ムキヒエ,カナリアシードを餌に用いた餌場を白山に4ヵ所,乗鞍岳に5ヵ所設定した.
    3.6月には,白山のイワヒバリは餌場をあまり利用せず,調査地の大部分を占める残雪の表面で昆虫を採食していた.乗鞍岳のイワヒバリは,餌場を頻繁に利用し,積雪していない岩場や高山荒原で採食していた.
    4.7月には,残雪は減り,白山•乗鞍岳ともイワヒバリの主要な採食地はお花畑に移行した.
    5.6月に残雪の上に設定した50×50cmの一方形区当たりの昆虫量は,白山が平均117.5個体,乗鞍が平均24.0個体と圧倒的に白山が多かった.これらの昆虫は生きていたが,雪の低温のため活動はにぶっていた.
    6.7月には白山の残雪上で,一方形区当たり平均8.4個体の昆虫が,乗鞍岳では平均4.7個体の昆虫が死体で採集された.
    7.残雪上の昆虫は,カメムシ目が最も多く,採集された全個体の79.7%を占め,カメムシ目の中ではアブラムシ科が全体の87.3%を占めた.残雪上の昆虫は,高山帯で発生したものではなく,低山や亜高山帯から上昇気流によって運ばれてきたものだった.
    8.白山のイワヒバリが採食を餌場に依存しないのは,量が多く,発見や捕獲が容易な残雪上の昆虫を食べているためと考えた.
    9.白山と乗鞍岳で依存する餌は違う.餌がイワヒバリの群れサイズ,なわばりサイズや繁殖開始時期に与える影響もまた各個体群で異なる可能性がある.
  • 佐藤 伸彦, 丸山 直樹
    1996 年 28 巻 1 号 p. 19-34_1
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    関東平野東部の小貝川と桜川の流域において,1993年6月から8月の繁殖期にチュウサギ(Egretta intermedia)の採食地選択および食性について,調査を行った。チュウサギは魚類,甲殻類,昆虫類などを採食し,特に6月には魚類を主要な食物としていた。採食地の選択性は,各採食環境における索餌の容易さと餌の量に影響されていると考えられた。水深の深い河川や稲が密生した7,8月の稲田では,採食行動が困難であるため,チュウサギの利用はほとんど見られなかった。また,浅い土水路を持つ水田よりも,コンクリート水路やパイプライン化された水田の方が,チュウサギの個体数が少なくなる傾向が6月に認あられた。この理由として,コンクリート水路が,魚類などの水生生物の生息地として不適当である上,これらの生物による水路から田面への移動が困難であるためと考えられた。
  • 岡 奈理子, 丸山 直樹, 黒田 長久, Irynej Skira
    1996 年 28 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ハシボソミズナギドリの推定繁殖鳥2300万羽の80%が繁殖するタスマニア本島と周辺の島々のコロニーのうち,代表的な12ヵ所のコロニーの地形を測量した結果,海岸崖地型,海岸丘陵型,海岸砂丘型,海岸平地型の4地形に分類できた.その上で,現在知られている168ヵ所のコロニーの地形を現地訪問と文献の知見に基づき上記4型に分類し,それぞれのコロニー数と専有面積を示した.
    海岸崖地型が数では最も多く全体の約40%を占め,高崖型と低崖型がほぼ同数を占めた.ついで海岸平地型が24%,海岸砂丘型19%,海岸丘陵型18%の順となった.面積では海岸丘陵型が約40%を占め最も広域を占め,次いで海岸崖地型が32%,海岸平地型21%,海岸砂丘型8%の順となった.1コロニー当たりの面積の平均値は4haから20haまで大きくばらついたが,有意差はみられなかった.
    ハシボソミズナギドリのコロニー立地にみる繁殖地の地形選択は,大•中型ミズナギドリ目鳥類では一般に劣るといわれる跳躍力と飛び立ち力を補うための地形選択がうかがえるが,一方,平地に立地したコロニー数とコロニー面積がそれぞれ20%以上を占めることから,平地での飛び立ちの制約は低いことが示唆される.このように,ハシボソミズナギドリ集団繁殖地の断面地形にみる幅広い選択力が,彼らに多くの繁殖適地を供給し,太平洋の優占種の一つといわれる個体数の多さを支えているものといえる.
  • Guido O. Keijl
    1996 年 28 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1823年-27年,von Sieboldが日本で動植物を採集し,ライデン博物館に送った。著者は,ライデン博物館に収蔵されているそれらの鳥類標本を調査中に,ラベルに"von Siebold, Japan"と書かれたオオハシウミガラスの冬羽,翼換羽中の本剥製一体をみつけた。この標本は測定上,小形の北大西洋の亜種Alca torja islandicaと同定できる。この個体は恐らくベーリング海峡を経て日本まで迷行したものと思う。Siboldはウミガラス類を積極的に採集していないので,多分衰弱していたなどの理由でこの個体を収集できたのであろう。この標本はTemminck & Schlegel(1842)がCauna Japonica II,Aves p.125,Fig.2に記載したが,その後標本そのものを調査した人はなく,Seebohm(1890)はウトウの冬羽が幼鳥と推定し,Sharpe(1898),黒田長礼(1934),山階(1975)もそれを引用したにすぎない。今回はじめて収蔵標本調査で本種の日本記録が明らかにされた。このようなウミスズメ目の種の大洋間迷行記録を附記し,その可能性を示唆した。
  • 風間 辰夫
    1996 年 28 巻 1 号 p. 45-46
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1994年2月5日,新潟県岩船郡山北町大字笹川の海岸で,ケイマフリ Cepphus carbo が保護され,新潟県愛鳥センターヘ収容される途中に死亡した。本種の越冬域は,日本海側では,青森,秋田,山形,石川に渡来が確認されている(日本鳥学会1974)が,新潟県では,これまで観察例もなく,この標本が県内での初記録になるので報告する。
  • 岡 奈理子
    1996 年 28 巻 1 号 p. 47
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
  • 岡 奈理子
    1996 年 28 巻 1 号 p. 47a-48
    発行日: 1996/03/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
  • 1996 年 28 巻 1 号 p. 50
    発行日: 1996年
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
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